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Donor Legacy Project


オーストラリアのビクトリア州では、現在、配偶子提供を匿名で行うことは禁じられ、ドナーの情報は全てオープンにすることが義務づけられている。

しかし、過去には匿名で行われていた時代があった。

その時代に提供したドナーには、提供によって生まれてきた人々のため、自らの情報を登録するようVARTAなどが呼びかけてきた。

もっとも最近のキャンペーンとして、VARTAが運営しているVolunteer Registerに対し、アルバムやビデオなど様々な形式でド

ナーの生の情報を提供してくれるよう呼びかけるDonor Legacy Projectが行われた。

オーストラリアで配偶子提供が匿名で行われてきたのは主に70年代から80年代の初め頃で、当時20代の学生などが中心であった。

そのため、当時のドナーは、現時点で70歳前後となり、高齢化している。

このため、ドナーが生きている間に子どもたちがVolunteer Registryにアクセスできるとは限らない。

特に、面会可能なドナーに関しては、生きている間に面会が叶わない可能性もあるため、

アルバムやビデオメッセージとして、残しておくことを推奨している。

自分はどのように生きてきたのか、そして子どもたちにどのようなことを伝えたいのか、生前、生き生きとした形で媒体に残しておくことができる。

課題は、これらの作業に関してドナー側が全て自分で行わなければならないことである。高齢にもなれば、こうした最新の媒体に精通していない可能も高く、VARTAのガイダンスには、もしやり方がわからなければ、詳しい親族や友人に手伝ってもらってくださいと書かれているのみである。希望者に対して、VARTAのスタッフから援助があれば、デジタル化は、もっと進むだろう。

このプロジェクトには、一見してドナー側には何のメリットもない。何十年も前に匿名で精子提供を行ったことに対して、現在、このような形で協力を求められるのは、ドナーにとって負担であり、本意ではないかもしれない。

しかし、配偶子を提供するということは、現実にはそれだけの責任を伴うということだろう。当時、医師やクリニックはそこまで・そんな風には説明してくれなかっただろうが。

精子や卵子の提供は、小遣い稼ぎといった感覚で行うのではなく、それだけ重みを持った行為であることを認識すべきなのかもしれない。







by technology0405 | 2019-04-09 09:19 | Materials | Comments(0)



オーストラリアのビクトリア州では早くから子どもの知る権利を認め法整備を行ってきた。

しかし、法律が施行される前と後で子どもの知る権利に格差が生じていた。

とりわけ、1988年より前に提供された配偶子から生まれた人々は、ドナーが自発的に自分の情報を提供しない限り、

ドナーの氏名や住所はもちろん、ドナーの身体的特徴や趣味などの周辺的な情報も全く得られない状態に置かれていた。

こうした格差を是正するため、2017年3月以降、ドナーの匿名性は撤廃された。

つまり、病院の保管庫に眠っていた大昔のドナー情報も掘り起こされ、すべて公的機関に提出することになったのである。

こうした事態に対し、当然、精子ドナーからの反発はあがった。

とくに、70年代には社会的にも配偶子提供は匿名で行われるのが慣例となっており、将来、オープンになることは誰も予想できなかっただろう。

新鮮精子が使われていた時代、ドナーは、医学部の学生などが主体であった。当時の謝礼は10ドル程度であったが、

アルバイトのような気持ちで気軽に提供していた男性もいた。

過去に匿名で提供したドナーからは当然反発があったものの、簡易なDNA検査で親と遺伝的なつながっていないことを発見した

り、SNSなどでドナーを自発的に発見するケースも相次いでおり、ドナー情報は既知のものであるという認識が広がってきているとした。

ドナーの氏名・住所は例外なく公開されるが、一方でドナーには"no contact"として望まない接触を法的に遮断する権利があたえられた。この意思に反してコンタクトをとろうとすれば、処罰される。

ドナーの匿名性の廃止にあたっての、もう一つの障害は、クリニックであった。

過去のドナー情報はクリニックに保管されているが、カルテ情報が鮮明でなかったり、情報の一部が持ちされられていたりしたのである。クリニック側は意図的なものではないとしている。

そこで、配偶子提供を行っていたクリニックに対し、当時の実施状況や保管方法などを調べるために、関係者に対して徹底的なヒアリング調査がなされた。

The history of donor conception records in Victoria.

この報告書では、当時、精子提供を行っていた、Royal Women's Hospital, Prince Henry's, Queen Victoria Hospitalという三つのクリニックを調査している。

その結果、Royal women's hospital、Prince Henry'sの情報は比較的よい状態で保管されていることがわかった。

また、一部の精子は、(州内で規定の人数に達したため)、州外へと持ち出されていることもわかった。

一方、Queen Victoria Hospitalの情報は、1988年以前のものは、Monash Medical Centreで治療を継続した患者以外は、

失われたか破壊されていた。まだどこかに隠された情報があるのではないかと報告書は見ている。

医師は、精子提供は匿名という約束で行われていたものであり、時代が変化したとはいえ、当時の情報を公開することは、患者との信頼関係を損なうものであると考えているのだ。

一方、ドナーの気持ちも変化してきている。あるドナーは、配偶子提供で生まれた子どもの記事を読んで、子どもたちが困っているのなら助けたいという理由でVoluntary Registerに登録したという。希望があれば、子どもとあってコーヒーを飲んでもいいと考えている。ただし、それほど深い付き合いに発展することはないだろうとも考えている。

このように、啓発活動を通して、ドナー側が自発的な気持ちで情報を公開してもよいと考えるまで待ってもよかったのかもしれない。やや性急であったともいえる。

とはいえ、子どもの権利を何よりも大切に考えるビクトリア州政府らしい決定であったといえるかもしれない。

この決定がどのような波及効果を世界に与えることになるのか見守りたい。



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by technology0405 | 2019-03-25 10:36 | Materials | Comments(0)
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