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日 時:2019112() 

13:00-17:00

場 所:日本科学未来館7階 海王星ルーム

    東京都江東区青海2-3-6

13:00-13:40 清水 直子 Shimizu Naoko

(さくらライフセイブアソシエイツ代表取締役)

 「生殖医療の進歩は選択肢を広げる: 代理出産/卵子ドナー/精子ドナー」

13:40-14:20 日比野 由利 Hibino Yuri

(金沢大学大学院医薬保健学総合研究科)

  「卵子ドナー、代理母、依頼親、子どもたちのコミュニティ」

 

 14:30-17:00 情報交換会 



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by technology0405 | 2019-07-26 09:59 | Meeting | Comments(0)


2019年6月2日 Hearing from Young Adults

司会者: 今日は卵子提供で生まれた子どもたちを呼んで、話を聞いてみたいと思います。

Tanzen:
20歳です。両親はちょっと年齢がいっています。母は最初、早発閉経だと言われましたが、そのあと卵巣不全だとわかりました。その時、ドナーがあまりいなかったので、両親は友達や家族からドナーを探そうとしました。
最初友達に頼もうとしましたが、彼女は忙しすぎて、難しいとわかりました。そして彼女から紹介してもらった人から提供を受けることができました。そのひとから2回提供を受けて、自分は2回目の提供から生まれたと思う。最初の移植は失敗して、そのあと2回流産、そのあと弟が生まれた。
両親はストーリーブックを使って教えてくれた。そして2歳の時に、実際の話を聞かせてくれた。でもインパクトはゼロだった。だって私は2歳だったし。と言うのは、私は気がついたらそのことを知っていたと言うこと。ニュースでもみたし、サポートグループもある。そして学校には体外受精で生まれた子もいた。彼女とはよく話していたわ。


Mel:
26歳です。母は生まれつき卵巣がなかったみたい。父は妥協(adamant)しない性格で、どうしても子どもが欲しいという考えがあった。そして、IVFという技術があることを知っていた。そしてお金を貯めて、これをやった。私の卵子ドナーは匿名だった。私は2回目で成功して生まれた。そして8年後に妹が生まれた。その時母は42歳だった。19歳のとき、卵子ドナーにあうことができ、とてもいい関係を持ってるの。
私の両親は8歳になるまで教えてくれなかった。特に母はとても躊躇していたわ。とても心配していた。母だと思えなくなることをね。でも妹が生まれたから、もう言うしかないと思ったみたい。ただ、それは遅かったと思う。だからものすごくショックを受けた。
つまり、私は一人っ子だったけど、妹が生まれた途端、両親は私を座らせて、子供はどうやって生まれてくるか知ってる? と聞いてきた。私は親とそんな話をしたくなかったわ。でもあなたはこれこれの方法で生まれてきたのと・・・それはもう言い表せないほどのショックだった。そして16歳になってやっと飲み込めるようになった。
両親はもっと違う反応を期待していたのかもしれない。でも母が3つの受精卵を移植したと聞いたとき、私は涙が止まらなかった。だって私は三つ子だったんだと。だから兄弟がいたのに、死んでしまったんだと。母は、いやそんなことを言いたかったんじゃないと言ったけど。
そして両親は、妹が11歳になったとき伝えた。妹は私より成熟してないと両親は判断したみたい。彼女も同じようなプロセスを辿ったと思うけど、もっと良かった。そして18歳になって、ドナーを知ることもできるようになった。だから、いまそのプロセスに進んでいるところ。妹とその話をすこともあって、面白い。

司会: やはり、出来るだけ早く知らせることをお勧めします。公開されてる本もいいですが、やはり自分たちの家族に即した独自の本を作るといいでしょう。それから親が心配するのは、学校で友達に知られたらどうなるかということでしょう。それについては、どうでしたか?

Tanzan:
自分にとっては、当たり前の事実だったので、特に友人とシェアしたいと言う気持ちもなかった。でも6年生のとき、両親が本を作ってくれて、そこで初めて自分にはhalf siblingがいることを知ったんだ。それで興奮してこのことを友達にシェアしようと思った。そしたら友達には3回も説明する羽目になった。すぐには理解できなかったからね。そのあとfamily treeも学校で作ったし、ものすごくオーブンにしている。だからクラスの誰が知ってて、誰が知らないか、忘れてしまうくらい。
この間も男友達に話す機会があった。だからとてもオープンにしているよ。今までネガティブなコメントはゼロ。そして弟とは双子だと言えるけれど、2年半離れているんだ。ういうことも興奮するね。

Mel:
自分の場合は知るのが遅かったし、それにカトリックの学校に行ってたから。父がとても宗教的な人なので。そして母はとても心配性。そんなこともあって学校の友達に明かすのは難しい。でも、高校でそういう話がでて、友達に話してみた。そしたらネガティブなことはなかった。ただ興味津々なだけ。まるで科学の実験のようだねといった友達もいた。
同じように、大学の友人にも話したら、科学的な興味を持っていた。ちょっと込み入ってるけど、みんなポジティブだった。

司会:
世の中も常に変化してきています。そして、学校の友達に説明する時にも本は役立つでしょう。なぜかと言うと、やはり何度も何度も説明するのは疲れるからです。特に親が同性カップルの場合、子供達は一体どうやって子供ができるのか不思議がりますから。さて、次の質問は、ドナーについてです。ドナーに会いましたか?

Tanzan:
ドナーは、両親の教会の友達だったわ。だから実は彼女のことをいつも知っていた。そして、高校になって彼女がドナーだったと初めて知ったの。そして、両親に聞いたら、その都度、教えてくれた。両親は、私のペースに合わせてくれた。スクラップブックにも書き入れたわ。そして、彼女に会った。向こうの家族からも受け入れてもらえた。そしてhalf siblingに会えたのはとてもエキサイティングだったわ。そして向こうの家族のウェディングにも招待されたり。私の興味は、本当の母親を探すとかそんなんじゃない。ただ、遺伝的な母(genetic mom)だと思ってるだけ。育ててくれた人が私の母親だと思ってる。でも遺伝的繋がりがある人は他にいる。それが私の事実。

Mel:
知るのが遅かったせいか穴を埋める必要があった。母親に取って代わることはないけど、やはりドナーにはとても興味があった。特になぜ提供したのか、知りたかった。
私は、自分の両親とは似ていないし、妹とも似ていない。それが、遺伝子のランダムや違いなのか、父親の家系から来ているものなのか、それともドナーから来ているのか、知りたかった。
だから18歳になったとき、アプライしたの。でも母親の気持ちにはとても配慮したわ。まだ妹には事実を言ってなかったから。
だからそれは家族で議論になると思っていた。だから両親が妹に話すのまで待った。そして両親には言わずにアプライしたの。会ってくれるかどうかわからなかったけど、結果はとてもポジティブなものだった。
家族に伝えたら、父親は喜んだ、妹はエキサイティングして、そして母親はとてもナーバスだった。そして19歳のとき、シティでドナーにあったの。待ち合わせの時、向こうから歩いてくる女性をすぐにドナーだとわかった。自分に似ていたから。とても不思議な経験だった。彼女が近づいてきたとき、もうほとんど泣いていたと思う。そして彼女と3時間も話したと思う。彼女の家族の写真も見せてくれた。彼女とは奇妙な一致があった。音楽や小説に対する嗜好がとても似ていたから。


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by technology0405 | 2019-07-18 09:12 | Materials | Comments(0)


2019年1月6日(日) 13:00-17:00
場所 日本科学未来館 海王星ルーム

参加費はセミナー、情報交換会とも無料、
ただし、情報交換会へのご参加は当事者のみとなります。



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by technology0405 | 2018-11-05 11:01 | Meeting | Comments(0)


日時: 2018年5月12日(土) 13:00-17:00
場所: 日本科学未来館 海王星ルーム

※セミナーへの参加費は無料
※情報交換会への参加は1家族につき2,000円
※お名前とご連絡を添えてお申込みください。

清水直子「代理出産と卵子提供の行方」

日比野由利「遺伝的つながり、生物学的つながり」

仙波由加里「提供精子・卵子でつくられた家族−ニュージーランド・イギリスの事例から」

15:00-17:30 情報交換会(ご参加は当事者のみです)




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by technology0405 | 2018-05-13 17:10 | Meeting | Comments(0)


スウェーデンやスイス、オーストリア、イギリス、オーストラリアなどでは、配偶子提供で生まれた人々に出自を知る権利を認め、これを保障するための法制度化を行っている。
これらの国々では一般に、ドナーの個人情報を国が管理し、子どもが一定の年齢に達して開示請求を行えば、情報を開示するというシステムを採用している。必要に応じて、カウンセリングが提供されることもある。
国が情報を一元的に管理することで情報の正確性や機密性を担保することができる。
しかし、次のような問題も抱えている。
1)親による告知を前提としている(親が子どもに提供の事実を伝えていなければ子どもは開示請求を行うことができない)
2)親がドナーを知ることはできない(一般に、子どもへ開示されるまで親は知ることができない)
3)家族のプライバシーに国が介入する(国にコスト負担が生じ、また漏洩なとのリスクもある)
4)ドナー情報が長期にわたって更新されない(提供してから開示されるまでの間に長期にわたる空白期間がある)

 国による管理体制は、ドナーとレシピエントの利害関係の対立や家族関係の複雑化、また、近親婚の懸念を取り除くことや、優生思想や商業化を避けるために考案されたものであると思われるが、旧時代のものとなりつつある。
 出自を知る権利を変えつつあるのが、遺伝子検査国境を超えた生殖医療の浸透である。

 昨今、遺伝子検査の普及や情報検索技術の高度化により、提供の事実やドナーは誰であるかなどが偶発的に露見するリスクが高まっている。つまりは国がドナー情報を保管して一定期間、秘匿しておく意義が失われつつある。
 オーストラリアのビクトリア州では2017年から、匿名時代に行われたものも含めて、すべてのドナー情報が例外なく開示されることになった。これは、配偶子提供によって生まれた人々の要望に答えたものだが、こうした施策が採用された背景には、遺伝子検査の浸透により、「ドナー情報は公開されたも同然の状況にある」という認識である。
 23 and Meは、Googleが出資しているアメリカの大手DNA解析会社である。100ドル程度で受けられる。DNAを送付すれば、病気のリスクだけでなく、祖先の過去のストーリーや血縁関係も表示される。例えば「23 and Meで検査済みのいとこが73人いるようです」などと表示される。そして互いに希望すれば相手と交流することもできる。このような検査を用いて偶然、育ての親とは遺伝的に繋がっていないことを知ったり、ドナーからの半きょうだいに出会う人も実際に存在している。
 親による告知や情報開示請求といった手続きは、知らないことを前提として組み立てられた制度である。しかし、こうした現状を鑑みれば、これからは知ることを前提として法制度を組み立てていく必要があるということである。

 また昨今、海外で配偶子提供が容易に受けられるようになり、国境を超えた生殖医療は身近にものとなっている。こうした動きは、国による管理体制によっては完全に補足できない(国内のドナー不足を解消し、海外での実施を抑制するため、イギリスやオーストラリアでは、配偶子の輸入が行われている。輸入元は主に米国であり、非匿名のドナーの配偶子だけが輸入されている。このように国内での実施を推奨する努力も行われているが、海外居住のドナーの追跡は事務コストがかかるうえ、限界もある。)
 一方、海外の市場においても、必ずしも匿名ドナーが好まれる時代ではない。米国では生殖補助医療に市場原理が取り込まれており、顧客の満足度が重視されている。依頼親のニーズに応じてドナーを選択でき、匿名のドナーだけでなく、コンタクトが可能なドナーも登録されている。シングルや同性カップルなどがこうした非匿名ドナーを積極的に利用しており、配偶子提供は、必ずしも匿名が前提という時代ではなくなっている。
 さらに、レシピエントとドナーを直接結びつけるサイトも出現している。さまざまな国籍や居住地の人々が登録しており、一定の利用料を支払えば、互いのプロフィールを閲覧でき、連絡を取ることもできる。こうした形で利用される限り、配偶子提供において互いに匿名でいることはもはや重要視されていない。このような直接取引には、当然ながらリスクも存在する。しかし、エージェントへの報酬が発生しないことや自分で気に入ったドナーを選択できること、またドナーがレシピエントを選ぶこともできるなど、自由度が高い。
 自分の目でドナーを確認して互いに信頼できる人物であることを確認してからプロセスに進むというなかで、過度の優生思想が入り込むリスクはより少なくなるのではないだろうか。また、将来子どもへ告知することが前提であれば、過度に商業的な形で利用されることも抑制されるだろう。
 そして、外国に住むドナーなどの場合でも、その気になればSNSを通してコンタクトをとりつづけることはいくらでも可能である。
 取り合いのドナーから卵子提供を受けて母親になったオーストラリア在住の女性は「知り合いのドナーはいいことばっかりだ」と述べる。子どもの体質のことなどいつでも相談できるし、ドナー家族とも行き来するなかで子どもへの告知も自然に進んでいるという。
 上記のような現状を鑑みると、ドナー情報を国に預けて一定期間匿名でおいておく必要性は必ずしもなくなってきているのではないだろうか。こうした制度は、一定の合理性があったが、提供の事実や家族の外にドナーが存在していることを隠しておきたいというスティグマが存在していた時代の残滓ではないだろうか。
 国による情報管理には、近親婚の防止という目的も掲げられている。精子提供などのように一人で何度も繰り返し提供すれば、近親婚のリスクが増す。しかし、近親婚を防ぐために役所に事実関係を照会することが必要であり、そのためには、子どもは配偶子提供の事実を知らされている必要がある。しかし、事実を知らされていれば、相手に確認することや遺伝子検査を行うことで済む。
 第三者の配偶子や胚を用いて子どもを得たとしても、それはもはや特別なことではなくなってきている。すべての局面において国が管理し介入することは難しいし、現実的ではない。最終的には親自身への啓発が最も重要な要素となる。社会がそうした家族のあり様を認めることも同様に重要である。社会と人々の意識が変われば、我々はもっと別の形の制度設計を構想することができるだろう。
 



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by technology0405 | 2017-12-01 11:28 | Discussion | Comments(0)


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Interview with a donor conceived child.




母: もう何万回も聞かれていると思うけど、卵子提供で生まれたことを知った時のことを教えて?

Nick 聞いた時のことはもう覚えていない。気がついたら既に知っていたという感じ

母: ドナーから生まれたことをどう思っているの?

Nick ぜんぜなんとも思っていない

母: ドナーを探した時にこと教えてくれる?

Nick: ドナーに興味を持ったので、母がクリニックに手紙を書いてくれた。それで、卵子ドナーのJenniferと晩御飯を食べたんだ

Marna: 彼女のことをどう思っているの? もしドナーに会えなかったらどう思った?

Nick: 好きさ。もし知ることができなかったらとても困っていたと思う。打ちひしがれるとか、悲しみにくれるというほどではないけどね。

Marna: そういえば、Jenniferは他にも4-5回くらい提供してたの知ってると思うけど、他に子供が生まれていることについて、どう思う?

Nick: その子たちのことは知らない。いちおうはHalf siblingsということになるけど、自分はそんな風に思っていない。ただの人。だって、遺伝的に繋がっているというだけで、繋がりがあるとは感じないから。あなたとは遺伝的に繋がっていないけど、つながりがないとは感じないのと同じ、だからそれは自分にとって重要なことじゃない。

Marma: 将来、その人たちに会いたいと思う?

Nick: 向こうが会いたいならいいよ。でも、自分はどっちでもいい。

Marina: そんなに強く思って(burning desire)ないんだ?

Nick: うん。

Marina: もし誰かが、ドナーとあなたが似ていると言ったら、どう思うの?

Nick: 彼女と兄弟姉妹やおばさんのようなふりをすのは楽しいよ。

Marina: あななたたちは本当によく似ているわね、どちらも私にとっては可愛らしく感じられる、母親として・・・。

Nick: 彼女は42歳だからもう中年なのに、子ども?

Marina: そうね、私はあなたのママで、卵子提供についてはものすごくオープンにしている。でも、他の子供たちに話した時はどんな反応だったの?

Nick: 学校で、family treeをつくられたことがあって、そこに自分はJenniferを入れた、その時は彼女のことを知らなかったけど。クラスの半分は気にしてなかったな、あとの半分は、すごい(cool)、と思ってくれたみたい。


Marina: 思い出した、何人かの子供たちは私のところへ来て、自分もそんな枝が欲しいと言ってたわ。

Nick: うん、だからネガティブな反応はなかったと思う。

Marina: ネガテイブな反応はこれまでなかったの?

Nick: ないよ、だってここ(Portland)にはもっと変なことがいっぱいあるし、誰も気にしてないよ。

Marna: そうね、私もネガティブな反応はこれまでなかった。これが最後の質問になるけど、卵子提供の家族について、このビデオを見ている人に対して、どんなことを知って欲しいと思う?

Nick: これを見ている人がどんな人でどんな父親、どんな親かは知らないけど、子供には早く伝えて、大きな問題にはしないこと、そうすれば、子供たちも全然気にしなくなる。自分にとっても、卵子提供で生まれたということはたいした問題ではない。もし今そんなことを言われたら、たぶん面食らってしまうと思う。でも養子と同じことかな。養子の子供が後で知ったとしたら、やっぱり大きなショックを受けるだろうと思う。だからオーブンにすべきだと思う。

Marina: そうね。いつも家ではなしていたわね。奇抜なことにしなければ、子どもも奇抜(weird)なことだとは考えない。

Nick: そうだ、だからそんなに驚かないよ。

Marina: じゃあ、どんなことだと面食らうの?

Nick: わからないけど、例えばバイクを持って行かれたとか、

Marina: 運転免許証とか、そんなことね。

Nick: うん。

Marina: サンキュー、バイ。







by technology0405 | 2017-02-14 16:43 | Materials | Comments(0)


2016年9月、米国の医療チームがメキシコでミトコンドリア提供を伴う体外受精を行い、子どもが誕生したことが報じられた。依頼親はミトコンドリア病が子どもに遺伝するのを予防する目的でこの技術を利用したとされる。米国ではこの技術が容認されていないため、規制がないメキシコで行われたという。
 これに先立つ2015年2月、英国がミトコンドリア提供の臨床応用を容認することを決定したことが報じられていたが、米国の医療チームが臨床第1号を誕生させたという点で、英国に一歩先んじたことになる。
 ミトコンドリア提供には二つの方法が知られている。一つは卵子間核移植(Maternal Spibdle Transfer: MST)と呼ばれ、健康な女性から卵子の提供を受け、除核したドナー卵子に、依頼者の卵子核を移植する。もう一つは前核期核移植(Pronuclear Transfer:PT)と呼ばれ、提供された健康な受精卵から核を取り除き、依頼者の受精卵の核を移植する。いずれも提供された卵子や受精卵を必要とする技術であり、倫理的問題がある。特に、PT法は、受精卵を用い、これを破壊するものであるという見地から、宗教関係者からの批判や反対も根強い。
 英国のHFEAによれば、ミトコンドリア提供は、重篤なミトコンドリア病の危険性がある場合にのみ臨床応用が認可される。ミトコンドリア病は母親の卵細胞質にあるミトコンドリアDNAにある変異が子どもに遺伝することで発病する。そのため、卵細胞質を健康なミトコンドリアに置換することにより、子世代におけるミトコンドリア病の発症を防ぐ目的で実施される。依頼者の卵子または受精卵の核を吸引して取り除き、ドナーの卵子または受精卵に挿入するという、繊細な手技を必要とする技術である。この過程で、依頼者の核DNAに付着したごく少量のミトコンドリアDNAが混入することは避けられない。混入の範囲は、2-4%以内であるとされているが、異常なミトコンドリアDNAが世代を経て増殖する可能性もある。ミトコンドリア DNAは母系遺伝するため、核置換を施された受精卵が男児であれば、理論的には次世代への連鎖を止めることができるが、HFEAではそのための受精卵の選択を認めていない。
 この技術を用いた場合、ミトコンドリアDNAについてはドナー由来である。つまり、カップル以外の第三者のDNAが子どもに引き継がれることになる。このため、子どもは3人の親を持つと表現されることもある。第三者のDNAが混入することは事実だが、その程度は全DNAの0.054%を占めるに過ぎないという計算もある。ミトコンドリアDNAが子どもの形質に与える影響はほぼ皆無であると考えられている。とはいえ、第三者のDNAが混入することは事実であり、生まれてくる子どもがこの科学的事実をどのように捉えるかは全く分からない。英国では、精子提供や卵子提供に関して、ドナーの個人を特定する情報(名前や住所)を知る権利を子どもに認めているが、ミトコンドリア提供の場合は、ドナー個人を特定しない情報(髪や皮膚の色)の開示しか認めない方針を示している。
 生殖細胞に対する遺伝子改変を伴う技術は、未知のリスクがあるといわれている。第三者のミトコンドリアが混入することで、それらが世代交代を経てどのような動態を示すことになるのか、全くわかっていないからである。霊長類など動物を使った実験でも何世代も経た効果は検証されていない段階で、ヒトでの応用に踏み切ったのは、ミトコンドリア病を持つ当事者からの要請が強く働いた結果というよりは、科学者コミュニティの中での技術開発競争の結果といえるかもしれない。最近、中国の研究チームが受精卵に対する遺伝子操作を行ったことが報じられ、生殖細胞への遺伝子操作をともなう研究開発競争はますます過熱している。ミトコンドリア提供のヒトでの効果やその影響は、「やってみないとわからない」というまさに実験段階であり、その帰結は生まれてくる子どもが全て負うことになる。  
 ところで、ミトコンドリア提供は、核置換技術とも呼ばれ、卵子の若返り術としても知られている。日本は年間40万サイクルもの体外受精が行われる不妊治療大国であり、女性患者が40歳以上の割合が約43%と高齢化が著しい。近年、超高齢出産が年々増加しており、海外での卵子提供によると推測され、その数は少なくとも年間数百件を超えている。卵子提供は、加齢不妊に対する有効性が高く、この方法を選択する女性が増えているとはいえ、第三者からの提供卵子を用いた場合、依頼女性と子どもとの間に遺伝的繋がりがなく、その事実が、卵子提供利用の抑制因子になってきたと考えられる。
 日本だけではなく、先進国では一般に加齢不妊の問題が深刻度を増しており、核DNAの情報を100%子どもに引き継がせることができるミトコンドリア提供は、当事者にとって魅力的であると思われる。英国では、加齢卵子に対し核置換技術を行うことは、認めていない。しかしそれでも、すでに規制を逃れメキシコでこの技術が行われたことを考えれば、既存の生殖ツーリズムのオプションの一つとして核置換技術を導入することは決して難しいことではない。(日本では「特定胚の取り扱いに関する指針」[文部科学省・H13]および「精子・卵子・胚の提供等による生殖補助医療制度の整備に関する報告書」[厚生労働省・H15]により、核置換技術は容認されていないと解される)
 核置換技術を禁止する規制を持たない新興国のような地域に、資金を贅沢に持つ先進国から設備投資を行い、先進国から技術者を送り込む。提供卵子や提供受精卵は、当該国で調達することも可能かもしれないし、国外から輸入も可能である。近年、未受精卵の凍結技術が確立されてから、卵子バンクから世界中へ凍結卵子が輸送され、使用されている。核置換技術が通常の卵子提供と異なる点は、ドナーの人種や国籍を考慮する必要がないことである。核置換のために提供される卵子や受精卵は、資源(モノ)として利用可能である。つまり、核置換技術は、より生殖ツーリズムに適合的なのである。
 この技術の安全性や有効性が一定程度担保されれば、加齢への適用が一気に現実味を帯びてくる。そのとき、提供卵子または余剰胚に対するニーズは一挙に加速することが予想される。それにもかかわらず、当該技術が開発された先進諸国で抑制的な運用がなされるとき、卵子提供・代理出産ツーリズムと同じ現象が反復され、世界中に広がることが懸念される。その結果、遺伝子改変が世代を超えてもたらす未知のリスクは、国境を超えて人類全体に波及していくだろう。


Key words: mitochondrial donation, three parent's IVF, germline gene modification, nuclear replacement, maternal spindle transfer, pronuclear transfer,

ミトコンドリア病 Link

世界初、3人のDNA持つ赤ちゃん誕生 米チームがメキシコで成功 

英国がミトコンドリア提供の臨床応用を決定 Link Link


周産期医療に携わる医師の超高齢出産と第三者生殖技術に対する意識調査 Link


HFEA (Human Fertilization and Embryo Authority) Link



2016 (c) Yuri Hibino



by technology0405 | 2016-10-08 13:44 | Discussion | Comments(0)

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8月20日講演まとめ Link

卵子提供・代理出産で家族をつくる(5月15日) Link


by technology0405 | 2016-06-23 11:06 | Meeting | Comments(0)
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