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Surrogacy Matters
Inquiry into the regulatory and legislative aspects of international and domestic surrogacy arrangements.

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オーストラリアでは利他的代理出産が認められている。しかし、無償で代理母になるのは依頼者の親族などに限られており、国内では年間十数例ほどしか行われていない。一方、代理出産を依頼したい人々のニーズは男性同性愛者らを含めて増大しており、多数のオーストラリア人が海外で代理出産を依頼してきた。旺盛なニーズがあるため、オーストラリア人依頼者は、インドやタイをはじめ、世界の代理出産市場の中でも際立った存在感を示してきた。

こうした事態を政府も黙認し、海外で生まれた代理出産子に市民権を付与し、子どもの入国を許してきた。しかし、分岐点が訪れる。2014年、オーストラリア人依頼者がタイで代理出産子を遺棄したことがメディアで大きく取り上げられ、国際的な非難を浴びた。

この事件をきっかけにタイは市場を閉じ、多くの依頼者が別の国へと渡航先を変更した。
オーストラリア国内でも、代理出産のあり方を見直すべきだとの声が強くなり、なかには、需要を満たすために国内で適正な形で商業的代理出産を容認すべきだとの声も挙がっていた。先進国で実施すれば、途上国のように代理母の搾取や人権問題が生じることはないという考えであった。
2016年4月に、調査を行っていた委員会による勧告が公表された。
その内容は以下の通りである。

1. オーストラリアでは商業的代理出産の禁止を維持する。

2. オーストラリアで利他的代理出産をより容易に実施できるよう、統一した法律を考慮すべきである。
その際、子どもの安全、福祉、出自を知る権利など、子どもの最善の利益を保障すべきである。
また、代理母の自由意思が尊重されるべきである。
代理母を搾取から保護するための十分な規制が必要である。
法的親子関係を明確にすべきである。

3. 法務長官は、オーストラリア全土で利他的代理出産についての統一した法の検討を関係機関に要請すべきである。

4.代理出産の場合の出生証明書の記載方法について検討されるべきである。
その子どもが代理出産で生まれたという記録に加え、代理母、卵子ドナーや精子ドナーの情報を載せるかどうか、検討する必要がある。

5.半年以内に利他的代理出産についての法を法務長官に示し、法務長官は全ての州に対し、適用できるよう行動すること。

6.利他的代理出産について情報提供を行うウェブサイトを設置すること。

7.オーストラリア政府は、海外で商業的代理出産を選ぶオーストラリア人についてのレポートを12ヶ月以内にまとめるために、部局を超えたタスクフォースを立ち上げること。

8. 部局を超えたタスクフォースを立ち上げ、諸外国の代理出産の状況を調べ、どの国がオーストラリアの基準を満たしていそうか、調査を行うこと。

9. オーストラリア政府は、Migration Act 1958を改訂し、海外で代理出産が行われた場合、依頼親がオーストラリア法や国際法を犯していないかどうか、もし違反があれば、子どもの最善の利益に即して判定がなされること。

10. オーストラリア政府は、ハーグ国際会議の代理出産や親子関係についての調査研究グループの見解を優先・尊重すること。


Link
The Parliament of the commonwealth of Australia

Dr.Sonia Allan インタビュー

オーストラリア調査結果
by technology0405 | 2016-06-01 14:31 | Countries | Comments(0)

バブル崩壊後の20年あまり続いたデフレによって、国際社会に占める日本の経済的地位は相対的に低下している。総GDPでは、中国が世界2位であり、日本は3位となっている。近年の円安傾向によって日本のモノやサービスは外国人から見て割安感がある。訪日する外国人観光客は増加を続けており、インバウンド需要を見込んだビジネスが活況を呈している。特に近隣の中国からの訪日客の「爆買い」現象はよく知られているところである。中国の経済発展はめざましく、都市部を中心に不動産価格は上昇を続けており、中国の富裕層の経済力は、日本の中産階級をはるかに凌いでいる。中国からみて日本は、旅行者として安価で質の良いサービスや商品を購入できるだけでなく、安全な食品、汚染されていない空気など生活環境も圧倒的に良い。

中国の富裕層が日本で出稼ぎをする中国人に代理出産を依頼していたことが明らかになった。日本の医師が移植などを行い手助けしていたとされる。中国では代理出産は全面的に禁止されている。一方で旺盛な需要があり、アンダーグラウンドで代理母取引が盛んに行われている。海外に目を向ける動きもあり、子どもが米国籍を取得できるというメリットもかねて米国で代理出産を依頼する富裕層も増加中である。

中国では爆発的な人口増加を防ぐ目的で一人っ子政策が行われてきたが、近年、廃止されることになった。もともと子だくさんを好む国民性もあることから、第二子へのニーズが生じており、それとともに体外受精や代理出産などの希望者が増加しているものと思われる。

富裕層にとって、金銭で希望するモノやサービスを手に入れることは当然のことであり、実子であっても同じことである。中国では、依頼女性が他人の卵子を用いて自ら妊娠出産するという考えは乏しい。逆に、他人に妊娠出産を委託するという考え方には抵抗がないようだ。経済的余裕がある依頼者であれば、間違いなく後者を選ぶだろう。

同胞の代理母が好ましいとはいえ、代理出産は中国国内では違法であるため、国内でやろうとすれば、危ない橋を渡ることになる。しかし、海外、例えば近隣の日本でやれば、法律違反にはならない。日本では代理出産を禁止する法はなく、日本で代理出産を行っても処罰されることはない。もし中国人ではなく、日本人の代理母に依頼するなら、生まれた子どもは日本の国籍を取得することができる・・・。富裕な人々にはさまざまな選択肢が存在しており、その選択肢の中に日本人代理母の利用が存在するとしても不思議ではない。

「国外において貧しい人々に経済的対価と交換に代理懐胎を依頼 するいわゆる「代理母ツーリズム」を阻止するためには、前述の臓器の 移植に関する法律が「臓器移植ツーリズム」にも対応しようとしたよう に、代理懐胎を規制する法律は、国民の国外犯をも処罰することになろ う。」
日本学術会議2008『代理懐胎を中心とする生殖補助医療の課題』

2008年に公表された日本学術会議の報告書では、法整備に向けて、代理出産に関するさまざまな問題が検討されていた。上述の文章は、生殖ツーリズムについて述べたものだが、国内で代理出産を禁止した結果、日本人が海外で代理出産を行うことを想定していても、外国人が日本にやってきて代理出産を行うという事態は想定されていないようだ。しかし、国内に居住する日本人が有償の卵子ドナーとして利用されているという現象は、もはや既成事実となっている。代理出産は卵子提供よりもはるかに重い負担を女性に強いるものであり、引き受ける女性にとって、容易に決断できるものではない。しかし、今後、代理母になる日本人女性が出現しても不思議ではない。

女性の貧困化が進んでいると言われている。結婚制度の中で生きないという選択をとる女性がますます増えてきている一方で、女性の管理職への登用は進まず経済的自立への壁が存在する。子どもを引き取って離婚した場合、母親の収入だけで生きていくことが困難になる。結婚制度の中で生きていない女性の貧困化は昨今ますます進んでいるようだ。自己実現のために売春を行う女性がいるといっても、大半のケースでは経済的困窮を解決する手段として売春が選ばれているのが事実である。売春に加えて、新しい選択肢として、代理母になるという方法が生まれる可能性がある。

日本の経済力の凋落、格差の拡大、そして女性の貧困化によって、日本人女性が代理母として利用される日が、近づいてきているのかもしれない。


Link

鈴木大介「再貧困女子」

NHK 「女性たちの貧困"新たな連鎖"の衝撃」

「代理母は使用人」: 代替可能なもの・不可能なもの(中国調査結果)

アジアの生殖補助医療(生殖テクノロジーとヘルスケアを考える研究会 報告書Ⅲ)



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by technology0405 | 2016-04-17 10:09 | Discussion | Comments(0)

メキシコの代理出産

メキシコには、基本的に生殖医療に関する法律はなく、唯一タバスコ州民法において代理出産が法制化されている。タバスコ州民法92項により、依頼親は代理母が受胎した瞬間から法的に親であるとみなされる。提供卵子や提供精子を使用した場合でも依頼者の正式な子どもとなる。依頼者は、正式な手続きをふめば、子どもの出生証明書に親として記載される。タイやインドでの代理出産への厳しい規制を背景に、メキシコは代理出産を望む個人にとって最も好ましい国のひとつとなっており、斡旋業者からも熱い注目を浴びている。
不妊治療クリニックでは英語の話せる医師や看護師、スカイプでの相談などきめ細かな対応がなされており、カナダ、イギリスその他の国では禁止されている子どもの性別の選択も提供されている。外国人依頼者を受け入れる不妊治療クリニックは、この数年で急速な成長を遂げている。斡旋業者もまた同様に経済的成功の恩恵を受けている。メキシコの生殖医療は、アメリカ合衆国やカナダ、ヨーロッパなどから来る外国人依頼者にとって、安価で高度な治療を受けられ、卵子ドナーの入手が容易で、白い砂浜のリゾートに滞在する旅ができるとして、キプロス、インド、トルコ、南アフリカに代わり人気となっている。アメリカ合衆国の約半分の金額で女性が子宮を貸してくれる。代理出産は実入りのよい仕事であり、代理母にとっては、妊娠一件につき最低賃金5年間に相当する金額となる。斡旋業者は最高品質の宿泊設備と医療を外国人依頼者に提供している。
しかし代理出産ツーリズムの人気の裏で、明確な法的ガイドラインの欠如は確実な卵子提供プログラムの実行やドナーの健康を守ることを困難にしていると、臨床医兼クリニック経営者は語る。「もし法律があれば我々はドナーの登録ができ、どこで卵子もしくは精子が提供されているか知ることもできるが、現状では追跡が難しい。」
 また代理出産は法的、倫理的にも論議を呼んでおり、代理出産業界内部でも討論がなされている。プラネットホスピタルは、伝えられるところによると、40人以上の依頼親を騙したとして、アメリカ合衆国FBIによる調査下におかれ、現在メキシコでの営業を停止している。それ以外にもグレーな法規制のもと、斡旋業者による代理母への報酬未払いや、卵子の盗難、代理母に精神疾患があるなど恐ろしい話も水面下では伝わっている。タバスコ民法ではgestational surrogacyが許可されており、出生証明書には代理母ではなく、契約した親の名前が記載されるが、その一方で代理出産は「利他的」であるべきとも定められている。代理母を守る法規制もなされておらず、このようなグレーな法規制のもとで、実際には明確に定められていない部分に関しては、代理母に犠牲を強いることもあると斡旋業者は語る。
「斡旋業者には良い業者と悪い業者が存在する。」とタバスコの看護師は言うが、代理母にとってそれを見分けるのは容易ではない。劣悪な環境や、不十分な食事のもとでの妊婦生活や、代理出産を望んだカップルの気が変わった場合、明確な法的規制がないために、赤ちゃんを引き取らなければならなくなるケースもあり、代理母の人権は守られないこともある。「それでも売春婦になるよりはいいから。」と、代理母を希望する女性は後を絶たない。タバスコやその近辺では、高い貧困率と雇用機会の少なさのため代理出産は地元の女性達にとって魅力的な選択肢となっており、需要は伸びている。
ステークホルダー達は、メキシコの重要な経済新興策として、慎重に規制化された代理出産産業の成立と、代理出産の啓発の機会を提供することを目指しているが、この見通しは実現していない。楽観主義者は代理出産がすぐにカンクンで法制化されると確信している。その他、新しい法律の草案に対し、タバスコでのゲイ代理出産を規制する取り組みを行うグループもあり、法律が通過すればカトリック教会の権威に対する挑戦であると見なす人々もいる。
 このような背景があろうとも、メキシコにおける代理出産ビジネスの加熱はとどまる事がない。今後ますます斡旋業者は増加し、クリニックは外国人による代理出産の依頼の増加を目指し、代理出産産業はブームになっていくのは間違いないだろう。

CEFAM

Surrogacy boom in Mexico brings tales of missing money and stolen eggs
[The guardian
Surrogacy Beyond Borders

CARE Surrogacy Center Mexico
[you tube 動画]

Reproductive tourism booms on Mexico’s Mayan Riviera
[ International Medical Travel Journal 2014]



by technology0405 | 2015-01-14 17:12 | Countries | Comments(0)

アメリカのコネティカット州にあるNew England Fertilityの設立者Gad Lavy医師が、イスラエルのシングルやカップルに代理出産やIVFを提供するプログラムを作成した。Lavy医師はイスラエルで育ち、テルアビブの医大を出ている。イスラエルの不妊渡航患者は、多くがゲイの男性とシングルの女性である。近年は、卵子提供と代理出産を求めるイスラエル人の異性カップルもまた、アメリカでの渡航治療にますます関心を寄せるようになってきている。

Lavy氏は、ニュージャージーの大手代理出産エージェンシーReproductive Possibilitiesの創始者Melissa Brismanと共に、2014年2月にテルアビブで説明会を開き、アメリカでの代理出産に関心のある人々100人以上が参加する予定。

代理出産で子供をもつために外国に行くイスラエル人は急激に増えている。アメリカ、特にNew England Fertilityは人気があるが、ここ数ヶ月、多くのイスラエル人がタイに渡航した。しかし、タイで生まれた多くの子供の法的地位が定まらず、帰国トラブルに巻き込まれている。

こうした状況を知ったNew England Fertilityが「East Coast Surrogacy Solution」というイスラエル人向けのパッケージ商品を作った。このパッケージを利用すると、$20,000の節約になるという。

「イスラエル人は費用を節約するためにタイや他の第三世界諸国に代理出産に行くが、リスクはどんどん高まっている。」とLavy医師は言う。「人々がそうしたリスクを引き受けなくても済むよう、我々はできる限り手頃な価格で代理出産を提供できるようベストを尽くす。」

Connecticut Fertility Center to Travel to Israel; Israeli Citizen Seeking Surrogacy Best Off in the U.S.
Stamford, CT
[PRWEB, January 24, 2014]

הכנס הבין לאומי לפונדקאות ופריון
תל אביב, 13-15 לפברואר 2014

2月13日ー15日に、テルアビブでSurrogacy Conferenceが開催され、Lavy医師も出席した。

Copyright(C) 2011 SGRH. All Rights Reserved.
by technology0405 | 2014-05-09 17:23 | Countries | Comments(0)

2012年11月、イスラエルは、グルジア・トビシリで代理出産したイスラエル人依頼親の双子(生後6週間)にイスラエル国籍を認めず、パスポートの発行を拒否した。2012年11月9日にラマトガン家庭裁判所が、政府はDNA検査を求めることなく依頼男性Rを父親と認めるべきだとする判決を出していたが、国はこれを拒否した。

これまで、代理出産の依頼男性がDNA検査によって父であることを証明して初めてパスポートが子供に発行され、イスラエル入国が認められてきた。母親がDNA検査を受けることは認められていない。依頼女性は帰国後に子供を養子縁組しなければならない。

しかしラマトガン家庭裁判所は、国がDNA鑑定の代わりに医学的・法的書類を受け入れるべきとするJudith Meisels弁護士の主張を受け入れた。
Tamar Snunit-Forer裁判官は、子供の最終的処遇が決まるまで依頼女性Dを子供の法的保護者に指定した。決定を延期したいという国の要求は却下された。

この家庭裁判所の判決文を持って、Rはトビリシ(グルジアの首都)のイスラエル領事Herzl Maimon氏に対し、自分を子供の父親として登録するよう求めた。Maimon氏は、外務省からの指示がないとしてこれを拒否。Snunit-Forer裁判官は再び、国に対し、裁判所の判決を受け入れるよう指示した。国は上訴することを表明し、それまでの間、子供には通行書(入国はできるが、国籍等は与えられない)を発行することを提案した。裁判官はこの提案を拒否し、すぐにパスポートを発行するよう国に命じた。

Rはイスラエルに戻り、裁判所が2度目の命令を出した次の日、地元の登録所に子供の出生登録に行ったが断られた。エルサレムの登録所や検察庁をたらい回しにされた後、夜になってようやく、子供の身元証明書が用意できたと知らされた。しかしその書類には、子供の識別番号が記載されていなかった。

カップルの弁護士の働きかけによって、Snunit-Forer裁判官は、国が指示に従わないなら法廷侮辱罪にあたる可能性があるという警告を国に出した。裁判官は3日以内にパスポートを発行するよう命令したが、国は断固としてこれを拒否し、トビリシの領事は子供に通行書だけを発行すると伝えた。その間に検察庁が、家庭裁判所の決定に対して、テルアビブ地方裁判所に上訴を行った。弁護士と相談の結果、カップルは通行書を使って帰国することに決めた。
「裁判所の決定を尊重しない政府のやり方に怒りを覚える。もし子供の国籍がないまま帰国したら、はっきりしない状態が続くのではないかと不安に思う。」とRは語った。

State refuses to issue passports for babies of surrogate moms
Ilan Lior
[HAARETZ | Nov. 29, 2012]

Israeli court: Genetic test not needed in surrogacy cases abroad
Ilan Lior
[HAARETZ | Nov. 12, 2012]

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by technology0405 | 2014-03-20 11:27 | Countries | Comments(0)

イスラエルは、「卵子提供ツーリズム」に積極的に関わってきた国である。不妊患者が提供卵子を求めることを認め、IVFクリニックが国境を越えて卵子提供の仲介をすることを許す一方、国内の卵子提供規制の緩和には時間がかかった。卵子提供ツーリズムは、卵子提供法が成立するまでの代替策として2001年から10年間で急速に発展していった。

ヨーロッパ6カ国を対象とした最近の調査によると、母国の法規制を理由に、年間11,000-14,000人の患者が国境を超えたARTサービスを求めて渡航し、24,000-30,000サイクルの治療が実施されている。例えば、フランス、ノルウェー、スウェーデンのシングルやレズビアンの女性は精子提供を、ドイツの女性は卵子提供を求めて外国に行く。卵子提供が認められているイギリスの女性も、順番待ちリストが長いという理由で海外の卵子提供を求める。経済格差とドナー報酬の違いも卵子提供ツーリズムに拍車をかけている。アメリカではドナー報酬が5,000ドルになることも普通である。スペインでは900ユーロ(1250ドル)、チェコでは500ユーロ(700ドル)と報告されている。ルーマニアにあるイスラエル系クリニックでは、採卵サイクル1回の報酬がたった200ドルである。

イスラエルではEggs Donation Law 2010が制定される前から、IVF規制法によって、不妊治療患者からの卵子提供のみ認められていた。ドナー自身の利益が優先されない限り、健康上のリスクが正当なものとはいえないというのが理由であった。しかし卵子を得るのは容易ではないため、不妊患者は、採卵した卵子全てを自分の治療で使用するために受精・保存したいと考える。提供を渋る患者と増大する卵子需要によって「卵子不足」が起きた。私立クリニックは、「エッグシェアリング」に同意する患者に治療費減額を申し出るなど、経済的誘引によって卵子を確保しようとした。しかし、2000年の「卵子事件」によって、イスラエル国内で卵子提供する患者はいなくなった。

この事件は、大手公立病院の不妊治療専門医が身体傷害行為で訴えられたものである。原告女性らは、この医師が、インフォームドコンセントなしに、過度のホルモン刺激によって一回の治療で大量の卵子を採取し、その卵子を個人クリニックで別のレシピエント患者の治療に使用していたと訴えた。これは刑事事件にまで発展した。事件の全容は公開されていないが、この医師は、あるケースでは一人の患者から採取した232個の卵子のうち155個を33人のレシピエントに使用し、また別のケースでは256個の卵子のうち181個を34人の別の女性に使用したとされる。

この事件によって不妊患者と医師との信頼関係は破綻し、イスラエル国内の卵子提供はほぼゼロになった。当時イスラエルで提供卵子を待っていた女性は推定2000人。専門委員会は保健省に対し、健康な有志ドナーによる提供を認めるよう2001年に提言し、保健省も卵子提供法の制定を約束したが、Eggs Donation Law 2010の制定には10年かかった。それまでの間、国内の卵子不足に対処する現実的な解決方法は、外国からの卵子の輸入を認めることであった。保健省はIVF法を改正し、輸入卵子の使用を認めた。それにも関わらず、提供卵子を希望する患者の数は増える一方であった。2007年に議会が健康な有志ドナーによる提供を認める政府法案を取り上げたとき、患者活動家団体の推定では、提供卵子を待っている女性の数は6000人いたとされる。

輸入卵子の使用を認めるIVF法の改正で、「イスラエル以外で採卵・受精した卵子を、イスラエルの女性に移植」することが医師に認められた。つまり、プロセスとしては、イスラエルで凍結保存した夫の精子を国外に送り、国外の施設で採取した提供卵子と夫の精子を使って受精卵を作成・凍結し、その胚をイスラエルに送って妻に移植する、ということになる。保健省は、イスラエルのクリニック4施設に対し、ルーマニアとウクライナの認定クリニックと連携してこのプロセスを進めることを承認した。

しかし、凍結胚より新鮮胚の方が妊娠しやすいため、イスラエルの医師は患者に、海外の連携クリニックに行って移植することを勧め始める。イスラエル人医師が自分のクリニックを海外に開き、患者に同行して海外で移植するケースもある。ある有名私立IVFセンターのウェブサイトは、パッケージサービスについてこう説明する。卵子提供を希望する女性は、ドナーから卵子を採取する海外のクリニックに行って、胚移植する。他の患者たちと団体で行き、センターの医師が同伴して、移植もその医師が行う。「飛行機やタクシーでの移動、ホテル宿泊などの手配は全てセンターのスタッフが行い、代金は治療費に含まれています。」

イスラエルが、自国の女性が卵子を提供しないという理由で外国人女性の卵子の使用を認めたとき、そこにダブルスタンダードが発生し、国外の疑わしい行為には目をつぶることとなった。さらに、医療とビジネスの境界が曖昧になることで利益の衝突が生まれた。医師と患者の信任関係や倫理的義務と、ビジネスから得られる経済的利益との対立から、倫理的妥協が起きた。

公立病院のクリニックも、患者獲得のためにこうした私立クリニックの動きに対抗する必要があり、同じく東欧を中心にIVF施設を開設するようになった。2009年にルーマニアで起きた「卵子事件」では、イスラエルの国立病院の医師二人が逮捕者の中におり、その国立病院の寝具類がルーマニアのクリニックで使用されていたことが分かっている。

こうしたパターンは一般的なリプロダクティブ・ツーリズムの典型であり、イスラエルに特有な現象ではないが、リプロダクティブ・ツーリズムに公的資金が投入されているという点がイスラエル独特である。2005年に保健省は、イスラエル国外の卵子提供もNHIの補償範囲に入れることを明記する回状を出した。この行政指導が、海外で受精させた胚を輸入しイスラエルで移植するケースのみを指すのか、患者が海外で移植するケースも含むのかは明確ではない。いずれにしても、ルーマニアのスキャンダルが起きる前から、保健省は海外の卵子提供を助成していたことになる。
患者の権利団体の2008年のウェブサイトによると、少なくとも政府の補足的医療保険の一つに、海外卵子提供(海外での胚移植も含む)を2回までカバーするプログラムがあった。

海外にまで公的資金によるユニバーサル・サービス(全国均質サービス)の範囲を拡大することは、少なくとも、悪用が起きないよう万全の体制が整っていると確信できない限りするべきではないというのが、ハイファ大学Carmel Shalev教授の意見である。

Patterns of globalized reproduction: Egg cells regulation in Israel and Austria
Shalev and Werner-Felmayer Israel Journal of Health Policy Research 2012, 1:15

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by technology0405 | 2014-03-18 12:59 | Countries | Comments(0)

2013年3月17日イスラエルのラマトガン家庭裁判所は、代理出産でカップルが得た子供が依頼男性の精子を使用した子供であれば、自動的にその妻を子供の母親とみなし、正式な養子縁組は不要であると裁定した。

Tamar Snunit-Forer裁判官が下したこの判決は、2012年にイスラエルのユダヤ教徒夫婦がアルメニアの代理母に依頼して得た女児のケースに対するものであった。女児は、依頼男性の精子と提供卵子によって生まれた。

子供が生まれてから6週間後に、裁判所はDNA検査によって依頼男性と子供の父子関係を確定し、子供にイスラエル国籍を与えた。しかしイスラエル当局は、子供と遺伝的つながりのない彼の妻が子供の母親として認められるには、女児を正式な養子にしなくてはならないと主張した。イスラエル法は、海外で実施された代理出産に関する手続きを成文化していない。

カップルは、家庭裁判所に請願を出し、長期にわたる養子縁組手続きをせずに依頼女性を母親として認めてほしいと求めた。カップルの弁護士Meir Rubin氏は、二人の依頼親が正式な両親であることはアルメニアの出生証明書を始めとする多くの書類が証明していると主張。養子縁組手続きは屈辱的で、女性の親としての地位や子供との関係に疑いを投げかけるものだと批判した。

国側の弁護士Idith Rahamim Mandelbaum氏は、反対に、母親が出産もせず子供と遺伝的つながりすらないケースにおいて、母子関係を確定できるのは正式な養子縁組しかないと主張した。養子縁組が子供の最善の利益であり、女児の地位や親子関係に疑いがもたれないようにするために養子縁組が必要だという見方を示した。またその際は、親戚を養子にする時と同じ手続きでよいだろうとも指摘した。親戚を養子にする手続きは通常よりずっと条件が緩いが、しかしそれでも裁判所外での専門家による調査・監督が必要である。

Snunit-Forer裁判官はこれに同意せず、ソーシャルワーカーがカップルに関する報告書を提出すれば、裁判所がmaternity orderを出せると判断した。イスラエルの代理出産法では、依頼母の卵子を使用した場合と提供卵子を使用した場合を区別していないと指摘。 また、10ヶ月前に出されたイスラエル保健省の委員会による勧告――カップルのうち一人が子供と遺伝的つながりをもっていれば、海外代理出産の場合でもカップル二人に親権を認めるべきという内容――も参照された。今回の裁定は、代理出産の全プロセスがカップル二人によって開始・実行されたという、プロセスに主眼を置く判決であったといえる。

Court: No need for couple to adopt baby born to surrogate
Ilan Lior
[HAARETZ | Mar. 19, 2013]

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by technology0405 | 2014-03-10 11:55 | Countries | Comments(0)

Wombs for hire - Inside Thailand's booming surrogacy tradeより

オーストラリア人ゲイカップルJamesとMikeyは、タイ代理出産で女の子を得た。
「2人の代理母と契約した。自分たちがそれぞれ遺伝的つながりのある子供を持てるよう、同時にIVFを行なったが、片方の代理母しか妊娠しなかった。妊娠した方の代理母は双子を妊娠していたが、早い段階で胎児の一人を流産した。」「代理母については、病歴から性格まで全て教えてもらえた。事前に2人の代理母に会ったが、貴重な体験だった。素晴らしかった。」とJamesは語った。

タイ代理出産は、家族を作るための理想的な解決方法であるかのように宣伝されるが、それほど簡単なことではない。これは野放し状態の産業であり、搾取につながりやすい。
「タイ政府と人身売買防止法は、商業的代理出産を人身売買の一形態とみなしている。」と社会開発・人間安全保障省の主任Saowanee Khomepatr氏は言う。「現時点では、商業的代理出産は違法な搾取である。」

2012会計年度(2011-2012)には、タイで生まれた子供のオーストラリア国籍申請件数は459件に増えた。ゲイ代理出産のホットスポットがインドからタイに移り、新しいエージェンシーが次々とできている。

オーストラリアの州の中には、海外代理出産によって子供を連れ帰った場合に最大2年懲役を科すという法律を定めているところもある。しかし、国内では海外代理出産を合法化すべきとの圧力も高まっており、実際にそうした刑事罰が適用される可能性は低いという。

タイのゲイ代理出産ツーリズムが今後どのような方向に向かうのか、法律面からも倫理面からも、関心が高まっている。

SBS journalist Patrick Abboud investigates the dark side of commercial surrogacy in Thailand
DEBRA KILLALEA
[news.com.au, October 28, 2013]

Wombs for hire: Aussie couples flock to Thailand to find surrogates
[SBS The Feed, 29 Oct 2013]

All Thai-d up in baby making business
By ALEX DRUCE
[The Examiner, March 1, 2014]
エージェンシーAll Surrogacy IVF を2013年5月にスタートさせたTammy Charles氏インタビュー。オーストラリア人5カップル53組にタイ代理出産を仲介、93%が子供を持つことができた。

Australians using Thai surrogacy: when is a parent a parent?
Stephen Page
[Australian Surrogacy and Adoption Blog, January 28, 2014]

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by technology0405 | 2014-02-28 16:51 | Countries | Comments(0)

イスラエルが、ゲイカップルの代理出産を合法化すると発表した。2014年1月にイスラエルが出した政府提出法案は、同性カップルがイスラエル国内で代理母を利用する権利を認める、という内容になっている。また、海外代理出産の規制にも言及した初めての法案となる。

保健省は、同性カップルによる国内代理出産を認める一方、海外代理出産を利用する場合は、政府認可の仲介業者か特別委員会が承認したクリニックを使用しなければならないという規定を設けた。認可された仲介業者を利用せずに海外で代理出産をした場合、懲役1年が科される。
この規制には非難の声もあるが、ゲイの市議会議員Etai Pinkas氏は、仲介業者に費用面も含めた厳しい監視が入れば、依頼親にとってもいいことだと、法案を歓迎する。

現在、国内代理出産は婚姻カップルにしか開かれておらず、代理出産サービスの利用を希望する同性カップルは海外に行かなくてはならない。しかし、法律が改正されれば、シングルや未婚カップル、同性カップルすべての国民が国内の代理出産サービスにアクセスすることが合法になる。

イスラエルはまた、問題になっていたタイの代理出産の帰国トラブルに関しても、代理出産児にようやくパスポートを発行し始めた。タイの法律に従えば、タイ代理母に生まれた子供はタイ国籍であり、子供をタイから連れ出すのは誘拐とみなされる。
イスラエル外務省の長官Nissim Ben Sheetrit氏によると、代理母が子供引き渡しの同意書をイスラエル大使館に直接持って来ればパスポートを発行する、ということで合意が成立したという。

ゲイの政治家Nitzan Horowitz氏は、エルサレム・ポストの取材に対し、「ゲイカップルがタイに行ったのは、イスラエルが同性カップルの代理出産を認めなかったからだ。また、同性愛者は養子縁組のリストでも一番後回しにされている。」「イスラエルの誰かが、他のどの国よりも厳しいルールを決めたわけだが、他の文明国でゲイ代理出産を認めて問題が起きていないのだから、イスラエルでも大丈夫なはずだ。」と語った。

同性愛者の権利をめぐっては、イスラエル連立政権内部でも一致していない。極右政党ユダヤの家は、同性婚を認める法案に激しく反対している。同性婚を認める法案は、2012年にイスラエル議会で一度否決されている。

Israel to legalise surrogacy for gay couples
Nick Duffy
[Pink News, 27th January 2014]

Bill would allow same-sex couples to use surrogate in Israel
Ilan Lior
[HAARETZ | Feb. 4, 2014]

Israel Entitles Surrogacy Services to LGBT Community
By: Yaron Kelner
[Shalom Life, December 11th, 2013]

Government may allow gay couples to use Israeli surrogate mothers
Ido Efrati
[HAARETZ | Dec. 11, 2013]

Health minister calls for expanded surrogacy access
Lazar Berman
[Times Of Israel, December 11, 2013]

Great news for Israeli Same-Sex Couples
[Simple Donations]

Is surrogacy a right of gay male couples?
Tal Niv
[HAARETZ | 21.01.2014]
ゲイ代理出産反対

Liberal homophobia at the heart of gay surrogacy fears
Guy Shilo
[HAARETZ | Jan. 23, 2014]
ゲイ代理出産支持

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by technology0405 | 2014-02-27 16:24 | Countries | Comments(0)

イギリスが、海外での代理出産契約を希望する依頼親たちのために、新しいガイダンスを出した。
「アメリカ、インド、ウクライナ、グルジアで代理出産契約を結ぶ依頼親の増加に伴い、イギリスの大使館・高等弁務団が処理する件数が増加している。」と、外務連邦省(FCO)は言う。「新ガイダンスは、依頼親に対し、知識が十分であること、長く複雑なプロセスになりうる代理出産に対してきちんと準備することを、事前に強く求める内容になっている。」

ガイダンスの記載によると、外国人代理母から生まれた子供をイギリスに連れて帰るプロセスは複雑で、完了するまで数か月かかる場合があるという。依頼親は、子供のパスポート取得だけでなく、代理母から法的親権を移すためにイギリスでparental orderを申請する必要がある。
「依頼親が、正しい助言を得て、きちんと準備し、想定外の困難に会わないよう、最初から予測できることは依頼親に伝えるようにしたい。」とFCOの政策顧問Daisy Organ氏は言う。

International Surrogacy Forumの設立者Anne-Marie Hutchinson氏は言う。「海外代理出産を始める前に法的助言を求めることの大切さは、どれだけ強調しても足りないくらいだ。どの国にも異なる法律が存在し、そうした法的必要条件を確実にクリアしていくのはとても難しい場合がある。」

例えば、ガイダンスのインドの項目を見ると、「カップルは入国前に適切なタイプの医療ビザを取得しておかなければならない」「代理出産児を連れてインドを出国するためには、インドの出国許可証明を手配する必要がある。子供のパスポートを受け取ったら、子供が生まれた州のインド外国人登録局(FRRO) にインド出国許可証明を申請する。手続きには数週間かかる場合もあるので、十分な時間を見ておく必要がある。」と説明されている。

Foreign & Commonwealth Office - Surrogacy Overseas

Britain issues guidance on surrogacy in India
[Financial Express, Feb 13 2014]

Britain cautions citizens about surrogacy in India
Prasun Sonwalkar
[Hindustan Times, February 11, 2014]

New Foreign Office guidance for parents planning international surrogacy
[Natalie Gamble Associates , February 11th, 2014]

Foreign and Commonwealth Office urges prospective parents considering surrogacy overseas to get legal advice
[Lester Aldridge LLP, 13/02/2014]

Addressing the challenges of overseas surrogacy
Katie Newbury
[Kingsley Napley LLP, 13th August 2013]

INTER-COUNTRY SURROGACY AND THE IMMIGRATION RULES
英国国境局(UK Border Agency, UKBA)が2009年に出した規則

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by technology0405 | 2014-02-20 16:37 | Countries | Comments(0)
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