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Law commission Consultation Paper No 244, Scottish Law Commission Discussion Paper No 167
Building families through surrogacy: a new law. A joint consultation paper. 2019

英国では、代理出産法改正に向けた議論が進んでいる。


2014年の“Surrogacy in the UK : Myth busting and reform (201511月)を経て


20169月に諮問 委員会“Huge leap forwards for surrogacy reform”(Surrogacy UK)Law Commission が立ち上げられている。


2019年6月には、新たなレポートが公開された。


レポートの趣旨

英国で代理出産法ができた1985年当時とは社会環境が大幅に変わり、代理出産法の見直しが必要になってきていること。


レボートの提案

・これまでは、代理出産の依頼親は、子の出生後の親決定をへて法的親となることができたが、新たな法では、代理母の拒否権は一定期間確保しつつも、子の出生後、直ちに依頼親を法的親とすることができるようにする。


・これまでは、代理出産で生まれた子は、自分がどのように出生したかの情報にアクセスすることに問題があった。新たな法では、代理出産の登録制度(National Surrogacy Register)を樹立し、代理母、依頼親、配偶子ドナーの情報を管理する。


・これまでは、代理母への支払いに関して不透明な点があり、実用性に問題があった。新たな法では、潜在的に支払いが必要な項目について意見を求めさらに検討する。


・ これまでは、代理出産の同意書において、関係者の安全性が欠けていた。新たな法では、子の懐胎前に依頼者が親となる道筋を作ることによって、代理出産契約に関わる当事者を保護する。


・これまで、海外代理出産に際して、子供が長期に法的地位が不明瞭になるという事例が発生していた。新たな法では、海外代理出産で生まれた子に早急に英国に入国できるような改正を求める。



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同レポートより p.3
*親決定命令は2016年に年間約400件を超え、2011年から4倍弱となった。ただし、代理出産の全てではなく、人工授精を用いた私的な代理出産の場合や、海外代理出産の場合は親決定命令が申請されていないケースも多数あると思われる。



内容は、これまでの親決定手続きを大幅に簡略化あるいは前倒しするもので、依頼者の親権をより確実なものとすることを伴い、依頼者の権利が強化されている。代理母への支払いに関して新たな費用項目の導入が検討されており、必要経費が拡大する可能性がある。これによって、代理母にとって必要経費の請求が容易になる反面、より多額の費用が経費として認められることによって、商業的な性格へと傾いていく可能性もある。また、支払いを、妊娠期間ごとに区切って支払う方法も提唱されている。つまりは、途中で代理母が流産などした場合はそこで支払いは終了することになる。商業的出産で行われる支払い方法に則ったものであり、代理母へのコントロールを容易にするという効果がある。

また、海外代理出産で生まれた子の帰国問題は、かねてより問題となっており、2014年頃から、裁判所はかなり寛容な判断を示してきた(家永)。例えば、イギリス国内では利他的代理出産しか認められていないにも関わらず、海外の商業的代理出産で生まれた子の親決定命令も子の最善の福祉を優先し、認めてきた。こうした流れを明示的に認めることで、海外での代理出産利用を容認・促進するものである。

ここで提案されている内容は商業的代理出産で行われてきたスキームそのものであるといえる。

2015年に提出されたレポートでは、"利他的代理出産"という基本概念は維持されるべきであるとの記述があるが、今回のレポートに利他的代理出産という言葉は見当たらない。

今後、イギリスで代理出産法の改正がなされれば、世界に与える影響力も大きい。

どのような内容になるかは不明だが、"商業的代理出産"が代理出産のスタンダードになる日も近いのかもしれない。



参考

家永登「代理母による出生子の法的親子関係--最近のイギリスにおける"親決定"裁判例を中心に」




by technology0405 | 2019-07-01 18:10 | Materials | Comments(0)
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