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法と技術の内部矛盾

不妊治療を男女の婚姻カップルに限るという法律はもう古い、という声が香港であがっている。

梁家康(Milton Leong Ka-hong)医師が1986年に香港初のIVF児の出産を成功させて以来、生殖補助医療は変容し続けてきた。今や、排卵誘発剤の効果は上がり、男性不妊に対処するためのものだったドナープログラムに、卵子提供が加わった。成功率も安定した。健康な精子と卵子を1個でも採取することができれば、受胎は可能になった。
そうは言っても、不妊治療が未だに、頻繁な注射と診察を繰り返さなければいけない大変な作業であることに変わりはない。

金融業の管理職を務める41歳のレベッカ(仮名)にとっても、妊娠への道のりはたいへん険しいものだった。独身で結婚予定のない彼女は、香港で人工受精を受けることができず、海外でやることを検討するしかなかった。
「アメリカ人ドナーから精子をもらい、タイのクリニックですべてをやりました。香港でモニタリングをやってくれる婦人科医を見つけ、薬を飲み、実際の手術をタイで行うのです。4サイクルの人工受精のたびにタイを行ったり来たりして、たいへんお金がかかりましたが、妊娠しませんでした。」
「幸い、もう少し融通をきかせてくれる医師と出会うことができました。手術は一切してくれませんでしたが、家で自己投与できる排卵誘発剤を処方してくれました。彼との出会いは非常にラッキーでした。というのもこれは法的に微妙な行為ですから。他の医師は助けてくれませんでした。9日間で薬の効果が出たので、私はタイに飛び、採卵と胚移植を受けました。」

2度の体外受精の後に彼女は妊娠し、男の子を生んだ。しかし、子供を持つためにかけた労力があまりにも大きかったとレベッカは言う。「仕事を持ちながら海外にしょっちゅう行くのは難しい。」

こうした難しさは、「人類生殖科技條例(Human Reproductive Technology Ordinance)」に起因している。中でも、国内の不妊治療を男女婚姻カップルに限定するという規定は、時代遅れだという意見は多い。
「ヒト組織の使用に慎重になる必要性は理解できる。しかし、配偶者の有無だけを判断材料にするのは完全に時代遅れ。香港では、結婚証明書を見せないと医者に相談することすらできない。私は自分の意思でシングルマザーになったのに。」とレベッカは言う。
「独身女性や同性愛者、事実婚カップルなど、正式な結婚の枠外の人間は誰も親になる資格がないという道徳的判断を、政府は下しているようだ。」

人権団体や生殖医療の専門家たちもこの見解に賛成する。
女性権利団体Women Coalition(香港女同盟會)のスポークスマンYeo Wai-wai(杨炜炜)によると、法律の適用範囲が広いため、海外で不妊治療を求める事実婚カップルも法律違反になるという。
「我々は、海外で治療を受けたいという香港のレズビアンカップルからも問い合わせを受けた。彼女らは法律に違反することを恐れている。香港には違う国籍を持つ事実婚カップルも多く住んでおり、そうした人々が海外に行き、その国で認められている不妊治療サービスを受けるケースが多い。しかしもし彼らが香港籍の人間だったなら、法律を破ったことになっただろう。」

条例が古いせいで多くの問題が起きていると、Hong Kong Society for Reproductive Medicine の前会長だったLeong氏は言う。条例の起草は1980年代であったが、その時の一番の関心事は近親相姦の可能性を防ぐことだった。その当時、人工授精が香港で導入されたばかりで、香港家庭計劃指導會(Family Planning Association) によって精子バンクが設立された。同じ精子ドナーを父親に持つ二人の人間が結婚することが、政府の懸念であった。法律により、一人のドナーの精子または卵子を使って生まれる子供は3人までと規定された。

しかし条例が最終的に通過する1997年、医学は大幅に進歩していた。生殖補助医療を規制する人類生殖科技管理局(Council of Reproductive Technology) が設立された2001年までに、技術的進歩によって精子提供はそれほど必要とされなくなっていた。

Leong氏によると、人工授精は1980年代から90年代にかけて一般的だったという。しかし新技術の出現――極微針で卵子に精子を直接注入する技術など――により、医師は、卵子を受精させるのにそれほど多くの精子を必要としなくなった。

条例の作成中、起草者の間に多くの誤解があったとLeong氏は言う。
「彼らが法律について話し合っている時、1986年に香港初のIVF児が生まれた。体外受精が何かも知らない者が多く、提供精子による子供だと思い込んでいた。しかし、精子提供は人工受精の一種に過ぎない。」
「年間7000件の生殖補助医療のうち、提供によるものは1%未満だ。それほど少数のケースを監督するために仰々しい管理業務はいらないし、こんな古い法律も必要ない。」

人類生殖科技管理局の数字をみると確かに、精子提供の件数はごくわずかであり、この見解の正しさを裏付けている。管理局の本務は、代理出産や胚の作成といった生殖医療問題を調査したり、不妊治療提供者にライセンスを供与したりすることである。今のところ不妊治療に関わる何らかの技術を提供できる施設は約50あり、そのうちAIHが認められているのが36施設である。

不妊治療センターを経営するLeong氏は、生殖科技及胚胎研究實務守則(Code of Practice on Reproductive Technology and Embryo Research)でエンブリオロジストに対する訓練を義務付けるなど、管理局はクリニックの必要条件をもっと厳しくすべきだと主張する。逆に、不妊治療を受けるカップルの条件は緩和されるべきだと考えている。治療を受けるたびにカップルは身分証明書や履歴書を管理局に送らなければならず、経過によって治療が何年も続くことを考えると、厳しすぎる規定だと彼は言う。
「カップルが不妊治療を受ける理由は、卵管閉塞や精子不足など様々だ。しかし、精子提供など第三者の関わる治療を伴うケースはほとんどない。わざわざ意味のない面倒をカップルにかける必要がない。」

管理局の創立メンバーEdward Loong Ping-leung(龍炳樑)氏は、こうした要件は、患者が海外のバンクで精子を購入することを防ぐために必要なのだと言う。管理局のスポークスマンも、情報をすべて管理局が把握しておくことで、知らずに近親相姦が起こってしまった場合でも、レシピエントがそれを検証することができると説明する。

親グループHong Kong Institute of Family Education(香港家庭教育學院)の会長Tik Chi-yuen(狄志遠)は、この20年で家族の概念は変化したと言う。「結婚せずに子供を持つカップルはどんどん増えている。同性愛を支持するわけではないが、ひとり親家庭や同居婚カップルは今多い。」様々な人が不妊治療を受けられるよう政府は法律を見直すべきだと、彼は考えている。

家族法の専門家で法律事務所Hampton, Winter and Glynn (HWG)の共同経営者Winnie Chow Weng-yee(周韻儀)も同意する。「医療としての生殖技術はどんどん進んでいる一方で、法律は全く変わっていない。」と彼女は言う。条例作成のために行われた調査や協議は1980年代と90年代に実施されたものである。
「今は2013年なので、少なくとも20-25年のギャップがある。完全に世代が交代している。条例に規定されていることは必ずしも社会規範に一致しているとはいえない。」

香港での選択肢が他国に比べて限られていることを聞かされた彼女の顧客は、一様に失望するという。この条例に関する判例もまだないので、法の解釈の決め手もない。
「しかし私は、男女の婚姻夫婦が子供を育てるのに理想的だという考えは偏狭だと思う。結婚しているからといって必ずしも良い親だとは限らない。」とChow氏は言う。「香港の法律は、子供の最善の利益が基本原則となっている。愛と思いやりにあふれた親を持つことが子供にとって最善の利益だ。親の適性は個人の問題であり、子供を世話できるかどうかだ。婚姻状態ではない。」

Internal contradiction
Elaine Yau
[South China Morning Post (Print Edition), 16 July, 2013]

香港女同盟會

Hong Kong Society for Reproductive Medicine

香港家庭計劃指導會

香港家庭教育學院

Hampton, Winter and Glynn

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by technology0405 | 2013-07-30 11:02 | Countries | Comments(0)

性犯罪の前科を持つイスラエル人が、数年前にインドの代理出産で子供を得て母国に連れ帰っていたことが明らかになり、インド代理出産産業に衝撃が走った。しかし今のところ、この4歳になる女児に対し、インド政府やイスラエル政府ができることはほとんどない。

「親が子供に深刻な害を与えているという証拠もなく家庭から子供を引き離すことは、法律でできないことになっているので、現時点でこの子供を親と離すことはしない。」と、エルサレムに本部のあるNGO団体National Council for the Child (NCC)国際関係部門のディレクターElizabeth LevyはGlobalPost紙に語った。

匿名のEメールを受け取り、NCCは独自で調査を開始、女児を育てている男性が性犯罪前科者であることを確認した。彼は幼児に性的虐待を加えた罪で1年半刑務所にいたと、Jewish Chronicle紙が報じている。

NCCは、警察や公共機関、女児の通うスクールにこのことを知らせた。イスラエル当局は、男を監視下に置き、心理的カウンセリングを受けさせはしたが、男が女児の実の父親だということもあり、それ以外の法的行為は一切とられていない。

NCCの調査でも、虐待がなされているという証拠は見つからなかった。「彼が子供に危害を加えているという証拠がない。父親から嫌な行為は何も受けていないと、子供が言っている。」とLevy氏はGlobalPost紙の電話インタビューで答えている。

多くのインド人にとって、これは受け入れ難いことである。しかし専門家は、インド当局が行動を起こす法的理由がないと言う。また、有罪判決を受けたことのある別の小児愛者が今後インド人代理母を雇うことを阻止するような法律も整っていない。今回の発覚によって、2008年以来ずっと宙ぶらりんになっている規制法案を速く成立させよという声が高まった。

インドの商業的代理出産は、2002年に政府が合法と認めて以来増え続け、ここ5年ほどで急増している。公式数字はないものの、Sama Resource Group for Women and Healthの最近の報告によると、概算見積もりで年間3億5000万ドル以上のビジネスといわれる。同時に業界の目算では、年間5万人が代理出産目的でインドを訪れ、年に約2000人の子供が生まれているという。賛否両論ではあるが、貧しく教育のない女性たちが、代理母になることで生活の糧を得ている。

ゲイの男性がインドで代理出産をできなくなるというニュースが2013年初めに話題となった。その議論を見ても分かるように、代理出産産業の規制は道徳的に複雑である。新しく制限事項が加わったり、官僚的な管理が強まったりすることは――それが善意に基づくものでも無知に基づくものでも――ビジネスにとって非常に都合の悪い可能性がある。ゲイの男性に対する規制が施行されれば、インドの顧客の3分の1から半分はタイなど他の国に奪われてしまうだろうと、ある産業専門家はGlobalPost紙に語った。

しかし、規制の強化がビジネスを規制しても、親の適性決定において生じる潜在的な問題が見落とされる可能性は非常に高いということを、このイスラエルのケースは物語っている。「我が国(インド)に代理出産に関する成文法がないことは、一番の問題である。代理出産は、自主的な二方の関係者の私的契約とみなされている。」と、養子関係を専門とする最高裁弁護士Rekha Aggarwal は言う。

代理出産契約が私的契約とみなされる現行では、依頼親の身元調査は一切行われない。そして、自分が子供の生物学上の親だと依頼親が証明すれば、養子に関して設けられている厳しいルールも適用されない。実際、生物学上の親がすぐに子供の外国籍を取得できているケースが多い。

今のところNCCは、この性犯罪前科者に雇われた代理母についても、彼が使ったエージェンシーについても、何も把握していない。詳細が分からないので、インドの人権擁護者たちもこの先どう進むか途方に暮れている。

「我々は、この子供がインド国内のどの場所で生まれたのか情報を探している。」とニューデリーのHaq Center for Child RightsのメンバーBharti Ali は言う。「イスラエルが情報を持っていないので、我々も結果的に苦戦している。」

今回の発覚で、イスラエルでもインドでも、より厳しい規制を求める声が高まっている。
インドの子供人権擁護団体は、政府が早くAssisted Reproductive Technology Billを成立させ、養子縁組の養父母選定でされているような身元調査を代理出産の依頼者にも行うべきだと、強く主張した。

同様にイスラエルでも、NCCが厚生省に対し、海外の代理母を雇う依頼親に関して実効性のある規制を実施するよう、公式文書で要求した。文書にはこう書いてある。「善良な国民が(しばしば他に選択肢もなく)海外の代理出産によって親になり、子供に国籍も人権も与えられないという状態に陥る。こうした事態は、法律があれば円滑に処理できるようになるだろう。他方で、海外の代理出産に対する法的規制を実施すれば、代理出産の依頼者を選抜することができ、議論の対象になっている人身売買や虐待目的で子供を得るといった状況を避けられるだろう。」

しかし今のところ、性的虐待の恐れがある父親の下にあるこの4歳の女児に対し、両国とも手出しできない。
「彼女はインド国籍を持たないので、インド政府は手を出せない。少なくとも政府レベルでは。」とAggarwal 氏は語った。

Israeli sex offender taps India's booming surrogacy trade for baby girl
Jason Overdorf
[GLOBAL POST, June 10, 2013]

Israel: Authorities Helpless as Convicted Paedophile Adopts Four-Year-Old Girl
By Drishya Nair
[IB Times, June 7, 2013]

India's shame story: Israeli paedophile adopts girl through surrogate mother
Manan Kumar, Ritika Chopra
[dna, Jun 8, 2013]

Israeli sex offender adopts girl: Why India needs to regulate surrogacy better
by Deepanjana Pal
[FIRSTPOST, Jun 8, 2013]

NCPCR raises alarm over Israeli paedophile adopting Indian girl
[THE HINDU, June 9, 2013]

Convicted paedophile gets child from surrogate mother in India
by Michael Cook
[Bio Edge | 15 Jun 2013]

Indian girl adoption: Israeli NGO seeks tougher surrogacy laws
[Business Standard, June 9, 2013]

Convicted pedophile raises surrogate daughter
Noam Barkan
[Y Net News, 06.02.2013]

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by technology0405 | 2013-07-18 15:55 | Countries | Comments(0)

Lee氏への捜査打ち切り

Henderson Land Developmentの副社長Peter Lee Ka-kitが代理出産で3人の息子を得た疑いで、10ヶ月間の捜査が続けられていたが、警察は捜査を打ち切ることにした。警察の広報担当官によると、犯罪行為がなされたことを示す証拠が不十分だったため、法務部との相談の上、捜査を終了することを決めたという。

捜査打ち切りのニュースが報道されたのは、人類生殖科技管理局と医療評議会が、香港の内外にかかわらず商業的代理出産の交渉に関わることは違法であると改めて表明した、そのわずか一週間後のことだった。

Henderson Landは2011年10月26日にChi-shun、Chi-yan、Chi-yungと名付けられた男子3人がアメリカで生まれたことを公表している。3人の息子の父となったPeter Leeは社長Lee Shau-keeの長男である。

子供たちの母親は誰か明かされていないが、カリフォルニアの代理母だと報じられている。
商業的代理出産は、香港では違法だがアメリカでは合法である。
人類生殖科技管理局と医療評議会は2012年7月に「代理出産による子供の誕生は、国民全体の関心事である」とコメントを出した。しかし、商業的でない代理出産契約に関しては合法であることも同時に認めた。Lee氏のケースには触れなかった。

James To Kun-sun議員は、捜査打ち切りは別に意外なことではないと感じている。「Lee氏は3人の子供ができたとしか言っておらず、母親が誰だとも言っていない。周囲が勝手に代理出産と結びつけているが、金のやり取りがあったことを示す領収書など、確たる証拠があるわけではない。」ある女性が無償で代理母になった可能性も考えられるとTo氏は言う。

両カウンシルは、このケースを徹底的に追求するかどうかという質問に返答しなかった。
人類生殖科技条例が2000年に制定されて以来、まだ一度も条例違反の起訴は起こっていない。

Lee surrogacy case closed for lack of evidence
[South China Morning Post, 14 August, 2012]
by technology0405 | 2013-07-12 17:16 | Countries | Comments(0)

台湾で公開討論会

代理出産条項を人工生殖法に入れ「妊娠できない夫婦に希望を」と主張している江議員が2013年7月9日に「『人工生殖法』還能為不孕夫妻做什麼?」と題した公開討論会を主宰し、熱い議論が繰り広げられた。衛生署は2005年に代孕生殖法の起草を発表したが、激しい論争にあい、代理出産の合法化は賛同を得られなかった。

中国国民党の立法委員Chiang Hui-chen (江惠貞)は、代理出産法案を通すことの難しさを考えると、現行の人工生殖法を改正する方が、目的達成のための近道になるだろうと述べた。

國民健康局の副局長Kung Hsien-lan (孔憲蘭)は、条件付きで代理出産を容認するという衛生署の立場を確認し、「代理出産は生殖補助医療に含まれる」との見方から、現行法の改正で足りるという考えを表明した。

しかし、7月9日の議論は、そもそも代理出産を認めるべきかどうか、という点に焦点が当てられた。「代理出産を認めるという前提の下で議論を進めることはできない」と婦女新知基金會(Awakening Foundation)の開発課長Lin Shiou-yi (林秀怡)は言う。

和信治癌中心醫院(Koo Foundation Sun Yat-sen Cancer Center)の薬局長Chen Gau-tzu (陳昭姿)は、昔からの代理出産賛成派である。Chen氏は、多くの西欧先進諸国が数年前から代理出産を合法化していると言い、「代理出産に反対する人々は、“女性の手段化” といった使い古されたスローガンやイデオロギーで議論を中断するべきでない」と主張した。

国立交通大学大学院テクノロジー関連法研究科の助教Carol Lin (林志潔)も、代理出産反対派はやみくもに技術進歩に抵抗するのでなく、実質的な代替案を出す必要があると言う。「我々は、法の適用など実質的な事柄に焦点を当てなくてはならない。誰にでも認めるのか、結婚した夫婦に限定するのか、代理出産児をどのように法的に依頼親の子供とするのか、代理出産エージェンシーの資格はどうするか、代理母への報酬を認めるのか、など問題は多い。」

法と生殖医療政策を専門とする国立陽明大学の准教授Rei Wenmay (雷文玫)は、代理出産が、Chiang議員たちが示唆するような少子化問題の解決策としてみなされるべきではないと警告した。「少子化対策に必要なのは、保育施設の改善と、家庭中心の政策である。」議論の目的は、子供のできない夫婦をいかに助けるか、彼らの生殖権をいかに守るかであると同時に、「代理出産には第三者である代理母が関わるので、代理母の権利も同様に保証されるべきだ。」と主張。「代理母の権利は、現行のような契約書の中ではなく、成文法の中に明記されるべきだ」と言い、代理出産の実施には、専門家との相談や媒介機関の設置が欠かせないとも付け加えた。

代理出産合法化に断固反対する台湾女人連線の会長Huang Sue-ying (黃淑英)は、合法化の提案を、「一部の人間のニーズに応えるために他人のリスクや権利を軽視している」と一蹴した。「衛生署の法案は代理母のことを‘carrier’と呼ぶなど、代理母を道具扱い。母親に対する差別である。」と批判した。

立委推動代孕法制化 婦團有異見
[自由時報、2013-7-10]

Forum discusses surrogacy draft act
By Alison Hsiao
[Taipei Times, Jul 10, 2013]

代孕納人工生殖法 國健局研議
王靖怡
[CNA中央通訊社、2013年7月9日]
行政院衛生署國民健康局副局長 孔憲蘭
中國國民黨籍立法委員 江惠貞
和信治癌中心醫院藥學進階教育中心主任 陳昭姿
交通大學科技法律研究所副教授 林志潔
中華民國兒童福利聯盟文教基金會社工處長 白麗芳

Taiwan couples seek surrogacy abroad to escape ban
By Agence France-Presse
[msn.NEWS 17 Jul 2013]
インドやタイなど、海外代理出産を選ぶ台湾人が増加


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by technology0405 | 2013-07-12 13:40 | Countries | Comments(0)

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台湾では、1985年に体外受精が初成功し、現在、73施設で年間一万5千サイクルほどの体外受精が実施されている。1997年に人工生殖法が施行され、ARTの施行や配偶子提供の管理方式が決定された。卵子提供は現在300サイクルほどを占め、経年で見ると、漸増している。晩婚化がすすむ台湾において、卵子提供の需要は少なくないと思われるが、実際には卵子提供の割合は全サイクルの2-3%程度であり、ほぼ一定に保たれている。卵子提供が少ない理由として、台湾の医師たちは、人工生殖法が患者のニーズや医療の現場に即していないことを挙げる。代理出産については、人工生殖法のなかに盛り込まれておらず、行政命令により禁止されている。代理出産は、長年合法化の方向性で議論が進められているが、女性団体を始め反対勢力も根強く、法制化の目処はついていない。
 人工生殖法には、配偶子提供は匿名で行われることが定められている。また、卵子・精子の売買は禁止されている。とはいえ見ず知らずの女性に対し、無償で自らの卵子を提供する女性を探すことは難しい。このため、栄養費という名目で卵子ドナーに対する補償が認められている。これは、卵子の売買という批判を避けつつも、ドナーの調達を可能にするために考案された。卵子ドナーには、栄養費、交通費、機会費用などの、損失補填として、9万9千元(約30万円)までの費用を支払うことが、人工生殖法で認められている(※精子ドナーには8千元、約2万5千円が支払われる)。台湾では、卵子ドナーとなるのは、主に女子大学生である。「夏休みや冬休みを利用して提供を希望する学生が多い」(医師)という。有名大学が集中する新竹市を中心に、卵子提供を仲介するバンクが複数存在し、仲介手数料込みで、25-30万元(約75-90万円)で卵子提供プログラムが提供されている。インタビューに応じたある卵子ドナーは、「海外に行くための費用が欲しくて卵子ドナーを志願した。卵子提供のサイクルを始めてからお金の工面ができたことと、思ったより注射がつらかったので途中で辞めようかと思ったが、いったん始めたことなので最後まで責任を持ってやることにした。最終的に卵子は22個採取した」という。体外受精として、自然周期を利用したmild stimulationも導入されているが、採取された卵子の数によって支払い金額が異なる場合もあるため、この刺激法がドナーに適用されることは少ない。この「9万9千元」は、「大学生など若い女性にとって魅力的な金額であり、一方で40歳くらいのレシピエントにとっては大した金額ではない」(医師)と、双方にとってのメリットが示唆される。これは、匿名で卵子ドナーを確保するための苦肉の策であるとはいえ、実質的には、金銭目的での提供が行われており、卵子の売買に近い現象が生じている。しかし、台湾の医師の多くはプラクティカルな考えを重視しており、生殖細胞の調達・配分に関し、米国のような自由主義方式を支持する医師が多い。生殖医療に携わる医師の先進的な考え方に比べれば、現在の配偶子提供に関する台湾政府の規制状況は、抑制的であるといえる。
 匿名性が導入された背景には、家族関係が複雑化し、財産権や遺産相続に関わる法的トラブルが生じる事への懸念が存在した。人工生殖法の施行前には行われていた姉妹や親戚などからの提供ができなくなったことも、卵子提供が少なく抑えられている理由である。実際には姉妹や親戚などからの提供には、現在でもニーズがある(医師)という。また、伝統的に血縁が重視され、近親婚が忌避される文化的背景により、レシピエントは、卵子ドナーと配偶者(夫)が4親等以内でないことを証明するため、夫側の血縁に繋がる4親等内の家系図を全て埋めることが求められる(※精子提供の場合は妻の血縁に繋がる4親等以内の系譜の調査が必要)。卵子ドナーが匿名であるがために、レシピエントにこのような負担が生じている。しかし、卵子の受領に際して、膨大な家系図を埋めたとしても、近親婚の脅威を完全に防ぐことは難しい。配偶子提供によって産まれた子どもの情報の管理は衛生省が行っているものの、親から子へと、子の出自に関わる真実が伝わることは滅多にないと考えられる。したがって、子の結婚に際し、近親婚でないことを確認するための申請書類手続きは、制度としては整備されているものの、実際には利用されるケースは滅多にないであろうと推測される。また、病院や医師にとっても、配偶子提供は、煩瑣な書類手続きが必要であるため、実際のニーズよりも実施数は少なく抑えられているという(医師)。また、総合病院では、ドナーへの支払いシステムが確立されていないことも加わり、ドナーに関わる業務は、一定の仲介手数料を取る仲介業者に委託することが一般的となっている。
 配偶子ドナーは匿名であるため、レシピエントが知ることはできるのは、ドナーの身長、血液型、髪の色など限られた情報のみで写真の閲覧は不可となっている。ドナーは医師が選び、レシピエントが自分でドナーを選ぶことはできない。全ての書類をそろえ、約1ヶ月ほどで衛生省の審査を終了すれば、卵子提供が許可される。一人のドナーからの子の出生は1回までと決められている。子どもが産まれたらそれ以降は提供できなくなる。このため、一人のドナーが金銭目的で何度も提供することは避けられている。台湾では、外国人でも卵子提供を受けることが可能である。外国人が利用したケースはこれまで稀であり、現在のところ台湾への卵子提供ツーリズムはほとんど確認されなかった。しかし、合法的に行われているため、一見、海外からのクライアントが増えても不思議ではない条件が備わっているが、ドナーの選択が自由にできないためか、国内の患者数の需要を満たすだけに留まっている。人工生殖法では、卵子ドナーは20歳から40歳までと定められているが、レシピエントには年齢制限が課されていない。このため、50歳や60歳を超えた高齢患者への提供も行われている。医師への聞き取りによれば、そうした高齢婦人への卵子提供のケースは、遺産相続問題への対処や、成人した子どもの不慮の死などを理由とするものであった。これらは、家族制度上の要請によるものである。一方、未受精卵の凍結保存なども、一部の女性有名人が利用していることが台湾内で報道されており、自らの人生設計のために主体的に技術を利用する富裕層の女性も出現している。

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by technology0405 | 2013-07-10 12:36 | field work | Comments(0)

西欧諸国でIVF市場が円熟期を迎えた今、民間企業は先を争って、成長するアジア市場に進出しようとしている。

人口成長の停滞を打破したい韓国やシンガポールをはじめとするアジア各国の政府は、IVFの助成金を気前よく出す傾向にある。
2013年1月、出生率1.29のシンガポールは、IVFの助成を75%にまで引き上げた。
出生率1.15の韓国は、2006年から2010年で、不妊治療助成事業に180億USドルを投入した。
体外受精児の割合が1998年から2010年で0.9%から2.5%に跳ね上がった台湾でも、2010年以降、IVF助成金の導入が検討されている。

この助成金を追い風にしようと、不妊治療病院を経営する世界中の企業がアジア進出を計画している。オーストラリアのVirtus Health Ltdは、今最もアジア進出に意欲を見せている会社である。
アジアの少子化が、不妊治療に携わる海外企業の進出を招いている。

Asia's low fertility trap opens opportunities in IVF market
By Jane Wardell and Jackie Range
[REUTERS, Jun 13, 2013]

Asia's low fertility trap opens opportunities in IVF market
by Reuters
[ FZ.com, Jun 13, 2013]
出生率比較

Read more: http://www.fz.com/content/asias-low-fertility-trap-opens-opportunities-ivf-market#ixzz2h5V1YXHd

IVF grows in Asia with government subsidies
Xavier Symons
[Bio Edge, 23 Jun 2013 ]

Taiwan Weighs Subsidized IVF to Boost Birth Rate
[Want China Times, 2010-10-03 ]

Taiwan Gov't mulls subsidizing IVF to boost birth rate
[Oct 04, 2010, The China Post]

Higher subsidies for fertility treatments
By Tham Yuen-c
[Jan 24, 2013 The Straits Times]

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by technology0405 | 2013-07-10 12:04 | Countries | Comments(0)

2013年7月4日、新竹県にある東元綜合醫院(Ton-Yen General Hospital / TYGH)は、アメリカを本拠とする世界最大の卵子バンクMy Egg Bank(MEB)と提携することを発表した。

竹北市(新竹県の県轄市)にある県庁舎で、双方は、IVFの技術提携に関する基本合意書にサインした。TYGHの会長Huang Tsung-hsanは、「MEBとの提携によって、多くの不妊女性の悩みが解決されるだろう。また、子供を持ちたいと願う若いガン患者の女性も助けることができる。」と言った。

MEBの科学ディレクターJeremy Changは「我々はアジアに支店を置いて、最新の体外凍結技術を共有したいと考えている。新竹県はバイオテクノロジー発展にはうってつけの場所だ。エレクトロニクス産業の基地が密集し、インフラが整い、台湾桃園国際空港に近い。」と提携を喜んだ。

Chang氏には、カリフォルニアのスタンフォード大学Fertility and Reproductive Medicine CenterのJack Y. J Huang教授が同行していた。
Huang教授は次のように語った。「TYGHはすでにスタンフォード大学の最新の不妊治療技術を取り入れ、新竹県を国際水準に引き上げ、体外受精の成功率を上げている。今回のMEBとの提携は、不妊カップルにとってさらに素晴らしいニュースとなった。」

MEBはジョージア州アトランタを拠点とし、アメリカやカナダで不妊治療を行う50以上の病院と提携する。高い卵子凍結技術を誇り、2000以上の凍結治療から年間1000人以上の子供が生まれている。

Taiwan hospital boosts fertility treatment service
[Taiwan Today, 07/05/2013]

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by technology0405 | 2013-07-10 10:21 | Countries | Comments(0)

1997年当時の台湾の議論

台湾の代理出産合法化の議論は、1997年に衛生署大臣が代理出産合法化について発言したのが発端とされる。当時衛生署の大臣だったChan Chi-shean(詹启贤)は、1997年9月12日の議会で生殖補助医療に関するWong Chin-chu議員の質問に答える形で、代理出産合法化への支持を表明した。

代理出産の禁止をなくすというこの提案は、Chan大臣が就任して最初の重点政策発表として受け止められた。衛生署国民健康局は、台湾カップルが代理出産契約を結ぶ際の規則を策定するため特別委員会を設置した。

Sun Yat-sen Hospitalの薬学部門の長であったChen Tsao-tze(陳昭姿)医師は、自身もかつて代理母を雇おうとした経験から、Chan大臣の新政策に賛成した。彼女は、その何年も前から生殖補助医療に関する法案を作成する必要性を訴えてきた人物であった。

当時、多くの医療関係者が代理出産合法化の提案に賛成していた。国立台湾大学のLee Tze-yao医師は、台湾の医療技術は代理出産を十分サポートできるレベルに達したと語っている。Lee医師は、認可された代理母のリストを衛生署が作成することも提案した。

司法院大法官Tai Tong-schung(戴東雄)は、代理出産が台湾社会になじまないと反対した人物の一人である。代理出産の合法化は、台湾の社会的価値観と激しく衝突するだろうと彼は主張した。

國防醫學院で現在医療社会学の教授を務めるLiu Chung-tung(劉仲冬)は当時を振り返り「代理出産合法化を目指す活動というのは少数派のためのものであったが、それが多数派の意識を変えることになった。」と、代理出産法案が最終的に法令になろうとなるまいと、社会に大きな影響を与えたと語った。

代理出産をテーマにした連続ドラマ「姻縁花」も、議論と並行する形で放送された。プロデューサーは、代理出産法案が通過するかどうかでドラマの最終回を決めるつもりだったという。
見合い番組『Special Men and Women』で代理出産が取り上げられた時には、NT$10,000,000で代理母をしたいという女性や、確実に自分の子供であると分かるよう異なる肌の色の代理母を選ぶという人、また、テレビドラマの影響で、夫が「つい」代理母と恋に落ちるかも・・と心配するなど、様々な声があがっていた。

Support for surrogate motherhood
By Linda Chang
[Taiwan Today, 09/19/1997]

A Modern Solution for an Ancient Problem--Expecting a New Law on Surrogate Motherhood
Chiang Chiung-fang
[Taiwan Panorama, 1997/12/p.046]



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by technology0405 | 2013-07-08 16:50 | Countries | Comments(0)

2012年11月20日、台湾の代理出産政策に関する記者会見が、國民健康局の副局長Kung Hsien-lan(孔憲蘭)も出席して行われた。
彼女は、代理出産を合法化した国は多いと説明。台湾でも2004年に、代理出産を規制付きで合法化することへのコンセンサスを得るための会議が開かれたことがあった。依頼親、代理母、子供の権利が絡むため、40項目以上に及ぶ草案が考えられた。しかし、この分野の国内外の専門家を呼んで20回以上の話し合いをもったにもかかわらず、草案は同意には至らなかった。

2012年9月に行われた会議では、3点で合意が得られたと孔氏は言う。その中の一つは、不妊カップルが自分の配偶子を使用する場合のみ代理母の使用を認める、というものである。また、依頼親、代理母、子供の権利を保護するため、代理出産は政府が監視・監督すること、必要経費以外の金銭的補償があってはならないことも、合意されている。
つまり、金銭的利益を目的とする代理出産サービスの提供は禁止される。

衛生署は代理出産合法化を進める立場に立っているが、社会のあらゆるセクターからのコンセンサスが必要であると考えていると孔氏は強調した。国民健康局は、これから代理出産合法化について議論するための会議を招集し、現行の人工生殖法の中に代理出産規定を入れ込むか、人工生殖法とは別の法律として起草するかを決める。

法務部の法律事務司專門委員Kuo Chuan-ching (郭全慶)は、代理出産が法的アイデンティティ問題を引き起こす可能性があるので、関係者全員の権利と責任を詳しく記述するため、人工生殖法とは別個で法律を作るほうがよいと考えている。代理出産における権利保護に関しては、例えば奇形の子供が生まれた場合、あらかじめ契約で定めておくようにすればトラブルは避けられると郭氏は語った。

中国国民党立法委員の事務次長Chiang Huei-chen (江惠貞)は、5000組以上のカップルが代理出産に関心を持っているものの、法的な問題や費用面から、台湾の外で代理母を見つけることができないでいると語った。「このことが結果的に、こっそりと違法サービスを提供する台湾人代理母を増やしている。」と江氏は言い、衛生署はこの問題に焦点を当て、実用的な提案を出し、いずれ近いうちに法案を作成すべきだと要望した。

台北市婦女救援基金會の事務局長Kang Shu-hua(康淑華)は、代理母の基本的人権と個人のプライバシーが守られるようにすべきだと語った。また彼女は、代理母が実母より大きな圧力とリスクに直面するとも主張した。

台湾女性連線の事務局長Huang Sue-ying(黃淑英)氏は、代理出産によって恵まれない女性の生殖機能が裕福な人間の商品にされることで、社会階級間の不平等が悪化することを恐れている。衛生署によって作成された代理出産法案によると、代理母の要件は20-40歳の経産婦となっている。貧しさにあえいでいるシングルマザーが代理母になる可能性は高い。

台北市女性權益促進會は、台湾で作成中の代理出産法案では代理母の権利と利益を十分に守れないと主張している。權益促進會の事務総長Zhuang Yizhenは、代理母がお腹の子供に愛着を抱いてしまい、代理出産契約終了後、情緒的・精神的に不安定になる懸念もあると付け加えた。

連惠心代孕效應 國民黨團催生立法
[中國評論新聞, 2012-11-20]

Taiwan All Abuzz over Surrogacy Issues
Wu Linfei
[All-China Women's Federation, November 28, 2012]

Debate on legalizing surrogacy planned
By Jason Pan
[Taipei Times, Nov 28, 2012]

代理孕母擬開放 禁商業行為
陶家駒
[ 中國網路電子報, 2012/11/20 ]

台北市女性權益促進會 Taipei Association for The Promotion of Women's Rights (TAPWR)

國健局擬討論 代理孕母法制化
[中時電子報, 2012-11-20]

立委籲代理孕母法制化 衛署:贊成開放
[蘋果日報, 2012年11月20日]

Embracing the joys of a surrogate pregnancy
By Mayo Kuo 郭明裕
台湾の小児科医による記事。不妊を苦に自殺した女性など、台湾の女性にとって不妊がどれほど重圧になるかを訴え、代理出産の合法化の動きを歓迎している。
[TAIPEI TIMES, Nov 24, 2012]

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by technology0405 | 2013-07-08 13:16 | Countries | Comments(0)

台湾女人連線の見解

代理出産に関する議論が再び活発になっている。不妊カップルの悲しい話を聞くと、代理出産の規制撤廃を求める彼らの要求を拒否することは難しいように思える。しかし、女性の体を商品化することなしに不妊カップルのニーズにどう応えるのかという問題は、難しいジレンマであり、厳しい選択を伴う。

代理出産の問題は、ただ単に自分の子宮を貸す女性がOKといえば済む問題ではない。代理母は、妊娠出産中、多くのリスクに直面する。そうしたリスクには、羊水塞栓症、子宮外妊娠、不妊、植物状態、死亡、死産、早産、障害児出産などが含まれる。

また、減胎手術や多胎出産が引き起こす感染症や死亡といった問題もある。代理母は、子宮を提供するだけでなく、人生のうち10ヶ月間を身体的にも精神的にも差し出し、また代理母の家族――夫、子供、義理の両親――も大きく巻き込まれる。

近い親族や友人、あと少数の慈善家を除けば、こうしたリスクや困難を知りながら代理母をやろうという人々の大部分は、経済的に恵まれない階層の女性である。
代理母を雇うと最低でもNT$1,000,000(US$34,280)かかるので、不妊カップルは、従順で言いなりになりそうな、できるだけリスクの少ない代理母を雇いたいと考える。経済的に恵まれない女性は、常にその第一候補となってくる。

こうして考えると、台湾の代理出産制度が、裕福層のために設計されたものになる可能性は非常に高い。裕福層が特権を与えられ、他人の死や病につながる可能性をはらんだサービスを金で買うことが許される。

ある意味、代理出産の報酬には代理母の自律性の値段も含まれるのかも知れない。そうすれば、子供を生むための単なる道具として女性を扱うことができる。金銭的な誘惑は、経済的に恵まれない人間の尊厳を蝕んでしまう。

台湾では、裕福層とあまり裕福でない層の収入の格差が拡がり続けている。格差の大きい社会では、代理出産制度は女性の搾取につながる。不妊カップルの欲望を満足させるためだけに、健康な代理母をリスクにさらしてまで、現在の禁止を取り払うべきなのだろうか。
これは、国民全員で決めるべき問題だ。

台湾の法律では、生体間の臓器提供は5親等以内の親族間でのみ認められており、いわゆる「慈善的第三者」からの提供は違法である。この法律は、「人間の生命と尊厳に対する尊重」を根拠にすると同時に、金銭的報酬のため慈善という名目で臓器を売ることから生じる搾取を防ぐ目的もある。

命を助けるには臓器提供以外の方法がないという場合ですら、国の規制はこれほど厳しいのである。「慈善的」人々に子供を生んで欲しいという不妊カップルの欲望を満たすために、規制を緩和してもよいのだろうか。
これは、社会が時間をかけてみっちり考えなければならない大問題である。

Legalizing surrogacy may harm mothers
By Chang Hui-ju 張慧如 (台湾女人連線の事務次長)
[Taipei Times, Nov 25, 2012]

 「生命無法代理 孕母不是工具」代孕制度不該草率上路
代理出産合法化反対の署名活動のサイト

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by technology0405 | 2013-07-05 12:00 | Countries | Comments(0)
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