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第54回インド産科婦人科学会の一部として開かれた「代理出産VS養子」の会議に出席した産婦人科医たちが、インドが代理出産のハブ国になりつつある傾向に警告を発し、子供を欲しいカップルは、9か月間子宮をレンタルして既製品の赤ん坊を手にするより、養子を考えるべきだと主張した。

専門家によると、インドでは通常の出産ですら妊婦の死亡率は40人に1人になるという。「子宮を貸すということは、自分の健康も貸すということ。薬が致命的になることもあるし、後でがんに発展する可能性もある。金が欲しいばかりに、貧しい女性は医師による適切なカウンセリングも受けず、医師は同意書を正当に取り扱っていない。」とハイデラーバード市内に2つのIVFセンターを経営するSuma Kantipudi医師は発言した。

しかし、外国人カップルが「自分の」子供を持つ手助けをし、インドを代理出産国として有名にしたグジャラート州アナンドのNayna Patel医師は、貧しい家庭にとって大きな財政的助けだとして代理出産を擁護した。代理出産はカップルに「血のつながった子供」を与える点で、養子とは論理的に比較できないとPatel医師は言う。また、代理出産に関する健康被害はそれほど多くないことを指摘。これに対し養子派の医師は、多くのストリートチルドレンを抱えるインドで莫大な金額を代理出産に費やすのは不公平だと主張した。

子供に障害や神経疾患があると中絶になることを指摘する医師たちもいた。生まれた後に障害が判明した場合は、遺伝的つながりのある親が子供の受け取りを拒否する可能性が高い。中絶であっても、代理母がつらい経験をすることに変わりはない。

Assisted Reproductive Technology (regulation) Bill 2010のガイドラインでは、代理母になる資格があるのは35歳以下で依頼者と血縁関係のない女性となっている。しかし、義理の母が代理母になった例もあり、ガイドラインはきちんと守られていないとベテランの産婦人科医P. Balamba医師は言う。

インドのストリートチルドレンは数十万人と見積もられており、産婦人科医たちは、子供のいないカップルが彼らを養子にすれば、路上の子供の数が減るだろうと論じた。「長年産婦人科医をやってきた人間として、私は養子に賛成する。この国の養子縁組は手続きが厄介だ。孤児を養子にすれば、彼らに家族と保護を与えられる。」とP.V.Saraschandrika医師は述べた。

'Couples should go for adoptions'
[THE TIMES OF INDIA Jan 9, 2011]


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by technology0405 | 2011-01-18 11:06 | Countries | Comments(0)

インドは代理出産ツーリズムのパイオニア的存在であるが、今、グアテマラで同様のことが行われている。グアテマラは国外に養子を多く送り出していることで有名である。しかし、子供の人身売買だという国際非難を受け、国際養子縁組に関するハーグ会議後は、2004年をピークに養子の数は減っている。それに呼応するように増加しているのが、代理出産である。

グアテマラには代理出産に関する法律はなく、養子ビジネスに携わっていた業者が代理出産へとシフトしている。男女の不平等が深刻な問題となっているグアテマラでは、読み書きすらできない貧しい女性が、明らかに依頼者に有利な契約を通して代理出産を行っている。報酬は安く、1500ドル程度という。

代理出産ツーリズムといえばインドばかりが注目される傾向にあるが、インドの代理出産に対する調査が進めば、他の国のこうした現状も明らかになるだろうと、Virginia Commonwealth UniversityのDr. Nicole Bromfieldは考えている。

Reproductive Tourism: Surrogacy Outsourcing Takes Hold in Guatemala
[Biopolitical Times June 1st, 2010]

Surrogacy Replacing International Adoption from Guatemala
[RHRealityCheck.org. May 20 2010 ]


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by technology0405 | 2010-12-17 16:00 | Countries | Comments(0)

匿名配偶子と家族

北欧・ヨーロッパでは、匿名の配偶子を求めて越境治療(tourism)が生じた。

1985年、スウェーデンでは「人工受精法」が成立し、非配偶者間人工授精(DI)によって生まれた子が18歳に達した時点での出自を知る権利を認めた。子どもの権利という点からは、画期的な法律であったが、人工授精法により、スウェーデン国内における精子提供者は激減したという。また、それに伴い、提供者の背景も、変化した。法律施行前は、比較的若年の学生や兵士が多かったが、施行後は、自分の子どもを既に持つ高年齢層の精子提供者が増加した。提供者の減少により、提供を求めるカップルの待機時間が延長した。このため、スウェーデンから当時ARTを規制する法がなかったフィンランドへと提供配偶子を求めて越境治療が生じた。年間数百人に上ったらしい。スウェーデン本国では得られない治療を求めて、国外に出なければならないことへの不満、フィンランドなどホスト国では、もともと不足している卵子提供者をめぐる国内患者との競争についての問題が生じた(フィンランドでも2008年以降は、配偶子提供は非匿名による提供が基本)。ノルウェーでも、精子提供者は非匿名となっており、このため国外へ渡航するカップルが増えている。

ヨーロッパにおける配偶子提供の状況をまとめると、
①ベルギーなど、精子も卵子も、匿名・非匿名に関わらず、使用できる国。ヨーロッパ諸国からの越境治療による患者を多く受け入れている。
②フランス、デンマークなど、配偶子提供を匿名に限り、非匿名の提供を認めていない国々。
③英国、オランダ、フィンランド、スウェーデンなど、配偶子提供者を非匿名に限る国。子どもの出自を知る権利を重視している。
④イスラムの教えで提供卵子、提供精子など、第三者の治療への介入を全て禁止しているトルコ、カトリックの影響で胚の凍結保存を一切認めないイタリアなどの国

①が最も越境治療のホスト国となりやすい。④が最も患者が越境治療を熱望しやすい国となる。

出自を知る権利の導入は、匿名配偶子を求めてヨーロッパに越境治療をもたらす要因となったが、著者によれば、スウェーデンで出自を知る権利を行使している子どもは、実際にはほとんどいないという(法律施行前にDIによって生まれた、実際には出自を知る権利があるのかないのかを問い合わせる電話が一本あったのみという)。

その原因として考えられるのは、一つは、子どもが出自を知る権利を行使する前提となる告知が、親の側からなされていない可能性である。
もう一つは、知らされていても、敢えて生物学的な父親(母親)を探さないという可能性である。

どちらか結論できないとしつつも、著者は、後者の可能性が高いと考えているようだ。
スウェーデンではDIの事実が比較的告知されていると考えられ(スウェーデンでは約半数が知らせると答えた。日本でDIの事実を知らせると答えた夫はアンケートによれば1%)、子どもが幼い時期からDIの事実をきちんと知らせ、家庭に秘密がないようにすれば、親子の信頼関係が壊されることなく、子のアイデンティティに混乱を生じる可能性が少ないこと、それに加えてスウェーデンの多様な家族形態(離婚・再婚が頻繁な家族形成、事実婚の浸透、歴史的に移民を受け入れてきたこと、国際養子による家族形成、婚外子差別のないこと)、さらにはスウェーンでは国民全員が国から割り振られたIDを持っており、それが個人のアイデンティティを構成する要素として大きいことが、出自を知る権利の行使を控えさせている要因ではないかと考えている。

他方、日本では、DNA信仰が強く、両親と子どもからなる「標準家庭」という単一の家族形態への志向性が強いことが、提供配偶子を用いて産まれてきた子どもの立場を複雑で困難なものにしている可能性がある。日本で多様な家族が受け入れられるようになれば、生殖補助医療によって生み出される様々な家族への受容度が増し、出自を知る権利を求めて子が苦悩することはなく、あらゆる形態の不妊治療が普及し、婚外子差別も解消され、結果として少子化問題の解決につながるかもしれない・・・・・・?

しかし、スウェーデンで多様な家族形態が受け入れられているとするなら、なぜ匿名配偶子を求めて越境治療が生じたのだろうか。実際には、子どもが出自の権利を行使しては困ると考えた患者が多かったからではないだろうか。また、スウェーデンでは本当に出自を知る権利が提供配偶子で生まれた子どもによって全く行使されていないのかどうか、そうだとすれば、それはなぜなのか、当事者(提供配偶子で生まれた子ども・親)への調査があればよかったと思う。

文化人類学の親族研究などでは、歴史的・文化的・民族的に多様な家族形態がありうることが示されてきたし、ARTによって作られる家族もまた、相対化してみれば新技術によってもたらされた、多様な家族のなかの一つに過ぎないのかもしれない。生殖補助医療を家族や社会のありようの中でとらえていく作業は重要である。しかし、出自を知る権利を(著者は、もちろん、出自を知る権利が必要ではない、などとは言っていない)を行使できるよう事実を記録し、保管しておくことは必要だろう。出自を知る権利を、単に遺伝上の親を知りたいというDNA信仰に基づく欲求のみに還元することはできないだろう。それは、自らの誕生のプロセスに関する一部始終や真実を知りたいという、この世に投げ出された者が普遍的に抱く思いに関係していると思えるからである(子ども時代、誰もが一度は自分はどのようにして生まれたきたのか、どこから来たのか、知りたいと思ったに違いない)。

生殖医療と家族のかたち 先進国スウェーデンの実践 (平凡社新書)

石原 理 / 平凡社




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by technology0405 | 2010-08-22 18:09 | Book | Comments(0)

代理出産と人身売買

代理出産のグローバル化に伴い、国際的な基準というものが必要ではとの議論が高まりを見せている。南半球の国ではインドがAssisted Reproductive Technology(ART)[Regulation] Bill 2010を通過させ、代理出産の成文化を実現したが、これはまだ法案にすぎない。

水面下で代理出産が行われている国への調査も急がれる。女性の人身売買で悪名の高いロシアでは、「Natashas」と呼ばれる国際的な人身売買組織があり、女性の体が市場に出されている。こうした犯罪組織が代理出産にシフトし、女性の生殖を売買するのは必然であるといえる。深刻な人身売買がはびこるグアテマラでも、海外向けの養子縁組の形態に加えて、アメリカ向けに代理出産を安く提供しており、あっせん業者が利益を得ている。

代理出産は、生殖に関わる人権の侵害が起こる可能性をはらんでいる。2010年6月のハーグ国際養子縁組会議では、「子供の人身売買を防ぐ目的で国際養子縁組が見直された結果、意図せずして代理出産の問題が引き起こされた。」と述べられた。一方で代理出産を行っているインドの医師などは「代理出産は正当な賃金のために行われる労働。」とみる。

アメリカの私立の養子あっせん業は人身売買に近いものも多く、特に移民の子供を養子として売ることは以前から行われてきた。代理出産で発展途上国から白人の子供が多く供給されると、新たな市場として活発化する可能性がある。U.S. Trafficking Victims Protection Act(TVPA)は労働力としての人身売買を禁じているが、こうした新しいタイプの幼児売買は全く想定されておらず、現行法での取り締まりは難しい。国連のUN Trafficking Protocolは人身売買の定義が緩いので、適用できる可能性はある。少なくとも各国の政府は、代理出産市場が人身売買につながらないように手を打つべきである。

Will Global Surrogacy Be Regulated? 
[RH Reality Check July 7, 2010 ]


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by technology0405 | 2010-08-06 12:23 | Countries | Comments(0)
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