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アイルランドの高等裁判所で、代理出産で双子を得た依頼親(遺伝上の親)が法律上の親として登録されるという判決が出された。
この夫婦は、妻の妹に自分たち夫婦の胚を移植し、双子を得たが、出生証明書に自分の名前を記載することをチーフ・レジストラ(事務局長)が拒否したため、これに異議を申し立てていた。

この事例に関しては、遺伝上の母親が双子の母であるとAbbott判事は宣言した。さらに、遺伝上の母親と子供は、この事実を出生証明書に記載してもらう資格があるとも明言した。

アイルランド政府は、代理母(生みの母)を法的な母親だと主張する根拠として、1983年に改定された憲法(アイルランドでは胎児の人権を認めており、中絶はできない)において、胎児を懐妊している女性が「母」と呼ばれていること、また凍結胚に関する最高裁判決(受精胚が人権を持つのは子宮に移植された時からであり、凍結胚は人権保護の対象にならないという判決)において、受精胚の持ち主の主張が認められなかったことを挙げていた。

しかし判事は、憲法の「母」という言葉は胎児との関係において限定的に使用された言葉であり、胎児が子宮に存在する間だけにしか適用されないとして、政府の主張を退けた。

エピジェネティクスとジェネティクスについては徐々に科学的に明らかになっていくだろうが、エピジェネティクスが染色体DNA決定論に打ち勝つことは考えにくいとも、判事は述べた。生む女性の胚/胎児に対する寄与に対しては敬意とケアを払うべきではあるが、細胞内遺伝物質が胎児の決定において優勢であることを考えると、法律上の母親は代理母でなく依頼親とするのが妥当であるという判断であった。子供が父親と母親の遺伝子を引き継いでいることを証明するためにも、出生証明書は依頼親の名前で登録するのが公正であると、Abbott判事は裁定した。

Genetic parents win landmark surrogacy case
[RTE News/Ireland, 05 March 2013]

Genetic Mother Wins Surrogacy Lawsuit in Ireland
[The Associated Press, March 5, 2013]

Genetic mother wins surrogacy case
Fiona Gartland
[The Irish Times, Mar 5, 2013]

State to challenge landmark surrogacy ruling
[RTE News, 06 June 2013]

Ireland: Genetic mother wins surrogacy case
By Ruth Retassie
[BioNews 11 March 2013]

Surrogate couple face 'hurdles' in adopting
by Dearbhail McDonald
[Independent.ie 01 February 2013]

Frozen Embryos Are Not The ‘unborn’
Hayes solicitors

Surrogacy is a legal and ethical minefield and must be banned
Breda O'Brien
[The Irish Times, Mar 9, 2013]
DNA重視の判決に疑問を呈する記事内容。

Ireland: Can surrogate mother be removed from birth certificate?
By Nina Chohan
[BioNews, 28 January 2013]
チーフレジストリが、裁判所からの出生証明書の訂正要請を拒否。「"Mater Certa Semper Est (motherhood is always certain)"の原則に従う。」

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by technology0405 | 2013-03-29 12:07 | Countries | Comments(0)

北京市衛生局が、美容整形医院「北京卓越医疗美容门诊部」に対し、代理出産と生殖補助医療の違法な提供があったことを調査で突き止め、処罰した。北京タイムズが報じた。

法外な利益が得られる産業とあって、北京にある多くの医療施設/ 非医療施設が、代理出産、生殖補助医療、胎児の性別検査を提供している。衛生局はすべての医療機関に対する調査をスタートさせており、違法行為は残らず処罰すると、衛生局のスポークスマンZhong Dongbo氏(钟东波)は約束した。

北京産科婦人科病院のReproductive and Genetic医療センター長Wang Shuyu氏(王树玉)によると、市内には、政府が設定した価格(体外受精20000元、人工授精1000元)で生殖補助医療技術を提供する認可施設が16機関あるが、他人に不妊のことを知られるのを嫌がる多くのカップルが、価格の高い違法業者を選ぶのだという。

「北京卓越医疗美容门诊部」での代理出産費用は100万-120万元、そのうち代理母の報酬は17万-23万元で、残りが施設に入る。こうした高利益の他に、罰金が少額であること、厳しい規制法がないことが、違法な生殖補助医療ビジネスをのさばらせていると、衛生局の医学管理部門の長Lu Ming氏(陆明)は説明している。

Beijing Tightens Crackdown on Surrogate Birth
[CRIENGLISH.com 2013-03-26]

央视曝光非法代孕机构:生子成功一次赚上百万
[中新调查网 2013-03-26]

北京最大非法代孕集团被查 代孕妈妈没法抓
by 徐晶晶
[华媒网 2013-03-26]

美容诊所跨界“代孕”被查处
by 闫 龑
[健康报 2013-03-26]

北京专项整顿非法代孕
[光明日报 2013年03月26日]

北京卓越医疗美容门诊部有限公司

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by technology0405 | 2013-03-28 13:52 | Countries | Comments(0)

母嬰保健法

中华人民共和国母婴保健法
1994年10月27日中华人民共和国主席令第三十三号公布、1995年6月1日施行

・ 「出生医学証明」作成の義務(23条)
父親と母親の氏名、出産した病院名などを記載する

・母嬰保健の仕事に従事するものが本規定に違反し、関連の虚偽医学証明書の発行あるいは胎児の性別鑑定を行った場合には、医療保健機構あるいは衛生行政部門により状況に基づいて行政処分が行われ、事案が重大な場合は法に照らし業務資格を取り消す。(37条)


代理出産の際に医師が出生医学証明書に依頼者の名前を書いたり、胎児の性別を理由に代理母を中絶させたりすれば、≪中華人民共和国母嬰保健法≫によって処罰することが可能である。


出生医学証明を翻訳してみた。
[rokusanの囁き, 2010年04月26日]

上海出産事情⑨出産前の赤ちゃん性別判断 [上海出産事情]
[上海暮らし,2012年01月24日]

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by technology0405 | 2013-03-26 14:56 | Countries | Comments(0)

2010年、台湾はTFR(合計特殊出生率)0.89を記録し、Population Reference BureauのCarl Haubに「世界で最も低い出生率」と言わしめた。この「超少子化」は多くの人口学者に注目されてきた。

1950年代後半から台湾の出生率は急激に下がり始め、1951年に7.05だったTFRは1975年に2.76になる。1976年は辰年のため3.08に一度回復するも、1984年まで着実に下がり続けて1.75付近でしばらく留まり、1997年の東アジア経済危機のあと再び下降、2003年には1.23にまで落ちた。

台湾の人口政策
1969年「人口政策綱領」によって、台湾の家族計画が始動する。
1970年代後半から、個人クリニックが中絶手術を実施し始め、出生率が大幅に下がった。1985年の「優生保健法」により中絶が合法化され、出生率は2.1を切る。
1992年人口抑制を目的としていた「人口政策綱領」が改定され、人口の「適正な」成長維持を目指す政策へ転換される。
2008年少子化対策の指針を打ち出す「人口政策白書」が発表される。
2010年政府が「“Children are our most precious treasures (孩子~是我們最好的傳家寶)”」のスローガンを掲げ、子供手当てを開始する。台北市では育児手当2,500元/月、出生補助金20,000元/子供一人といった手当補助金制度を2011年から導入した。

また台湾の移民政策も、出生率と相関関係にある。台湾では、都市部の男性が中国人女性と結婚するケースや、農村部の男性がベトナムやフィリピンの女性と結婚するケースが比較的多い。移民妻の受け入れに積極的であった期間は出生率が横ばいになり、2000年以降の移民の減少と共に出生率は再び下がっている。

台湾やその他東南アジアの中国人社会の生殖行動に対し、寅年と辰年は強い影響力を持つ。その影響は、ただのマスコミの煽りと捉えられがちであるが、人口統計において非常に重要な問題である。国の人口動態統計をみると、常に辰年の出生が急増し、寅年で激減する。人口統計学の専門家Wen-Shan Yang博士の指摘によると、寅年に出生数が下がるのは相変わらずだが、辰年の余波で次年度に落ち込む出生数が昔のように回復しなくなっているのが最近の特徴だという。

台湾は2011年のIMD世界競争力年鑑で6位にランクインした。しかし、この高評価は、生産力と効率性の高い民間部門の功績によるもので、政府の功績ではない。実際、台湾の実質賃金の上昇は、都市部での格差の拡大によってここ数年停滞している。子供一人あたりにかかる教育費が増大する中で、若い人々が都市部で快適なライフスタイルを維持するのは難しく、政府による少子化対策が必須である。

子供の数が減るにつれ、子供一人あたりへの投資が大きくなることは立証済みである。経済発展に伴う人口転換期に、第一次人口配当(デモグラフィック・ディビデンド:就労人口の増加により経済的利益があること)の配当が人的資本に投資された。この人的資本投資は第二次人口配当を生み出すための重要なメカニズムである。台湾では若者が高学歴化しており、その傾向は女性に特に顕著だが、同時に晩婚化・晩産化を生み出した。2010年の平均出産年齢は30.6歳、女性の初婚年齢は29.2歳である。インフォーマル・セクターで働くことが多かった年配の同等の女性たちと異なり、フォーマルな労働市場で働く高学歴の若い台湾女性たちは、仕事と家庭の両方を選ぶことが難しい状況にある。本論文では、世代間のVOC(value of children)スコアの違いも調査した。
社会が男女平等な家族関係の構築に向かうのを手助けするような、台湾の社会的コンテキストに沿った政策を打つことが少子化対策として重要である。

Trends in Low Fertility and Policy Responses in Taiwan
Yu-Hua Chen (Population and Gender Studies Center, National Taiwan University)
The Japanese Journal of Population, Vol.10, No.1 (March 2012)

台湾における世界最低水準の出生率、その背景を探る: 陳玉華さん 台湾大副教授
[朝日新聞グローブ March 22 , 2013]

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by technology0405 | 2013-03-22 16:42 | Countries | Comments(0)

代理出産トラブル

代理出産を依頼、生まれた子供は自分の子じゃなかった!
2011年1月12日 ROCKET NEWS 24 より抜粋

代理母が出産したのは依頼主とは全く血縁関係のない子どもだった! こんな滅茶苦茶な事件が中国広東省広州市で起こっている。
広東省広州市在住の女性・王さんは、一昨年10月、潘さんという既婚男性と知り合った。王さんは当時夫とは別居中。潘さんの妻は不妊症で、自分の子どもを出産してくれれば「男児94万台湾ドル(約265万円)、女児70万台湾ドル(約200万円)」の報酬を払うとして王さんに「代理出産」を依頼、協議の末、王さんは口頭で承諾した。
昨年の1月から2月にかけて、潘さんと王さんは何度も「関係」を持ち、「代理出産の過程」を無事に済ませた。王さんによると「彼の奥さんは知っている」そうだ。そして3月、王さんは妊娠を確認。潘さんは王さんが香港で出産できるよう手配し、9カ月後香港の病院で無事男児を出産した。
出生届には、男児の父親は潘さんの名前を記入し提出。しかし、鑑定をしたところ、男児の父親はなんと潘さんではないことが発覚したのだ! 王さんは問い詰められて遂に昨年1月末にインターネットで知り合った男性と一夜を共にしたことを認めた。
王さんによると、真相を知った潘さんは激怒。すぐさま男児を連れ去り、王さんにもう一度潘さんの子どもを出産するか、賠償金230万台湾ドル(約650万円)を払うか、どちらかを選ぶよう迫ったというのだ。
しかし、潘さんの妻は王さんの言い分を否定、「男児は王さんが自分で連れてきて養育を頼んでいった」とし、「王さんが今かかっている養育費さえ払ってくれれば、お子さんはいつでもお返ししますよ」と話している。


孕母收錢產子 生出野種
[蘋果日報 2011年01月09日]

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by technology0405 | 2013-03-21 13:31 | Countries | Comments(0)

――「人民網日本語版」2013年3月13日より記事抜粋――
 ここ数日、中国のメディアなどが注目を高めている「代理出産」に関して、中国衛生部(衛生省)婦社司の責任者は12日、違法な生殖補助医療技術は根絶するという姿勢を強調した。中国では代理出産は法律で認められていない。人民日報海外版が報じた。
 同責任者によると、同省は関連の機構を組織して、生殖補助医療技術管理に関する政策の研究を進めている。また、医学や法学、倫理学、社会学などの分野の関連の専門家と関係する問題について意見を交換している。ほとんどの専門家は、代理出産は法律上や倫理上の問題、さらに社会問題を引き起こし、社会の倫理秩序を乱すと考えているという。また、代理母や生まれてくる子供にも心理的障害をもたらしかねない。同部が2001年に公布した「人類補助生殖技術管理方法」では、いかなる代理出産技術の実施をも明確に禁止している。そのため、同部は引き続き関連の法律、法規、規定に基づき、生殖補助医療技術を厳しく取り締まり、代理出産などの違法な行為根絶を目指す。
(「人民網日本語版」2013年3月13日 中国衛生部、「代理出産は違法」と強調 より)

                                                           

北京大学第三医院の院長である喬傑氏が「代理出産を合法的に展開するにはまだ5-10年かかるだろう」と発言し、「代理出産合法化へ」という報道が流れ、衛生部がそれに対応する形となった。

衛生部の母子保健・地域衛生局は、倫理的・法的問題や、代理母への精神的・身体的危害を考慮し、代理出産の禁止は存続すると発表した。衛生部の医学倫理専門家委員会のメンバーであるZhai Xiaomeiは「代理出産はこれまでも国内で完全に禁止されてきたし、この先も広く利用されることはない。」と語った。

「代理出産に関する倫理的・法的問題はまだ審議中の状態なので、今のところは完全禁止にしておく以外ないだろう。」とZhai氏は言う。しかし、出産適齢期でありながら医学的な理由で妊娠出産できないカップルは7%程度いるといわれており、「そうしたカップルに対して完全禁止の措置をとるのは公平ではない。」という考えから、Zhai氏は医学的な理由で代理出産を必要とするカップルに限り利用を認める提案をしている。「商業目的での不必要な代理出産に対する禁止は続ける。」と彼女は強調した。

Govt rejects rumored end to surrogacy ban
By Shan Juan
[China Daily, 2013-03-14]

China studying surrogate motherhood
[UPI.com March. 13, 2013]

Ministry reiterates stance against surrogacy
[chinadaily.com.cn 2013-03-13]

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by technology0405 | 2013-03-19 15:18 | Countries | Comments(0)

中国、代理出産の合法化に向け法律整備へ
「人民網日本語版」2013年3月13日より記事抜粋

 中国では、違法な人工受精を実施している病院や代理出産の闇市が問題となっているのを背景に、衛生部(衛生省)は11日、「代理出産」について専門家から意見を募ったことを明らかにした。専門家は、代理出産の関連の法律・法規が制定・公表されれば、合法的な代理出産が現実的になるとみている。京華時報が報じた。

■代理出産合法化まで最低5年必要

 現在、中国の出産適齢期の夫婦のうち、7%が不妊症であるとみられている。北京大学第三医院の院長を務める喬傑・生殖医学センター主任は、「衛生省が2001年に公布した、補助生殖技術の法律・法規は現在も整備が進められているが、不備もまだたくさんある。例えば、代理出産に関しては、代理母の安全や法律の問題、生まれて来る子供の引き取り問題などに不備がある」と指摘。「衛生省は既に専門家から広く意見を集めた」としながらも、「関連の法律・法規の整備がさらに必要で、この過程はスムーズに進んでも、代理出産を合法的に展開するにはまだ5-10年かかるだろう」と、おている。

 さらに、「中国の今の法律・法規では、代理出産を実施できない。なぜなら、代理出産は複雑な社会問題だから。そのため、まず法律・法規を整備しなければならない」と指摘した。

■国外では代理母が実の母と規定

 英国や米国の一部の州、インド、マレーシアなどでは現在、子宮がないなど身体的な問題を抱える女性だけを対象に、法律で代理出産が認められている。一方、中国では、既に多くの人が密かに代理出産を行っているものの、法律ではまだ認められていない。そのため、依頼者側も代理母も権益にかかわる保障を得ることができない。さらに、喬主任は、「実際には、不妊患者のうち、代理出産の技術を必要としているのはわずか1%にも満たない。高齢の女性が代理出産を行うのは、絶対に間違っている」と警笛を鳴らす。

 代理出産が合法である国の法律は、代理母は生まれてくる子供の実の母親で、精子や卵子を提供する男女はその養父養母と規定し、代理出産合意書のほかに、養子合意書にも署名しなければならない。また、妊娠の過程で代理母に合併症が発生したり、乳児に先天性疾患が発生したりした場合、いずれも法律に基づく保障を得ることができる。

 
by technology0405 | 2013-03-19 13:33 | Countries | Comments(0)

STIGMA AND EVERYDAY RESISTANCE PRACTICES ――Childless Women in South India――
Catherine Kohler Riessman
Gender & Society February 2000 14: 111-135

インドにおいて、子供を生み育てることは女性の権力と福祉に直結し、生涯にわたり、その女性に確実かつ実質的な利益をもたらす。子供の存在は、愛情が薄れがちな見合い結婚での夫との絆を強め、拡大家族や地域社会における女性の地位を上昇させる。また子供がいれば、姑という地位――インド家庭ではかなりの権力と影響力を持つ――を最終的に手にすることができる。一言で言えば、母になることは、インドの階級社会――ジェンダー、カースト、階級によって細かく階層化されている――において決定的に重要な文化的要素なのである。そうしたイデオロギーは、心理的、感情的言説(女性が子供を望むのが「自然」であるetc)によって隠されている。
南インド(ケララ州)の既婚女性たちは、支配的な家族形態とジェンダーイデオロギーの中でその価値を判断される。こうした権力に対する女性の語りには、いくつかの抵抗の形態がみられた。
対立を故意に避けるタイプ(戦略的回避型)、周囲に態度を表明するタイプ(発言&実践型)、母親になること自体に価値を置かないタイプ(母性放棄型)の3つである。

抵抗の実践に関する研究は、局地的条件や行為の起こりやすさまで考慮に入れた文脈的アプローチが必要であるが、この場合の抵抗とは、単なる困難な状況への適応、対処、順応ではない。女性のエージェンシー(行為主体性)が目に見えていなくてはならない。その定義に照らし合わせながら、31人の女性のインタビューを検証した。女性たちは自分と自分の結婚を擁護し、家族内部のイデオロギーに反発しながら、考え、行動していた。オートナーの言うように、確かに女性の抵抗の過程には両面感情(ambivalence)が併存し、定義には曖昧さが伴う。ここでの抵抗とは、家族形態を変化させる意図の有無は関係ない(結局のところインタビュー対象者の大部分は子供を欲しがっていた)。むしろ女性の行為(や考え方)が、「家族」の再構成に影響を――それがどんなに小さくても――与えているかどうかがポイントである。子供のいない南インド女性は「権力の周縁部で交渉し、非対称な権力構造に抑圧されながらも、抵抗し、時にはその構造を弱めさえしながら」、スティグマと闘い、同時に家族に変化をもたらしていた。

戦略的回避型は、周囲の悪口を「深刻にとらないよう」に努め、「夫の親族にできるだけ会わないようにする」などの手段で自分を守る。45歳のヒンズー教徒の女性は、他人から冷笑を受けるたびに「とても落ち込んでいた」が、夫が無精子症だと診断されて以来、不妊が自分のせいではないという意識によって迫害を超越することができた。32歳の科学者の女性は、かつては子供を持たないことについて「延々と説明していた」が、話したくないことは話さない、他人には関係ないと無視できるようになった。

社会経済的に上位にいる不妊女性は、財があり相続人を持たない自分が親族から搾取を受けやすい立場にあることを自覚しており、義理の母のうわべの親切な態度にも懐疑的である。31歳の会計士の女性は「夫と離婚しても、仕事があるので生きていける」と語る。

こうした回避型は、内なる抵抗心によって抑圧の領域から脱却しようとする試みである。内面の声は外に出されることはないが(夫が無精子症である女性も、近所の人間にその事実を言わない)、現在支配的な家族の定義に亀裂を入れていく土壌となるであろう。

発言&実践型は、差別的な行為に対して、言い返すなど何らかの行動をとる。子供のことを言われると「子供だけが人生ではない」などと積極的に発言し、抑圧に抵抗する。35歳のヒンズー教徒の主婦は、陰口を叩く義母に嫌気がさし、夫と家を出た。「Gulf wife(湾岸への出稼ぎ労働者の妻。GCC諸国へのインド人出稼ぎ労働者は非常に多い。)」であるため子供のできない24歳のムスリム女性も、子供のことで何か言われると、夫に言い返している。彼女らの行為は、子供のいないスティグマ自体を消すわけではないが、家族や夫に何らかの変容をもたらす。
ただし、こうした日常的抵抗は、組織的活動には発展していない。インドで子供のいない家庭を築くことは、まだまだプライベートな問題として捉えられている。しかし、子供がいないことで女性だけが不利な立場になる社会では「女性は被害者」である。子供がいなければ女性の老後が立ち行かない問題についても、政策として手が打たれるべきであろう。

母性放棄型は、かなり「西洋化」された層である。インドでは子供をもつことが「規範」であり、その圧力はすさまじい。子供を持たない選択は「周囲に理解されず」「浮いて」しまう。その選択をした本人さえ「自分が正しいのかどうか分からなくなる」。周囲に子供のことを聞かれると「まだ治療中」だと答えてやり過ごしている者もいた。ある女性は、インドには子供が多すぎるので「人口問題に貢献している」と、「欠点」を「貢献」に変換していた。こうした女性たちは、前の2つの抵抗型とは異なり、子供を持たない人生を肯定し、家族の意味を拡大し再構成している。

この3つの抵抗は、非組織的で、かつ日常的な形態の抵抗行為である。必ずしもインドのジェンダーシステムからのイデオロギカルな開放につながるわけでもなければ、母性の強制からの開放さえ生み出すことはない。医療的な解決を求めるあまり、女性が不妊産業を促進させる役割を担い、その不妊治療が生涯にわたって女性を医療支配に委ねるきっかけになるという問題もある。

社会の変化はインドの女性にとって概して(特に家庭内で)可能性の拡大をもたらしたと言えるが、出産奨励主義――母性強制(compulsory motherhood)のイデオロギー――による抑圧は相変わらず続いている。母親になれない(ならない)女性はスティグマ化される。しかし、社会変化の文脈の中で、既婚女性は自分の子供を持たずに結婚を維持する方法を見つけ、そうした家族が新たな家族形態として位置づけられるよう望んでいる。女性の反応は多様であり(女性の教育的/職業的地位が、スティグマ経験、戦略、決断力を非常に左右していた)その相違は重要であるが、そうした貧富の差にかかわらず、子供のいない女性たちは周縁化や過小評価に対し受動的ではなかった。ただし美化は禁物である。その道程は、特に若い女性や、貧困と村落の文脈の中で生きている女性にとって困難を極める。しかし、たとえそうした子供のいない女性たちが、社会運動を行うような女性たちと団結する機会を失しているとしても、スティグマに対し抵抗する努力をしていることは調査で明らかであった。

南インドの女性たちが直面している様々な形の権力――親の権威、服従構造、ジェンダーイデオロギー、女性のセクシャリティの厳重な管理――のせいで、女性の抵抗はどうしても可視化されにくくなる。インドの不妊患者を調査した論文(Jindal and Gupta 1989)では、「自分に何か問題がある」と自己非難するのが一般的な女性不妊患者の意識であるいう結果が出ている。しかし本調査により、女性たちがスティグマを返上するための抵抗を日常的に行なっていることがわかった。我々は「目に見えない」日常的抵抗の存在を正しく認識すると同時に、西洋フェミニストの主体選択論などに陥らない抵抗論を打ち立てる必要がある。

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by technology0405 | 2013-03-15 17:12 | Countries | Comments(0)

"Objects of Affection: Vietnamese Discourses on Love and Emancipation."
Harriet M. Phinney.
positions: east asia cultures critique 16.2 (2008): 329-358.

ベトナムにおける愛情の系譜をたどっていくと、「結婚せずに子供をもつ」に至った20世紀末の独身女性の心情について理解することができる。

1920-30年代のロマン主義文学者の功績は、唯一の愛という概念を評価し、愛の無い結婚を否定する語りを生み出したことである。本調査のインタビューでも、年配の独身女性は、愛していない男性とあえて結婚することや、二人目の恋人を探すことを、結婚のための結婚という「伝統」に縛られたものであり、間違っていると信じて疑わなかった。一方で、個人の愛というテーマが公共の言説として語られるようになったのもこの時代である。

1940-50年代、党の革命家たちは、ベトナム人のロマン主義者たちが作り上げた「封建的」な愛と「現代的」な愛という2項対立を、より強固なものにした。個人をそれまでの古い家長制度から切り離すために、ロマン主義で生まれた「個人の愛」という概念を利用したのだ。その過程で、個人と家族の間に国家が入り込み、結婚の意義や目的を再定義していった。「夫はいないのかと揶揄されたら、こう答えよ。夫はいます。性はViet、名はNam。夫は3000歳以上で、漢王朝に抵抗し、明朝を打倒してなお、今も老いることはありません。」自分の愛は国に捧げるべきであるというメッセージが語られ始め、女性たちもこの呼びかけを傾聴した。

1959年、北ベトナム(ベトナム民主共和国=DRV:南北ベトナムの統一は1976年)は、新婚姻・家族法を公布した。「結婚は、愛に由来する完全な自発的行為でなくてはならない」とする同法によって、ベトナム史上初めて、愛は結婚の「法的」根拠となった。ホー・チ・ミンは後にこの1959年法を「男女同権を目指した」法律であるという点で「社会主義革命の不可欠な要素」だと評した。この法律は「幸せ」「円満」な結婚のためには、女性はあらゆる点で男性と平等である必要がある、という思想に基づいている。しかし「プロレタリアート的観点」から見ると、この政策は、政治的課題から派生したものであることがわかる。それまでの婚姻制度や家父長制家族は、私有財産を維持するために利用されてきた。1959年法は、男女同権を愛による結婚として定義することで、古い婚姻制度からの脱却をはかるという目的があったのである。
個人を古い家族制度から断ち切り、新たな家族形成を目指す過程で、国家は個人と家族の間に愛情の対象として入り込んだ。党はホー・チ・ミンを国民全員の「叔父」に仕立て、1920-30年代から意識されるようになった個人の愛を、ベトナム再統一に導く努力をした。それは愛情の対象を国が決めることにつながる。国民に望ましい配偶者を選ばせるために、国民の分類が進められた。例えば本調査でインタビューしたTuyenは、政府の上級官吏の娘であるという理由で、革命のための有害階級であると分類された。彼女は、結婚相手が党内での昇進のチャンスを失うことを恐れ、革命家とは結婚しなかった。また、将来の子供への差別を恐れ、同じ階級に属する男性とも結婚しないと決めていたという。党は、愛を階級的な観点から規制したことで、個人に結婚相手を選ばせるという約束を究極的には裏切ったが、夫婦愛の基礎となる法的枠組みはこの時期に築かれた。 

1960年代、女性連合の「ベトナム女性新聞 (Bao Phu Nu Viet Nam)」の人生相談欄では、愛と幸福の正しい概念について婚姻女性を教育しようとする意図が見える。夫や息子を戦争に送り出す女性に対しては、「真の」幸福は、愛する者が愛国者の義務を果たせるよう助けることにある、と助言されている。国家への献身の名のもとに、多くの女性が婚期、あるいは子作り期を逃すことになった。南ベトナム消滅による南北統一が実現したのは1976年、その後、社会主義経済体制が築かれていく。

1980年代半ばまでに国家の統一を完了させた党はもはや、国家に国民の愛情を向けさせる必要がなくなった(あるいはそれが不可能になった)。革命前の封建主義的伝統との対比の上に、夫婦愛と男女同権を基礎とする「現代的な社会主義家族」という概念を推進したが故に、国家は、愛なしでは結婚しないという女性の選択を支持せざるをえなかった。以前は国家解放のために自らの愛を国に捧げた女性たちは、国が富国の手段として掲げた家族計画を、婚外子を正当化する手段として利用することで、女性としての新たな責任を果たそうとしたのである。

その一方で、女性の愛情を国から恋人/子供に向かわせた国の政策によって、女性は再び他人との関連の中に置かれることとなった。この現代の構造は、もともとそれが女性のための進歩的な政策であったにも関わらず、皮肉なことに、母親としてのアイデンティティという観点からみると女性の主体性を減じているのである。しかし同時に、母性愛に関するドイモイの言説が、革命前のロマンチック・ラブに関する言説に付いて回る「個人としての自覚」「自己表現の感覚」を回復したことは確かである。それはレ・リューが革命後に書いた名作『はるか遠い日』にも読み取ることができる。最も重要なのは、最近の母性愛に関する言説――「ハッピーファミリー」の称号の候補者にシングルマザーも入れるという、ハノイ女性連合が2004年に下した決定――が、1959年の父系主義脱却政策の再確認となったことであろう。いかなる場合でも、愛に対する概念の変化は、個人が近代的自己を形成する際のかなめとなる。

年配のシングル女性たちは、愛に関する様々な言説を利用しながら、新たな生殖的空間、社会的空間を作ろうとしている。そうすることで彼女らは、結婚年齢にありながら結婚しない女性が、前進し、いつか自分の子供を持てるよう道を開いているのである。

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by technology0405 | 2013-03-11 16:09 | Countries | Comments(0)

2009年の代理母の死

2009年5月、Easwariという名の代理母が、コインバトールのIshwarya Fertility Clinicで分娩後、出血多量で亡くなった。彼女は、代理母募集の記事を新聞で見た夫のMuruganに説得され代理母になった。後妻であった彼女が夫に逆らうことは難しいことだった。出産自体はスムーズにいき、Easwariは健康な子供を生むが、その後出血がひどくなる。クリニックは合併症に対して何の準備もしていなかった。容態の悪化した彼女に対しIVFクリニックは適切な処置を施すことができず、どこか地元の病院に自分で救急車代を払って移るよう指示した。Easwariはその道中で亡くなっている。クリニックが、代理母の健康管理に対する責任を出産した時点で終わりと考えていることを明らかにした事例である。

2010年にEaswariの死を報道したのは、『The Red Market(邦題:レッドマーケット――人体部品産業の真実――)』(2011)の著者スコット・カーニーである。インドではEaswariの死が報じられることはなかった。

2012年分娩後に亡くなった代理母Premila Vaghelaのケースでも、クリニックの対応が子供の出産を優先するものであったことが報告されている。ただ、彼女の死は国内外で大きく扱われ、代理母の権利についての議論を進める要因の一つとなった。インド代理出産が不妊カップルのオプションとして広まるにつれ、代理母の権利や福祉もより意識されるようになっているのだろう。

Inside India’s Rent-a-Womb Business
By Scott Carney
[Mother Jones, March/April 2010]

Cash On Delivery
By SCOTT CARNEY
[ The Caravan | 1 September 2010 ]

India: Women Exploited in Surrogacy Pregnancy Contracts
by Rebecca Taylor
[LifeNews.com 9/8/11]

 『The Red Market: On the Trail of the World's Organ Brokers, Bone Thieves, Blood Farmers, and Child Traffickers』 
Scott Carney (著)
出版社: William Morrow; 1版 (2011/5/31)

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by technology0405 | 2013-03-08 13:21 | Countries | Comments(0)
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