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葉剣、呉敏(2006)「代理出産技術における倫理的や法的再考」『河南医学研究 15』pp.178-180



中国では「誰かに代わってもらって妊娠する」という行為は法律的に禁止されていない (1)。ゆえに、国民はその意思を持っていれば上記の行為を行っても問題にならない。契約法にも違反していないし、もし双方が合意に達していれば、禁止すべきではない。さらに、世間では強い需要が存在しているゆえ「代理出産を合法化すべき」と唱える専門家もいる。しかしながら、代理出産によって起こされる倫理的問題や法的問題は無視することができない。

1. 代理出産技術における社会的倫理再考
まず、代理出産の技術はわが国の国情に合わないと思われる。わが国が2000年以上も儒教の影響を受けてきており、現在に至っても儒教の倫理観が大多数の国民の心に留まり続けている。代理出産という倫理観に反した行為は少なくとも現在の人々に受け入れられそうになく、代理出産で出生した子供たちも差別のまなざしを浴びながら生きていくことは間違いないであろう。また、わが国はいまだに未だに発展途上国であり、貧困や格差の問題が根強く残っている。実際のところ、富裕層は国民のごく一部であり、逆に経済的に最低限の生活すらできない人は多々いる。この状況の下で、代理出産の高額報酬のためにあえて危険を冒す女性が増えていきかねない。その結果として女性が商品化されてしまうことになる。したがって、わが国では代理出産を禁止すべきだと思う。
次に、代理出産の技術の運用は公衆の利益を犯しかねないと考えられる。現在の中国において代理出産はほとんどの国民の利益や社会全体の利益に合わなく、法律の「平等原則」に違反していると筆者は思う。代理出産の実施は莫大な金がかかり、ごく一部の富裕層の家庭を除けば治療費用だけでもほとんどの家庭が負担できない。もっと注目してもらいたいのは、一部の女性が「美意識」に促され、金銭を駆使することで妊娠や出産がもたらす苦痛から逃避しようとしていることがある。その結果、「富裕層の人が貧困層に出産という責任を転嫁しようとしている」ということになり、高いリスクが伴っているだけでなく、一人の人間としても不公平極まりないといわざるを得ない。

2. 代理出産の法的再検討
中国現行の民法から見ると、代理出産は女性の身体権を犯すことになる。身体権をめぐる議論はまだ続いているが、憲法第37条では「公民の身体を侵害することを禁ずる」と明記されており、女性が自分の体を支配する権利を持っている。したがって、女性の生殖器官である子宮を自分の意思で支配すべきだということは言うまでもないであろう。ただし、その権利の行使は無制限なものにならないよう、ある程度の制限を設ける必要がある。実際のところ、現代民法理論では公民の身体権を放棄、もしくは譲渡することは無効だと明記されている。
次に、婚姻法の角度から見ても、代理出産がもたらした弊害も言うまでもないであろう。まず、親族関係を混乱させる恐れがある。子供の母親は誰かという問題が起こり、事実上数人の親を持つことになってしまうこともあり得る。遺伝的親(卵子と精子の提供者)、産みの親(妊娠した代理母)、養育親(子供の扶養者)、どちらが親としての義務を果たすべきなのか?親子関係はどうやって確立するのか?代理出産で生まれた子供の法的地位はどうなるのか?上記のような問題は往々にしてあるものである。
さらに、契約法の角度から見ても代理出産は違法だと思われる。代理出産の契約は合意に達してから締結したものであるが、その契約は法的効力がなく無効なものだと筆者は思っている。契約法に従い契約を作ったといっても、内容の面では現行の法律に違反する箇所があり、その上社会や公衆の利益を犯すため、契約が無効になる。実際のところ、代理出産は上記の憲法第37条に違反しているだけでなく、『民法通則』の第98条「公民の生命健康権」にも違反している。したがって、契約締結という方法で代理出産を合法化しようとすることは間違っていると考えている。


(1)代理出産に関する法律はこの論文が提出された時点より5年前ほど実施されており、この論文の本文にも「代理出産が法律によって禁止されている」と繰り返して強調している。しかし、ここでは「誰かに代わってもらって妊娠するという行為に対して法律的に禁止されていない」という前文と明らかに矛盾していることが記載されている。ただし、「代理出産」ではなく「誰かに代わってもらって妊娠するという行為」という表現が用いられている。
by technology0405 | 2015-02-18 10:21 | Countries | Comments(0)

ベトナムの婚姻家族法が改正され、親族間の代理出産が合法化される見通しとなった。2015年1月1日から施行される。
 
ベトナムでは妊娠出産するという女性の働きが非常に重視されている。たとえば、雇用される男女では、女性の方が定年が早く年金をもらえる年齢も若い。妊娠出産する女性に敬意を表するという考え方が背景にはある。妊娠中の母体と胎児は、血液を通して栄養や排泄物のやりとりをすることで、母子の間には排他的な絆が形成されるものと考えられている。このような血縁概念のもとで、卵子提供あるいは代理出産といった技術はどのように受容され、また、これらの技術により従来の血縁概念はどのような変容を被りつつあるのだろうか。

上述のように、ベトナムでは生物学的・生理学的プロセスを通した母子のつながりが重視されてきた一方で、遺伝子やDNAに関する知識は庶民層にはほとんど理解されていない。このため、卵子提供に際し、卵子ドナーの役割や貢献は、実際よりも低く見積もられている。例えば、卵子ドナーは生まれてくる子どもに対し、2-3%の関与にすぎないと医師から教えられたと語る卵子ドナーもいた。他方、レシピエントの女性たちは、卵子提供を受けても子どもは妊娠出産した自分に「似る」と理解していた。また、そのように医師から教えられたというレシピエントの女性もいた。これらは、卵子提供をドナー・レシピエントの双方にとって受け入れやすくするための説明であると考えられ、ベトナムの血縁概念と親和性がある。
 
有償で卵子ドナーや代理母を斡旋する仲介業を営む女性は、次のような興味深い‘民俗生殖理論’を語ってくれた。「子どもへの貢献度は、夫の精子が70%、妊娠出産した女性が20%、卵子ドナーが10%」ここには、血縁に対する男性優位な考え方と、遺伝的つながりよりも生物学的なつながりが優位である考えが読み取れる。

他方、こうした血縁概念を前提としたとき、妊娠出産した女性が依頼者へ子どもを引き渡すというプロセスを含む代理出産はどのように理解されうるだろうか。元卵子ドナーに聞いた。「依頼者の妻の卵子を使って代理出産をした場合でも、自分が妊娠出産したのだから、子どもは渡さない。」

さらに、経済的困窮のため、代理母になりたいという女性に遺伝的繋がりと生物学的つながりについて聞いた。すると、彼女は「代理出産は、自分の卵子でも他人の卵子でもいいが、やったことがないのでその違いがよくわからない」といい、その後、「子どもと別れるのは悲しい」と子どもを依頼者に渡す場面を想像して泣き出す場面が見られた。遺伝的つながりの意味は理解されておらず、また、妊娠出産が女性と子どもを分ちがたく結びつけるという考え方が明瞭に伺えた。

このような血縁概念のもとで代理出産を行う場合、代理母と依頼者妻の間の感情的負荷や緊張は高くなるのではないかと推測される。ベトナムでは簡便で安価な人工授精型の代理出産もかなりの数が行われているが、遺伝的つながりに対する認知が進めば、こうした実践にどのような変容がもたらされうるか、興味深い。

ベトナムで親族間の代理出産が合法化されようとしている背景には、不妊に対するスティグマが極めて強いことがあげられる。不妊へのスティグマは、産む女性への崇敬と表裏一体のものである。不妊カップルは、ベトナム社会で居場所を見つけることが難しい。こうした不妊カップルを救済するという目的があるだろう。

ベトナムで親族間の代理出産が合法化されるとき、いくつかの問題が懸念される。一つは、母子間の生物学的つながりを重視する血縁概念によって、依頼女性と代理母の間に強い葛藤が生じる可能性があることである。たとえ依頼女性の卵子を使用していたとしても、依頼母は、自分で産んでいないことに対し、子どもとの絆を感じることができず、また後ろめたさを感じるかもしれない。他方、代理母も子どもを手放すことによって、生涯、消し去ることができない罪悪感を覚えることになるかもしれない。

だが、ベトナムでは親族間の助け合いの精神が発達していることから、代理母候補者を親族から調達することが容易であるというメリットがある。したがって、親族間の利他精神によってこうした葛藤は乗り越えられていく可能性もある。他面、代理母が親族間に限定されていることによって、自由な意思決定が阻害される懸念もある。今後、社会や個人の意識が変容していけば、親族間に代理出産を押し付けるような行為は、当事者によって抑圧と感じられる事態も生じうる。

ベトナム政府の規定では、依頼者の精子と卵子を使用することとされており、代理母と子どもとの遺伝的つながりが切断されているなど、一定の配慮がなされている。現時点ではその意味は代理母に十分に理解されるかどうか心もとないが、今後、遺伝的知識が普及していけば、依頼者と代理母に生じうる葛藤が緩和される可能性がある。

遺伝的「母」と生物学的「母」の分離は、従来の血縁概念と様々な矛盾や葛藤を孕む事が予想されるが、親族間の利他精神の発動によって、そうした問題が乗り越えられていくことになるのかどうか、興味深い。


ライチの収穫
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by technology0405 | 2014-06-27 10:28 | Countries | Comments(0)

韓国生命倫理法

韓国政府は保健福祉省が作成した「生命倫理及び安全に関する法律」(生命倫理法)を2003年に国会で採択し、2005年から施行した。これは、生命倫理に配慮しながら国内の生命工学や生命科学の発展を促進することを目的とした法律であった。生命倫理法に従い、ソウルに国家生命倫理審議委員会が設立された。生命倫理法はヒト胚研究や体外受精を規制する韓国最初の法律で、生命倫理政策において最優先される国家法である。

イギリスでクローン羊ドリーが誕生してから2年後の1999年、ソウル国立大学の黄禹錫(ファン・ウソク)教授がクローン牛チニを誕生させた。韓国は哺乳類のクローンを作成した5番目の国となり、黄教授の業績は政府の関心を引き付けたが、同時にチニの誕生は、国内の多くの科学者、生命倫学者、非政府組織の間に倫理的懸念を引き起こした。ヒトクローンの作成を懸念した団体が、生命倫理諮問委員会の設置を要求した。2003年までに黄教授は、動物のクローン作成から幹細胞を目的としたヒトクローン胚の作成に研究をシフトしていた。当時の韓国には、医療過誤に適用される法律はいくつか存在したが、ヒトES細胞研究に適用される法律はなかった。黄教授の研究を受け、2つの官庁がES細胞研究を規制する生命倫理法の作成に動いた。科学技術省と保健福祉省である。

生命工学と生命倫理に関連する現行の規制をもとにして、生命倫理法が作られた。その現行規制の一つが、生命工学研究の発展を目的とする生命工学育成法(1983年制定、1995年と2003年に改正)である。生命倫理法は1994年の金泳三政権下での「バイオテク2000」と呼ばれる国家研究開発計画に対応する側面も合わせ持っている。

2000年、韓国の科学技術省は、生命倫理法を起草するため生命倫理諮問委員会を設置した。バイオ技術、医療分野から科学者10人と、哲学、社会科学、宗教学、非政府組織から10人がメンバーとして選ばれた。諮問委員会は、生殖型クローニングも治療型クローニングも禁止し、不妊治療で生じた余剰胚を使った幹細胞研究を認めるという内容の法律を提案した。リベラル派も保守派もこの法案を承認せず、法案は破棄された。

2002年5月に科学技術省が「クローン人間禁止及び幹細胞研究等に関する法案」を発表した。この法案はバイオテクノロジー研究に焦点を当てたものだった。その同時期に、保健福祉省が生命倫理に焦点を当てた「生命倫理法案」を発表した。2002年7月、保健福祉省は科学技術省の法案を取り入れた「生命倫理及び安全に関する法律」を作成した。いくつかの非政府組織がこの保健福祉省の法案に、種間交雑・ヒト胚クローニングの禁止条項や、監視を国家レベルに引き上げるなどの修正を加えた。その後1年かけて韓国政府は生命倫理法案に手を加え、2003年10月に国会に提出した。

議論開始から3年後の2003年12月29日、生命倫理法は国会を通過し、2005年1月1日から施行。法律に従い国家生命倫理審議委員会が設置された。国内の幹細胞研究を規制する主要機関は3機関存在する。生命倫理審議委員会と、ヒト胚研究に承認を与える保健福祉省、幹細胞の取り扱いに関するガイドラインを設定するソウル国立大学の世界幹細胞ハブ(World Stem Cell Hub;WSCH)である。生命倫理審議委員会は、生命倫理法や生命倫理政策に国家レベルで取り組むメイン組織であるが、科学研究規制に携わる関係機関に対し直接の権限は有していない。

生命倫理法によって、胚、生命工学、体細胞核移植(SCNT)といった単語に明確な法的定義を与えられた。生命倫理法はヒトクローニングの禁止、特殊な状況を除いたSCNTによるクローニングの禁止を定め、研究におけるヒト胚の取り扱い基準を設けている。また、国内すべての研究機関と大学に対し、遺伝子・幹細胞・胚に関する研究領域を規制するための機関生命倫理審議委員会を設置することを義務付けている。
*法律の全文(旧版)については「生命倫理及び安全に関する法律―人クローン胚研究の限定的容認―」(白井京、外国の立法223、2005)を参照→ http://www.ndl.go.jp/jp/data/publication/legis/223/022310.pdf

生命倫理法は、幹細胞研究の条項に修正を加えるために、2005年から2009年の間に5回改訂されている。これらの修正には、2005年の黄事件が大きく関わっている。当時ソウル国立大学の教授であった生物学者の黄禹錫(ファン・ウソク)氏が、自身の研究チームの女性研究員に卵子の提供を強要したことが2005年に発覚した。このスキャンダルが、卵子提供の規制強化を目的とした生命倫理法の改正につながった。2005年の黄事件から2009年まで、生命倫理審議委員会はヒトES細胞を使った実験を一切承認しなかった。
2013年現在まで、韓国の生命倫理界では、この生命倫理法が一次基準であり続けている。

South Korea's Bioethics and Biosafety Act (2005)
by Clay, Anne Safiya
Embryo Project Encyclopedia (2013-03-15). ISSN: 1940-5030 http://embryo.asu.edu/handle/10776/4217

ネット愛国主義の胚4――日韓の不幸な「うり二つ」
阿部重夫
[FACTA Online, 2006年01月06日]

動物性集合胚に関する海外規制状況調査(中間報告)
内閣府 科学技術政策
第2回生命倫理懇談会 議事次第 平成25年2月7日 配布資料

【韓国】 生命倫理及び安全に関する法律の全面改正
海外立法情報課・藤原 夏人
外国の立法 (2012.8) 国立国会図書館調査及び立法考査局

생명윤리 및 안전에 관한 법률 (Bioethics and Biosafety ACT)
2013.2.2施行
大統領令第24329号11250号


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by technology0405 | 2014-01-21 16:37 | Countries | Comments(0)

"Cracked Open"

Cracked Open: Liberty, Fertility, and the Pursuit of High-Tech Babies

Miriam Zoll / Interlink Pub Group Inc


Our Bodies OurselvesのメンバーであるMiriam Zoll氏が書いた、自らの不妊治療に関する本。生殖補助医療技術に関する問題を提起している。

“Cracked Open”: New Book Looks at Fertility and Reproductive Technology
[Our Bodies Ourselves, April 30, 2013]

CRACKED OPEN: Liberty, Fertility and the Pursuit of High Tech Babies
Miriam Zoll

Book Review: ‘Cracked Open: Liberty, Fertility, and the Pursuit of High-Tech Babies’
by Eleanor J. Bader
[RH Reality Check, July 23, 2013]
by technology0405 | 2014-01-06 16:59 | Book | Comments(0)

PSREI倫理ガイドライン

Philippine Society of Reproductive Endocrinology and Infertility, Inc. (PSREI) 2011
"Guidelines on the Ethics and Practice of Assisted Reproductive Technology and Intrauterine Insemination"
October, 2011

(省略)

7条 定義およびART倫理
ARTの定義
ヒトの卵子、精子、胚の取り扱いが付随する、妊娠を目的とした治療行為。IVF(体外受精)、ICSI(顕微授精)は含むが、人工授精や薬物療法(排卵誘発)は含まない。

(省略)

8条 ARTの利用が認められる患者 /ARTの臨床的適応
ART/ IVFの利用が認められる者
1.夫と妻両方から書面でのインフォームド・コンセントが得られている婚姻カップル
2.ART / IVFの適応条件を満たすすべての年齢の女性。ただし新鮮胚移植をすでに5回以上経験した者は除く(凍結胚移植に関しては制限なし)。40歳以上の女性は、その年齢層の成功率が低く、異常児のリスクが高まる点について、適切なカウンセリングを受けなくてはならない。

9条 ART / IVFによって生まれた子どもの福祉
ARTによって生まれた子どもの福祉が損なわれてはならない。このことは、ARTを実施する前からすべてのカップルに対し確認しておく。また、ARTで生まれた子どもは、自分がARTで生まれた事実を知る権利がある。情報の公開は親の責任とし、分別のつく年齢に達した子供に親が知らせる。

10条 生命の始まり
人の生命は、精子と卵子が結合し受精卵を形成した受精の瞬間から始まる。
* 受精卵とは2前核胚を指す。厳密にいうと、受精後14日以内を前胚(pre-embryo)と呼び、原始線条あるいは胚軸の出現後を胚 (embryo)と呼ぶ。これは、原始線条の出現後は双生児への分離の可能性がなくなり、胚が一人の人間になることが確実になるからである。

受精卵、前胚、胚の道徳的地位
受精卵、前胚、胚はすでに一個の人間とみなされ、成人と同様に完全な道徳的保護を受ける資格がある。

11条 凍結保存
凍結保存および凍結保存施設
様々な不妊治療において、凍結保存は一般に認められた効果的な補助技術である。最近の数々の調査が、凍結保存の効果と安全性を立証してきた。凍結保存施設は、どのARTプログラムにおいても以下の理由で必要だと考えられる。
1.多胎妊娠の可能性を減らす
2.治療費の負担を減らす
3.治療サイクル数が増えることで妊娠率が上がる

胚の凍結保存
ART治療を受けるカップルは、後の使用のために余剰胚を凍結保存することにあらかじめ同意しなければならない。カップルが余剰胚の凍結保存に同意しない場合、卵胞刺激は最小限にとどめ、作成した胚は新鮮サイクルにおいて移植する。
* 胚はヒトになる可能性を持っているため、尊重・保護されるべきである。

精子・卵子の凍結保存
精子・卵子の凍結保存は、将来の胚の質を守るため、国内外の標準的ガイドラインに従わなければならない。特殊な状況下にある独身者が、将来結婚した時に使用できるよう配偶子の保存を希望することを認める。
* 癌患者には、妊孕性温存と将来的妊娠のため、凍結保存という選択肢を治療前に知らせるべきである。癌患者に対し、生まれてくる子どもの福祉を理由に生殖補助の提供を拒否してはならない。未成年の癌患者が配偶子保存に同意し、その介入が子供の純便益を高める可能性が高い場合は、親による子どもの妊孕性温存のための行為を認める。患者の死その他の偶発的出来事が起きた場合の凍結配偶子の処分に関しては、詳細な取り決めを設けておく。

凍結配偶子・凍結胚の処分
ART治療を開始する前に、すべてのカップルから、以下の点に関して、書面による合意を得ておく。
1.配偶子/ 胚の保存期間
2.無能力状態、別居・婚姻無効・離婚、死亡などが夫婦に起きた場合の配偶子/ 胚の後見人
3.無能力状態、別居・婚姻無効・離婚、死亡などが夫婦に起きた場合の配偶子/ 胚の処分

12条 第三者の関わる生殖補助医療
配偶子提供、胚提供
提供された卵子、精子、胚の使用はいかなる不妊治療においても道徳的に認められない。

代理出産
不妊カップルのために第三者が妊娠する代理出産は、フィリピンでは認められない行為である。代理出産は、未解決の道徳的・法的問題をはらんでいる。

13条 移植胚の個数と減数手術
移植胚の個数
品胎以上の多胎妊娠の潜在的リスクを考慮し、患者に移植する胚は3個までとする。しかし、以下の条件のいずれかに当てはまる場合は、3個を超えて移植してもよい。
a. 妊娠した胎児全てを、NIC施設を有する病院で出産できることが確実である場合
b. 患者が少なくとも2回以上IVFで失敗している場合
c. 女性患者の年齢が35歳より上である場合
d. カップルが余剰胚の凍結保存を希望しない場合

減数手術
品胎以上の多胎妊娠における減数手術は容認できない。慎重な卵巣刺激と、移植胚の個数を減らすことで、多胎妊娠を予防することが強く推奨される。

14条 着床前遺伝子診断(PGD)
性選択目的や、異常児を避けるために特定の遺伝病を突き止める目的で実施されるPGDは、配偶子に対しても胚に対しても認められない。

15条 前胚/胚研究
前胚および胚の研究
国民の間で一般的な宗教的信念を考慮すると、現時点において、前胚および胚研究がフィリピンで実施される余地はない。

16条 HIV陽性患者に対するART治療
HIVは深刻だが管理可能な慢性疾患なので、遺伝的につながりのある子供を持ちたいという患者が出てくる可能性もある。リスクを減少させるための療法(抗レトロウイルス療法、帝王切開分娩、授乳しないなど)をカップルが実践するなら、技術的・経済的に対応能力を持つ不妊治療クリニックが、そうしたケースを扱ってもよい。 

17条 ART治療の無効性
医師が患者のベネフィットとリスクを評価し、患者に成功率の低さを十分に伝えていれば、無効あるいは予後不良が予測されるケースでも、治療の実施が認められる。医師が無効あるいは予後不良と判断すれば、その治療法の選択を拒否しても構わない。

18条 特別な場合
上記の規定のいずれかに抵触するような場合、あるいはどの規定にも当てはまらないような場合には、そのART施設を監督する倫理委員会に対し、正式な判断を求めることができる。その場合、判断要請に対する評価や承認は、問題となっている治療が実施される前に完了していなければならない。

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by technology0405 | 2013-12-02 16:57 | Countries | Comments(0)

「Examining the Exploitation Argument of Commercial Surrogacy with Evidence from India」
By Sheela Saravanan

2009-10年、インド西部にある代理母ハウス付きのクリニックで、代理母13人、依頼親4人、クリニックの医師2人に対し、半構造化面接を実施。

代理出産における活動のほとんどは、依頼親の関心や希望に合わせられていることが分かった。医療提供者は、代理母にルールを守らせ、依頼親と代理母の間に安全距離を保つために重要な役割を果たす。代理母の活動の大部分は管理され、代理母に選択肢はほとんど提供されない。代理母がこうした扱いに甘んじるのは、貧困のためだけでなく、医師や依頼親に比べて社会経済的に不利な地位にあるからである。構造的不平等が代理母の無力さ、従順さにつながっている。また、代理出産のプロセスは医師の手に委ねるしかないという事実も、代理母が搾取的な扱いを受け入れる一要因である。依頼親もまた、過剰請求や誤解を与える情報、安請け合いなどにより搾取を受けている。構造的不平等と代理母の貧困を利用した商業的代理出産への不当勧誘は、有害搾取にあたる。

代理母自身がインドの代理出産システムを変えたいと提案しているという事実は、非常に重要である。単なる報酬の値上げだけではなく、意思決定の拡大と医学的介入の減少を代理母は求めている。

出産後に子供を世話した代理母は特に、子供の引渡しにおいて精神的動揺を経験するのは明らかであるが、これは心理分析によって立証する必要があろう。また、妊娠期を代理母ハウスで過ごした者と自宅で過ごした者との心理学的状況の比較も、福祉の議論のために必要である。クリニックの仮説によると、代理出産した女性は以前に比べて自信がつき、家庭でのジェンダーロールがプラスに変化するという。代理出産の前と後で家庭でのジェンダーロールや関係性が変化するかどうか、さらなる調査が待たれる。現在分かっている実証的事実に基づきART法案を見直すことも重要である。

現在、医療提供者が代理出産エージェントの役割を担っている場合が多く、結果的に意思決定やルール規定において支配的な立場にある。クリニックが営利機関であり代理母と依頼親を搾取している以上、エージェントとしての役割をクリニックから引き離し、その権限を小さくする必要がある。こうした有害搾取の存在が公知となるにつれ、外国人依頼親の社会的責任という問題も考えなくてはならない。

Philosophy, Ethics, and Humanities in Medicine

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by technology0405 | 2012-12-11 16:57 | Countries | Comments(0)

「 Ethical implications of exploitation in commercial surrogacy in India」
By Sheela Saravanan

商業的代理出産のもつ主要な倫理的問題は、商品化、福祉の侵害、搾取である。本論文の目的は、この搾取の実態を明らかにすることである。
「脅し」というのは代理母に対する最も分かりやすい強制である。しかし「他の選択肢がない」こともまたある種の強制といえる。インド代理出産はこれに当てはまるケースが多い。単なるもうけ話の提案は強制にあたらないという者もいるが、多額の金をちらつかせるのは「不当勧誘」であり、強制的といえるだろう。
搾取だという批判の根拠には、インフォームドコンセントの問題もある。代理母は、代理出産過程で起こる負担や報酬、子供を引き渡す時の心理的負担や医学的介入の程度について詳しい情報を与えられていない。

搾取の形態には2タイプある。「有害搾取」と「互恵的搾取」である。「有害搾取」は、仲介人や依頼親の都合に合わせるために、代理母に大きな犠牲を払わせたり容認し難いほど過酷な状況に置いたりする搾取を指す。「互恵的」搾取では、代理出産によって全員が利益を得るという主張がなされる。しかし、その利益は依頼親の方が有利になるように分配されている。代理出産は互恵的契約であり、互恵的搾取があるなら報酬を増やせばよい、という主張がある。
しかし、インドの代理母が、自発的インフォームドチョイスを行使できているかどうかは疑わしい。インドの代理出産では、関係者の間にかなりの経済格差があるからこそ、搾取への懸念がより大きいのである。

アメリカ、イギリス、カナダなど、代理出産が許されている他の国では、代理母は、自分が希望する代理出産契約の種類によって依頼親を選べるなど、自律性を保持している。彼らは依頼カップルの年齢や家族関係、興味関心、子供の数などを基準に検討することができる。同様に、依頼親も代理母を選ぶチャンスを与えられる。こうした国での契約は「公開式」か「非公開式」を選ぶことができる。公開式の契約なら、依頼親と代理母が互いの身元を知り、後後まで連絡を取り続けることもある。「非公開式」ならば互いに匿名のままで契約を結ぶ。アメリカとイギリスで実施された調査では、代理母の動機は、他人に自分を認められたい、自尊心を得たい、妊娠が楽しい、依頼母への同情、過去に中絶や子供を養子に出した経験があり償いをしたい、などであった。経済的な理由を上げる者もいたが、調査された代理母のほとんどが利他的であった。また、子供の引渡しも双方の希望によってなされていた。イギリスのある調査では、ほとんどの代理母が子供の引渡しを「嬉しい出来事」だったと述べている。

インドの代理出産に関する実証的研究は、社会学的・人類学的な観点から語りに焦点を当てたものが主流で、倫理的問題に対する答えはほとんど出されていない。倫理的な観点から商業的代理出産の搾取を調査することが重要である。

<方法>
2009-2010年、代理母ハウスを持たないクリニックで、代理母3人(2人が妊娠中、1人は前年に出産)、アメリカ人カップル1組、医師1人に半構造化面接を実施した。他にもインド系アメリカ人カップル1組と話したが、調査対象には含んでいない。
クリニックの情報、代理母と依頼親の社会経済的背景、動機、募集方法、契約内容、金銭の流れについて詳細な調査を行なった。

<結論および倫理的考察>
クリニックの全ての部屋にはカメラが取り付けられ、医療提供者による制御因子が代理母と依頼親に働いていた。カメラは、代理母と依頼親が規定のルールに従っているかどうかクリニックが監視するためのものである。自分のことや金銭的なことを外部に言わないよう指示を受けている代理母にとっては、こうした方法が恐怖因子(fear factor)となる。カメラがあることで、代理母と依頼親はクリニックに対する自分の意見を自由に発言できなくなる。

依頼者と代理母の社会経済的格差は、本調査では非常に大きかった。貧しい女性は、厳しい条件を受け入れやすく、子供を引き渡しやすいという点で、クリニックやエージェンシーにとっては理想の代理母であり、人気が高かった。攻撃的な女性は医学的理由で丁重に断られていた。代理母に課されるルールには、次のようなものがある。現在の仕事を辞め、家事を一切せず家にいること。子供の引渡し方や時期について意見を言うことはできない。クリニックが必要と判断する全ての医学的介入に対し書面で同意すること。依頼親や外部者に対し、自分のことや報酬について話題にしてはならない。こうした条件を呑むにあたり、医療保険や法的・精神的支援は一切ない。従ってこれは、報酬を増やすだけでは解決できない種類の搾取といえる。代理出産に関してより大きな権利と選択を与えられるべきである。

代理母になるためには代理出産の仲介人、医師、そして依頼親という3段階の承認を得なくてはならない。対照的に、依頼親になるための条件は緩く、不妊でない者も代理出産を依頼できる。依頼親もまた(必要のない)帝王切開などを理由に過剰請求されたり、代理母への報酬をピンハネされたりといった搾取を受けている。本調査の依頼親の一人も、この金銭的搾取に気づき、自分の代理母を説得してクリニックから引き抜いている。しかしこのケースでは、代理母の依属が医療提供者から依頼親に移っただけだった。依頼親は代理母に追加家賃を払い、住む場所を変えさせた。さらに多額の金と引き換えに3胎全てを出産するよう彼女を説得し、自分たちに都合の良いクリニックへの転院を強制している。同時に、元のクリニックは自分たちの利益のために彼女に残るよう脅迫していた。結果的にクリニックを移ったことで代理母は最初のクリニックとの契約額よりも多くの金を得たが、依頼親が約束の金を全額支払わなかったことで、代理母は引き続き無力感を味わった。この転院による損害は他にもある。代理母は元のクリニックに対し、2回目の代理出産希望や仲介人になりたいという希望を出すことができなくなった。また、クリニックは彼女の産後の医療費を払うことも拒否した。

代理母たちは次のように提案する。国内の代理出産クリニックが代理母に支払う報酬について、クリニックが受け取る総額の何%を代理母に払うのか規則化するべきだという提案である。双子が生まれた場合にクリニックが倍の金額を受け取るのなら、代理母も倍の報酬を受けるべきだという。また、月々の支払いの増額や、仕事の逸失利益の補償や交通費の支払いも求めている。産後、仕事ができるようになるまでの数ヶ月間の支払いの継続も希望する。
また代理母たちは、帝王切開などの医学的介入を減らすことや、減数手術をしなくてもいいよう複数胚の移植を避けることを望んでいる。医療保険はもちろん法的・精神的支援を受けられるようにすべきだとも提案している。依頼親の選択や報酬の受け取り方、子供の引渡し、依頼親との関わり方について、選択肢を与えられるべきだという考えを持つ。

今回調査された対象人数は少ないものの、倫理的観点から立ち現れる商業的代理出産の問題点――社会経済的格差の下での選択、医療提供者の役割、依頼親の社会的責任の問題――が導き出されたことは重要である。商業的代理出産を合理的選択、互恵的契約として正当化する議論は、その背景にある社会的状況を無視している。

Indian Journal of Medical Ethics

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by technology0405 | 2012-12-11 14:51 | Countries | Comments(0)

代理母のカースト差別

肌が白く、高位カーストに属する女性が代理母になると、浅黒い肌の低カースト女性より10万ルピー(約15万円)も多く支払われていることが調査で分かった。インドには、西洋人、インド人を問わず、世界中から子供のいないカップルがやってくる。しかし研究者によると、代理母と胎児の間には遺伝物質の共有が一切ないにもかかわらず、代理母はカーストや肌の色、見た目によって差別されているという。

SAMAが2011年12月から2012年4月にかけて、デリーとパンジャブで、代理母・エージェンシー・医師に対し、深層インタビューを実施した。すると、「健康で、容姿の良い、色白で高カーストの」代理母は、報酬が高く、産後に依頼親から受ける待遇も良いことが明らかになった。この条件は、インドの悪名高い嫁探しの新聞広告と同じである。

この要求はインド国内およびNRIに根強く残るカースト差別を映し出したものだと研究者はみている。
「依頼親は自分たちと同じカースト・宗教の代理母を望む。それがどうして重要なのかは言わないが、10万ルピーの追加料金を喜んで払う。これはカースト差別、宗教差別である。」とSAMAのプログラムコーディネーターDeepaは言う。

Deepaによると、代理母が自分の卵子で妊娠することはまれで、子供のDNAに寄与することはないにも関わらず、依頼親は、代理母の「肉体と血」が子供の体内での成長に関係すると考える。カースト意識の強いヒンズー教徒は、これを「カースト汚染」と見なす。

インドで最も成功している不妊クリニックの院長Naina Patel医師は、依頼者から特定のカーストや宗教の代理母に対する希望を受ける場合もあるというが、代理母の素性が子供の外見に影響しないことを説明すると、そうした依頼者も、健康な女性なら誰でもよいと考えるようになるという。
「依頼親が欲しいのは健康な子供だ。だから健康な代理母を望む。ヒンズー教徒の代理母がいればそうして欲しいがいなければ誰でもよい、と言う人が5%程度いる。」

Fair-skinned Indian women paid £1,000 extra to be surrogates
by Dean Nelson
[The Telegraph, 25 Oct 2012]

‘Beautiful and fair’ preferred among surrogate mothers too
by Aarti Dhar
[The Hindu, 25 Oct 2012]

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by technology0405 | 2012-10-29 15:51 | Countries | Comments(0)

HOW TO ADDRESS THE ETHICS OF REPRODUCTIVE TRAVEL TO DEVELOPING COUNTRIES: A COMPARISON OF NATIONAL SELF-SUFFICIENCY AND REGULATED MARKET APPROACHES
G.K.D. CROZIER
Developing World Bioethics, Volume 12, Issue 1, pages 45–54, April 2012

「リプロダクティブ・トラベル」とは、人々が生殖医療関係のモノやサービスの購入を目的として国外へ渡航する現象を指す。本論文ではその中でも特にfemale reproductive resources (FRR、女性資源)――特に卵子、代理出産サービス、あるいはその両方――の購入を伴うリプロダクティブ・トラベルに焦点を当てる。
 FRR購入を目的とするリプロダクティブ・トラベルへの対処として、2つの対照的な戦略を提案する。自給自足型モデルと、統制市場モデルである。
 FRR購入を伴う渡航治療にはメリットとデメリットがある。メリットとしては、患者にとって生殖の自律性が向上する点、FRR提供者にとっては経済的収入と、場合によっては個人的な満足感が得られる点が挙げられる。デメリットとして、渡航治療に伴う危険性が存在する。提供者は強制や経済的搾取、身体的被害などを受ける恐れがある。

自給自足型モデル
このモデルは、国内のFRRへのアクセスを向上させることだけを目指すのではなく、そうすることでFRRの越境貿易とそのリスクを出来るだけなくすことを目的としたモデルである。成功を収めている他のヒト由来物質(human biological materials: HBM)の自給自足政策――献血など――と同様の考え方を土台としている。自給自足型モデル採用の理論的根拠は、国内供給によりFRRの安全性・信頼性が確保されやすい点、FRR提供者へのケアがより推進されるだろう点にある。しかし国によっては卵子提供や代理出産を自国で提供したくないと考えるところもあるなど、第三者生殖補助医療の課題がある。そもそも献血はFRRと比べ(a)献血運動の歴史が全国的運動として定着していること、(b)血液の供給が簡単で早い処置で済むこと、(c)血液の補給は人命に関わる点、が異なる。FRR提供者にとっても、チャンスを奪われることになる。

統制市場型モデル
自給自足型モデルとは逆に、このモデルは、「統制」をかけながらリプロダクティブ・トラベルを推進していこうという考え方である。最大の懸念は(1)FRR提供者が他人の目的を達成するための手段として悪用されている、(2)FRR提供者への搾取である、あるいは産業活動への不当な参加強制である、(3)海外のFRR市場が、生殖ケア領域で必要とされる他の物(公平性、効率性、安全性など)を弱体化させる、という点である。
(1)政府が国境を超えた生殖市場を推進したからといって、必ずしもFRR提供者にとって不当な状況が深刻化するとはいえない。貧しい女性の福祉を考慮した市場政策ならば、カント的な意味では、FRR提供者は他人の目的だけでなく自分の目的も達成できる。
(2)FRR提供者への報酬は利益の衡平な分配を促進するだけでなく、搾取的な取引であっても提供者の暮らし向きが良くなるのであれば、正当と認めても構わない。
(3)FRR市場を統制しながら推進する一番の正当性は、最も貧しいグループ――発展途上国のFRR提供者――が利益を得られる点である。
しかしこのモデルを採用する際には、適切な統制についてさらに注意深く模索される必要がある。

2つのモデルの合意点
 自給自足型モデルも統制市場型モデルも、FRR取引を伴うリプロダクティブ・トラベルが道徳的に実施されるためには規制が必要であるという点で一致している。最も重要なのは、生殖産業に現在関わっている人々、およびこの先関わる人々――まずはFRR提供者、渡航者、こうしたサービスによって生まれる子供たち――を保護するために政策が展開されることである。従って、たとえ2つのモデルが、FRRの国際市場を促進すべきか否かという議論で対立したとしても、こうした人々に対する保護政策に関する短期的な措置については一致する余地がある。
 国民の保護、医療の提供、基本的人権の保障は政府の責任であり、政府は、生殖産業を調査・監督し、提供者のリスクを出来るだけ軽減するような法律を制定し、女性に生活向上の機会を与えるよう努めるべきである。搾取をなくし、不当契約から関係者を保護し、FRR提供者の社会的スティグマを軽くする措置が必要である。国際的なレベルではFRR取引の透明性、質、安全性を高めることを目指し、FRRの提供者と受給者へのケアや同意についての最低基準を示したガイドラインが、国境を超えて実態と結果を監視・把握するシステムと共に導入されるべきである。
 FRRの提供者や受給者への情報提供だけでなく、産業的悪要素を軽減・排除することを目的とし、FRRサービスを提供するクリニックの国際認定制度を確立する必要もある。こうした制度があれば、患者は認可クリニックを探すことができ、国は不認可クリニックへの渡航を禁止したり罰したりすることができる。ハーグ国際養子縁組条約のような、FRR取引に関する国際間の同意を確立することが、社会的弱者の福祉の保護につながる。

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by technology0405 | 2012-10-18 17:02 | Materials | Comments(0)

イギリスのRoyal College of Obstetricians and Gynaecologists(RCOG)が6月上旬、「生殖補助医療は、母体と分娩に悪影響を及ぼすリスクがわずかに高い」というプレスリリースを出した。先進国では4%の子供が生殖補助医療で生まれる。
生殖補助医療による多胎妊娠のリスクはよく知られているが、RCOGは「単胎妊娠であっても、高血圧、糖尿病、未熟児、低出生体重児、周産期死亡率が――年齢、経産回数、胎児性別を考慮に入れた上でも――高い。」「さらに、最近の研究では、生殖補助医療と先天的奇形率の関連性も示されている。」と警告している。

IVFのリスクに関するオーストラリアの研究で、IVF治療を受けた女性は、IVFを伴わない不妊治療を受けた同年齢の女性より乳がんにかかる率が56%高いという結果が、20-40歳の21,025人の患者を対象とした調査で分かったという。これらは、生殖補助医療の危険性を明らかにした多くの研究のうち、最新のものを挙げたに過ぎない。

オーストラリアではICSIで生まれた子供のリスクを指摘する研究も出されている。
300,000人の子供を対象とした調査で、通常の妊娠に対してICSIで生まれた子供は障害を持つリスクが高いという報告があった。アデレード大学のRobson Instituteによると、通常の妊娠で生まれた子供の出生異常率は5.8%、IVFでは7.2%、ICSIで9.9%だった。イギリスでは不妊治療の約半数でICSIが実施されている。

薬による過剰排卵の問題もある。2011年10月23日のSunday Timesには、一回の採卵で最大限の結果を得ようとするクリニックの姿勢が女性を搾取している恐れがあると書かれている。最新のデータでは、一人の女性から85個、別の女性から80個、他の3人の女性から一人70-72個の卵子が採られていたという。2008年クリニック5施設に実施した調査では、一回の採卵で一人から50以上の卵子を採取していた。

健康面のリスクだけではない。St. George’s Hospital Medical Schoolの産婦人科Sir Sabaratnam Arulkumaranは「不妊の問題が、カップルの生活の質(クオリティ・オブ・ライフ、QOL)に大きな影響を持ちうる」と語った。

イギリスの団体Society for the Protection of Unborn Children (SPUC)の広報取締役Anthony Ozimic氏は、ルイーズ・ブラウンの母親レスリー・ブラウンの訃報を受け、次のようにコメントした。「これまで見過ごされてきたのは、IVFの過程で何百万もの胚が殺されてきたことである。質的管理といいながら本質的にそれは人間への虐待にあたる。」「もしIVFに費やされた何百万ポンドというお金が、効果的な倫理的代替案に投資されてきたなら、もっと大勢の子供が生まれていただろうに。」

カトリック教会の公教要理2375番には「不妊を減らすための研究は奨励されるべきである」とある。しかし2378番はこう付け加える。「子供とはつくられるものではなく、神からの贈り物である」。「子供が一個の財産とみなされてはならない」と公教要理は警告する。生殖補助医療には代償も付きまとうことを忘れてはならない。


RCOG Press release
[Royal College of Obstetricians and Gynaecologists 07/06/2012]

The Hidden Costs of Reproductive Technology
[ZENIT 2012-07-06]

Society for the Protection of Unborn Children (SPUC)

Five millionth IVF baby born
[Iona Institute 3rd July 2012]

In vitro fertilization and breast cancer: is there cause for concern? 
[Fertility and Sterility published online 28 May 2012]
by technology0405 | 2012-07-12 16:57 | Countries | Comments(0)
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