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ESHRE(European Society of Human Reproduction and Embryology)の倫理・法律調査チームは、現在19のカテゴリーに関して見解を出している。卵子提供、代理出産、渡航治療などに関しては、「人権保護を優先しながら容認」という立場をとる。

[Taskforce 3 配偶子・胚の提供]
基本原則
・配偶子/胚の提供によって、配偶子を持たない夫婦が子供を持つことが可能になる。こうした夫婦の満足感は、不妊を「治療する」ことよりも重要である。
・配偶子/胚の提供は、遺伝的つながりが本能的特性とは関連しないことを前提に実施される。こうした家族形成を認めることは倫理にかなっている。
・こうした提供には医療従事者との協働が不可欠であり、医療関係者にはその責任がある。

匿名性
・匿名性の問題には①親の裁量権とプライバシー②ドナーのプライバシー③子供の出自を知る権利、という3者の権利が絡み、しばしば対立する。
・「匿名か非匿名か」2項対立ではなく「ダブルトラック」(ドナーが匿名、非匿名を選択し、レシピエントもどちらかを選択するやり方)がよい。
・子供に遺伝的問題が起きた場合には、匿名性に関係なく追跡できるようにすべき。

知人からの提供
・家族や友人からの配偶子/胚の提供に、今のところ反対はない。
・友人から提供を受けることで生じる問題は、報告されていない。
・子供から親への提供も存在する。否定的影響があるというエビデンスはないが、追跡調査が必要。

報酬
・原則として、ヒト由来物質の提供に報酬は支払われるべきでない。
・ドナーの労力に対する少量の謝礼のみOK
・多くの国では報酬によってドナーを勧誘しており、倫理に反していると考える。

ドナーの募集と適性検査
・検査に入る前の募集時にドナーに意思決定カウンセリング(implications counselling:本人自身、その家族、及び措置の結果生まれてくる子にとって、提案された一連の措置が持つ意味を理解するためのカウンセリング)を行うことが必要である。
・遺伝病の危険性を鑑み、精子提供者は50歳未満、卵子提供者は34歳未満とすべき。
・ドナー自身に子供がいることが望ましい。
・ドナーの募集は、独立した、非営利の団体によるのが望ましい。
・ドナーの外見、学歴、職業、社会的背景、提供の動機などの最小情報を記録しておく。

レシピエントの査定と適性検査
・査定時に、意思決定カウンセリング(implications counselling)を行うことが必要。
・生まれてくる子供の福祉と利益に焦点を当てたカウンセリング。
・レシピエントは、将来の妊娠に備えて、同じドナーの精子を取っておく権利をもつ。

医学的適応
・配偶子提供以外の方法では妊娠する可能性がほとんどない時
・配偶子提供以外の方法が成功しなかった時
・深刻な遺伝病が子供に遺伝する可能性があり、PGDの実施も不可能な時

心理社会的適応
・レズビアンカップル、シングルの女性、閉経後の女性など、心理社会的要因によって引き起こされる不妊については、社会的合意が得られていない。こうした問題への認識は国の法律に反映されており、社会によって異なる。

安全性
・精子を凍結してエイズ検査を行うことは、非常に重要である。一方、卵子に関してはエイズが潜むリスクが低いため、必ずしも凍結保存する必要はない。
・配偶子提供は認可された施設で実施されるべきである。
・提供にかかわる記録は50年間保持されるべきである。

子供
・どの段階においても、子供の福祉を考慮することが重要である。
・子供は、ドナーが提供したすべての情報と、自身の提供に関する一般データにアクセスする権利をもつ。

インフォームド・コンセント
・配偶子を提供する、あるいは受け取ることに関する意思決定カウンセリングは必要不可欠である。
・配偶子提供が、ドナーにもレシピエントにも長期的な影響を与える可能性があることを知らせる。
・ドナーは、配偶子提供に対する自分自身の見方と社会の見方が一致しないという可能性を認識しておく必要がある。

Gemate and Embryo Donation
[The ESHRE Task Force on Ethics and Law, Human Reproduction Vol.17, No.5 pp.1407-1408, 2002]

カウンセリングの内容
厚生労働省「精子・卵子・胚の提供等による生殖補助医療制度の整備に関する報告書」より


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by technology0405 | 2011-12-26 16:54 | Materials | Comments(0)

養親の条件―アメリカ―

婚姻関係:アメリカでは一般に、独身者でも、養子縁組して養親になる資格を持つ。(なお、アメリカの養子縁組は日本の特別養子縁組に相当する。)継親が自分の配偶者の子供を養子にすることもできる。夫婦は連帯で養親になるが、州によっては、配偶者と正式に別居しているか、配偶者が行為無能力者である場合、既婚者が単独で養子をとることも認められている。共働きであることは、養子縁組の障壁にならない。

年齢制限:養親の年齢については、6つの州(Kentucky, Louisiana, Montana, New Jersey, Tennessee, and Washington)で18歳以上、3つの州(Colorado, Delaware, and Oklahoma)と米サモアで21歳以上、ジョージア州とアイダホ州で25歳以上と規定されている。未成年者が特定の状況下(未成年者が成人養親の配偶者である場合など)で養親になることを認める州もある。

6つの州(California, Georgia, Nevada, New Jersey, South Dakota, and Utah)と北マリアナ諸島連邦では、養父母の年齢と養子の年齢が10歳以上離れていることが条件。プエルトリコでは14歳以上、アイダホ州では15歳以上離れていなければならない。

養親の年齢に法的な上限はないが、あっせん側が独自の上限を設けていることが多い(この点は日本と同じ)。養親の年齢は一般的に25-50歳だが、養子の年齢に応じて柔軟に対応される。44歳を超えると、学齢期の子供の養子を勧められる。

居住制限:養子縁組の請願を州在住の人間だけに限定するところは多い。必要居住期間は州によって異なり、60日から1年まで。例外を設ける州もある。例えば、サウスカロライナ州とインディアナ州では、特別支援を要する子供との養子縁組を、また別の州では(Illinois, Mississippi, New Mexico, and Rhode Island)エージェンシーを通した養子縁組を、非居住者に認めている。

同性カップル:同性カップルの養子縁組に関して法的な位置づけを与えている州は少ない。フロリダ州はゲイカップルの養子縁組を、ミシシッピ州は同性カップルの養子縁組を禁じている。ユタ州では、法的な婚姻関係なく同棲しているカップルは養子縁組が禁じられているので、同性カップルの養子縁組も実質不可能である。コネチカット州では、性的指向を理由にした差別自体は法律で禁止されているが、養親の性的指向が考慮される可能性は残されている。

アメリカは養子縁組に力を入れ、ある程度の成功を収めている (年間12万件。日本は1300件前後。うち特別養子縁組は年間300件前後)。日本の厳しい養子縁組の条件(法律婚夫婦や年齢制限や専業主婦であることなど)を見直すことで、子どもが欲しい人たち、家庭を必要とする子どもたち双方に新たな可能性が生まれるのではないだろうか。

Who May Adopt, Be Adopted, or Place a Child for Adoption? : Summary of State Laws
[U.S. Department of Health and Human Services]

National Adoption Centre

Adoption Links Worldwide (ALW)


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by technology0405 | 2011-12-22 14:31 | Countries | Comments(0)

IVF治療に不妊カップルがアクセスすることを拒否したとして、NHS(National Health Service イギリスの国民保健サービス)が非難を受けている。イングランド地方とウェールズ地方のヘルス・トラストの73%が、「不妊カップルは上限3サイクルの不妊治療を受けることができる」というNHSのガイドラインを無視していた。

APPG (all-party parliamentary groupイギリス議会の中の全政党からなるグループ)から出された報告によると、NHSがIVF治療へのアクセスに「独断の規制」を設けていたという。NICE(National Institute for Health and Clinical Excellence)の指導では、「女性側が23歳から39歳までの不妊カップルは、NHSによるIVF治療が3回まで受けられる」となっている。

しかし、PCT(primary care trusts人びとが最初に診察を受ける医療サービス機関)の中には、女性が適用年齢内であるにも関わらず治療を拒否したり、カップルの体重や喫煙状況、カップルの片方が前の婚姻関係で子供を設けていることを理由に治療を拒否したりする機関があった。

例えば、39-40歳の女性にIVFを提供していたのはベリーのPCTのみで、ミルトン・キーンズとハンプシャーでは30-34歳、ボーンマスとバッキンガムシャーでは30-35歳の女性だけに適用していた。ウォリントン、ウェストサセックス、ストックポート、ノース・スタッフォードシャー、ノース・ヨークシャー&ヨークの5か所のPCTには、IVF治療自体がなかった。2004年に導入されたNICEのガイドラインを守っていたのは、4施設に1つという割合だった。

National Infertility Awareness Campaignのリーダーでpatient charity Infertility Network UKの幹部であるClaire Lewis-Jonesは、こうした状況を「とても受け入れがたい」と言う。「報告では、PCTの大部分がいまだに勧告に従っていません。PCTの中には、新鮮胚を使った最初のIVFだけ提供し、凍結胚の移植には資金を出さないなど、独断でIVFの実施を規制している機関が多くあります。IVF治療にアクセスする権利を持つ患者が、別の場所に住んでいれば利用できたはずの治療を拒否されているのです。」

不妊治療医師の代表であるBritish Fertility Societyの会長Tony Rutherfordは、次のように言う。「WHOは不妊を、治療の必要な身体的疾患だと認めている。しかし、不妊は心理的にも深刻な悪影響を及ぼす。NHSによる治療への公平なアクセスができないということは、患者から、家族を作る機会を奪っているということだ。」

Public health ministerのAnne Miltonによると、多くのPCTはNICEのガイドラインを守るための努力を続けてきたが、財政的な問題のために、一時的にIVFの提供をストップしている機関もあるのだという。

Couples 'arbitrarily denied' IVF treatment, say MPs
[The Guardian, 7 June 2011]


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by technology0405 | 2011-12-20 17:03 | Countries | Comments(0)

一般に体外受精というのは、回数を重ねれば重ねるほど子供を持つ確率が上がると考えられているが、必ずしもそうでないことを研究チームが示した。この研究によると、1回目の体外受精で3人に1人が出産まで至り、2回で半分近くの女性が出産するが、3回目ではそれほど成功率は上がらず、それ以降は横ばいになるという。

「最初の体外受精が失敗だったからといって治療をやめないで。2回目のサイクルで成功率は上がりますから。」と、ミシガン州立大学の研究主任Barbara Lukeは言う。「でも、3回やって妊娠しなければ、それ以上続けても見込みはほとんどないですよ。」

不妊治療にはお金がかかる。体外受精1サイクルの平均は、American Society of Reproductive Medicineによると約12,400ドルである。治療をカバーする保険会社もある。
不妊カップルは往々にして、高額な体外受精を何度も繰り返す。医師が治療をいつストップするべきか、という問題に関して倫理的な基準は何もない。不妊クリニックは実施したサイクル数によって成功率を報告するが、そうした成功率は、個々の女性が妊娠する可能性を示すものではない。

この問題が全国的に調査されたのは初めて。2004年から2008年までにアメリカ全土で実施された体外受精治療が対象となった。研究者たちは、生年月日や社会保障番号、その他の情報に基づき、治療記録から個々を特定することができた。研究結果は、体外受精で子供を持てる可能性がどのくらいあるのかを、医師およびカップルが認識するのに役立つ。

5年間で約30万人の女性が50万サイクル以上の体外受精治療を受け、171,327分娩(全員が初産)の結果を得た。1回目の体外受精で36%が出産、2回で48%、3回で53%が出産に至った。
7回以上の体外受精を受けた女性たちの成功率は56%と、3回の治療を受けたグループよりかろうじて3%上回っただけであった。

「この結果から、3回の体外受精のあと収穫遁源(あるレベルに達した後に継続するとその能率度で低下が起きること)が起きることが分かります。」とLuke氏は言う。「成功率は上がり続けないのです。」
「だからあきらめるべきだといっている訳ではないのですよ。卵子提供や代理出産という選択肢がありますから。」

今回の研究で出された成功率は、年齢などの要因を考慮に入れておらず、今後の研究に持ち越される。こうしたデータは、治療を続行するか、養子など他の選択肢を検討するか、不妊カップルが自己決定する際の一助となるだろう。

More not always better with in vitro fertilization
[10/28/2010 ALICIA CHANG, AP Science Writer]


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by technology0405 | 2011-12-20 15:33 | Countries | Comments(0)

米国と日本の比較

アメリカのART実績をまとめたCDCの報告によると、2009年に実施された全ARTサイクルのうち12.1%(17,697サイクル)が卵子提供であった。39歳以下の女性はほとんど卵子提供を受けていないが、40歳以上で急激に増加。44歳以上のサイクルでは73%が卵子提供/胚提供を受けていた。

2009年の日本の治療周期総数が213,800サイクルで、出生児数が26680人、アメリカでは同年146,244サイクルで60190人(生産分娩数45870)。分娩あたりのサイクル数の違いから推測できるのは、日本の治療周期に必要のない治療が含まれていること、アメリカで卵子提供が効率を上げていることである。

日本で卵子提供という選択肢はまだ公に認められていない。

「新・レポート不妊:不妊治療の実態と生殖技術についての意識調査報告」を行ったフィンレージの会は、日本の治療年数は平均4.3年、最長18年(1999年フィンレージ調べ)と、「異様に」長いのではないかという疑問を提示している。

治療期間が長くなる原因としては、①移植胚の個数などに関する医師の考え方の違い(不妊治療が高額なため、米国の方がより短期で確実な結果を求める傾向にある)、②卵子提供や代理出産などの手段がない、③養子が一般的でないため夫婦が治療に固執する、などが考えられる。

不妊治療というのは、一部の人にとって有効な治療である。しかし、妊娠例の約80-90%は最初の4回までの体外受精で達成されている。それ以降の治療で妊娠する確率は非常に低い。患者の心身の負担を考慮すれば、卵子提供の是非の問題とともに、不妊治療を「どうやめるか」という問題もまた重要である。

『CDC 2009 National Report』

フィンレージの会 報告
調査対象 妻:平均年齢35.1歳/夫:38.0歳

Relationships in couples after failed IVF treatment: a prospective follow-up study
Gunilla Sydsjo,Human Reproduction Vol.20, No.7 pp. 1952–1957, 2005
IVFで失敗したカップルの追跡調査。3回IVFが失敗に終わったカップルは、別の選択肢を考える傾向にある。

 「高齢女性と不妊治療」 
三宅婦人科内科医院

高齢女性の生殖医療における問題
藤野婦人科クリニック

不妊治療中の女性に及ぼすストレス因子の分析
西脇 美春、 山梨医大紀要 第17巻,48~51(2000)


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by technology0405 | 2011-12-20 12:03 | Countries | Comments(0)

3年前、ロシア・モスクワ在住の女性Lamara Kelesheva(58)は、26歳の息子を急性白血病で失くした。しかし、治療前に精子バンクに預けてあった息子の精子を使い、代理出産で息子の子供を得ることを思いつく。5度の失敗を繰り返した末に2人の代理母が同時に妊娠、2011年1月6日と8日に二組の双子が生まれ、彼女は突然4人の孫を持つこととなった。4人の子供は、女の子1人(Maria)と、男の子3人(Theocharis、Ioanis、Mikhail)。自身が医学博士でもあるLamaraには経済的余裕もあり、子供の誕生は大変な喜びだった。

しかし、子供の出生登録はMoscow Civil Registry Officeに拒否された。ロシアの法律では、代理母を使う権利は夫婦に限られており、祖母や親族に対してこの権利を保証してはいないというのが職員の対応であった。4人の子供の存在は合法とみなされなかった。

女性はMoscow Municipal Courtに申し立てし、そこで拒否された場合はSupreme Courtに行くつもりでいる。ロシアで祖母が代理出産によって孫を得るというケースは、弁護士によると3例目だという。ロシアには、代理出産を含め、生殖補助医療を規制する単独の法はない。そのため、法機関や裁判所は判断に苦しみ、子供の登録を拒否する。これは、政府が責任を回避しているともいえる。

「ロシア法は代理出産を禁じていない。禁じられていないなら、それは認められるということ。従って子供の出生登録の拒否は不当だ。Supreme Courtまで行かずに解決したい。」とKeleshevaの弁護士は語る。

一度に4人の孫ができたことで、今回のケースは話題を呼んだ。いずれにせよ、生殖補助医療に対するロシアの法律の曖昧さが問題を引き起こしていることは間違いない。法的な線引きが、国によってなされるべきである。

Woman becomes grandmother to four illegal surrogate children at once
[pravda.ru 10.06.2011 ]


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by technology0405 | 2011-12-01 16:44 | Countries | Comments(0)

カナダ・トロント在住の夫婦が6年を費やしてようやく、代理出産で生まれた双子とともにインドから帰国できることになった。インドのクリニックの取り違えにより、双子の片方と遺伝的つながりがないことが判明して以来、カナダ政府は子供にパスポートを発行せず、夫婦は長期間の試練を強いられていた。

首都オタワは、双子のうち遺伝的つながりのある方の子供にカナダ国籍を、つながりのない子供には国外移動に必要な書類を発行した。この子供は、カナダ帰国後に市民権を得る手続きを取ることになる。

夫婦は2005年にインドに入国。匿名の提供卵子と夫の精子を体外受精させ、それを代理母に移植して、2006年3月男女の双子が誕生した。通常は、代理出産でも、親とDNAが一致すればニューデリーにあるカナダ高等弁務官事務所でカナダ国籍を申請取得できる。しかし、DNAテストの結果は、男の子に遺伝的つながりがなく、クリニックで取り違えが起きていたことを示唆するものだった。こうした取り違えが起きた時の場合の対応については、全く想定されていない。以来、カナダ政府は男の子に国籍を与えることを拒否し続けてきた。

夫婦は50代。双子の女の子だけを連れて帰ることもできたが、インドに住み続け、カナダ政府と交渉を続けた。カナダを離れて6年、ふたたびトロントで新たな生活をスタートさせることになる。

After 6 years and fertility mixup, surrogate twin can come home
[thestar.com May 5 2011]


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by technology0405 | 2011-12-01 11:20 | Countries | Comments(0)
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