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イスラエルの代理出産−代理母と依頼者−

Dr. Etti Samama

実施日: 2016年2月3日


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by technology0405 | 2016-03-07 09:11 | Interview | Comments(0)

イスラエル調査結果

イスラエルは生殖を積極的に肯定しているプロナタリズム(pro-natalism)の国として知られる。ユダヤ教徒の聖典である旧約聖書には「産めよ、増やせよ」とある。イスラエルの住民の約8割がユダヤ人であり、宗教指導者ラビ(Rabbi)の意向が、生殖補助医療の規制や運用に大きな影響を与えている。
 イスラエルのプロナタリズムは、宗教的義務としてだけでなく、政治的関心によっても後押しされている。イスラエルの出生率は先進国の中では突出しているが、それでも、近隣のアラブ諸国の人口増加率を下回っていることが危機感を煽っている。ユダヤ人女性は子どもを最低3人産むことが望ましいという暗黙のプレッシャーに晒されている。生殖が重視され、オーソドックスのユダヤ人家族などは、10-15人もの子どもがいることも珍しくない。こうした伝統的な家族では、女性の役割は子どもをたくさん産んで育てることだけであり、経済的自立のための教育や職業的訓練を受けることは優先事項ではない。
 生殖はイスラエル国民の聖なる義務としてあり、不妊はカップルのプライベートな問題などではなく、国家が関わるべき問題となる。イスラエルは、人口一人あたりの体外受精実施クリニックの数は世界一であり、体外受精費用はカップルが2人の子どもを得るまで何度でも無料である。(※「2人の子ども」に以前のパートナーとの間にできた子どもは含まれない)。こうした優遇策から、1人の女性が10-15回もの体外受精を受けることは決して珍しいことではない。この結果、「イスラエルの体外受精は成功率が低い」と述べた関係者もいた。何度でも無料という条件が、クリニックの怠慢を助長している面がもあるのかもしれない。子どもができるまで何度でもチャレンジし続けることが当然視され、イスラエルの不妊女性の心身は、大きなプレッシャーとストレスに晒されている。
 イスラエル人女性は、たとえ幾度も治療に失敗しても、諦めるという選択肢はほんどない。イスラエルでは、配偶子提供や代理出産などの第三者が関わる生殖医療もさかんに行なわれており、最終的にはこうした手段に頼ることになる。養子となる乳幼児の数が少ないことや、養子となる子どもの背景がよくわからないことが養親にとって忌避されることから、養子は好まれず、あくまでもテクノロジーを利用して遺伝的繋がりのある子どもを得ることが優先的に選択される。
 精子提供は健康省のガイドラインのもとで行なわれている。ドナーは完全に匿名である。またユダヤ人のカップルに対し、ユダヤ人の精子を用いることは推奨されない。これは主としてユダヤ人同士の近親婚を避けるためであるとされる。ユダヤ法(Halakhah)によれば、夫以外の男性の精子で妻が妊娠出産した場合、子どもは不義の子としての汚名(Mamzar)を帰せられることになる。子どもがMamzahとなった場合、将来、宗教婚ができなくなるなど差別的な取り扱いを受ける。また、精子提供は法律で規制されていないため、厳密に言えば、ドナーが親権を主張する可能性があるという(Dr.Ruth Zafran)。つまり、精子ドナーが関与したことが公になれば、父子関係が否定され、子どもの立場が不安定化する。このため、精子ドナーは非ユダヤ人、かつ、完全匿名が条件となる。当然、子どもに告知はなされず、一般に遺伝的親を知る権利は、ユダヤ人社会において馴染みにくいものとなっている。シングル女性も精子提供を受けることができるが、心理テストやソーシャルワーカーによる面談が必要になる。シングル女性の場合は、家父長制的な家族関係から自由であり、子どもは精子提供の事実を知っている例もあった。全般的に精子ドナーは不足しており、外国の精子バンクも国内で営業している。外国の精子バンクは人気がある。ドナーのプロフィールが付いているためで、親にとっても、ドナーの情報は有益であると考えられる。
 イスラエルでは、死後生殖も認められている。これには特殊な国情も影響している。Biological Will Bankを設立した法律家Irit Rosenblum氏は、軍に従事し、生殖能力を失った若い兵士の事例を知り、社会的な理由で精子を凍結保存するというアイデアを思いついたという。Irit氏が関わった事例で、兵役で息子を失った母親が息子の身体から精子を採取し、その精子を用いて女性が子どもを産んだという話は、イスラエルでも有名である。2001年、彼女の案にヒントを得て、イスラエル軍でも兵役に従事する若い男性のために、精子バンクが設立されたという。「軍に従事する若い人には、死の可能性があること、そのために自分の配偶子を保存しておく可能性を伝えないのは、immoralだと思う」(Irit Rosenlum)。彼女が設立したBiological Will Bankには、1,000件ほどの登録があり、死後生殖を希望しているという。
  国内で初めての卵子提供は1986年に行われた。もともと、ドナーは不妊治療を受けている女性からの余剰卵子の提供に限られていた。しかし、インセンティブがない状況で、治療中の女性が自らの卵子を他人に提供することは考えられない。このため卵子ドナーは極度に不足していた。
  2001年、こうした状況に拍車をかけるスキャンダルが発覚した。2人の医師が不妊治療中の女性から無断で卵子を盗み、他の女性に売っていたということが明らかになった。これは、卵子の盗難事件として大きく報道された。これにより、国内の卵子提供は事実上ストップした。当時、卵子提供を希望する女性が3,000人も待機していたという。国内で不妊治療中の女性から提供卵子を確保することは絶望的となった。国内での卵子提供の新たなスキームの構築と海外での卵子提供を法的に容認するため、新しい法律が構想された。しかし、この法律は、可決するまでに10年もの月日を要することになった(Ms. Ofra Balaban)。
 2010年、卵子提供に関する新しい法律が成立し、健康な女性からの提供が認められた。ドナーは6,000シェケル(約18万円)の補償を受け取ることができるとされた。ユダヤ法では、ユダヤ人の母親が生んだ子どもはユダヤ人となる(父親の宗教は子どもの地位に影響しない。つまり父親がユダヤ人でも母親がユダヤ人でなければ、子どもはユダヤ人ではない。ただし、Family nameについては、家父長制システムに従い、父親から継承される)。この母系継承システムは、中世に生じたユダヤ人への暴行、虐殺事件に由来する。当時、レイプされ妊娠したユダヤ人女性の子どもにユダヤ人としての地位を与えるためにルール変更が行われたのであった。つまり、このルールに従うなら、もし卵子提供によって非ユダヤ人の女性の卵子を用いたとしても、産んだ女性がユダヤ人である限り、(ラビからみて)子どもは正真正銘、ユダヤ人である。
 国内で健康な女性からの提供が認められたとしても、国内で卵子ドナーをリクルートすることは極めて困難な状況が続いた。卵子盗難スキャンダルによって卵子提供へのイメージが失墜したことの他に、自分の遺伝子を他人に提供してもよいという考えの女性が少ないことがあると考えられる。卵子ドナーへの補償額は2013年に増額(20,302シェケル、約60万円)されたものの、国内での実施例はごく僅かであり、海外に依存する構造が定着している。
 ルーマニアやポーランド、キプルスなどにイスラエル人医師が経営するイスラエル人専用のクリニックがあり、そこで現地女性のリクルート及び卵子提供が行われる。東ヨーロッパにはユダヤ系の血を引く女性もいるが、非ユダヤ人の女性も金銭目的で提供する。海外での卵子提供は、次のような方法で行なわれている。国内で依頼夫の精子を凍結し、海外に輸送、海外でドナーの卵子と受精させ、移植時期に合わせて依頼女性が渡航し、新鮮胚移植を受ける。あるいは海外で作製した受精卵を国内に逆輸入して依頼女性に移植するなどの方法で行なわれている。
 こうした形で行われている海外での卵子提供は、業界関係者の間で評判が悪い。イスラエル人医師が、海外で卵子売買の嫌疑で取り調べを受けたこともある。この行為によって、クリニックは大きな稼ぎを得ているという。「小さな飛行機をチャーターして、週末になったらそこに複数の患者をまとめて乗せて連れていく」、「国内でももっときちんと宣伝すれば、卵子ドナーを確保できるはずだと思う。それをしないのは、医師が国内の官僚的な手続きを嫌っているのと、海外でやった方が儲かるからだ」、「海外の卵子提供にかわかる医師らは、政府の委員会にも入り込んでいて、利益相反が生じている」(Dr. Victoria Gelfand )などの証言が得られた。配偶子の輸出入に関しては、次のようなルールがある。国内にある夫婦の精子と卵子からつくられた受精卵を海外に持って行くには健康省の許可が必要になる。また提供卵子で受精卵を作った場合は、海外に持って行くことはできない。そして逆に海外からの提供卵子の輸入や海外で作った受精卵を国内に持ち込むのは、海外にあるイスラエル人医師のクリニックを通してしかできないルールになっている。
 卵子提に関しては、子どもを産んだ女性が母親だというルールがあるため、法的には困難な問題を生じにくい。しかし卵子提供では、実際には非ユダヤ人の卵子が使われており、ユダヤ人の血統の意味は変容している。このため、近年、卵子(遺伝子)を提供した女性が母親だという考え方も一部のラビの間では浮上しているという。これは代理出産の浸透によるところが大きい。このように、ラビの間でも見解の違いがあり、卵子提供の場合でも将来、母子関係が不安定化するというリスクがある。そして、卵子提供を受けたということを、ラビに報告する人もいれば、しない人もいる。また、子どもへの告知には消極的である。
 現在、胚提供は禁止されている。しかし、国内での卵子不足を解消するためには有望なリソースである可能性がある。卵子提供法の推進に関わってきた当事者団体の代表は、胚提供の許可に向けて政府に働きかけているという。しかし、卵子提供法の成立にも10年かかっており、胚提供を許可するためには養子法の改正が必要になることが予想されるなど、道のりは決して楽ではない。
 卵子提供に比べて、代理出産は国内でも活発に行なわれている。国内では1996年に有償の代理出産が合法化された。依頼者と代理母の宗教(ユダヤ教)は同一であることが求められる。また、代理母には出産経験があること、そして、代理出産法が改定されるまで、代理母は独身であることが求められた。また、依頼者の精子を使うことが必要条件である。代理母が受け取る報酬は400-500万ほどであり、世界でもトップクラスに入るだろう。代理母が独身でなければならないというルールは、夫がいる女性が他人の子どもを妊娠出産することはゆるされないというユダヤ教の考えからであり、このため、離婚して子どもを抱え、経済的に困窮している女性が代理母のリソースとなっていた。代理母不足を改善するため、既婚女性でも代理母になれるという規制緩和が行われた。これによって、「代理母の出身階層は上昇した」という。しかし、それでも、女性がお金のために代理母になるという現実に何ら変わりはないという。
「100人以上の代理母にインタビューをした。過去の中絶の罪悪感から代理母になる女性もいた。単調で平凡な日常生活から逃れるために、何か特別な経験をしたいという女性もいた。また、中産階級の女性でも、キッチンを新調したい、海外旅行したいというような願望を叶えるために代理母になる女性もいた。それでも、たった一人を除いてすべての女性がお金のために代理母になっていた」(Dr. Samama)
 イスラエルでは、国内でも相当数の代理出産が行なわれているが、その何倍もの人々が海外での代理出産に頼ってきた。その理由は、代理母不足により待機時間が長いことや、国内では異性愛カップルのみしか依頼できないことがあげられる。
 インドやタイ、ネパール、メキシコなどで多くのイスラエル人が代理出産を依頼してきた。その大部分はゲイカップルである。だが、2015年秋をもって、これらの新興市場は外国人に対する代理出産の提供を停止した。増大する代理出産へのニーズをどのように満たすべきかを焦点として、2014年に代理出産の改定案が出た。それは、国内で独身やゲイカップルにも代理出産への道を開くことや海外での代理出産を認めることなどが主旨となっていた。しかし、宗教勢力の反対も強く、法案は成立しなかった。「ゲイカップルは経済的にも政治的にもパワーがある」(Dr.Samama)。国内の代理出産は現在、数ヶ月もの待機時間があるが、もし国内でゲイカップルが依頼者として認められれば、代理出産の費用は高騰し、異性愛カップルが依頼できなくなるのでは、という声も聞かれた。
 海外代理出産への道は、いくつもの裁判例によって開拓されてきた。ユダヤ法によれば、代理母が非ユダヤ人であれば、たとえ依頼女性の卵子を使っていたとしても、子どもはユダヤ人ではない。そこで、海外で生まれた代理出産子に対してはDNAテストを行い、依頼者との血縁関係が確認できれば、子どもにいイスラエル国籍を与えてきた。国籍があれば、子どものパスポートは発行されるが、ユダヤ人になるためには改宗儀式が必要になる。改宗は決して簡単な道のりではない。また、依頼女性はたとえ自分の卵子であっても、子どもの母親として認められず、養子縁組の手続きを必要としていた。これは不平等であるとして、2012年にルールの改定がなされ、依頼者の卵子を使っていれば、母親として登録できるようになった。DNAテストによってイスラエル人国籍を取得し、イスラエルに入国させるという方式は確立されたが、問題がなかったわけではない。タイなど、産んだ女性が母親というルールがある国でイスラエル人が代理出産を依頼しようとすれば、養子縁組が必要となり、ハーグ条約に違反する可能性があった。2013年、タイ人代理母から生まれた子どもに対し、DNAテストを行ってイスラエル国籍を与えても出国のためのパスポートを発行することができず、代理出産子が一時的に出国できくなった事件の背景には、こうした問題があった。新興国の市場が閉じたいま、ゲイカップルが向かう先はカナダや合衆国に限られている。このため、ある法律家は、次回、代理出産の法改正があるとすれば、海外代理出産を正式に認める案が盛り込まれる必要があるだろう、と述べた。
 ナショナリズムと結びついたプロナタリズムは、第三者が関わる生殖医療へのニーズを増大させており、海外に依存する構造を変えることがなかなか難しい。そしてそのことによって、「ユダヤ人」の血統・血縁がますます拡散してきていることは皮肉である。


Acknowledgements:
調査にあたって下記の方々に協力いただいた。記して感謝したい。

Dr. Victoria Gelfand, Law office of VICTORIA GELFAND
Dr. Ruth Zafran, Family Law, Haifa University
Dr. Joseph Schenker, Hadassah Medical Center obstetrics and Gynecology
Ms. Dana Magdassi, Lotus Surrogacy
Dr. Etti Samama, Ministry of Health
Ms. Ronit, sha L'Isha, Haifa Feminist Center
Ms. Ofra Balaban, Patient Fertility Association, Israel
Dr. Irit Rosenblum Adv.International Family & Fertility law
Ms. Olga Lifshits, Bar-Ilan University

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イスラエル

Dr.Etti Samara へのインタビュー

平成27年度 厚生労働省 子ども・子育て支援推進調査研究事業 諸外国の生殖補助医療における法規制の時代的変遷に関する研究

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by technology0405 | 2016-02-22 09:33 | field work | Comments(0)

アメリカのコネティカット州にあるNew England Fertilityの設立者Gad Lavy医師が、イスラエルのシングルやカップルに代理出産やIVFを提供するプログラムを作成した。Lavy医師はイスラエルで育ち、テルアビブの医大を出ている。イスラエルの不妊渡航患者は、多くがゲイの男性とシングルの女性である。近年は、卵子提供と代理出産を求めるイスラエル人の異性カップルもまた、アメリカでの渡航治療にますます関心を寄せるようになってきている。

Lavy氏は、ニュージャージーの大手代理出産エージェンシーReproductive Possibilitiesの創始者Melissa Brismanと共に、2014年2月にテルアビブで説明会を開き、アメリカでの代理出産に関心のある人々100人以上が参加する予定。

代理出産で子供をもつために外国に行くイスラエル人は急激に増えている。アメリカ、特にNew England Fertilityは人気があるが、ここ数ヶ月、多くのイスラエル人がタイに渡航した。しかし、タイで生まれた多くの子供の法的地位が定まらず、帰国トラブルに巻き込まれている。

こうした状況を知ったNew England Fertilityが「East Coast Surrogacy Solution」というイスラエル人向けのパッケージ商品を作った。このパッケージを利用すると、$20,000の節約になるという。

「イスラエル人は費用を節約するためにタイや他の第三世界諸国に代理出産に行くが、リスクはどんどん高まっている。」とLavy医師は言う。「人々がそうしたリスクを引き受けなくても済むよう、我々はできる限り手頃な価格で代理出産を提供できるようベストを尽くす。」

Connecticut Fertility Center to Travel to Israel; Israeli Citizen Seeking Surrogacy Best Off in the U.S.
Stamford, CT
[PRWEB, January 24, 2014]

הכנס הבין לאומי לפונדקאות ופריון
תל אביב, 13-15 לפברואר 2014

2月13日ー15日に、テルアビブでSurrogacy Conferenceが開催され、Lavy医師も出席した。

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by technology0405 | 2014-05-09 17:23 | Countries | Comments(0)

イスラエルの卵子不足

イスラエルが深刻な卵子ドナー不足に陥っている。自己卵子で妊娠できない女性は何万シュケルも払って外国から卵子を買わざるをえない状況である。厚生省によると、イスラエル国内で卵子ドナーとして登録されているのはたった42人だという。

2013年7月、イスラエル国会の労働・福祉委員会が、卵子ドナー不足を解消するためにドナー報酬を2倍の19,000シュケルに増額した。しかし、こうした政策の効果はあまり出ていない。

イスラエルの病院や医療センターで稼動するIVFクリニック25施設のうち、2施設しかドナーからの採卵を実施していないことが、厚生省の調査で分かった。調査終了後、厚生省は、卵子提供システムを有していなかったクリニックのライセンスを取り消す意図があると発表した。

イスラエルで卵子ドナーを見つけるのは、昔のほうが容易であった。不妊治療中の女性が余剰卵を提供するエッグシェアリングが行われた。不妊女性の間に、相互扶助システムが築かれていた。

「卵子盗難事件」がそのシステムに終止符を打った。2人の婦人科医が、不妊治療中の女性から勝手に多数の卵子を採取し、他の患者に売っていた事件である。また、イスラエル人医師数人が、海外から個人的に卵子を輸入して、高い料金で患者に売るという事件も起きた。結果的に国内の卵子提供は一時停止状態に陥り、提供卵子を希望する患者は、大金を払うか、外国に行かなくてはならなくなった。同時に、国内には未使用の卵子が多数残った。

不妊患者の負担を軽減させるために、国内卵子提供の推進は必要である。代理出産を利用する全女性の約半数が提供卵子を必要としていることも考慮すべきだ。一回の移植で成功しないことも多い。外国人ドナー2人から卵子を買うと約60000シュケル。そこに、治療費や代理出産の費用が加わると、カップルにとって非常な負担となる。

卵子提供をしないクリニックからライセンスを取り上げることも重要だが、イスラエルにとって本当に必要なのは、この問題に対する国民意識を高めるキャンペーンである。
厚生省が国費による不妊治療の助成回数を制限したことで、エッグシェアリングの機会は減る可能性がある。不妊治療をしていない女性に向けたキャンペーンが必要である。

厚生省は、匿名卵子提供を推進するための国立エッグバンクを設置することも検討している。

We need to raise awareness of egg donation in Israel
Ada Atias and Mina Yulzari
[HAARETZ | Mar. 19, 2014]

Egg donors to be compensated with NIS 19,000
[Ynetnews, 2013/07/15]

Israeli egg donors see higher compensation due to shortage of willing women
Dan Even
[HAARETZ | Jul. 16, 2013]

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by technology0405 | 2014-03-25 13:09 | Countries | Comments(0)

2013年5月、イスラエルで、6年前にガンで亡くなった男性の精子を使用し、女性が子供を出産した。死後生殖は今や新しい概念ではないが、このケースは死後生殖に新境地を開いたといえる。出産した女性の家には亡くなった男性の写真がたくさん飾られているが、彼女はこれまで一度も彼と会ったことはない。死んだ息子と遺伝的つながりを持つ孫が欲しいという彼の両親の希望によって、子供は生まれた。

ガンの治療中、男性は自分の精子を凍結保存し、いつか親になりたいという希望を両親に語っていた。彼の死後、両親は生前の彼の夢をかなえる責任があると感じた。彼らは子供を生んでくれる母親探しに乗り出し、30代の女性と出会う。彼女は子供を欲しがっていたが、精子バンクから匿名提供を受けることにためらいを持っていた(現在イスラエルでは匿名の精子提供しか認められていない)。2者は弁護組織New FamilyのIrit Rosenblum氏の助けを借りて契約書を作成した。裁判所は精子を使用したいという両親の請願を認めた。裁判所の見方は、これまでの類例と同じく、「関係者全員の利益が一致している」というものであった。

イスラエルは死後生殖を希望する人が比較的多い。過去10年間に、死んだ息子の精子を使って孫を得たいという請願は10件以上あった。2001年にそうした請願が2件続いた後、法務長官は2003年にガイドラインを出し、死後に精子を利用できるのは配偶者かパートナーに限るという規則をしいた。
このガイドラインによって、たとえ同意書がなくてもパートナーであれば「推定同意」に基づく精子の使用が可能になった。裁判所は、故人が死後に父になることについて同意していたという明確な証拠がなくても、父になりたいという願望があったことが確認できれば、精子の使用を検討できる。

裁判所が、このガイドラインに反して、死んだ息子の両親に精子使用を認め、男性と関係のない独身女性が母親になったことで、イスラエルは新しい倫理的チャレンジに直面する。イスラエルは現在、National Committeeの最終報告書に基づいた包括的なART規制法の作成を検討している。National Committeeの報告書は裁判所より保守的な立場をとっており、両親による死んだ息子の精子の使用も認めていない。

今日、シングル女性が匿名の精子ドナーを利用する現象は社会的に広く行き渡っている。匿名の精子提供で生まれた子供は、自分の出自について知ることなく成長する。これは、アイデンティティ形成や心理社会的な健康に影響するだけでなく、家系の病歴が半分しか分からないことから医学的な危険が生じる。

故人の精子を選択することで、出産する女性は、子供の祖父母と拡大家族の愛情と支援を得られるだけでなく、子供に出自を知る権利を保証してやれる。子供は故人の「代わり」にはならないが、息子を亡くした祖父母に慰めと喜びをもたらすことができる。もし故人に「Biological Will」- Rosenblum氏によって2001年に考案された法的ツール - があると考えるなら、裁判所の寛容な見方は倫理的に正当なものである。配偶者・パートナー以外が出産する死後生殖が法律で禁止されることなく、New Familyのような機関が支援し、裁判所が寛容な立場をとり続けるなら、同様の契約の下で次々と子供が生まれるであろう。

New frontiers in posthumous reproduction
By Hila Rimon-Greenspan and Vardit Ravitsky
[Bio News 17 June 2013]

Nationwide use of postmortem retrieved sperm in Israel: a follow-up report
Arieh Raziel
Fertility and Sterility
Volume 95, Issue 8, 30 June 2011, Pages 2693–2695

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by technology0405 | 2014-03-24 16:53 | Countries | Comments(0)

2011年8月、イスラエルの裁判所が、死亡した女性の卵巣から卵子を採取して凍結保存することを家族に認めた。17歳で交通事故によって亡くなったChen Aida Ayishの家族は、事故の数日後に脳死を宣告された後、彼女の卵子の採取を認めるよう裁判所に請願を出していた。
卵子の採取・凍結を実施したMeir Medical Centreのスポークスマンは、「イスラエルの裁判所が、死亡した女性から卵巣卵を採取・凍結することを認めた初めてのケースだ。」と語った。

クファール・サバ治安判事裁判所は、卵子の採取は認めたが、その卵子を受精させてから保存したいという家族の要望は認めなかった。Ayishが子供を望んでいた事実を家族が証明することはできなかった。

家族の権利保護団体New Familyの創始者Irit Rosenblum弁護士は、裁判所の決定を歓迎する。「画期的な判決だ。人々に選択する機会が与えられるのは重要なことだ。」死亡した未婚女性の卵子を受精させるには生前の同意が不可欠である(IVF 法10条)。Rosenblum弁護士は、たとえ女性がまだ17歳でも子供を欲しいという願望を表明していた可能性はあるとし、今回のケースでも、もし同意書があれば、卵子の生存率を上げるために受精胚にしてから凍結保存することが認められただろうと言った。

一方、ニューヨークにあるマウントサイナイ医科大学で生命倫理教育を行うRosamond Rhodes教授は、Ayishが子供を欲しがっていたかどうかではなく、彼女が自分の死後に子供が生まれることを望んでいたかどうかという点が極めて重要であると指摘する。「この点についてほとんど考慮されていない。」と教授は懸念する。

イスラエルの裁判所は過去にも死後の配偶子採取について判決を下したことがあるが、ほとんどが死後の精子の採取に関わるケースである。2007年には、ガザで2002年に撃たれて死亡した兵士Keivan Cohenの家族に対し、子供を作る目的で彼の精子を採取することを裁判所が認めた。

2003年のガイドラインでは、夫が生前に反対を表明していない限り、死んだ夫の精子を採取し、人工授精で子供をつくる権利が配偶者に自動的に与えられることが明記された。息子の精子の採取を希望する親は、裁判所命令を得なくてはならない。
ヘブライ大学哲学科のDavid Heyd教授は、「子供をつくる権利は親のものだ。死んだ子供の親が、孫を得る目的で息子の精子を使用することはできない。」と言い、死後生殖で生まれてくる子供の親の意思が尊重される点を強調した。

IVF法
8条と10条が死後生殖に関する部分

Landmark case allows Israeli family to freeze their dead daughter's eggs
By Ayesha Ahmad
[BioNews, 15 August 2011]

海外における生殖補助医療法の現状-死後生殖、代理懐胎、子どもの出自を知る権利をめぐって-
林 かおり
国立国会図書館調査及び立法考査局 外国の立法243(2010.3)

「死んだ娘の卵子を採取・冷凍したい」裁判所が認める(イスラエル)
児玉 真美
[Ashley事件から生命倫理を考える, 2011/8/11]

Dead woman's ova harvested after court okays family request
Dan Even
[HAARETZ | Aug. 8, 2011]

Family drops efforts to harvest and freeze eggs of dead girl
By Catrina Stewart in Jerusalem
[The Independent 09 August 2011]

Family given permission to extract eggs from ovaries of dead daughter in world first
By Adrian Blomfield
[TELEGRAPH.CO.UK, 08 Aug 2011]

Grieving family wins right to harvest eggs from daughter who died in car crash
[Daily Mail, 12 August 2011]

Israeli family can freeze eggs of daughter killed in road accident
Harriet Sherwood
[The Guardian, 8 August 2011]

戦死の独身兵士 精子使用許可 イスラエル 両親「人工授精で子孫を」(産経新聞)
goo ニュース 2007年1月22日
[爆発的atown主義, 2007-01-23]

Israeli court allows use of dead soldier's sperm
By Katy Sinclair
[Bio News, 29 January 2007]

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by technology0405 | 2014-03-24 12:33 | Countries | Comments(0)

2014年3月14日、ウリ・アリエル(Uri Ariel)住宅相がゲイカップルの国内代理出産を認める法案の却下要請を提出したという報道がなされ、イスラエルのゲイ社会に怒りの声が広がった。アリエル住宅相は、法案が「イスラエルの家族のあり方」に「道徳的・倫理的」問題を引き起こすと懸念する。この法案はYael German保健相が起草したもので、内閣立法委員会を賛成7、反対5でかろうじて通過している。委員会ではイエシュ・アティド党、リクード党、新党Hatnuaに所属する大臣7人が賛成に、ユダヤの家、イスラエル我が家に所属する大臣5人が反対に投票した。

法案は内閣の承認決議に進むはずだったが、現在はアリエル住宅相の要請によって却下される可能性が高いという。このアリエル大臣の反対に対し、ゲイ社会は不満を爆発させたが、テレビ司会者で作家、ディレクターのGal Uchovsky氏は極端だった。「Damn you(こんちくしょうめ)」「地獄に落ちろ」「お前を呪う」などとChannel 2 Newsを通じて大臣を罵倒した。

“Big Brother”(イスラエルの実話ものシリーズ)の共同司会者Assi Azar氏はユダヤの家の議長Naftali Bennett氏に抗議の手紙を書いた。「アリエル氏の醜い行為は、イスラエルで家庭を築き子供を持ちたいと願っているだけの人々を、深く傷つけた。あなたと、あなたの党仲間に言いたいのは、恥を知れ、ということだけだ。」「これは、あなたが真のリーダーになり、変革する絶好のチャンスだった。それなのに臆病風を吹かし、アリエル氏が卑劣な手段を用いるのを許した。」

German保健相は「Uri Ariel大臣の要請を聞いたときは、まるで背中からナイフで突き刺されたように感じた」と語った。またGerman保健相は、委員会に法案を提出する前にユダヤの家の党員たちと何時間も話し合ったことを強調。「彼らが反対に投票するのは明らかだったが、調整後に却下要請が出されることはないと信じていた。」

同性婚や同性愛者の権利の問題は、これまでもユダヤの家とイエシュ・アティド党の争点であった。2党は多くの点で合意しないまま、2013年に連立内閣を発足させた。
現在イスラエルの民事婚を法制化しようと動いているイエシュ・アティド党のAdi Kol議員は、同性カップルに税控除を与える法案の通過に貢献した人物である。ユダヤの家は最初この法案に反対していたが、同性婚を認めないことを条件に妥協した。Bennett氏だけが法案賛成に投票し、それ以外のユダヤの家の党員は棄権している。これに関してユダヤの家は保守層から非難されており、「同性カップルを認めない」という立場をアピールするために今回の却下要請を出した可能性もある。

Gay TV Host Curses Minister Ariel for Appealing Surrogacy Law
[Arutz Sheva, 3/14/2014]

Gal Uchovsky Slams Minister Uri Ariel
Nick Duffy
[A WIDER BRIDGE, March 14, 2014]

Israel: Minister quashes proposed gay surrogacy law
Nick Duffy
[Pink News, 14th March 2014]

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by technology0405 | 2014-03-20 14:29 | Countries | Comments(0)

2012年11月、イスラエルは、グルジア・トビシリで代理出産したイスラエル人依頼親の双子(生後6週間)にイスラエル国籍を認めず、パスポートの発行を拒否した。2012年11月9日にラマトガン家庭裁判所が、政府はDNA検査を求めることなく依頼男性Rを父親と認めるべきだとする判決を出していたが、国はこれを拒否した。

これまで、代理出産の依頼男性がDNA検査によって父であることを証明して初めてパスポートが子供に発行され、イスラエル入国が認められてきた。母親がDNA検査を受けることは認められていない。依頼女性は帰国後に子供を養子縁組しなければならない。

しかしラマトガン家庭裁判所は、国がDNA鑑定の代わりに医学的・法的書類を受け入れるべきとするJudith Meisels弁護士の主張を受け入れた。
Tamar Snunit-Forer裁判官は、子供の最終的処遇が決まるまで依頼女性Dを子供の法的保護者に指定した。決定を延期したいという国の要求は却下された。

この家庭裁判所の判決文を持って、Rはトビリシ(グルジアの首都)のイスラエル領事Herzl Maimon氏に対し、自分を子供の父親として登録するよう求めた。Maimon氏は、外務省からの指示がないとしてこれを拒否。Snunit-Forer裁判官は再び、国に対し、裁判所の判決を受け入れるよう指示した。国は上訴することを表明し、それまでの間、子供には通行書(入国はできるが、国籍等は与えられない)を発行することを提案した。裁判官はこの提案を拒否し、すぐにパスポートを発行するよう国に命じた。

Rはイスラエルに戻り、裁判所が2度目の命令を出した次の日、地元の登録所に子供の出生登録に行ったが断られた。エルサレムの登録所や検察庁をたらい回しにされた後、夜になってようやく、子供の身元証明書が用意できたと知らされた。しかしその書類には、子供の識別番号が記載されていなかった。

カップルの弁護士の働きかけによって、Snunit-Forer裁判官は、国が指示に従わないなら法廷侮辱罪にあたる可能性があるという警告を国に出した。裁判官は3日以内にパスポートを発行するよう命令したが、国は断固としてこれを拒否し、トビリシの領事は子供に通行書だけを発行すると伝えた。その間に検察庁が、家庭裁判所の決定に対して、テルアビブ地方裁判所に上訴を行った。弁護士と相談の結果、カップルは通行書を使って帰国することに決めた。
「裁判所の決定を尊重しない政府のやり方に怒りを覚える。もし子供の国籍がないまま帰国したら、はっきりしない状態が続くのではないかと不安に思う。」とRは語った。

State refuses to issue passports for babies of surrogate moms
Ilan Lior
[HAARETZ | Nov. 29, 2012]

Israeli court: Genetic test not needed in surrogacy cases abroad
Ilan Lior
[HAARETZ | Nov. 12, 2012]

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by technology0405 | 2014-03-20 11:27 | Countries | Comments(0)

2012年3月に家庭裁判所が、代理出産の依頼女性が自己卵子を使用していれば正式な母親と認める、という判決を出してから2週間たっても、在グルジア イスラエル領事館は裁判所命令に応じず、依頼両親に対してDNA検査を実施しなかった。

夫Yoniと妻Natasha Pinhas(現New Life Israelのディレクター)は、海外代理出産で生まれた子供の親は両親のDNA検査によって確定されるべきだと主張。主張が通るまではグルジアに留まりイスラエルに帰国しないと宣言した。それまでは父親だけにDNA検査が実施され、依頼男性が正式な父親と認められれば、子供にパスポートが発行されていた。母親はイスラエルに帰国後、養子縁組の手続きを行う必要があった。Natasha Pinhasは自分が母親だと法的に認められないまま子供と帰国することを拒否した。

ラマトガン家庭裁判所のShifra Glick裁判官によって、両親にDNA検査を行うべきという判決が出されたにもかかわらず、政府の関係省庁は何度も検査を延期した。
判決の次の日、Yoni PinhasはTel HashomerのSheba Medical CenterにDNA検査を受けに行った。しかし、その結果をできるだけ早くグルジアに転送して欲しいと外務省に依頼すると、裁判所の判決をまだ受け取っていない、という返事であった。

その間に在グルジア イスラエル領事館に行ったNatashaは、夫もグルジアで検査を受けなければならないと言われた。しかし夫のグルジア到着後も、スムーズではなかった。DNA鑑定書に代理母のサインが必要だと言われたが、代理母は僻村に住んでおり、グルジア法では、どんな場合でも代理母は子供と関係しないと定められている。
カップルは何とか代理母を領事館に連れてくることができたが、今度はイスラエルの法的当局が、公証人と総領事の認可つきの代理母の宣誓供述書を提出するよう求めてきた。代理母のサインがなければ、手続きを進めることはできないと言われた。その数時間後、イスラエルの駐グルジア大使により、イスラエルからの検査キットがまだ発送されていないと知らされた。「夫婦は、判決が実行されるよう裁判所が取り計らってくれると信じている。」と夫婦の弁護士Judith Meisels氏は語った。

外務省のスポークスパーソンは「キットの到着の遅れはイスラエルの空港で起きた障害のせいで、外務省とは何の関係もない。事態を知って直ちに外務省は、検査を早めこの家族を助けるように動いている。」と述べた。
検察庁のスポークスパーソンは「現地の代理母による宣言書は必要。どの裁判所の決定も、代理母の地位に言及していない。検査が遅れたのは、カップルの気が変わったからだ。最初DNA検査を希望していたが、あとで気が変わって検査を拒否した。」と説明した。

Parents accuse state of stalling in precedent-setting surrogacy case
Dana Weiler-Polak
[HAARETZ | Mar. 23, 2012]

Biological moms forced to adopt own children in overseas surrogacies
Dana Weiler-Polak
[HAARETZ | Dec. 12, 2011]

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by technology0405 | 2014-03-19 12:01 | Countries | Comments(0)

イスラエルは、「卵子提供ツーリズム」に積極的に関わってきた国である。不妊患者が提供卵子を求めることを認め、IVFクリニックが国境を越えて卵子提供の仲介をすることを許す一方、国内の卵子提供規制の緩和には時間がかかった。卵子提供ツーリズムは、卵子提供法が成立するまでの代替策として2001年から10年間で急速に発展していった。

ヨーロッパ6カ国を対象とした最近の調査によると、母国の法規制を理由に、年間11,000-14,000人の患者が国境を超えたARTサービスを求めて渡航し、24,000-30,000サイクルの治療が実施されている。例えば、フランス、ノルウェー、スウェーデンのシングルやレズビアンの女性は精子提供を、ドイツの女性は卵子提供を求めて外国に行く。卵子提供が認められているイギリスの女性も、順番待ちリストが長いという理由で海外の卵子提供を求める。経済格差とドナー報酬の違いも卵子提供ツーリズムに拍車をかけている。アメリカではドナー報酬が5,000ドルになることも普通である。スペインでは900ユーロ(1250ドル)、チェコでは500ユーロ(700ドル)と報告されている。ルーマニアにあるイスラエル系クリニックでは、採卵サイクル1回の報酬がたった200ドルである。

イスラエルではEggs Donation Law 2010が制定される前から、IVF規制法によって、不妊治療患者からの卵子提供のみ認められていた。ドナー自身の利益が優先されない限り、健康上のリスクが正当なものとはいえないというのが理由であった。しかし卵子を得るのは容易ではないため、不妊患者は、採卵した卵子全てを自分の治療で使用するために受精・保存したいと考える。提供を渋る患者と増大する卵子需要によって「卵子不足」が起きた。私立クリニックは、「エッグシェアリング」に同意する患者に治療費減額を申し出るなど、経済的誘引によって卵子を確保しようとした。しかし、2000年の「卵子事件」によって、イスラエル国内で卵子提供する患者はいなくなった。

この事件は、大手公立病院の不妊治療専門医が身体傷害行為で訴えられたものである。原告女性らは、この医師が、インフォームドコンセントなしに、過度のホルモン刺激によって一回の治療で大量の卵子を採取し、その卵子を個人クリニックで別のレシピエント患者の治療に使用していたと訴えた。これは刑事事件にまで発展した。事件の全容は公開されていないが、この医師は、あるケースでは一人の患者から採取した232個の卵子のうち155個を33人のレシピエントに使用し、また別のケースでは256個の卵子のうち181個を34人の別の女性に使用したとされる。

この事件によって不妊患者と医師との信頼関係は破綻し、イスラエル国内の卵子提供はほぼゼロになった。当時イスラエルで提供卵子を待っていた女性は推定2000人。専門委員会は保健省に対し、健康な有志ドナーによる提供を認めるよう2001年に提言し、保健省も卵子提供法の制定を約束したが、Eggs Donation Law 2010の制定には10年かかった。それまでの間、国内の卵子不足に対処する現実的な解決方法は、外国からの卵子の輸入を認めることであった。保健省はIVF法を改正し、輸入卵子の使用を認めた。それにも関わらず、提供卵子を希望する患者の数は増える一方であった。2007年に議会が健康な有志ドナーによる提供を認める政府法案を取り上げたとき、患者活動家団体の推定では、提供卵子を待っている女性の数は6000人いたとされる。

輸入卵子の使用を認めるIVF法の改正で、「イスラエル以外で採卵・受精した卵子を、イスラエルの女性に移植」することが医師に認められた。つまり、プロセスとしては、イスラエルで凍結保存した夫の精子を国外に送り、国外の施設で採取した提供卵子と夫の精子を使って受精卵を作成・凍結し、その胚をイスラエルに送って妻に移植する、ということになる。保健省は、イスラエルのクリニック4施設に対し、ルーマニアとウクライナの認定クリニックと連携してこのプロセスを進めることを承認した。

しかし、凍結胚より新鮮胚の方が妊娠しやすいため、イスラエルの医師は患者に、海外の連携クリニックに行って移植することを勧め始める。イスラエル人医師が自分のクリニックを海外に開き、患者に同行して海外で移植するケースもある。ある有名私立IVFセンターのウェブサイトは、パッケージサービスについてこう説明する。卵子提供を希望する女性は、ドナーから卵子を採取する海外のクリニックに行って、胚移植する。他の患者たちと団体で行き、センターの医師が同伴して、移植もその医師が行う。「飛行機やタクシーでの移動、ホテル宿泊などの手配は全てセンターのスタッフが行い、代金は治療費に含まれています。」

イスラエルが、自国の女性が卵子を提供しないという理由で外国人女性の卵子の使用を認めたとき、そこにダブルスタンダードが発生し、国外の疑わしい行為には目をつぶることとなった。さらに、医療とビジネスの境界が曖昧になることで利益の衝突が生まれた。医師と患者の信任関係や倫理的義務と、ビジネスから得られる経済的利益との対立から、倫理的妥協が起きた。

公立病院のクリニックも、患者獲得のためにこうした私立クリニックの動きに対抗する必要があり、同じく東欧を中心にIVF施設を開設するようになった。2009年にルーマニアで起きた「卵子事件」では、イスラエルの国立病院の医師二人が逮捕者の中におり、その国立病院の寝具類がルーマニアのクリニックで使用されていたことが分かっている。

こうしたパターンは一般的なリプロダクティブ・ツーリズムの典型であり、イスラエルに特有な現象ではないが、リプロダクティブ・ツーリズムに公的資金が投入されているという点がイスラエル独特である。2005年に保健省は、イスラエル国外の卵子提供もNHIの補償範囲に入れることを明記する回状を出した。この行政指導が、海外で受精させた胚を輸入しイスラエルで移植するケースのみを指すのか、患者が海外で移植するケースも含むのかは明確ではない。いずれにしても、ルーマニアのスキャンダルが起きる前から、保健省は海外の卵子提供を助成していたことになる。
患者の権利団体の2008年のウェブサイトによると、少なくとも政府の補足的医療保険の一つに、海外卵子提供(海外での胚移植も含む)を2回までカバーするプログラムがあった。

海外にまで公的資金によるユニバーサル・サービス(全国均質サービス)の範囲を拡大することは、少なくとも、悪用が起きないよう万全の体制が整っていると確信できない限りするべきではないというのが、ハイファ大学Carmel Shalev教授の意見である。

Patterns of globalized reproduction: Egg cells regulation in Israel and Austria
Shalev and Werner-Felmayer Israel Journal of Health Policy Research 2012, 1:15

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by technology0405 | 2014-03-18 12:59 | Countries | Comments(0)
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