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2013年3月5日にアイルランド高裁が出した判決により、代理出産児を持つ母親たち――アイルランドには約200人いると推定されている――が、出生証明書の母親欄に自分の名前を記載するよう裁判所に訴えることができるようになった。

代理出産に関する事例を扱ったことのあるTony O’Connor主席弁護士は、この判決によって、依頼親が法的な親になることがよりスムーズになったと言う。 「同様の状況にある親なら誰でも、下級裁判所に行き、自分が法的な親であることを認めるよう要求できるようになった。出生証明書にも自分の名前が記載してもらえる。」

コーク州ヨールに住むSusan Cooperも、インド代理出産で得た現在1歳半のアレックスに関する法的手続きを考えている母親の一人である。「私はアレックスの法的な母親とは認められていないので、彼に関するあらゆる書類にサインすることができない。夫に何かあったらと思うと心配だ。夫がいなくなった場合、どうなるのだろう。今なら裁判所に行くことも一つの手段ではあるが、政府が早急に対応することが必要だと思う。」

不妊クリニックや法律機関の推定では、アイルランドにいる代理出産児の数は200人程度である。アメリカのエージェンシーCircle Surrogacyだけでも、25人の子供がアイルランド人依頼親との契約で生まれている。

この判決の影響は大きい。アイルランドには代理出産を禁じる法律は特にないものの、判決が出る前は、法的な不安感から代理出産サービスの提供をためらっていた不妊クリニックも、最高裁への上告があるかどうかをみながら、アイルランド国内で代理出産サービスを提供するプランを練り始めている。

ダブリンにあるSims ClinicのDavid Walsh医師は、「利他的」代理出産に限って提供したいと考えている。利他的代理出産の場合は、代理母には実費のみが支払われる。
Beacon Care FertilityのSandra Brett医師も、代理出産の国内提供を検討している。同クリニックのSimon Fishel教授は、「需要の査定が必要だ。需要があれば、必ずサポートするつもり。代理出産を希望する患者には、現在は、イギリスの提携クリニックを紹介している。希望者は多い。」と言う。

裁判所が代理出産を認めたことで、アイルランド医療委員会(IRM、Irish Medicines Board)もまた、代理出産を認める必要に迫られることになる。法務大臣Alan Shatter氏は、「法的諸問題」に対処するため、2013年度中に法案を作成したいと発言している。

Surrogacy case gives mothers new legal status
by Carl O'Brien
[The Irish Times, Mar 8, 2013]

Surrogacy may soon be available in clinics here
by Fiona Dillon
[Herald.ie, 18 March 2013]

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by technology0405 | 2013-04-25 11:52 | Countries | Comments(0)

ベトナムの妊産婦死亡率

2012年の世界人口デー(7月11日)に国連人口基金は「リプロダクティブ・ヘルスへのユニバーサルアクセス」というテーマを世界中に発信した。これを受け、ベトナムの妊産婦死亡率と小児死亡率が急速に減少していることを、保健省母子保健局の副局長Luu Thi Hong氏が公表した。しかし、地域によって著しい違いがあることも明らかになった。

出生10万件あたりの妊産婦死亡率は、1990年の233人から69人に減った。また1990年に0.44%だった国内の小児死亡率も、0.25%に下がっている。調査の結果、死亡の71.4%は山間部で起きており、山間部地域の死亡率は低地地域の3倍に達することが分かった。

出産の前後を通して母子医療ヘのアクセスが困難であることが、山間部の死亡率の高さにつながっているとHong氏は考えている。「これらの地域では、医療従事者のケアを全く受けないまま出産することが当たり前になっている。」と彼女は言う。

省病院や中央病院では、産科に精通した医師の割合が41.7%を占めるが、地域病院ではその割合は27.8%に下がる。また、貧困地区62ヶ所に設置してある診療所のうち、出産を扱うスタッフを持たないところが15%もあった。

訓練を受けた助産師を必要としている山村は12000ヶ所以上ある。しかし、Hong氏によると、2009年以降、研修コースを受けた助産師はベトナム全体でわずか1140人だという。「その上、村の助産師は医療スタッフとして認められておらず、彼女らを経済的に支援する政策もとられていない。」
村の助産師には、国家目標プログラムから月5万ドン(US$ 2.3)という少額の手当が出るだけである。

保健省は、現場に専門医を素早く投入する必要性をようやく認識し、産科および小児科の医師の育成に重点的にとりかかるという。まずは政府と議会に、国家目標プログラムを通じ、リプロダクティブ・ヘルスへの投資の増額を要請する。増え続ける母子サービス需要に応えるには、少なくとも年間1000億ドン(470万ドル)が必要だという。2008年から2012年、リプロダクティブ・ヘルスのために割かれた予算は年間わずか350億ドン(160万ドル)だった。

また保健省は、山間部や辺鄙な地域の人々に対し、妊娠中の健康管理に関する知識を知ってもらうため、小冊子の配布やマルチメディアの使用も考えている。適切な定期検診を受けなかったり、訓練を受けた医療スタッフの扶助なく出産したりすると、妊婦にどのようなリスクが起きうるか、ということなども伝えていく。

国連人口基金のベトナム支部代表Mandeep O'Brien氏は、妊産婦死亡と新生児死亡を防ぐためには、医療制度の強化が不可欠だと語った。助産術を持つ医療スタッフへの投資、緊急の合併症にも確実にアクセスできる制度の確立などが必要とされている。「これらの政策が包括的に実行されたなら、多くの命が救われるだけでなく、国家経済や社会的生産性も向上していくだろう。」と彼女は述べた。

Maternal mortality rate in Vietnam rapidly decreasing
[Inter Aksyon, July 11, 2012]

Vietnam achieving Millennium Development Goals on child mortality
David Smith
[FIGO 27th July 2012]

2012年 危機にある子どもたちのための募金
ワールドビジョンジャパンの募金案内

Maternal and child mortality rate still high
[VietnamPlus, 06/12/2012]

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by technology0405 | 2013-04-24 12:06 | Countries | Comments(0)

ベトナム司法省で、婚外交渉の罰金を現在の10万-50万ドンから500万ドン(約2.4万円)に引き上げる一方、同性結婚に対する罰金を撤廃する草案が作成された。この最新の草案は、2013年4月11日の報告会議で、司法省視察団がハ・フン・クオン(Ha Hung Cuong)司法省大臣に報告したものである。

報告によると、既に結婚している人間が別の人間と重婚したり、愛人と夫婦同然に暮らしたりした場合、250-500万ドン(約1.2-2.4万円)が科される。
相手が結婚していると知りながら、その相手と結婚したり同棲したりした独身の人間にも、同額の罰金が科される。

起草委員会が前回提出していた案では、罰金額は20万~100万ドン(約900~4600円)だったが、金額が低すぎるという意見が国民やメディアから多数寄せられたため今回の草案で大幅に引き上げたと、司法省の調査責任者Nguyen Thang Loi氏は説明した。営利目的の「結婚仲介業者」には1000万~3000万ドンの罰金が科される。

また、今回の草案では同性結婚に対する罰金が撤廃された。これについて司法次官Phan Quy Ty氏は「こうした禁止が現在の社会的情勢に適していないというだけ。ベトナムが同性同士の結婚を許可したという意味ではない。」「同性間結婚を認めるか認めないかは、さらなる調査と世論に基づいて決定されるべきだ。」と強調した。

Vietnam increases extramarital affair fine
[natunbarta.com 12 Apr, 2013]

不倫は罰金4600円 ベトナム
[今日のニュース]

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by technology0405 | 2013-04-23 16:55 | Countries | Comments(0)

ベトナム司法省は現在、2000年の家族婚姻法の改正を検討しているが、その過程で、代理出産が合法化される可能性も出てきている。司法省民事・経済部の部長Duong Dinh Hue氏は、2013年4月16日の話し合いで、「抜本的で包括的」な法改正を目指すと語ったという。

最高人民裁判所の副裁判長Tuong Duy Luong氏は、代理出産について、単なる法的問題ではなく、慎重に扱うべき社会的問題であると発言。Luong氏は、医学的理由によって妊娠できない女性が大勢いることを考えると、代理出産を認めるのが人道的であると考えている。「彼女たちは不当な扱いを受けている。支援しないのは残酷だ。」

保健省副大臣Nguyen Viet Tien氏は、代理出産のことを、不妊女性が母になる夢を叶える医学的な業績だと評価した。「母乳の出ない女性が他人に授乳を頼んでよいのなら、代理出産だって認めるべきだ。この2つは、出産の前か後かという点以外、ほぼ同じことだ。」とTien氏は言う。

司法省職員によると、ベトナムの代理出産の禁止の目的は、子供の人身売買の防止と、人口抑制政策の一環であるという。しかし、この禁止によって、多くの女性が子供を持つことができないままでいる。

最高人民検察院の次長検事Le Huu The氏は、どちらにせよ現実として代理出産サービスは提供されており、何か争いが起きた時に、禁止法のせいで政府は代理出産に関係する人々――特に子供――を保護することができないと説明した。

地元メディアは、ハノイやホーチミンで、不妊女性と貧しい女性の間で代理出産契約が交わされている事実を報じてきた。代理母は子宮だけを貸す場合が多いが、中には代理母が卵子も提供していたり、合意の上で夫婦の夫と性行為をしたりするケースもある。子供が生まれてから数ヶ月間代理母に授乳させる場合もある。授乳が伴うと、代理母は子供を手放すのがさらに辛くなる。
新法では代理母の卵子を使うことを禁じ、代理母が子供に関わるのは出産までに限る予定だという。

会議では、同性婚を合法化することや、国際結婚に関する規定を加えることについても議論された。Luong氏は、同性婚を通常の結婚と同列に認めたわけではないが、同性婚に対する処罰規定を廃止することには同意していると語った。

副首相Nguyen Xuan Phuc氏は、会議の席で、法律が現実に即したものでなくてはならないことを強調した上で「婚姻家族法は国民全員に影響する。それゆえ、法改正では全ての国民の意見を尊重する必要がある。」と語った。

Vietnam considers legalizing surrogacy for humanitarian purposes
[Thanh Nien News April 17, 2013]

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by technology0405 | 2013-04-23 15:59 | Countries | Comments(0)

個人クリニックによる斡旋
無認可の精子売買を斡旋する個人クリニックが増えている。こうした施設は、一見普通の家のようだが、中に入ると医療機器と診療待ちの人々がずらりと並んでいる。取材したクリニックで働くのは医師一人と看護婦一人のみ。経営者は公立病院Hanoi Maternity Hospitalにフルタイムで勤務する医師なので、クリニックは午前7-10時までしか開院しない。

「結婚して3年になるが、まだ子供ができない。」と患者の一人が言う。「周囲にここを勧められた。夫の精子が弱いという診断が出た。精子提供に1000万ドン(USD480)、さらに施設で人工授精するのに500万ドン(USD240)払った。友人がここで上手くいったので私も試してみることに決めた。あれから2週間たって、今は妊娠テスト待ち。妊娠していればよいと思う。」

そばにいた別の患者は「不妊治療をやっている病院は夫が嫌がって行けなかったので、このクリニックが我々の希望だ。医者に全て任せることができ、自分で取引しなくてもよい。成功率が30%だと聞いたので、提供精子の半分を使い、もっと子供が欲しくなった時のために残りをとっておいた。1か月前に人工授精したが、妊娠の兆候はまだ全くない。」と悲しげに言った。

インターネット上での精子売買
個人クリニックの斡旋を信用できず、精子売買のウェブサイトを訪れ、自分たちで精子を買うカップルも多い。ネット上の精子市場は急成長している。グーグルで検索すれば、ドナーの広告がいくらでもある。その多くは20-37歳の男性たちの投稿である。

背が高く健康で、質の良い精子を提供できるという広告もある。不妊カップルを助けたいので無償提供したいという、既婚男性からの利他的な申し出もある。こうした広告では、ドナーの容姿と健康について短い説明があり、取引は簡単で迅速、値引きにも応じるとある。これらすべてがワンクリックで済む。
ある夫婦は、病院の精子不足を不満に思う人が多いと聞き、インターネットで助けを求めることに決めた。「たった4日で何十通もの申し出があった。いかに自分が優れているか、という厚かましい自慢ばかりだった。」と夫は言う。

しばらく考えたのち、夫婦はKという若い男性と会うことにした。彼は23歳で、背が高く、学位があり独身である。Kの広告には「私は若いので、品物(精子)の状態も非常に良い。」とあり、1600万ドン(USD766)の値をつけている。ドナーになりたい理由として、Kは、付き合いの多いライフスタイルのせいで溜まった借金の支払いに金が必要だと説明した。もし双方が同意すれば、妻とKが夫婦のふりをして人工授精のために病院へ行くという。「それが非常に危険なことは分かっている。しかし5年も結婚していて子供ができない。子供はどうしても欲しい。2日後に病院に行くつもりだ。すべてが上手くいくと思う。」と夫婦は語った。

Black market in sperm donations booms in Vietnam
[dtinews.vn | May 17, 2012]

Help Sperm donor from Viet Nam
[SpermCentre.com, September 6th, 2011]
「Sperm donor group」の広告。ベトナムに400人の会員、とある。

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by technology0405 | 2013-04-23 11:26 | Countries | Comments(0)

『Can we see the baby bump please?』
2012年/ 49分

毎日スカイプでやりとりする代理母と依頼親。しかし、そうしたコミュニケーションが代理母の疎外された状況を変えるわけではない。周縁化された女性たちが従事する、この搾取的でスティグマ化された労働は、急速に拡大する不妊治療産業の要なのである。

医療ツーリズムと商業的代理出産の地球規模の広がりによって、インドの大都市、小都市いたるところでクリニックが開業されるようになった。しかし、名もなき女性たちの労働は、目立たない場所に追いやられている。代理出産はスティグマ化され、法律もなく、代理母の経験が語られることもない。人々は代理母に無関心である。『May we see the baby bump please? (その膨らんだお腹を見てもいいですか)』は、インド代理出産の文脈を理解するために、代理母、医師、弁護士、エージェント、家族にインタビューしたドキュメンタリー映画である。

監督のことば
国内外の顧客を相手にし、景気づいている不妊産業、その中で代理母になる選択をした女性たちが、この映画の中心になるように作成した。不妊治療クリニックの壁の中でしか、こうした女性たちに会うことはできなかった。女性たちの匿名性を守ることがクリニックの条件だった。

クリニック内での撮影は、女性たちが影になるような形で撮ることになった。クリニックで撮れるものの大部分は、医師とスタッフによる、歯切れの良い、紹介的なインタビューであった。それらのインタビューは脇に置いておいて、我々は、捨てられる予定のNG部分から女性たちの存在を描き出すことに取り組んだ。この映画では、存在感を生み出す必要があった。不完全で曖昧な部分も多いが、この映画は、不妊産業を代表する人々の人物像を描き出すことよりも、代理母の存在感を示すことに徹底してこだわった。

Can we see the baby bump please?
by Surabhi Sharma
[surabhi sharma blog, October 16, 2012]

“Can We See the Baby Bump, Please?”: Film on Commercial Surrogacy in India Screens in Boston
[Our Bodies Ourselves, April 17, 2013]
2013年4月22日5時より、ボストン大学講堂で映画の上映
チラシ→http://www.bu.edu/ihblast/files/2013/04/OBOS-film-flyer.pdf
by technology0405 | 2013-04-22 11:26 | Countries | Comments(0)

ベトナムでは、無精子症の男性が子供を持つことができる精子形成法を利用し、20人以上の子供が生まれている。ハノイにあるMilitary Hospital103のEmbryo Technology Centerが導入したこの技術は、男性の精子細胞――これから精子になる細胞――を培養し、完全な機能を備えた精子を形成する技術である。得られた精子は、その後妻の卵子に注入し、受精させる。

センター長であるQuan Hoang Lam医師によると、2009年に最初の子供が生まれて以来、200組の夫婦が申し込み、生まれた子供は約20人、成功率は10%だという。費用は一回の培養+受精で4000-5000万ドン(US$2000-2500)、これは普通の体外受精に比べて1000万ドン($500)高い。

高額な費用と低い成功率にもかかわらず、精子提供ではなく自分の子供を持ちたいと、多くの人がこの技術を申し込むという。この病院の統計によると、無精子症の男性の50%の体内には、この技術が適用できる精子細胞がまだあるという。精子形成のための培養技術は、2001年トルコのテサリク(Tesarik)医師によって発表され、実用化に向けて研究が重ねられてきた。

センターは現在、精母細胞や精原細胞といった未発達段階の細胞から精子を培養する、幹細胞技術の研究も進めている。精子の形成は、精原細胞、一次精母細胞、二次精母細胞、精子細胞、精子という、5段階を踏む。今回使用された培養技術は、この第4段階の、運動性を持たない円形精子細胞を、鞭毛を持った精子に培養するもの。

しかし、未発達段階の細胞から精子を形成するとなると、通常4-6週間という長い機関が必要なため、精子の質を管理することはさらに難しいだろうと、Lam医師は言う。「質の悪い精子からは病気の子供が生まれる。しかし最大の懸念は、この技術で生まれた男の子自身が、無精子症になる危険性が非常に高いことだ。」

ベトナムは未熟卵子体外成熟培養(IVM)においても成功している数少ない国のひとつである。技術的にも非常に難しく、また倫理的な問題も伴うとされる体外での卵子培養・精子培養技術に対し、ベトナムは非常に積極的である。

20 babies born in Vietnam using spermatid culture technique
[TalkVietnam October 27, 2012]

Hanoi hospital incubates hope; no sperm bank needed
[Vietnews June 23, 2011]

ベトナムの人工受精、技術移転も
by Lao Dong
[VietnamGuide.com, 2009年12月07日]

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by technology0405 | 2013-04-19 15:14 | Countries | Comments(0)

超音波検査の乱用

The Commodification of Obstetric Ultrasound Scanning in Hanoi, Viet Nam
Gammeltoft T, Nguyen HT.
Reprod Health Matters. 2007 May;15(29):163-71.

ベトナムのリプロダクティブヘルスに関する国家ガイドラインは、妊娠中の定期的な超音波検査を推奨してはいない。最近の産科的超音波検査の急増は、医療制度を含めベトナム社会のあらゆる領域で進行しつつある商業化のコンテキストの中で説明すべきものである。多くの女性が妊娠中に――しばしば医師の勧めによって――必要以上の頻度で検査を受けていることが、本調査の結果明らかになった。そうした度重なる超音波検査に女性が執着するのは、胎児に何の異常もないという保証を得たいがためである。医師もこの新しい技術を好み、超音波検査によって、他の妊娠管理サービスでは提供できない情報を提供できていると信じている。

しかし、本調査では、妊娠管理における他の側面が無視されていることも分かった。シリアの調査でも似た状況が報告されている。ボツワナでは、超音波検査の出現により、医療従事者による病歴聴取と身体所見聴取が以前より雑になった。

産科的超音波検査の乱用は、フェミニスト研究者が何十年にもわたり抗議してきた妊娠・出産の医療管理の行き過ぎの例証として捉えられがちである。このフェミニストの批判自体は重要だが、医療技術を通じての女性の様々な経験や、女性が技術に惹きつけられ利用するようになるプロセスを見落とす恐れがある。レイナ・ラップ教授(ニューヨーク大学人類学部・フェミニズム医療人類学)はこう指摘する。「現代技術から最も恩恵を受けていそうな“我々”が、その技術の最も手厳しい批判者を標榜することこそ、現代フェミニスト思想における抜き難い皮肉である。」技術を一方的に批判するより、女性がなぜこうした技術に惹きつけられるのか、妊娠関連の技術を世界規模で拡大させている力は何なのか、ということを考察する方が有意義であろう。

妊婦管理の商品化――世界中で起きている超音波検査の乱用はその一例である――は、医療政策および医療財政というさらに広いコンテキストで捉えられるべきである。医療システムが商業化されると、政策方針ではなく市場原理が医療サービスの提供と利用のあり方を決定づけるので、薬や検査、その他の技術が乱用される危険が高まる。とりわけ、その技術提供で得られる経験が医師にとっても親になろうとする人にとっても魅力的で、しかも、比較的安価で提供/利用が可能、妊娠中の使用も安全という場合は、特に乱用が起こりやすい。

しかし安全性に関していえば、産科的超音波検査の安全性を確認した既存の研究では、調査対象者の女性が受けた検査回数は5回までのものしかなく、10回、20回、ましてや30回の場合を調べたものはない。

WHOが途上国のために開発した新しい妊婦管理規範では、双胎妊娠、高齢出産など特別な状況でしか超音波検査の使用を推奨しておらず、「直接的な目的を持ち、有益であると証明された」検査だけが実施されるべきだと強調されている。


WHO Reproductive Health Libraryは、超音波検査に関するコクランレビューについて、次のようなコメンタリーを出している。「超音波検査の定期的な使用について、はっきりとした有益性は確認されていない。コクランレビューの結論に従い、妊娠初期の日常的な超音波検査を途上国において認めることはしない。」

ベトナム、また同様の状況にある国々では、超音波検査の適切な使用に関して、合理的な政策と診療指針を作成し、そうしたガイドラインと合わせて、職業的・商業的利益よりも女性の健康と安全な妊娠を優先した本質的な妊娠管理を実施することが焦眉の急にある。しかし、ベトナムのように民間セクターの大部分が規制されていない国や、公的医療財政が自己負担金に頼っている国では、そうしたガイドラインの影響力は限られてしまう。妊婦がインフォームド・ディシジョンに従って検査を受けることができるよう、産科的超音波検査の長所だけでなく短所に関しても、国の実情に沿った形で情報を提供することが重要である。

妊婦健診時に用いられる超音波診断についての諸議論
鈴井 江三子
川崎医療福祉学会誌 Vol.14 No.1 2004 11-18

胎児超音波検査の普及でアジアは女性不足に、国連
[AFP 2011年10月10日]

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by technology0405 | 2013-04-19 13:22 | Countries | Comments(0)

2007年6月、台湾衛生省がまとめた新法案「人工生殖法」が、行政院(台湾の最高行政機関)によって正式に承認され、成立するに至った。この新法は、精子/卵子提供者に支払われる謝礼、いわゆる「栄養費」を認めている。つまり、ヒト配偶子の「商業化」に合法的な裏付けを与える可能性がある法律であるということだ。規定では、卵子ドナーはNT$50.000-100,000(US$1500-3000)の栄養費を受け取ることができる(精子提供はNT$4,000-NT$8,000)が、その卵子で子供が一人でも生まれたら、それ以降提供することは一切できない。逆に、卵子で子供が生まれない限り、提供回数に制限はなく、何度でも提供することができる。

新法の成立は、台湾の深刻な精子/卵子不足を動機とする。衛生省によると、総人口約2300万人の台湾で、精子/卵子提供は年に約300例しか実施されていない。欧米の生活水準からすると、卵子提供者への報酬NT$50,000-100,000は一見低いようにみえる。例えばアメリカでは、卵子提供者は1サイクルに付きUS$5000の補償をもらうのが普通である。しかしながら台湾は、多くの欧米諸国と比べ、物価もサービス料もかなり安いことに留意しなければならない。またニュー台湾ドルは、台湾製品の輸出を促進する目的で、外国為替市場ではわざと低めの評価がつけられている。購買力平価に直すと、台湾のNT$50,000-100,000はアメリカのUS$3000-6000に匹敵する。これは、若い女性、特に学費の支払いを抱えた大学生にとって、十分に実入りが良い金額であると思われる。では、台湾が卵子提供者の金銭的報酬を合法化したことによって、東アジア地域の生殖ツーリズムにどういった影響があるか。まずは、台湾近隣の東アジア諸国の現状をおさえる必要がある。

中国本土では、不妊患者ではない女性からの卵子提供自体が禁止されており、一般女性に報酬を払って卵子提供者になってもらうことはできない。提供卵子を入手するには、治療を受けている他の不妊カップルに報酬を払い、エッグシェアリングするしか方法はない。卵胞刺激ホルモン剤による排卵誘発は過度の排卵を引き起こすので、その結果生まれた余剰卵子は、不妊治療の無料化あるいは値引きと引き換えに、他の患者と共有することができる。しかし、ほとんどの不妊カップルは(医療費の支払いが難しいカップルでさえ)他のカップルに自分たちの卵子を分けることを極端に嫌がる。当然のことながら、自分たちの子供を作ろうという時に、知らないところで自分たちの子供ができるかも知れないと考えるのは不安なことである。不妊患者以外による卵子提供を認めないこうした法律が、中国本土での深刻な卵子不足を引き起こしている。中国本土のカップルが台湾に卵子提供を求めてやって来ることは十分に考えられる。

中国の特別行政区である香港やマカオでも、不妊カップルが提供卵子を入手するのは困難である。2007年現在、マカオには不妊治療を提供する病院やクリニックがない。また香港は、提供者に対するいかなる金銭的償還/補償も直接経費に厳しく基づいており、卵子提供者になるインセンティブがない。2002年の「生殖科技及び胚胎研究実務規則」4条14項には、配偶子や胚の提供は無償提供とすること、提供者への経費の払い戻しが認められるのは①配偶子・胚の採取、輸送、保管にかかった費用、②提供者の逸失利益、のみであることが明記されている。こうした経費や逸失利益の還付を提供者が要求する場合、請求書、領収書、銀行の収支報告書、給料明細書など証拠となるものを提供者自身が用意せねばならず、その還付額にも法的上限が付けられている。例えば、逸失利益はHK$380(US$48)まで、旅費は一律HK$300(US$38)などである。当然、香港ではこうした規制によって卵子提供者になろうとする者は少なく、卵子は不足している。

日本ではガイドラインによって、あらゆる状況下での卵子提供が禁じられている。韓国では卵子提供は認められているものの、提供者への償還/補償に対して非常に厳しい制限がある。2005年に施行された「生命倫理法」は、卵子提供者への支払いを全面的に禁じている。違反者は2年以下の懲役または3000万ウォン(US$30,000)以下の罰金を科せられる(2008年法改正によって宿泊費・交通費など実費に限り支払いが認められるようになった)。ファン氏とその同僚が起こしたスキャンダル(卵子提供における倫理問題とデータの捏造)の影響で、韓国の議員や一般大衆は、卵子提供の過度の誘引となりうる金銭的報酬を容認する空気にはなっていない。

従って、東アジアでは唯一台湾だけが、卵子提供に対する高額の金銭的報酬を認めている。これは、似通った人種的、身体的特徴を持つ東アジア諸国(中国、台湾、香港、マカオ、韓国、日本)からの生殖ツーリズムが加速する可能性を示唆している。台湾の新法は、外国人への卵子提供、あるいは外国人からの卵子提供に関して特に対応していないため、そこが法の抜け穴になる可能性がある。例えば、前述したように、卵子提供者は、自分が提供した卵子によって子供が一人でも生まれた場合、それ以上の提供は禁じられている。しかし、外国人レシピエントが台湾での治療後に母国へ帰ってしまったら、子供が生まれたかどうかを確かめることは困難である。

さらに懸念されるのは、外国人ドナーが台湾で卵子提供するケースである。台湾の高額なドナー報酬は、貧しい発展途上国、特にベトナムやタイ、フィリピンの女性にとって魅力的である。台湾は、売春婦貿易の中継地点であるだけでなく、低所得男性向けの花嫁(メール・オーダー・ブライド)になる東南アジア女性を人身売買する取引場所ともなっており、近年、悪評価を受けている。従って、外国人女性が台湾で卵子提供目的に搾取されるというのは、現実的な危険なのである。例えば日本人患者がベトナム人ドナーの卵子を買うといった場合に、台湾の不妊クリニックが、裕福な外国人と貧しい外国人の卵子提供の仲介場所となる、という筋書きが考えられる。

Taiwan (Republic of China) legitimizes substantial financial remuneration of egg donors: implications for reproductive tourism in East Asia
Boom Chin Heng
Expert Rev. Obstet. Gynecol. 2(5), 545-547 (2007)

New rules legitimize pay for egg, sperm donors
[The China Post, May 11, 2007]

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by technology0405 | 2013-04-16 15:13 | Comments(0)

2012年2月、インド・ウラスナガルの乳児売買ビジネスを捜査していた警察は、この事件の容疑者Vijaya SonawaneとRatna Obaleが、違法な代理出産ビジネスの経営にも関わっていた疑いが強いことを明かした。

Hill Line警察署のNarendra Jadhav警部は、あらゆる面からの捜査が行われていることを強調した。警察は詳細な捜査のためSonawane(47), Obale(35), Pradhan Kanojia(40), Babli Kanojia(35)を7日間拘留したいと裁判所に要請したが、ウラスナガル裁判所は検察の起訴を却下し、4人の容疑者に対する保釈を許したという。

Sonawaneに対する取り調べでは、Kanojia夫妻の子供を23万ルピーで売り、その金を4人で分けたことがわかっている。Sonawaneが7万ルピー、Obaleが2万ルピー、Kanojia夫妻が14万ルピーを受け取った。

Sonawaneは他にも、ナーシク、アリバグ、プネー、ナビムンバイ(いずれもマハーラーシュトラ州)で子供5人を売ったことも自白した。しかし彼女は、ナーシク在住のシンド族一家の名前しか覚えていなかった。

また、警察による捜査で、Sonawaneが違法に代理出産ビジネスを経営していたこともわかった。ウラスナガルの身体障害児用孤児院Shanti-Bhuvan orphanageで働くSonawaneは、代理母となる若い女性を病院や家族に紹介する斡旋業を営み、ムンバイやナーシク、プネー周辺の貧しい女性を利用して代理出産ビジネスを行なっていた。

2社のタブロイド紙の記者が、不妊カップルを装いそうした子供を買ったところ、値段は23万ルピーで、法的手続きは一切必要なかった。

Adoption racket: Illegal surrogacy angle probed
Kiran Sonawane
[Hindustan Times, February 25, 2012]

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by technology0405 | 2013-04-12 12:19 | Countries | Comments(0)
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