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一般に、出自を知る権利は、精子提供や卵子提供など、子どもを育ている親とは別に、遺伝的親が存在する場合に問題になる。このため、養子の子どもにも出自を知る権利がある。国内では、養子の事実は戸籍に記載されるため、出自を知る権利は認められていると考えられる。
 
一方、代理出産では、依頼者自身の精子や卵子、あるいは依頼者がオーダーした精子や卵子が用いられ、代理母と子どもの間に遺伝的関係がないことがほとんどである。このため、出自を知る権利はあまり唱えられてこなかった。しかし、出自を知る権利とは本来、誰が遺伝的父母であるかという事実だけでなく、自らがどのようにして生まれてきたかを知る権利もふくまれているはずである。代理出産で生まれてきた事実の開示や、代理母がどこの誰かを知ることもまた、「出自を知る権利」に包まれるといえるだろう。

近年、エピジェネティクスなど、新しい科学的知見が発表され、胎児は母体から分子レベルで影響を受けていることが知られている。この知見は、代理出産においても、遺伝的真実を知る権利が成立することを示唆する。

エピジェネティクスとは何か。エピジェネティクスが代理出産に与える影響に関して、次のように報告されている。

「動物実験を含めた基礎的研究において、妊娠中の母体から子への物質の移行にともない、移行物質の直接作用及び DNA 配列の変化を伴わない遺伝情報の変化(エピジェネティック変異)により出生後の子の健康状態に影響が及ぶことが示唆されている。特にエピジェネティック変異による影響は、思春期以降に発現する生活習慣病など晩発的なものも少なくないことが指摘されており、長期間にわたる観察が必要な場合が多い」
日本学術会議 2008 『代理懐胎を中心とする生殖補助医療の課題−社会的合意に向けて−』

エピジェネティクスにより、胎児は代理母から健康に関わる重大な影響を受けていることが示唆されている。

一般に、子どもの外見や体質などに与える影響においては、精子や卵子といった生殖細胞の役割が決定的に重要であると理解されている。このため、代理出産において代理母は子どもに影響を与えることはなく、代理母はただの入れ物に過ぎないという見解すらある。しかし、事実は全く異なる。妊娠中の女性の過度の飲酒や喫煙(受動喫煙を含む)、薬物摂取などが子どもの健康に有害な影響を与えるということは、従来から広く知られてきた事実である。その経路の説明として、妊娠中の喫煙が、胎児のDNAに変化を与えることも最近の研究によりわかっている。そもそも、妊婦の血液には、胎児由来のDNAが含まれており、出生前診断では、妊婦の血液を調べることにより胎児の障害の確率を調べることもできる。さらには、妊娠出産する女性の遺伝子が胎児に伝わるということもわかってきた。このように、妊婦と胎児は遺伝子レベルでも繋がっているということは、今や常識となっている。

このような観点を踏まえたとき、海外で異なる人種の女性に代理出産を依頼することや、代理出産で生まれてきた子どもの出自を知る権利については、どのように理解できるだろうか。

インドやタイなどで人種が異なる女性に代理出産を依頼したからといって、異人種である代理母の外観が子どもに継承されるというようなことはない。つまり、あくまでも精子や卵子の持ち主の遺伝的特徴が子どもにも継承されることは言うまでもない。

しかし、実際のところ、エピジェネティクスを始めとする分子レベルでの物質の移行が、異なる人種間で生じた際にどのような影響があるのかは、不明である。そもそも、胎児は、遺伝子レベルで代理母の影響をどの程度受けているのか、定量化されてはいない。その影響関係は産みの母親と子どもの間に、数年に渡って生物学的な痕跡として残ると主張する研究者もいる。

いずれにしても、たとえ代理母が、子どもに対し何ら情緒的に結びついていなくとも、代理母と子どもは、物質レベルで結びついているという事実は消し去ることができない。その証拠に、依頼者は代理母の妊娠中の生活環境に対して非常に注意を払っており、そうした依頼者の意向を汲み、クリニックやエージェントでは、代理母のケアを行う専用の施設を用意するなどしている。

このように考えたとき、子どもにとっては、代理出産の事実とともに、産みの母親の情報は単なる情緒レベルを超えて重要だといえる。現時点では明らかにされていない科学的知見が将来、明らかになることによって、産みの母親の情報の重要性が増す可能性もある。現に精子提供で生まれた人々からは、ドナーの人柄を知りたいという要求のほかに、自分の病質を知るために、ドナーの遺伝的背景を知りたいという要求を持つ人もいる。出自を知る権利を認める立場からは、代理出産のケースについても、子どもにはその事実を告げることが必要であるし、産みの親がどこの誰なのかといった個人に関わる情報を子どもに提供することも必要である。

イギリスやオーストラリアなど、国内で代理出産を認めて実施している国では、代理出産で生まれた子どもの親権を依頼者が得る際に、養子縁組や裁判所の命令に依っているために、代理出産の事実や代理母の情報について、公的記録の中に何らかの手がかりが残されてると考えられる。このため、代理出産における出自を知る権利はすでに保障されているとも考えられる。

また、告知する側からみたとき、依頼者の精子と卵子を用いている場合、代理出産の事実を子どもに告知することへの心理的障壁は低い可能性がある。それは、一般に遺伝的関係の方が圧倒的に重要であると考えられていることに由来する。このため、たとえば代理出産の事実を告知していても、その際に提供卵子を用いていることは子どもに隠している親が多いという研究結果もある。つまり、遺伝的関係こそが真実の親子関係であるという文化的規範を親子ともに共有していれば、代理出産の事実を告知したとしても、その事実によって子どもに葛藤が生じる可能性は、(精子や卵子の提供に比べれば)極めて少ない可能性がある。
  
海外で代理出産を利用した場合、DNA検査を行って親子関係を証明して、子どもに母国の国籍を与え、入国させるケースが少なくない。現地の領事館で代理母が同意書にサインする必要もある。このケースでも公的書類上、代理出産の事実について何らかの手がかりが残される可能性が高い。他方、何らかの意図をもって調べなければ代理出産の事実を見つけ出すことは難しいともいえる。一方、依頼者の名前を記載した出生証明書を入手し、それを母国側に提出して手続きを行っているケースもある。代理母の情報が出生証明書にない場合、代理出産の事実はより見えにくくなる。それでも、海外で発行された出生証明書である限り、子どもが海外で生まれたという事実はどこかに残るだろう。代理母がどこの誰なのか、という代理母の個人情報については、クリニックに情報が残されている可能性があるが、時間的経過とともに散逸する可能性もある。契約書に代理母の名前や住所などの記載がなされているケースもあり、これらの情報を手かがりに探索が可能かもしれない。

精子や卵子の提供では、DNA検査という方法が確立されており、たとえドナーが名前を変えたり別の場所に移動していたとしても遺伝的つながりを明らかにすることができる。一方、代理母と子どものつながりを探索する科学的方法はまだ確立されていない。しかし、依頼親が子どものために代理母の情報をキープしておく意図さえあれば、代理母を見つけ出すことは容易である。電話やメール、facebookなどのメディアがあれば国境を超えてコンタクトを保つことは可能である。だが、精子や卵子ドナーの情報は子どもの体質や遺伝的な病気を知るために重要であると考える親がいる一方で、代理母の情報はそれほど重要ではないと考える親もいると考えられ、代理母の情報は大切にされない可能性もある。

もちろん、よりオープンな社会では、子どもが生まれた後も、代理母との交流を好む依頼者もいる。特に、ゲイカップルなどのケースではその傾向が強いようだ。だが一方で、依頼者と人種や、言語、生活環境が異なる異国の代理母の場合は、依頼者との交流が長続きしないケースも多いと考えられる。
 
代理出産のケースでも、配偶子提供の場合と同じように、子どもは代理出産で生まれた事実を知る権利を持つはずである。代理母の情報が生物学的にどの程度、重要であるかは未知の部分もある。たとえ海外で代理出産が行われたとしても、代理母に全く面会しないまま、受精卵を移植し、9ヶ月後に生まれてきた子どもを連れて帰るというケースは少ないはずであるし、またそうであってはならない。子どもの産みに関わった女性を依頼者が大切に扱うことで、子ども自身もまた自分が尊重されていると感じることができるだろう。逆に、異国の貧しい女性に金銭を払うことで妊娠出産の負担を引き受けてもらい、日々の育児に追われる中でその後、何のコンタクトも試みないとすれば、それは依頼者の怠慢である。このようなことは、異国の代理母が捨てられたことを意味するだけでなく、それを知った子どももまた、自分自身が捨てられたように感じるかもしれない。

精子や卵子は凍結したり輸送したり、モノのように扱うことができ、匿名性が高いという特性がある。また、精子は何度でも提供できるため、近親婚を防ぐために提供回数の制限などが必要となってくる。これらは個人で対応することが難しく、公的な機関が統制することが好ましい。一方、代理母の情報は依頼者の意思によって収集することができ、代理母とのコンタクトを保つなどの努力をすることで、子どもの出自を知る権利を確保することが可能である。代理出産で生まれた子どもの出自を知る権利を保障できるかどうかは、依頼者の心がけに依るところも大きい。



日本学術会議 2008 『代理懐胎を中心とする生殖補助医療の課題−社会的合意に向けて−』

胎児のDNA、妊婦の喫煙で変化、大規模調査で確認

他人の卵子で妊娠した子どもに、産みの母親の遺伝子が伝わる


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by technology0405 | 2016-04-27 13:01 | Discussion | Comments(0)

イギリスのケンブリッジ大学のCentre for Family ResearchのGolombok教授(心理学)らの研究グループでは、配偶子提供や代理出産で家族をもった親子の追跡調査を行っている。2014年までに10年間の追跡を実施しており、調査報告も蓄積されてきている。

これまでの調査結果では、卵子提供や代理出産で家族をつくった親の子どもとの関わりや子どもの発達の点で、自然妊娠の場合と比べて大きな問題があるという証拠は見つかっていない。こうした家族についての追跡調査は世界的にもまれであるため、貴重な成果であるといえるが、症例数が少ないために、統計結果を一般化することが難しいという問題もある。また、このような調査研究にはバイアスがつきものである。その一つに、調査に協力的な家族はもともとうまく機能している家族であるといえる、自己選択バイアスが挙げられるだろう。

量的調査では、全般的な傾向を掴むことはできるが、親と子どもの相互作用は、個別性が高く、個別事例に即した考察が不可欠である。個別の事例に即して、卵子提供や代理出産の家族にはどのような課題があり、どのような支援が必要かを明らかにすることが必要である。このため、インタビューなどの質的調査も積極的に行われることが必要だと考えるが、子どもに告知していない親もいるため、調査方法という点で難しい問題を抱えているのかもしれない。

最も告知される可能性が高いのが代理出産で、ケンブリッジ大学の調査ではほぼ全ての親が子ども告げていた。次に卵子提供であり、精子提供は最も秘密にされているという興味深い結果が得られている。遺伝的つながりがないという事実を子どもに告げることはより困難が伴うようだ。ただ、告知した方が、親の心理的適応状態に良い影響を与えることが示唆されている。自然妊娠の場合と生殖補助医療を利用した場合を比べて、心理的指標の上で、子どもの発達に何か大きな問題があるわけではない。

これらの追跡調査では、子どもは10歳前後であり、子どもたち自身は十分に語っていない。告知されていない子どもに対し、配偶子提供や代理出産で生まれたことをどのように捉えているかを問うことはできないが、告知された子どもたちが、それをどのように捉えているかを問うことは可能である。ケンブリッジ大学の調査では、代理出産で生まれた子どもたちは、そのことをよく理解し、受け止めているという。一方、精子提供や卵子提供で生まれ、告知された子どもたちはその事実をどのように受け止めているのか。センシティブなテーマであるが、子ども自身の捉え方が明らかになることで、この技術の可能性と限界が見えてくるのではないか。


2014 Parent psychological adjustment, donor conception and disclosure: a follow-up over 10 years.
子どもが1歳、2歳、3歳、7歳の時の精子提供と卵子提供の親子を追跡した。10歳までに精子提供による親子は34組、卵子提供による親子は30組であった。子どもへの告知の有無は、親の最良の心理的適応と関係していなかった。


2013 Children born through reproductive donation: a longitudinal study of psychological adjustment.
代理出産による親子30組、卵子提供による親子31組、精子提供による家族35組、自然妊娠による家族53組を比較。親の子育ての質、不安や鬱、結婚の質、子どもの適応状態や3歳、7歳、10歳時に質問紙により評価。子どものスコアに異常は見られなかったものの、代理出産による子どもは7歳時に配偶子提供による子どもと比べ、適応に困難が見られた。子どもに事実を告げていない母親の鬱レベルは高かった。一方、母親の鬱レベルは事実を知らされている子どもに対するよりも強くネガティブな影響を及ぼしていた。母親と遺伝的つながりがないよりも、生物学的つながりがないほうが子どもに対し問題を生じるかもしれないと結論づけている。


2012 Surrogacy families 10 years on: relationship with the surrogate, decisions over disclosure and children's understanding of their surrogacy origins.
子どもが1歳時に代理出産による親子42組(うち19組はgenetic surrogacy)に研究参加を得、うち33組から10年後も協力を得た。依頼者と代理母のコンタクトは時間とともに低下していた。とくに、第三者を介した紹介で代理母の卵子を用いたケースでその傾向が顕著であった。ほとんどの家族は代理母と良好な関係を築いていた。子どもが10歳時、代理出産の事実を告げられていた子どもはそのことについてよく理解しており、14人中、13人の子どもが代理母のことを好きだと答えた。


2011 Secrecy, disclosure and everything in-between: decisions of parents of children conceived by donor insemination, egg donation and surrogacy.
子どもが7歳時、精子提供による親子36組、卵子提供による家族32組、代理出産による家族33組を比較。
子どもにはオープンにすることが望ましいとされているものの、卵子提供で生まれた子どもの半分近く、精子提供で生まれた子どもの3/4の子どもが、事実を知らされていなかった。他方、代理出産で生まれた子どものほとんど全員が、そのことを両親から知らされていた。だが、子どもに告げないと決めた親の大半が誰か他の人間にそのことを告げていた(つまり、子どもは両親ではなく誰か他の大人からその事実わ知らされるというリスクがある)。


2011 Families created through surrogacy: mother-child relationships and children's psychological adjustment at age 7.
子どもが7歳時点での自然妊娠の親子54組、卵子提供による親子32組、代理出産による親子32組を比較。卵子提供と代理出産の場合、母子の良好な相互作用は、自然妊娠の親子によりも低かった。


2011 Children conceived by gamete donation: psychological adjustment and mother-child relationships at age 7.
告知が母子関係と子どもの心理的適応に与える影響を調べた。卵子提供による親子32組、精子提供による親子36組、自然妊娠の親子54組を比較。告知していない母親は、自然妊娠の場合に比べて積極的な交流に乏しい傾向が見られた。オープンな家族の方がメリットがあることが示唆された。


2006 Non-genetic and non-gestational parenthood: consequences for parent-child relationships and the psychological well-being of mothers, fathers and children at age 3.
子どもが3歳の時点での自然妊娠の親子67組、精子提供による親子41組、卵子提供による親子41組、代理出産による親子34組を比較。母子関係の熱心さや交流という点では、自然妊娠より生殖補助医療による親子の方が優っていた。配偶子提供より代理出産で子どもを持った親の方が子どもに事実を告げる傾向があった。


2006 Surrogacy families: parental functioning, parent-child relationships and children's psychological development at age 2.
子どもが2歳時点での自然妊娠の親子68組、卵子提供による親子48組、代理出産による親子37組を比較。代理出産の母親は良好な親子関係を持ち、代理出産による子どもの社会感情的、認知的発達は自然妊娠の子どもと変わらない。


2006 Egg donation parents and their children: follow-up at age 12 years.
12歳の子どもを持つ卵子提供による親子17組、精子提供による親子35組、体外受精による家族34組を比較。卵子提供による親子と体外受精による親子には違いが見られなかったが、卵子提供による親子と精子提供による親子には違いが見られた。精子提供を受けた母親は、子どもに対して感情的に過剰に関わる傾向が見られた。卵子提供で生まれた子どもの発達は良好だった。


2005 Families created bu gamete donation: follow-up at age 2
子どもが2歳時、精子提供による親子46組、卵子提供による親子48組、自然妊娠による親子68組を比較。
卵子提供で子どもを産んだ母親は喜びを感じており、精子提供で子どもを産んだ母親は心配を覚えていた。父親の態度に違いはなかった。たとえ親子の間に遺伝的つながりがなくとも良好な関係を築くことは可能である。


2004 Families created through surrogacy arrangements: parent-child relationships in the 1st year of life.
自然妊娠の子どもよりも代理出産で生まれた子どもの適応状態は良いとしている。


※この記事の一部は「厚生労働省平成26年度児童福祉問題調査研究事業  諸外国の生殖補助医療における出自を知る権利の取扱いに関する研究」によるものです。


Link
Centre for Family Research, Cambridge University

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Cambridge University
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Cambridge University
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Cambridge University
by technology0405 | 2016-04-27 12:59 | Discussion | Comments(0)

The Kangaroo Pouch: a story about surrogacy for young children

この絵本は親族のために代理母になった女性が自らの子どもに説明するために執筆したものである。

ストーリーはシンプルである。

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夫と2人の子どもがいて幸せな生活を送っているカンガルーの母親が、子どもがいないカンガルーの夫婦を見て気の毒に思い、彼らのために自分の袋を使って子どもを育てることを思いつく。
子どもが誕生するためには、男性の細胞と女性の細胞、そして子どもを入れる袋が必要であることが説明されている。
自分の袋の中で子どもを育て、子どもが出てきたら子どもがいない夫婦に子どもを返すというのだ。
母親が父親に説明し、父親は良いことだと賛成してくれている。
袋の中に子どもがいるとき、依頼夫婦の声を聞かせたりして妊娠期間中を過ごす。
代理母と子どもは普段の生活を送りながら、袋の中の子どもに冗談を言ったり話しかけることもある。
ある日、袋の中の子どもは、準備が出来たと見えて、袋から出てくる。
依頼した夫婦に子どもを返したとき、彼らはとてもハッピーになって大喜びの様子が描かれている。
カンガルーの家族は、その後もとの幸せな生活に戻った。


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大抵の代理母は、自分の家族を持っている。
このため、代理母になる女性は、夫を説得し、自身の子どもへ説明して納得させる必要がある。
妻が代理母になると聞いてあまりよい気持ちがしない夫は少なくいのではないかと推測されるが、
夫は大人であるから代理出産の意味を理解できるだろう。
しかし子どもはどうか?
母親のお腹が大きくなっていくのを見て自分の兄弟姉妹が生まれてくると期待するのが子どもの自然な反応である。なぜ生まれてきたばかりの子どもを他人に渡さなければならないのか、理解したり納得したりすることが難しいかもしれない。母親が生まれた子どもを他の夫婦に渡すのを見て、自分も母親からいつか捨てられるのではないか、とトラウマになる子どももいるという。依頼者の子どもだからと説明しても、感情面で理解することが難しいかもしれない。
この絵本は、利他的な代理出産のケースだが、その行為に金銭が絡んでいるとするなら一層、複雑である。子どもはお金と引き換えにいなくなった、つまり、お金のために子どもは売られていったことになる。そして、自分の母親はそのようなことをする人間であるということになり、子どもの安心感は失われる。「お金はいらないから、子どもを渡さないでほしい」と母親に訴えた子どももいるという。貧しい母親は自分の子どもの将来を思って、代理母になって金銭を得ようとする。しかし、子どもは全く違う側面を見ている。世界で行なわれている代理出産のうち、真に利他的なケースは少なく、その大部分が、金銭が絡んだケースである。金銭が絡んでいるからといって利他心がないというわけではないが、金銭的対価が大きな動機になっている。そのことが、子どもに与える害を考えてみるべきである。

こうした絵本が存在しているということ自体、母親が代理母になる/なったことを子どもに納得させることが容易ではないということを示している。

代理出産という行為には、依頼する側と依頼される側、二つの家族が関わっている。
代理母になる女性の子どもだけでなく、代理出産で生まれてきた子どもに対する説明も必要になる。
互いの子どもに対し、どのように真実を伝えていくか。
代理出産という行為を、大人の視点ではなく子どもの視点から考えていかなければならない。


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by technology0405 | 2016-04-25 11:29 | Book | Comments(0)

卵子提供で生まれたことを子どもにどのように伝えるのか。

オーストラリアで編集された"Sometimes it takes three to make a baby"(子どもが生まれるためには、ときに3人必要になる)は、まだ幼い子どもに対して自分がどのようにして生まれてきたかを知らせるための絵本である。

こうした絵本は、世界各国で編集が試みられている。そのストーリーは、概ね、似通っている。子どが欲しい夫婦がおり、治療を続けたがうまくいかなかったこと。医師が卵子提供を提案してくれたこと。親切な女性が現れ、両親に卵子を提供してくれたこと。医師が提供された卵子と父親の精子をミックスして母親の子宮に入れたこと。妊娠して両親は大喜びしたこと。子どもは周りの人から望まれて生まれてきたこと。卵子を提供した女性も子どもが生まれて喜んでくれ、両親も卵子ドナーに感謝したこと。こうしたことがわかるように構成されている。

この絵本では、子どもは誰に似るのか? といった遺伝に関する問題にも触れている。
鏡の前で自分の姿を見つめる子どもの頭の中には3人の大人の顔が浮かんでいる。
この絵本では、「ユーモアのセンスはママから、黒い髪はパパから、茶色の瞳はドナーから来たものかもしれない」と書かれている。

また、その後、子どもが学校など集団生活を送るようになれば、自分の出自をどのように捉えるかも問題である。卵子提供で生まれた子どもが他にもいるかもしれないし、いないかもしれない・・・。もしかしたら自分はなぜ卵子提供で生まれたのか納得できないかもしれないが、それは他の子どもでも同じで、子どもは自分でどうやって生まれてくるかを決められないものなのだ。

絵本の末尾には、親に対するメッセージが記載されている。

◆親に推奨されること◆

・子どもができるだけ小さい時から情報を与え始めること。この本は3歳から9歳までの子どもに適している。

・子どもの成長にあわせて何度も何度も話すこと。与えられる情報や子どもからの質問は子どもの成長にしたがってより複雑になっていく。

・不妊治療や妊娠、子どもが生まれてきたときの写真などを貼ったスクラップブックを作成し、それらを見せながら語りかけるとよい。

・リラックスした態度で子どもに語りかけること。卵子提供について恥ずかしいことであるかのように親がぎこちない態度をとれば、子どもはその方法で生まれてきたことを悪いことのように感じる。親がその方法に誇りを持ち、子どもが親の愛情を感じることができるようにすることが重要である。

・同じようにして子どもをもった他の家族と交流することやサポートグループに参加することは有効だろう。子どもたち同士も交流をすることで、自分が他とは何か違っていると思わなくてすむ。

・カウンセラーに相談することも役に立つかもしれない。子どもが誕生したことで解決したと思っていた問題が、ときに後々なって再び、浮上するかもしれない。

・子どもに告げるのを遅らせるのはよくない。ドナーのことを告げたら子どもから拒絶されるかもしれないと親は恐れているが、事実は全くその逆である。子どもは長年、真実から遠ざけられてきたことで自分が否定されたように感じる。早い時期に告げられていれば、それは子どもにとって普通のことになる。子どもは卵子がどこから来たかに関係なく、両親を好きだと思っており、母親は母親であって、卵子ドナーではないことはちゃんと理解しているはずである。

・周りの人に対しても、卵子ドナーを「本当の母親」などと子どもに言わないよう、きちんと説明する必要がある。

・子どもがいじめられるかもしれないと心配する親がいる。子どもが自らの出自に自信を持つよう育てられていれば、他人の発言に左右されなくて済む。周りの子どもたちも、効果がないとわかればいじめをやめるだろう。世の中にはいろいろな家族がいるものである。

・子どもには自信を持って安心するよう教えることだ。そして、他の人から何か言われたときにどう言い返すか、シュミレーションをしておくのもよいだろう。


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Victorian Assisted Reproductive Treatment Authority: VARTA

Melbourne IVF
by technology0405 | 2016-04-21 12:54 | Book | Comments(0)

Sophia's Broken Crayons: As story of Surrogacy from a Young Child's Perspective.

代理出産は代理母の家族にも影響を与える。代理母自身の子どもは、母親のお腹が大きくなっていくのを見て兄弟姉妹ができるものと期待する。しかし、その子どもは他人に渡さなければならない運命にある。その事実をどのように説明し、納得させるか、という問題がある。

「ソフィアの折れたクレヨン」は、代理母になった女性が自身の子ども(Sophia)に宛てた形で執筆された絵本である。

娘のソフィアは、弟がときどきクレヨンを折ってしまうことを悲しいと感じているが、親切な友人が利他心からクレヨンを貸してくれたとき、彼女は嬉しい気持ちになることを知っている。

妻の子宮が妊娠に適していないため、子どもができない夫婦がおり、悲しみに暮れているのを
助けるために彼女の母親は代理母になることを決意した、というストーリーになっている。

この絵本では、折れたクレヨンのエピソードは、代理母の利他心を説明するための喩えとして用いられている。子どもにとっては身近な例だが、代理母の犠牲を過小評価する恐れもある。

また、このストーリーでは、友人を助けるためという設定になっているが、例えばツーリズムのような形で行われる代理出産の場合、代理母自身の子ども、あるいは依頼親の子どもに対し、その事実をどのように説明することができるだろうか? 

代理母自身の子どもにとって、母親がお金のために子どもを渡したという事実が突き付けられる。子どもにとって大きなトラウマになる可能性があることが指摘されている。

依頼親に引き取られた子どもは、どのようにして自らがこの世に生を受けたか、知る権利がある。代理出産で生まれたという事実は、なぜ両親は代理出産を依頼したか、どこで、どのように代理出産を依頼したかということと切り離すことはできない。

インドやタイ、メキシコなどでは既に外国人への代理出産の提供は禁止されるに至っているが、これらの国々で多くの依頼者が代理出産によって既に子どもを得ている。代理母の大半が貧しい女性であり、金銭とひきかえに妊娠出産を引き受けていたのが現実である。

このようなケースで、どのようなストーリー構築が望ましいのか、そして、可能なのか。子どもの自己認識に影響を与えうる大変デリケートな問題である。

折れたクレヨンはのストーリーは、あくまでも代理母になった母親から子どもに語られるものである。したがって、代理出産を依頼した親の立場から、代理母の利他心を説明に用いるのは、適切なことではない。

依頼親は、子どもに対し、代理出産の事実を明らかにするとともに、産んでくれた女性に対し、どれだけ感謝しているか、ということを繰り返し伝え、またその感謝の気持ちを子どもの目に見える形で示すことが不可欠であるように思われる。



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Why I am so special: A book about surrogacy.

Hope & Will have a baby: the Gift of Surrogacy.

The very kind Koala: A surrogacy story for children.
by technology0405 | 2016-04-20 16:57 | Book | Comments(0)

先進国では晩婚化・晩産化が進んでおり、加齢を理由とする卵子提供を希望する女性が増加している。日本もその例外ではなく、近年、卵子提供によるものと思われる超高齢出産が急速に増加している。

卵子提供で子どもを妊娠出産する場合、いうまでもなく生まれてくる子どもと妊娠出産する女性とは遺伝上の繋がりがない。卵子提供は、依頼者の卵子を受け入れて妊娠出産する代理出産の逆パターンであるといえる。卵子提供では、遺伝的に異なる女性の卵子を受け入れ、自らの胎内で育て上げ、分娩を行う。その後の子育てにも慣習上、主に女性が関わるケースが多い。卵子提供が母子関係に与えるインパクトは、精子提供の場合よりももっと大きい可能性がある。

育ての親と子どもが遺伝的関係がない場合、そのことが子どもにどのような影響を及ぼすことになるのかを考えるために、養子のケースや精子提供のケースは先行例として参考になる。一方、卵子提供の特殊性もある。それは、遺伝的母親と産みの母親が別個の人間になるという事実である。これまで、養子のように産みの母親と育ての母親が異なる人間となるケースはいくらでも存在したが、子どもの生命の誕生に関わる女性が二人以上存在するという事態はなかった。この事実が母子関係や家族関係、ひいては子どもの自己認識にどれだけ影響を与えることになるのか。現時点では推測にすぎないが、精子提供で生まれた女性による次の発言が参考になる。

「卵子提供や代理出産は、精子提供よりももっと悪いと思う。母親・母性が分離するのは本当によくない。子どもと母親は特別な関係で結びついている。養子の子どもでも、実の父親には興味がなくても産みの母親には興味を持つと思う」
(精子提供で生まれたイギリス人女性,50代)

子どもにとって、母親は(父親とは比べものにならない位)特別な存在であるという。「母性」は子どもにとって自己に絶対的な安心感を与えるべき拠り所であり、「母性」が複数化することは、子どもから心の拠り所を奪い、大きなダメージを与えることだと彼女は主張している。

彼女は精子提供の当事者であるが、卵子提供の当事者ではない。彼女の主張には肯首できる点もあるが、必ずそうなると言い切れるわけでもない。産みの母親が育児に深くコミットすることが当然視される伝統的家族を前提とするなら、そのようなリスクや懸念は確かに存在しうる。しかし、卵子提供は、伝統的家族とは異なる新たな家族を創造するものである。それは例えば、、子どもと遺伝的つながりがある父親の育児参加を促すことができるかもしれない。
 
卵子提供が新たな可能性に開かれている一方で、国内に目を向けたとき、むしろ伝統的家族の中で卵子提供が要請されているという現実にも直面する。以下はウェブサイトの書き込みである。

「最近、夫が本気で卵子提供を受けたいと言い出しました。
でも、私はどうしても厭なんです。何度目かの話し合いで、夫がぽろっと「◯◯も我執を捨てて・・」と言いました。その途端、私は爆発してしまいました。卵子提供などという不自然なことをしてまで、他人の子を産みたくないという私の気持ちが”我執”なら、厭がる妻に卵子提供までさせても自分の子を持ちたいというあなたの気持ちは我執ではないのか!」「夫婦双方の血を引かない”養子”ではなく、あえて妻に無理強いして、卵子提供で自分だけの血を引く子を得ようとする気持ちは”我執”ではないのか?」と。治療の過程で、仕事を辞めてしまったことも悔やまれます。本当に悔しいです」
(babycomより引用、一部筆者改変)

家族のプレッシャーにより押し付けられた卵子提供によって女性が納得しないまま子どもを産んだとき、その後、母子関係に暗い影を落とすことに繋がりかねない。女性は卵子提供(や精子提供)の結果を自身の身体で引き受ける当事者であるため、女性による真に自発的な同意が不可欠である。 

だがしかし、この技術の最大のジレンマは、最も主要な当事者である子どもの同意をとることができないことである。卵子提供による妊娠出産が世界で初めて行われたのは1983年のことであり、最年長の子どもは現在、30歳を超えている。しかし、現在、出自を知る権利を求めて声を挙げている人々の多くが、精子提供で生まれた人々であり、卵子提供で生まれた人の声はまだほとんど聞こえてこない。

卵子提供の事実を子どもにも周囲にもオープンにしていると話すオーストラリア在住の女性は、次のように述べる。

「38歳で結婚した。アメリカの女優とか見ていて40歳以上で子どもを産んでいる人もたくさんいたので、自分も問題なく妊娠できると思っていた。本当は彼女たちは卵子提供を使っていたのだということを知らなかった。それで、妊娠したいと思ったときに妊娠せず、IVFを受けることになった。何度も何度もやった。しかし、結局自分の卵子での妊娠を諦めることになった。卵子ドナーを探しまわった。夫の元婚約者に双子の姉妹がいた。彼女がすぐに「いいよ」といってくれた。自分としては時間もなかったので、すぐに受け入れた。運良く、すぐに妊娠した。次の時は凍結保存してあったものを移植した。その時もすぐに妊娠した」
 (卵子提供で二人の子どもをもったオーストラリア在住の女性、50代)
 
自分の卵子での妊娠を諦めるのが辛かったこと、しかし前向きに卵子提供を受け入れたことが伺える。

「自分は子どもが2-3歳で座れるようになってから本(Sometimes it takes three to make a baby)を読み聞かせていた。長男は、最近、精子と卵子はどうやって一緒になるのかと聞いてきた。それで自分は「医師がやる」と答えた。その絵本は子どもたちのお気に入りで何度も何度も読み聞かせた。子どもたちはまだ明確に遺伝的つながりの意味を理解していないようだ。しかしほかにdonor siblingsが存在すること(※ドナー自身にも子どもがおり、その子どもたちと血が繋がっていること)に気がついている。しかし、今は別の遊びに関心があり、このことにはそれほど関心がない。高校生くらいになって生物学を学べばはっきりと理解するようになると思う」
 (卵子提供で二人の子どもをもったオーストラリア人女性、50代)

彼女は、卵子提供のことを決して隠し立てせず、周囲の人々にも子どもに対してもオープンに徹している。ドナーの家族とも行き来がある。彼女の子どもの一人にはアレルギーがあるため、ドナーに体質を尋ねることもあるという。親にとってもドナーが知っている人であれば安心感がある。子どもの遺伝的なバックグラウンドを知ることは親にとっても有益であり、必要があればいつでもコンタクトを取れるドナーを探すことが好ましいと考えている。

彼女は、子どもがまだほんの幼い頃から絵本を用いて何度も読み聞かせた。子どももその絵本を気に入っているということは、子どもたちがポジティブに受け止めた証拠であるといえるだろう。しかし、まだまだ無邪気な年齢である。告知は、子ども理解度に応じて何度も繰り返し行っていくことが必要になる。その過程で、男女の関係からではなく、体外受精という技術を用いて生まれたこと、そして、卵子は母親のものではなく、顔見知りの女性のものであることの意味を子どもがはっきりと認識したとき、改めてショックを受けたり傷ついたりする可能性がないとはいえない。しかしたとえそうであっても、幼い頃から何度も聞かされてきたストーリーであるために、突然知らされた場合に比べてその負の影響は緩衝されるはずである。

だが、親の側が最大限の誠意をもって接したとしても、子どもが自らの出自を受けとめることができず、思春期以降、親を責めるというような場面に遭遇する可能性もある。そうした可能性があることは、考えておかなければならないことである。

精子提供で生まれた子どもで、理不尽な状況の中で突然に知らされたというような場合、親、とりわけ母親を責めるという気持ちが生じるようだ。他方、父親は「遺伝的には他人」であるために同情の対象ではあっても不満の矛先には選ばれにくいという現象も見られる。卵子提供の場合はどうだろうか。卵子提供では、母親は、「遺伝的にも生物学的にも100%の母親」ではないために、母子関係に距離が生じることになり、子どもが安心して自我をぶつけることができないという現象が生じるかもしれない。しかしこれは、悪いことばかりではない。多くの家庭で母子関係が密着しすぎることの弊害が指摘されており、適度な距離感は母子関係を良好なものに導く可能性もあるからである。精子提供や卵子提供が子どもにとって持つ意味は、子どもの性別によって異なる可能性がある。

昨今、成人した当事者の助言に従い、精子提供や卵子提供の事実をできるだけ早い時期から子どもに告知することが推奨されている。告知を決意した親は、こうした声に誠実に向き合っていると評価できる。しかし、一方では、告知され、内心ショックを受けたことを親に隠す子どももいる。この場合、子どもの存在論的な不安は、より内向していくことになる。大人から見て、子どもが受け止めたように見えていたとしても、実際はそうではないかもしれない。成人した当事者や専門家の助言に従い、勇気をもって告知したからといって全てが解決し、うまくいくとは限らない可能性も考えてみるべきである。

精子提供で生まれた世界各国の当事者たちが声を挙げており、この技術が、子どもから見て、どのような問題点があるか、徐々に見えてきている。彼らの主張には、ある種の普遍性が認められる。一方、卵子提供は精子提供とは異なる面があり、卵子提供で生まれた当事者の経験は明らかになっていない。いずれにしても、自然妊娠で子どもを持つ場合に比べて、精子提供や卵子提供、そして代理出産には伝統的なモデルがない分、異端視されており、周囲の人々が偏見を持っているという事実が、当事者にとって一層リスクを高めている。人々によく知られていない方法によって子どもを持つことは、社会実験的な要素を不可避的に持つことになる。そして、その負担や結果を引き受けることになるのは、生まれてくる子どもである可能性が高いことも、親としては考えておかなければばならないことである。


※)この記事の一部は、「厚生労働省平成26年度児童福祉問題調査研究事業  諸外国の生殖補助医療における出自を知る権利の取扱いに関する研究」によるものです。


厚生労働省 年齢階級別分娩件数

Babycom

Sometimes it takes three to make a baby


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by technology0405 | 2016-04-19 13:38 | Discussion | Comments(0)

バブル崩壊後の20年あまり続いたデフレによって、国際社会に占める日本の経済的地位は相対的に低下している。総GDPでは、中国が世界2位であり、日本は3位となっている。近年の円安傾向によって日本のモノやサービスは外国人から見て割安感がある。訪日する外国人観光客は増加を続けており、インバウンド需要を見込んだビジネスが活況を呈している。特に近隣の中国からの訪日客の「爆買い」現象はよく知られているところである。中国の経済発展はめざましく、都市部を中心に不動産価格は上昇を続けており、中国の富裕層の経済力は、日本の中産階級をはるかに凌いでいる。中国からみて日本は、旅行者として安価で質の良いサービスや商品を購入できるだけでなく、安全な食品、汚染されていない空気など生活環境も圧倒的に良い。

中国の富裕層が日本で出稼ぎをする中国人に代理出産を依頼していたことが明らかになった。日本の医師が移植などを行い手助けしていたとされる。中国では代理出産は全面的に禁止されている。一方で旺盛な需要があり、アンダーグラウンドで代理母取引が盛んに行われている。海外に目を向ける動きもあり、子どもが米国籍を取得できるというメリットもかねて米国で代理出産を依頼する富裕層も増加中である。

中国では爆発的な人口増加を防ぐ目的で一人っ子政策が行われてきたが、近年、廃止されることになった。もともと子だくさんを好む国民性もあることから、第二子へのニーズが生じており、それとともに体外受精や代理出産などの希望者が増加しているものと思われる。

富裕層にとって、金銭で希望するモノやサービスを手に入れることは当然のことであり、実子であっても同じことである。中国では、依頼女性が他人の卵子を用いて自ら妊娠出産するという考えは乏しい。逆に、他人に妊娠出産を委託するという考え方には抵抗がないようだ。経済的余裕がある依頼者であれば、間違いなく後者を選ぶだろう。

同胞の代理母が好ましいとはいえ、代理出産は中国国内では違法であるため、国内でやろうとすれば、危ない橋を渡ることになる。しかし、海外、例えば近隣の日本でやれば、法律違反にはならない。日本では代理出産を禁止する法はなく、日本で代理出産を行っても処罰されることはない。もし中国人ではなく、日本人の代理母に依頼するなら、生まれた子どもは日本の国籍を取得することができる・・・。富裕な人々にはさまざまな選択肢が存在しており、その選択肢の中に日本人代理母の利用が存在するとしても不思議ではない。

「国外において貧しい人々に経済的対価と交換に代理懐胎を依頼 するいわゆる「代理母ツーリズム」を阻止するためには、前述の臓器の 移植に関する法律が「臓器移植ツーリズム」にも対応しようとしたよう に、代理懐胎を規制する法律は、国民の国外犯をも処罰することになろ う。」
日本学術会議2008『代理懐胎を中心とする生殖補助医療の課題』

2008年に公表された日本学術会議の報告書では、法整備に向けて、代理出産に関するさまざまな問題が検討されていた。上述の文章は、生殖ツーリズムについて述べたものだが、国内で代理出産を禁止した結果、日本人が海外で代理出産を行うことを想定していても、外国人が日本にやってきて代理出産を行うという事態は想定されていないようだ。しかし、国内に居住する日本人が有償の卵子ドナーとして利用されているという現象は、もはや既成事実となっている。代理出産は卵子提供よりもはるかに重い負担を女性に強いるものであり、引き受ける女性にとって、容易に決断できるものではない。しかし、今後、代理母になる日本人女性が出現しても不思議ではない。

女性の貧困化が進んでいると言われている。結婚制度の中で生きないという選択をとる女性がますます増えてきている一方で、女性の管理職への登用は進まず経済的自立への壁が存在する。子どもを引き取って離婚した場合、母親の収入だけで生きていくことが困難になる。結婚制度の中で生きていない女性の貧困化は昨今ますます進んでいるようだ。自己実現のために売春を行う女性がいるといっても、大半のケースでは経済的困窮を解決する手段として売春が選ばれているのが事実である。売春に加えて、新しい選択肢として、代理母になるという方法が生まれる可能性がある。

日本の経済力の凋落、格差の拡大、そして女性の貧困化によって、日本人女性が代理母として利用される日が、近づいてきているのかもしれない。


Link

鈴木大介「再貧困女子」

NHK 「女性たちの貧困"新たな連鎖"の衝撃」

「代理母は使用人」: 代替可能なもの・不可能なもの(中国調査結果)

アジアの生殖補助医療(生殖テクノロジーとヘルスケアを考える研究会 報告書Ⅲ)



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by technology0405 | 2016-04-17 10:09 | Discussion | Comments(0)

オーストラリアは精子や卵子の提供、代理出産などに関して日本よりもはるかにオープンな社会である。
とくにビクトリア州は、出自を知る権利について先進的な取り組みで知られ、2017年から過去に行われた全てのドナー情報がオープンになる。親の側に告知を義務づける法律はないが、告知をすることが望ましいというコンセンサスがあり、親も告知することを自然なこととして受け入れている。以下は、精子提供で生まれたことを両親から告知を受けたシドニー在住の若い男性による証言である。

「11歳か12歳のとき、精子提供で生まれたことを知った。両親の前に座らされて、父親は遺伝的父親ではないことを告げられた。弟がいて、弟は別のドナーからの精子提供で生まれている。弟も5年後に同じように告知されたようだ。父親とは何となく違うと前から感じていた。例えば父親は数学とサッカーが好きでできるが自分はできない。自分はクリケットが得意だが父親はできない、など。思春期になる前で同性のロールモデルが必要な時期に告知された。とてもショックで、そのとき、何も話せなかった。その後、両親とこの話をしたことはない。弟ともこの事については一切話したことがない。このことについて10年あまり考えつづけて、やっと1年前からグループで自分の経験を話すようになった」

告知は、思春期前のできるだけ早い時期に行うのが良いとされている。マニュアルに沿った形で、両親は告知を行ったものと考えられる。だが、それはもしかしたら遅かったのかもしれない。また、できるだけリラックスした環境の中で行われるのがよいとされている。だが、このケースでは両親の前に座らされ、とてもリラックスした雰囲気の中で真実告知が行われたとは思えない。彼はこの事実を大きなショックをもって受けとめたが、それを両親に告げることなく、思春期を過ごした。

「親は子どもに嘘をつかないで欲しい。自分の場合は、父母がそろって話をしてくれたので幸運だったと思う。当事者グループの人たちは、父親が死んだ後とか、離婚した時とか、人前でとか、いろいろな状況で突然知らされた人もいる。そういうのはよくない。あくまでも計画された状況で告知されるのが望ましい。家の中でリラックスした状況の中がいい。自分は11歳で知らされたが、実際にはもっと早いほうがいい。早ければ早いほどいいと思う。」

告知を受けたことで大きなショックを受けたというが、告知されたこと自体はよかったと受け止めている。

ドナーについてはどう思っているのだろうか。

「ドナーについては是非とも知りたいと思っている。ドナーの情報については、個人を特定しない情報については生まれた病院から得ることができる。弟とはドナーが違うので、弟とこの話は一回もしていない。親が病院に申請すれば、もう少し色々情報が貰えるのかもしれないが、やっていない。理由は、両親にドナーの情報が欲しいと言えていないから。父親はドナーの情報が知りたかったら協力すると言ってくれた。しかし、父親を傷つけるのではないかと思い言い出せていない。ドナーは、二人目の父親ということはない。父親の兄弟とか、おじさんとか、家族の友人とか、そんなイメージ。ドナーには会いたい。家族が落ち着いたときいずれ話をしたいと思っている。」

ドナーから生まれたという事実を知ったとき、ドナーを知りたいという人がいる。とはいえ、実際には同じドナーから生まれ、同じ家庭で育った兄弟姉妹でも、ドナーに対する興味の程度は違う。一人はとても興味があるが、もう一人は全く興味がないということもめずらしくないという。しかし、若い頃には興味がなくても、のちに結婚や子どもの誕生などをきっかけにドナーに興味を持つようになることもある。一般に、ドナーを自分とは無関係な他者として、生涯いっさい関心を払わない人は少数派ではないだろうか。

父親についてはどのように思っているのか。

「父親と目の色(母とは同じ色)や趣味が違うことや父親の親戚とも違うことについては、よく意識しているが、母親と違うことについてはあまり意識しない。母親とは近いが父親とは遠い。母親とは考え方や仕草などよく似ている。しかし父親のことはとても尊敬している。自分の子どもではないと知りながらも愛情を注いでくれたから。」

父親とは距離があると述べている。また、遺伝的に違うということを意識することが多いという。自分を遺伝的つながりがないことを知りながらも誠実に育ててくれた父親には感謝し、尊敬しているという。

彼は、告知をしてくれた両親には感謝をしており、表面的には良好な関係を築いている。しかし、内心では大きなショックを受けており、さらにそのように傷ついていることを両親に悟られないように一層気を使っている。両親が思い切って告知をしたことは評価できることかもしれないが、彼の事例からは、告知の方法や時期などは、非常に繊細な問題であることがわかる。そして、真実を知ったことによって彼が影を背負ったことは認めざるをえない。

気をつけなければならないことは、親は告知をしさえすれば責任を果たしたことにはならないということである。むしろ、告知した時から信頼関係を構築するプロセスは始まる。告知は一度きりのものではなく、子どもの成長に合わせて繰り返し行い、なぜその選択をしたか、その選択をした結果、子どもを存在をどう受け止めているのか、親は子どもの人生に寄り添っていくことが必要である。

告知がもたらすネガティブな影響に目を留めたかといって、子どもに真実を告げないということはもはや推奨されるべきことではなく、精子や卵子の提供、代理出産などを利用して子どもを持とうとする親は、この事実について受け止めた上で、技術を利用するかどうかを選択する必要がある。


※この記事は「平成27年度 厚生労働省 子ども・子育て支援推進調査研究事業」によるものです。


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by technology0405 | 2016-04-13 11:36 | Discussion | Comments(0)

2012年から2015年にかけて、代理出産ツーリズムの渡航先に大きな変化が見られた。
 
インドは2002年に商業的代理出産を合法化して以来、代理出産ツーリズムの中心地であったが、2012年に医療ビザ規制を導入したことにより、事態は急変した。依頼者の大部分がインドを去り、タイへと向かったのである。短期間で大量の依頼者を迎えることなったタイでは、法規制もない中、すぐに大きなトラブルが勃発した。メディアでも大きく報道された深刻なトラブルをきっかけに、タイは2015年初めに商業的代理出産を禁止した。

インドやタイに代わって渡航先として浮上したのが、ネパールやグルジア、メキシコ、カンボジアなどであった。これらの渡航先のうち、ネパールやメキシコでは2015年の末までに閉じられた。また、インドでも、2015年秋に外国人への代理出産の提供は一切禁止となった。残る選択肢として、東ヨーロッパ、グルジアやウクライナなどもあるが、これらの国では婚姻している男女カップルしか受け入れておらず、独身やゲイカップルは依頼することができない。非異性愛カップルは商業的代理出産の依頼者の一定割合を占めており、こうした依頼者の一部は、(リスクがあると知りつつも)カンボジアへと渡航している。

カンボジアでは、現在までに代理出産についての法律がない。その意味ではタイと環境が似ているが、しかし、現在、最もリスクが高い渡航先となっている。それは以下に述べるような事情がある。

カンボジアでは代理出産に関する法律がないだけでなく、体外受精などの技術はまだほとんど人々に知られていない。たとえ体外受精で他人の卵子を使っていたとしても、生まれた子どもは代理母の子どもとして登録される。体外受精クリニックがプノンペンに初めて設立されたのは、2014年9月のことであり、翌2015年に体外受精による初めての出産が成功を収めている。これには伏線がある。つまり、タイで代理出産がらみの大きなスキャンダルが勃発したのが2014年8月、その後すぐにタイ政府が代理出産を禁止するとの見通しが明らかとなった時期であり、この時すでに、カンボジアがポストタイの有力な移転先となっていたということである。

タイで代理出産が禁止される見通しとなり、タイのクリニックで保管されている受精卵をどうするかが、依頼者にとって愁眉の問題となった。急ぎ受精卵をタイ国外に出すことが安全策として求められ、近隣のカンボジアへと移送されることになった。それとともに、代理母への移植もまた、カンボジアのクリニックで行われることになった。そして、これまで多くのタイ人代理母が送り込まれ、受精卵の移植を受け、たいに戻っていった。だが、カンボジア政府がこうした動きを察知するのは早かった。2014年11月には、商業的代理出産は違法であるとの見通しがカンボジア政府によって示されたのである。カンボジア政府の警告を受け、カンボジアで代理出産を依頼しようとする母国人に対し、カンボジアでの代理出産の依頼を取りやめるよう、オーストラリアや英国の当局によってガイダンスがなされた。当初、代理出産の禁止を目前にタイが大混乱に陥っている最中でもあり、十分に考える時間もないまま、カンボジアで代理出産を行った依頼者も少なからず存在しただろう。その後、タイ人代理母のみならず、カンボジア人女性や近隣の貧しい国々から代理母を連れてきて、カンボジアのクリニックで移植するという形で、代理出産が行われている。

タイでの商業的代理出産は2015年1月をもって正式に閉じられることになり、2015年3月には代理出産ツーリズムの大手であるNew Life Global Networkがカンボジアに支店を開いた。New Lifeでは、カンボジアでは代理出産そのものを禁止する法律がないことや、父親と母親と子どもに対し同等の権利を持つという既存の条文を根拠に、実施可能であると見なしているが、現地ではたびたびカンボジア当局による調査が行われたとみられる。New Lifeは、その度に賄賂を支払い、追及を逃れてきたものと思われる。

 タイのオルタナティブとして見いだされたカンボジアだが、きわめてリスクが高い状況となっている。既に日本の複数のエージェントが、カンボジアに日本人依頼者を送り込んでいる。しかしこれは後先を考えない危険な行為である。人身売買は刑法により禁止されており、商業的代理出産はまさに人身売買にあたるというのがカンボジア政府の公式見解である。こうした警告を無視し、あるいは既存の別の法を都合良く解釈することによって、New Lifeを始めとするエージェントは独自の見解によってカンボジアでの代理出産は違法ではないと判断し、依頼者を送り続けている。

カンボジアは後発開発途上国であり、貧しい女性や子どもが売春を始めとする人身売買の犠牲となっている現実がある。先進国からの援助を受けた人権団体も活発に活動を行っており、 女性や子供の人権が絡む違反行為に対し、政府も厳しい姿勢をとっている。カンボジアでは、離婚した女性などが代理母となることが多い。代理出産で産まれてきた子どもは、代理母の子どもである。したがって、子どもはカンボジア国籍を有する。生まれたばかりの乳児を母親の手から引き離し、外国人依頼者が国外に連れ出すことができるのか、カンボジア当局が許可を出すのかどうか。代理出産が疑われる場合、子どもの連れ出しにはストップがかかる可能性が高い。この結果、カンボジア人代理母から生まれた子どもが、カンボジアを出国できない可能性は十分にある。日本のエージェントは、事前に十分に調査することなく、日本人依頼者を送り込んでおり、その結果、帰国困難となれば必然的に乳幼児を抱えた状態で長期滞在を強いられ、打開策がなければ国際的な問題にまで発展する可能性がある。

一方、カンボジアは国籍ですらお金で買うことができるという金持ち優遇の賄賂社会でもあるため、関係者に対して多大な賄賂を支払うことで解決策を見いだせる可能性はある。たとえ自力で解決できたとしても、長期滞在を余儀なくされれば、依頼者は、精神的にも追いつめられ、時間もお金も浪費することになる。このように、カンボジアは最もリスクが高い渡航先となっているにも関わらず、エージェントらは、こうした事実を伏せて、あるいは自らのビジネスにとって都合が良い解釈だけを提示し、依頼者を送り込み続けている。そのリスクや結果を引き受けるのは、決してエージェントではないことに留意が必要である。
 
※この記事は第23回ファイザーヘルスリサーチ振興財団研究助成によるものです。

Link
Nacelle Dickinson Stop8: Cambodia

Surrogacy in Cambodia

'Somebody has to be the icebreaker': Aussies seeking babies turn to Cambodia

Gov’t to Crack Down on Surrogacy Clinics

The billion dollar babies

Australian Embassy Cambodia

Paid Surrogacy to be declared "Human Trafficking' in Cambodia

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by technology0405 | 2016-04-08 10:44 | Discussion | Comments(0)
各国のARTに関する資料や記事を集めています (※ このブログに書かれている情報の信ぴょう性は各自でご判断ください)