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ベトナムの妊産婦死亡率

2012年の世界人口デー(7月11日)に国連人口基金は「リプロダクティブ・ヘルスへのユニバーサルアクセス」というテーマを世界中に発信した。これを受け、ベトナムの妊産婦死亡率と小児死亡率が急速に減少していることを、保健省母子保健局の副局長Luu Thi Hong氏が公表した。しかし、地域によって著しい違いがあることも明らかになった。

出生10万件あたりの妊産婦死亡率は、1990年の233人から69人に減った。また1990年に0.44%だった国内の小児死亡率も、0.25%に下がっている。調査の結果、死亡の71.4%は山間部で起きており、山間部地域の死亡率は低地地域の3倍に達することが分かった。

出産の前後を通して母子医療ヘのアクセスが困難であることが、山間部の死亡率の高さにつながっているとHong氏は考えている。「これらの地域では、医療従事者のケアを全く受けないまま出産することが当たり前になっている。」と彼女は言う。

省病院や中央病院では、産科に精通した医師の割合が41.7%を占めるが、地域病院ではその割合は27.8%に下がる。また、貧困地区62ヶ所に設置してある診療所のうち、出産を扱うスタッフを持たないところが15%もあった。

訓練を受けた助産師を必要としている山村は12000ヶ所以上ある。しかし、Hong氏によると、2009年以降、研修コースを受けた助産師はベトナム全体でわずか1140人だという。「その上、村の助産師は医療スタッフとして認められておらず、彼女らを経済的に支援する政策もとられていない。」
村の助産師には、国家目標プログラムから月5万ドン(US$ 2.3)という少額の手当が出るだけである。

保健省は、現場に専門医を素早く投入する必要性をようやく認識し、産科および小児科の医師の育成に重点的にとりかかるという。まずは政府と議会に、国家目標プログラムを通じ、リプロダクティブ・ヘルスへの投資の増額を要請する。増え続ける母子サービス需要に応えるには、少なくとも年間1000億ドン(470万ドル)が必要だという。2008年から2012年、リプロダクティブ・ヘルスのために割かれた予算は年間わずか350億ドン(160万ドル)だった。

また保健省は、山間部や辺鄙な地域の人々に対し、妊娠中の健康管理に関する知識を知ってもらうため、小冊子の配布やマルチメディアの使用も考えている。適切な定期検診を受けなかったり、訓練を受けた医療スタッフの扶助なく出産したりすると、妊婦にどのようなリスクが起きうるか、ということなども伝えていく。

国連人口基金のベトナム支部代表Mandeep O'Brien氏は、妊産婦死亡と新生児死亡を防ぐためには、医療制度の強化が不可欠だと語った。助産術を持つ医療スタッフへの投資、緊急の合併症にも確実にアクセスできる制度の確立などが必要とされている。「これらの政策が包括的に実行されたなら、多くの命が救われるだけでなく、国家経済や社会的生産性も向上していくだろう。」と彼女は述べた。

Maternal mortality rate in Vietnam rapidly decreasing
[Inter Aksyon, July 11, 2012]

Vietnam achieving Millennium Development Goals on child mortality
David Smith
[FIGO 27th July 2012]

2012年 危機にある子どもたちのための募金
ワールドビジョンジャパンの募金案内

Maternal and child mortality rate still high
[VietnamPlus, 06/12/2012]

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by technology0405 | 2013-04-24 12:06 | Countries | Comments(0)

ベトナム司法省で、婚外交渉の罰金を現在の10万-50万ドンから500万ドン(約2.4万円)に引き上げる一方、同性結婚に対する罰金を撤廃する草案が作成された。この最新の草案は、2013年4月11日の報告会議で、司法省視察団がハ・フン・クオン(Ha Hung Cuong)司法省大臣に報告したものである。

報告によると、既に結婚している人間が別の人間と重婚したり、愛人と夫婦同然に暮らしたりした場合、250-500万ドン(約1.2-2.4万円)が科される。
相手が結婚していると知りながら、その相手と結婚したり同棲したりした独身の人間にも、同額の罰金が科される。

起草委員会が前回提出していた案では、罰金額は20万~100万ドン(約900~4600円)だったが、金額が低すぎるという意見が国民やメディアから多数寄せられたため今回の草案で大幅に引き上げたと、司法省の調査責任者Nguyen Thang Loi氏は説明した。営利目的の「結婚仲介業者」には1000万~3000万ドンの罰金が科される。

また、今回の草案では同性結婚に対する罰金が撤廃された。これについて司法次官Phan Quy Ty氏は「こうした禁止が現在の社会的情勢に適していないというだけ。ベトナムが同性同士の結婚を許可したという意味ではない。」「同性間結婚を認めるか認めないかは、さらなる調査と世論に基づいて決定されるべきだ。」と強調した。

Vietnam increases extramarital affair fine
[natunbarta.com 12 Apr, 2013]

不倫は罰金4600円 ベトナム
[今日のニュース]

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by technology0405 | 2013-04-23 16:55 | Countries | Comments(0)

ベトナム司法省は現在、2000年の家族婚姻法の改正を検討しているが、その過程で、代理出産が合法化される可能性も出てきている。司法省民事・経済部の部長Duong Dinh Hue氏は、2013年4月16日の話し合いで、「抜本的で包括的」な法改正を目指すと語ったという。

最高人民裁判所の副裁判長Tuong Duy Luong氏は、代理出産について、単なる法的問題ではなく、慎重に扱うべき社会的問題であると発言。Luong氏は、医学的理由によって妊娠できない女性が大勢いることを考えると、代理出産を認めるのが人道的であると考えている。「彼女たちは不当な扱いを受けている。支援しないのは残酷だ。」

保健省副大臣Nguyen Viet Tien氏は、代理出産のことを、不妊女性が母になる夢を叶える医学的な業績だと評価した。「母乳の出ない女性が他人に授乳を頼んでよいのなら、代理出産だって認めるべきだ。この2つは、出産の前か後かという点以外、ほぼ同じことだ。」とTien氏は言う。

司法省職員によると、ベトナムの代理出産の禁止の目的は、子供の人身売買の防止と、人口抑制政策の一環であるという。しかし、この禁止によって、多くの女性が子供を持つことができないままでいる。

最高人民検察院の次長検事Le Huu The氏は、どちらにせよ現実として代理出産サービスは提供されており、何か争いが起きた時に、禁止法のせいで政府は代理出産に関係する人々――特に子供――を保護することができないと説明した。

地元メディアは、ハノイやホーチミンで、不妊女性と貧しい女性の間で代理出産契約が交わされている事実を報じてきた。代理母は子宮だけを貸す場合が多いが、中には代理母が卵子も提供していたり、合意の上で夫婦の夫と性行為をしたりするケースもある。子供が生まれてから数ヶ月間代理母に授乳させる場合もある。授乳が伴うと、代理母は子供を手放すのがさらに辛くなる。
新法では代理母の卵子を使うことを禁じ、代理母が子供に関わるのは出産までに限る予定だという。

会議では、同性婚を合法化することや、国際結婚に関する規定を加えることについても議論された。Luong氏は、同性婚を通常の結婚と同列に認めたわけではないが、同性婚に対する処罰規定を廃止することには同意していると語った。

副首相Nguyen Xuan Phuc氏は、会議の席で、法律が現実に即したものでなくてはならないことを強調した上で「婚姻家族法は国民全員に影響する。それゆえ、法改正では全ての国民の意見を尊重する必要がある。」と語った。

Vietnam considers legalizing surrogacy for humanitarian purposes
[Thanh Nien News April 17, 2013]

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by technology0405 | 2013-04-23 15:59 | Countries | Comments(0)

個人クリニックによる斡旋
無認可の精子売買を斡旋する個人クリニックが増えている。こうした施設は、一見普通の家のようだが、中に入ると医療機器と診療待ちの人々がずらりと並んでいる。取材したクリニックで働くのは医師一人と看護婦一人のみ。経営者は公立病院Hanoi Maternity Hospitalにフルタイムで勤務する医師なので、クリニックは午前7-10時までしか開院しない。

「結婚して3年になるが、まだ子供ができない。」と患者の一人が言う。「周囲にここを勧められた。夫の精子が弱いという診断が出た。精子提供に1000万ドン(USD480)、さらに施設で人工授精するのに500万ドン(USD240)払った。友人がここで上手くいったので私も試してみることに決めた。あれから2週間たって、今は妊娠テスト待ち。妊娠していればよいと思う。」

そばにいた別の患者は「不妊治療をやっている病院は夫が嫌がって行けなかったので、このクリニックが我々の希望だ。医者に全て任せることができ、自分で取引しなくてもよい。成功率が30%だと聞いたので、提供精子の半分を使い、もっと子供が欲しくなった時のために残りをとっておいた。1か月前に人工授精したが、妊娠の兆候はまだ全くない。」と悲しげに言った。

インターネット上での精子売買
個人クリニックの斡旋を信用できず、精子売買のウェブサイトを訪れ、自分たちで精子を買うカップルも多い。ネット上の精子市場は急成長している。グーグルで検索すれば、ドナーの広告がいくらでもある。その多くは20-37歳の男性たちの投稿である。

背が高く健康で、質の良い精子を提供できるという広告もある。不妊カップルを助けたいので無償提供したいという、既婚男性からの利他的な申し出もある。こうした広告では、ドナーの容姿と健康について短い説明があり、取引は簡単で迅速、値引きにも応じるとある。これらすべてがワンクリックで済む。
ある夫婦は、病院の精子不足を不満に思う人が多いと聞き、インターネットで助けを求めることに決めた。「たった4日で何十通もの申し出があった。いかに自分が優れているか、という厚かましい自慢ばかりだった。」と夫は言う。

しばらく考えたのち、夫婦はKという若い男性と会うことにした。彼は23歳で、背が高く、学位があり独身である。Kの広告には「私は若いので、品物(精子)の状態も非常に良い。」とあり、1600万ドン(USD766)の値をつけている。ドナーになりたい理由として、Kは、付き合いの多いライフスタイルのせいで溜まった借金の支払いに金が必要だと説明した。もし双方が同意すれば、妻とKが夫婦のふりをして人工授精のために病院へ行くという。「それが非常に危険なことは分かっている。しかし5年も結婚していて子供ができない。子供はどうしても欲しい。2日後に病院に行くつもりだ。すべてが上手くいくと思う。」と夫婦は語った。

Black market in sperm donations booms in Vietnam
[dtinews.vn | May 17, 2012]

Help Sperm donor from Viet Nam
[SpermCentre.com, September 6th, 2011]
「Sperm donor group」の広告。ベトナムに400人の会員、とある。

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by technology0405 | 2013-04-23 11:26 | Countries | Comments(0)

ベトナムでは、無精子症の男性が子供を持つことができる精子形成法を利用し、20人以上の子供が生まれている。ハノイにあるMilitary Hospital103のEmbryo Technology Centerが導入したこの技術は、男性の精子細胞――これから精子になる細胞――を培養し、完全な機能を備えた精子を形成する技術である。得られた精子は、その後妻の卵子に注入し、受精させる。

センター長であるQuan Hoang Lam医師によると、2009年に最初の子供が生まれて以来、200組の夫婦が申し込み、生まれた子供は約20人、成功率は10%だという。費用は一回の培養+受精で4000-5000万ドン(US$2000-2500)、これは普通の体外受精に比べて1000万ドン($500)高い。

高額な費用と低い成功率にもかかわらず、精子提供ではなく自分の子供を持ちたいと、多くの人がこの技術を申し込むという。この病院の統計によると、無精子症の男性の50%の体内には、この技術が適用できる精子細胞がまだあるという。精子形成のための培養技術は、2001年トルコのテサリク(Tesarik)医師によって発表され、実用化に向けて研究が重ねられてきた。

センターは現在、精母細胞や精原細胞といった未発達段階の細胞から精子を培養する、幹細胞技術の研究も進めている。精子の形成は、精原細胞、一次精母細胞、二次精母細胞、精子細胞、精子という、5段階を踏む。今回使用された培養技術は、この第4段階の、運動性を持たない円形精子細胞を、鞭毛を持った精子に培養するもの。

しかし、未発達段階の細胞から精子を形成するとなると、通常4-6週間という長い機関が必要なため、精子の質を管理することはさらに難しいだろうと、Lam医師は言う。「質の悪い精子からは病気の子供が生まれる。しかし最大の懸念は、この技術で生まれた男の子自身が、無精子症になる危険性が非常に高いことだ。」

ベトナムは未熟卵子体外成熟培養(IVM)においても成功している数少ない国のひとつである。技術的にも非常に難しく、また倫理的な問題も伴うとされる体外での卵子培養・精子培養技術に対し、ベトナムは非常に積極的である。

20 babies born in Vietnam using spermatid culture technique
[TalkVietnam October 27, 2012]

Hanoi hospital incubates hope; no sperm bank needed
[Vietnews June 23, 2011]

ベトナムの人工受精、技術移転も
by Lao Dong
[VietnamGuide.com, 2009年12月07日]

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by technology0405 | 2013-04-19 15:14 | Countries | Comments(0)

超音波検査の乱用

The Commodification of Obstetric Ultrasound Scanning in Hanoi, Viet Nam
Gammeltoft T, Nguyen HT.
Reprod Health Matters. 2007 May;15(29):163-71.

ベトナムのリプロダクティブヘルスに関する国家ガイドラインは、妊娠中の定期的な超音波検査を推奨してはいない。最近の産科的超音波検査の急増は、医療制度を含めベトナム社会のあらゆる領域で進行しつつある商業化のコンテキストの中で説明すべきものである。多くの女性が妊娠中に――しばしば医師の勧めによって――必要以上の頻度で検査を受けていることが、本調査の結果明らかになった。そうした度重なる超音波検査に女性が執着するのは、胎児に何の異常もないという保証を得たいがためである。医師もこの新しい技術を好み、超音波検査によって、他の妊娠管理サービスでは提供できない情報を提供できていると信じている。

しかし、本調査では、妊娠管理における他の側面が無視されていることも分かった。シリアの調査でも似た状況が報告されている。ボツワナでは、超音波検査の出現により、医療従事者による病歴聴取と身体所見聴取が以前より雑になった。

産科的超音波検査の乱用は、フェミニスト研究者が何十年にもわたり抗議してきた妊娠・出産の医療管理の行き過ぎの例証として捉えられがちである。このフェミニストの批判自体は重要だが、医療技術を通じての女性の様々な経験や、女性が技術に惹きつけられ利用するようになるプロセスを見落とす恐れがある。レイナ・ラップ教授(ニューヨーク大学人類学部・フェミニズム医療人類学)はこう指摘する。「現代技術から最も恩恵を受けていそうな“我々”が、その技術の最も手厳しい批判者を標榜することこそ、現代フェミニスト思想における抜き難い皮肉である。」技術を一方的に批判するより、女性がなぜこうした技術に惹きつけられるのか、妊娠関連の技術を世界規模で拡大させている力は何なのか、ということを考察する方が有意義であろう。

妊婦管理の商品化――世界中で起きている超音波検査の乱用はその一例である――は、医療政策および医療財政というさらに広いコンテキストで捉えられるべきである。医療システムが商業化されると、政策方針ではなく市場原理が医療サービスの提供と利用のあり方を決定づけるので、薬や検査、その他の技術が乱用される危険が高まる。とりわけ、その技術提供で得られる経験が医師にとっても親になろうとする人にとっても魅力的で、しかも、比較的安価で提供/利用が可能、妊娠中の使用も安全という場合は、特に乱用が起こりやすい。

しかし安全性に関していえば、産科的超音波検査の安全性を確認した既存の研究では、調査対象者の女性が受けた検査回数は5回までのものしかなく、10回、20回、ましてや30回の場合を調べたものはない。

WHOが途上国のために開発した新しい妊婦管理規範では、双胎妊娠、高齢出産など特別な状況でしか超音波検査の使用を推奨しておらず、「直接的な目的を持ち、有益であると証明された」検査だけが実施されるべきだと強調されている。


WHO Reproductive Health Libraryは、超音波検査に関するコクランレビューについて、次のようなコメンタリーを出している。「超音波検査の定期的な使用について、はっきりとした有益性は確認されていない。コクランレビューの結論に従い、妊娠初期の日常的な超音波検査を途上国において認めることはしない。」

ベトナム、また同様の状況にある国々では、超音波検査の適切な使用に関して、合理的な政策と診療指針を作成し、そうしたガイドラインと合わせて、職業的・商業的利益よりも女性の健康と安全な妊娠を優先した本質的な妊娠管理を実施することが焦眉の急にある。しかし、ベトナムのように民間セクターの大部分が規制されていない国や、公的医療財政が自己負担金に頼っている国では、そうしたガイドラインの影響力は限られてしまう。妊婦がインフォームド・ディシジョンに従って検査を受けることができるよう、産科的超音波検査の長所だけでなく短所に関しても、国の実情に沿った形で情報を提供することが重要である。

妊婦健診時に用いられる超音波診断についての諸議論
鈴井 江三子
川崎医療福祉学会誌 Vol.14 No.1 2004 11-18

胎児超音波検査の普及でアジアは女性不足に、国連
[AFP 2011年10月10日]

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by technology0405 | 2013-04-19 13:22 | Countries | Comments(0)

ベトナム人女性を誘いタイに連れてきて商業的代理出産ビジネスをしていた台湾人グループの資産を凍結するべきだと、資金洗浄取締事務局(AMLO)が主張している。AMLOの副局長Suwanee Sawaengphol氏は、検察庁に対し、グループの資産凍結のための請願を刑事裁判所に提出することを要請した。

台湾国籍のSiang Lung Lor氏が経営する会社Baby 101を2011年に当局が強制捜査し、5人のメンバーが逮捕されている。彼らはサパーンスーン区(バンコクの行政区の一つ)で商業的代理出産ビジネスを立ち上げていた。13人のベトナム人女性がタイに連れてこられ、代理母として無理やり働かされていたのを、警察が救助した。

経営者のSiang氏も逮捕され、現在、裁判所で係争中である。他の5人のメンバー(Chen Pai Wen, Chai Ling Ei, Zu Oui Qien, Lu Kai, Chai Yu Yun)は、人身売買の罪でミンブリー地方裁判所に起訴され、2012年に懲役5年の刑を科されている。

Amlo seeks assets freeze for surrogacy gang
[Bangkok Post, 16 Mar 2013]

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by technology0405 | 2013-04-11 15:31 | Countries | Comments(0)

"Objects of Affection: Vietnamese Discourses on Love and Emancipation."
Harriet M. Phinney.
positions: east asia cultures critique 16.2 (2008): 329-358.

ベトナムにおける愛情の系譜をたどっていくと、「結婚せずに子供をもつ」に至った20世紀末の独身女性の心情について理解することができる。

1920-30年代のロマン主義文学者の功績は、唯一の愛という概念を評価し、愛の無い結婚を否定する語りを生み出したことである。本調査のインタビューでも、年配の独身女性は、愛していない男性とあえて結婚することや、二人目の恋人を探すことを、結婚のための結婚という「伝統」に縛られたものであり、間違っていると信じて疑わなかった。一方で、個人の愛というテーマが公共の言説として語られるようになったのもこの時代である。

1940-50年代、党の革命家たちは、ベトナム人のロマン主義者たちが作り上げた「封建的」な愛と「現代的」な愛という2項対立を、より強固なものにした。個人をそれまでの古い家長制度から切り離すために、ロマン主義で生まれた「個人の愛」という概念を利用したのだ。その過程で、個人と家族の間に国家が入り込み、結婚の意義や目的を再定義していった。「夫はいないのかと揶揄されたら、こう答えよ。夫はいます。性はViet、名はNam。夫は3000歳以上で、漢王朝に抵抗し、明朝を打倒してなお、今も老いることはありません。」自分の愛は国に捧げるべきであるというメッセージが語られ始め、女性たちもこの呼びかけを傾聴した。

1959年、北ベトナム(ベトナム民主共和国=DRV:南北ベトナムの統一は1976年)は、新婚姻・家族法を公布した。「結婚は、愛に由来する完全な自発的行為でなくてはならない」とする同法によって、ベトナム史上初めて、愛は結婚の「法的」根拠となった。ホー・チ・ミンは後にこの1959年法を「男女同権を目指した」法律であるという点で「社会主義革命の不可欠な要素」だと評した。この法律は「幸せ」「円満」な結婚のためには、女性はあらゆる点で男性と平等である必要がある、という思想に基づいている。しかし「プロレタリアート的観点」から見ると、この政策は、政治的課題から派生したものであることがわかる。それまでの婚姻制度や家父長制家族は、私有財産を維持するために利用されてきた。1959年法は、男女同権を愛による結婚として定義することで、古い婚姻制度からの脱却をはかるという目的があったのである。
個人を古い家族制度から断ち切り、新たな家族形成を目指す過程で、国家は個人と家族の間に愛情の対象として入り込んだ。党はホー・チ・ミンを国民全員の「叔父」に仕立て、1920-30年代から意識されるようになった個人の愛を、ベトナム再統一に導く努力をした。それは愛情の対象を国が決めることにつながる。国民に望ましい配偶者を選ばせるために、国民の分類が進められた。例えば本調査でインタビューしたTuyenは、政府の上級官吏の娘であるという理由で、革命のための有害階級であると分類された。彼女は、結婚相手が党内での昇進のチャンスを失うことを恐れ、革命家とは結婚しなかった。また、将来の子供への差別を恐れ、同じ階級に属する男性とも結婚しないと決めていたという。党は、愛を階級的な観点から規制したことで、個人に結婚相手を選ばせるという約束を究極的には裏切ったが、夫婦愛の基礎となる法的枠組みはこの時期に築かれた。 

1960年代、女性連合の「ベトナム女性新聞 (Bao Phu Nu Viet Nam)」の人生相談欄では、愛と幸福の正しい概念について婚姻女性を教育しようとする意図が見える。夫や息子を戦争に送り出す女性に対しては、「真の」幸福は、愛する者が愛国者の義務を果たせるよう助けることにある、と助言されている。国家への献身の名のもとに、多くの女性が婚期、あるいは子作り期を逃すことになった。南ベトナム消滅による南北統一が実現したのは1976年、その後、社会主義経済体制が築かれていく。

1980年代半ばまでに国家の統一を完了させた党はもはや、国家に国民の愛情を向けさせる必要がなくなった(あるいはそれが不可能になった)。革命前の封建主義的伝統との対比の上に、夫婦愛と男女同権を基礎とする「現代的な社会主義家族」という概念を推進したが故に、国家は、愛なしでは結婚しないという女性の選択を支持せざるをえなかった。以前は国家解放のために自らの愛を国に捧げた女性たちは、国が富国の手段として掲げた家族計画を、婚外子を正当化する手段として利用することで、女性としての新たな責任を果たそうとしたのである。

その一方で、女性の愛情を国から恋人/子供に向かわせた国の政策によって、女性は再び他人との関連の中に置かれることとなった。この現代の構造は、もともとそれが女性のための進歩的な政策であったにも関わらず、皮肉なことに、母親としてのアイデンティティという観点からみると女性の主体性を減じているのである。しかし同時に、母性愛に関するドイモイの言説が、革命前のロマンチック・ラブに関する言説に付いて回る「個人としての自覚」「自己表現の感覚」を回復したことは確かである。それはレ・リューが革命後に書いた名作『はるか遠い日』にも読み取ることができる。最も重要なのは、最近の母性愛に関する言説――「ハッピーファミリー」の称号の候補者にシングルマザーも入れるという、ハノイ女性連合が2004年に下した決定――が、1959年の父系主義脱却政策の再確認となったことであろう。いかなる場合でも、愛に対する概念の変化は、個人が近代的自己を形成する際のかなめとなる。

年配のシングル女性たちは、愛に関する様々な言説を利用しながら、新たな生殖的空間、社会的空間を作ろうとしている。そうすることで彼女らは、結婚年齢にありながら結婚しない女性が、前進し、いつか自分の子供を持てるよう道を開いているのである。

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by technology0405 | 2013-03-11 16:09 | Countries | Comments(0)

Single women's experiences of sexual relationships and abortion in Hanoi, Vietnam
Belanger D, Khuat T.H.   
reproductive health matters 7(14) 71-82, 1999

本論文は、1996年にハノイで実施された、中絶経験のある女性20人に対するインタビューを通し、ベトナムにおけるシングル女性の婚前交渉、望まない妊娠、中絶の状況を調査したものである。対象者の年齢は18-30歳。

1990年代中頃、ベトナムの新聞記事は、処女を失った若いシングル女性のことを、ボーイフレンドの圧力に負けてセックスした犠牲者として扱うことが多かった。人生相談欄では、一線を超えたことを「告白」し助言を求める若い女性に対し、そうしたセックスは偶発的に起きた後悔すべき出来事であるかのように語られた。女性はその出来事を忘れ、二度と起こらないように気をつけるべきだ、という回答が一般的であった。こうしたシングル女性のイメージは、我々の調査結果と一致しなかったばかりか、望まない妊娠や中絶をせず性的に活発なヤングアダルトでありたいという彼女らの要求の正当性をも無視してきた。

合法で手頃な中絶サービスがシングル女性のエンパワーメントに役立っている一方で、妊娠を避けながら性的に活発でありたいと望む女性には、その手段が与えられるべきである。シングル女性の望まない妊娠を避けるため、セクシャリティと避妊に関する教育の充実が必要であることが、調査結果から分かる。女性たちが生殖分野に関して限られた知識しか持たないことは、本調査および他の様々な調査で明らかである。
インタビューした女性たちをみても、中絶後にカウンセリングを受けた者はほとんどいなかった。20人中8人が2回以上の中絶を経験しており、中絶後に避妊を行っている者も少数である。中絶の循環を止める努力はクリニックに見られなかった。若い未婚女性のための包括的な教育、情報、コミュニケーション指導やカリキュラムが求められる。

さらに、若者や未婚者のニーズに応えるための家族計画指導も行う必要がある。
ベトナムの家族計画指導は既婚女性のみを対象としており、政府は二人っ子政策を実施している。その指導はIUD(避妊リング:子宮頸部の中に留置して用いられる避妊器具で経産婦向き)に著しく偏っており、オブザーバーの避難を浴びてきた。文献が示すように、既婚女性は、避妊に関する情報を持たず、避妊リング以外の避妊法にアクセスできていない。つまり、避妊リングを受け入れない女性や副作用を起こす女性は、中絶以外の選択肢がないということである。

家族計画の指導の対象になっている既婚女性すら、避妊リングか中絶にしかアクセスできないこうした現状で、シングル女性の避妊に関する知識や技術はさらに乏しく、改善が必要である。インタビューでは、避妊法としてピルあるいはコンドームを使用していたのは20人のうち6人(中絶後からの使用も含む)で、4人が膣外射精だった。中絶経験のあるシングル女性259人に実施した量的調査においても、何らかの避妊対策(膣外射精など現代的でない方法も含む)をとっていた女性はわずか4分の1であった。一方、259人のうち中絶を複数回経験している者で、その後も避妊を実行していない女性が半数以上にのぼった。シングル女性が避妊を口にすることをタブーとする社会的風土もある。

若いシングル女性に対し、良質のカウンセリングを計画的に実施し、コンドームなどの避妊方法を推奨するより、中絶サービスを提供する方が金になる。この文脈をふまえ、中絶の前後に避妊の情報やカウンセリングをクリニックが提供するよう義務として規定することが重要であろう。避妊具の使用における男性の役割が極めて重要であることを考えると、こうしたプログラムやサービスは若い男性にも届けられるべきである。リプロダクティブ・ヘルスの問題においては、男女が共に同等の責任を負うよう進めていかねばならない。

人口政策を目的とした現行の家族計画政策は、未婚女性もターゲットに含めていく必要がある。現状では、避妊はどちらかというと、最初の出産を遅らせるためのものというより、既婚女性がもうこれ以上子供が生まれないようにするための方法として捉えられている。そうした誤解を解き、正しい情報を提供することは急務である。しかし政府の方針自体が若者やシングルの大人を対象に含んでいなければ、クリニック側が情報提供サービスを行うインセンティブを持つことは期待できない。

無防備なセックスによって性感染症やエイズのリスクが増すことについても、若い男女に啓蒙することが必要である。ベトナムでは未婚の男女は自分たちの性的関係を隠さなければならないので、問題が起こっても、診断や治療を受けることにためらいを感じることもあるだろう。残念ながらベトナムでは、コンドームは性感染症予防の手段というイメージが強いので、若いシングルの人々の避妊方法として適しているにも関わらず、避妊の手段として主流ではない。

この調査と時期を同じくして、1994年の「国際人口開発会議(ICPD)行動計画」(カイロ・コンセンサス)導入のため、ベトナムではシングルの若者のリプロダクティブ・ヘルスに関する議論が活発化し、この問題を扱うセミナーや集会も多く開かれるようになった。その一例として、1997年12月、Population Council(保健医療分野の調査研究を専門とする国際NGO)の主催で、若者とリプロダクティブ・ヘルスに関するセミナーが開催された。研究者やNGO、地元の若者団体、国際機関、保健省、国家人口家族計画委員会の間でオープンな議論が交わされたのは、これが初めてであった。しかし、こうした政府の関与は未だに包括的な政策にはなっておらず、結婚歴に関係なく全ての女性がリプロダクティブ・ヘルスサービスに平等にアクセスできるようになるまでの道のりは遠い。その上、我々の調査結果は、こうした課題が政府政策の領域を超えていることを示している。男女が安全な性行動を採用するためには、ベトナムの社会的風土が改善されることがさらに必要となる。

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by technology0405 | 2013-02-22 16:00 | Countries | Comments(0)

「Asking for a Child: The Refashioning of Reproductive Space in Post-War Nothern Vietnam」
Harriet M. Phinney

1980年代半ば、人口動態の変化、戦争による男性の減少、意識の変化などに伴い、未婚の女性が、結婚はしなくてもよいので妊娠だけはしたいと男性に依頼する現象がベトナムでみられ始めた。1986年の婚姻・家族法(注1)および「幸福家族計画」政策(注2)の2つは特に、母になることの重要性を強調し、新しいシングルマザーの社会的コンテキストをもたらした。

この現象の背景には、ベトナム戦争のもたらした3つの要素がある。第一は男性の不在である。国内の著しい性比の不均衡は、戦争中から1990年まで続いたことを様々な人口動態調査が示している。第二はシングル女性の高齢化である。戦争により多くの女性が婚期を逃した。戦争でボーイフレンドを失くしたり、息子が戻るまで家族が娘を出したがらなかったりといったことに加え、ベトナム労働党による戦時中の「3つの延期」政策(Ba Khoan)――子作りの延期、結婚の延期、恋愛の延期――も女性の生き方に大きく影響した。第三はシングル女性にのしかかる戦後の孤独感である。戦時中の「横の連帯感」が消え、シングル女性は、自分が適齢期を過ぎてしまったという事実に直面させられるだけでなく、そこまでして戦争に費やした努力をもはや評価しない社会で生きていかなければならなかった。

本調査でインタビューした女性の一人、1952年生まれのQuynhが「男性に妊娠させてもらう」ことを決めたのは、1986年の婚姻・家族法の発布後である。ベトナム女性連合の職員でもあった彼女は、法律を待たずして結婚・出産の慣習を破るのは不本意であった。1986年の法律によって「全ての女性は子供を持つ権利がある」という新しい考え方がもたらされたことで、Quynhは、戦争への献身から子供の育成へと焦点をシフトさせた新しい女性アイデンティティを推進する国家の要請に応じることができたのである。

 しかし、「結婚せずに子供をもつ」ことを1986年法の前に決意し実行した女性も多い。青春を国家に捧げ、(戦争中も戦後も)絶え間の無いイデオロギー運動にさらされてきたベトナムの未婚女性たちは、面倒な社会的、法律的問題があってもなお、「子なし」からシングルマザーへと自分の運命を変えるために奮闘することを厭わなかった。これらの女性が語るのは、子供を生むことで「本当の」女性であると実感でき周囲にもそう見られることが非常に重要であるということ、また老後の面倒を見てもらうために子供を持つことが必要であるということである。「幸福家族」政策と1986年法の子供を持つ権利の正当化も、この二点を根拠にしている。しかし、戦後に推進された母性賛美、子供を生むことに対する意識の高まりのきっかけとなったこの「幸福家族」政策と1986年法自体も、そもそもベトナムがドイモイによって(国ではなく)個人と家族がその社会生活の責任を負う社会になったこと、年配のシングル女性がとった先行型の生殖戦略が受け入れられる社会に変化したことで、実現したのである。その結果、シングル女性とその子供の社会的状況や精神状態は改善された。もともと、シングル女性の増加と彼女らのジレンマは、戦時中の国家の政策が責任の一端を担っていた。1986年法と「幸福家族」政策は、年配のシングル女性が「子供を求める」インセンテイブを作り上げ、同時にそれを社会的に受容可能な行為として実行できるようにしたのである。国家による戦後の女性アイデンティティの再定義は、女性が母として社会に参加できるようにとの意図をもってなされた。未婚でかつ国家の要請に応えて子を持とうとする女性は、事実上、国の統治の中に自分自身を置いているのだといえる。
 
 シングル女性が「結婚せずに妊娠」する現象を、1986年法が後ろ盾し、「幸福家族」政策がさらに彼女らの子供願望をかき立てた。国家とベトナム女連により推進されたこれらの政策は、将来的に老後の生活保護が必要になってくる大勢のシングル女性に対処するための現実的解決策として、また戦争の闇の中で青春を失った女性に対する人道的な償いとして、読み解くことができる。


(注1)1986年婚姻・家族法
「国と社会は母親と子供を保護し、また、母性という尊い役割を果たせるよう母親を支援する義務を有する。(1章3条)」シングル女性の権利に言及しているわけではないものの、全ての女性に母になる権利を与える条文として広義に解釈されている。
(注2)「幸福家族」政策
1980年代後半に保健省人口・家族計画総局によってとられた政策。適度な収入があり、夫婦仲がよく、子供が2人という理想の家族イメージが推進された。

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by technology0405 | 2013-02-18 14:23 | Countries | Comments(0)
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