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1979年ファトワ

インドネシア・ウレマ評議会(Indonesian Council of Ulama、MUI)が1979年に出した、体外受精に関するファトワ。
①婚姻関係にある夫婦の精子と卵子を使用するIVFは合法と認められる。
②いかなる代理出産も違法である。一夫多妻のケースでも、妻同士による代理出産は認められない。
③相続権の混乱を引き起こす可能性があるため、亡夫の精子を使ったIVFは禁止する。
④婚姻関係にない男女の精子と卵子を使ったIVFは、イスラムの道徳律に反する違法行為とみなす。

Fatwa Majelis Ulama Indonesia tentang bayi tabung/inseminasi buatan


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by technology0405 | 2011-07-22 12:57 | Countries | Comments(0)

インドネシア初の体外受精児は1988年に誕生した。現在は政府の認可を受けたIVFクリニックが国内に14施設、認可待ちクリニックが3施設ある。これらのクリニックはジャワ島に集中しており、他はバリ島とスマトラ島の2島にある。認可IVFクリニックは、妻が40歳未満の婚姻関係にある夫婦に対し、IVFやICSIを提供することが認められている。

インドネシア産婦人科学会は、インドネシア人夫婦の12%が不妊であるにも関わらず、国内で提供可能な生殖補助医療サービスの30%しか利用されておらず、専門的治療を受けるのは不妊カップルの5%にしか満たないことを報告した。つまり、インドネシアには生殖補助医療を提供できる能力が十分にあり、しかもそのニーズも高いにも関わらず、国内での利用度は低いということになる。

2008年でみると、インドネシアのIVF実施回数は1500サイクルと、近隣諸国の中では少ない。シンガポールは2500サイクル、マレーシア3000サイクル、タイ4000サイクル、ベトナム6000サイクルとなっている。

医師たちはクリニックにまだIVFを行う余力があることを指摘、その余力をフルに使うことを目標に掲げてきた。この目標達成のために貢献するかと思われたのが、生殖ツーリズムである。インドネシア人が生殖補助医療にアクセスするための制約を取り払うより、近隣諸国のツーリズムの波に乗る方が早いのではと考えられていた。

しかし、インドネシアでの生殖ツーリズム推進の動きは未だに弱い。医師たちの多くは、インドネシア人に生殖補助医療を普及させること、国内の富裕層がシンガポール、マレーシア、タイなど海外に不妊治療に行く動きに歯止めをかけることの方に関心がある。こうした国内に主眼を置いた見方は、ARTに関してインドネシアで支配的な道徳的・倫理的立場や規制に端を発している。

インドネシアのART規制は、近隣諸国に先んじて、中央政府や宗教当局、専門家たちによって取り組まれた。最初のガイドラインはPOGI(インドネシア産婦人科学会)によって1990年に裁可されたもので、国内の認可クリニックすべてに適用されている。

厚生省は1992年にHealth Law No.23を出してARTを規制した。ARTを提供する者、ARTを受ける者、合法的行為が明記され、1998年以後はARTクリニックの承認の責任を厚生省が負うことになった。

インドネシア・ウレマ評議会(Indonesian Council of Ulama、MUI)は、実質的に一番最初にインドネシアにおけるART規制に関して声を上げた。評議会がファトワを出した1979年というと、IVF技術がまだ国内になかった時代である。このファトワのポイントは4つある。
①婚姻関係にある夫婦の精子と卵子を使用するIVFは合法と認められる。
②いかなる代理出産も違法である。一夫多妻のケースでも、妻同士による代理出産は認められない。
③相続権の混乱を引き起こす可能性があるため、亡夫の精子を使ったIVFは禁止する。
④婚姻関係にない男女の精子と卵子を使ったIVFは、イスラムの道徳律に反する違法行為とみなす。

インドネシア社会の多元性を考えると、これらすべての規制は驚くべき速さと一致をもってまとめられたといえる。インドネシア的コンテキストでは、ARTへのアクセスは婚姻関係にある夫婦に限定されるべきであり、代理出産と配偶子提供は違法なのである。

こうした厳しいART規制に対し、公的な反対意見や、規制の緩和を求めるような訴えはほとんど出ていない。代わりに、治療の水準や、厚生省の認定の基準を引き上げようという動きは強まっている。こうした厳しいART規制の下では、外国人患者の多くは希望する処置を法的に受けられないので、不妊治療専門医からすれば、国際的な認定を受けようというモチベーションは上がらない。

ARTを求めて渡航治療する外国人の主な動機は、7つあることが分かっている。①母国では処置が禁止されている ②母国では患者がARTを受ける条件を満たしていない ③母国の治療費が高額 ④母国に設備がない ⑤母国に専門医がいない ⑥母国での順番待ちリストが長い ⑦匿名のドナーを希望する

インドネシアでは独身者、同性愛者、40歳以上の女性はARTを受けられない。卵子提供、精子提供、代理出産も禁止されている。しかも、IVFやICSIの料金はオーストラリアの料金体系と似ているので、費用もそれほど安くない。順番待ちリストが短く、ケアの質が高いとはいえ、近隣諸国で安く同様のサービスが提供されていることを考えれば、外国人がわざわざインドネシアを不妊ツーリズムの目的地に選ぶとは考えにくい。

東南アジアで急成長を見せるメディカルツーリズムだが、生殖補助医療の分野に関しては、インドネシアは外国人不妊患者の渡航先とはなりづらいであろう。

Indonesia reluctant to embrace new ‘tourist boom’
by Dr Linda Rae Bennett
[Asian Currents November 2010]


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by technology0405 | 2011-07-19 16:22 | Countries | Comments(0)

インドネシア人にとってメディカルツーリズムは身近なものである。ただし、受け入れる側ではなく、受け入れられる側として。インドネシア人が渡航治療を求める理由は、価格の安さではなく、国内医療の不足と質の低さである。

一般的な渡航先はマレーシアとシンガポールだ。この2国の病院の方が、ケアの質、標準治療、価格の安さどれをとってもインドネシアの病院を上回ると多くのインドネシア人が考えている。スマトラ住民にとってはマレーシアのペナンやマラッカの病院が便利で、一般的である。ジャカルタの富裕層ならシンガポールに行くことができる。

厚生省によると、インドネシア人が渡航治療に費やす金は年間115億ドルだという。マレーシアとシンガポールが地理的に近いため渡航先としては一般的であるが、マレーシアが価格の安さでより人気がある。Frost and Sullivanの報告では、2008年にマレーシアの病院で治療を受けたインドネシア人患者の数は288,000人、シンガポールの病院で治療を受けたインドネシア人患者は2007年で226,200 人であった。マレーシアとシンガポールの大病院は、特別紹介制度や、外国人患者のための部門を設け、ニーズに応えている。

インドネシア政府はメディカルツーリズムの受け入れ国になるため、国内医療の改善を計画している。厚生大臣 Endang Rahayu Sedyaningsih 氏は現在、3つの公立病院が国際機関JCIの認可を取得するための準備をしており、まもなくインドネシアの公的医療制度が世界的に通用するものになるだろうと主張している。

インドネシアにはJCIの承認を受けた私立病院が4施設(2010年にEka Hospital、Santosa Hospital 、Siloam Hospitals Lippo Village が、2011年にRS Premier Bintaro が認可済み)あるが、公立病院での認可はまだない。インドネシアはアジア圏で最もオーストラリアの近くに位置しており、オーストラリア系の私立病院も進出している。政府はインドネシア東部にある66の公立病院に対し、認可取得のための補助を行うことを計画している。

AUSTRALIA, INDONESIA; Reasons for outbound medical tourism
[International Medical Travel Journal 15 April 2011]


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by technology0405 | 2011-07-19 12:00 | Countries | Comments(0)

ベトナム 記事抜粋

不妊治療の卵子吸引で女性が意識不明に
[2007/12/03 JST配信]
ホーチミン市のフンブオン産婦人科病院で、体外受精による不妊治療のため医師が卵子吸引をした35歳の女性が、意識不明になっていたことが分かった。この女性は11月16日に意識不明状態に陥り、10日余りが経過した11月27日午後時点でも同様の状態が続いている。

現在この女性は、同市内のチョライ病院の集中治療室で治療を受けている。フンブオン病院の医師らによると、卵子吸引をする前の女性の健康状態に問題はなかったが、処置後に意識不明になったという。今も原因は特定できていない。同病院では不妊治療科を設置した1998年から数百例の体外受精を実施してきたが、このようなケースは初めてのことだという。

卵子吸引は全身・局所麻酔をして超音波検査をしながら膣から針を入れて卵子を取り出す方法。簡易で安全、効果的なために全世界で年間100万件程度実施されているという。

卵子をあっせんするブローカーが暗躍
[2010/12/18 JST配信]
ベトナムの法律では卵子や精子の売買が禁じられているが、実際には卵子をあっせんするブローカーが暗躍している。13日付ティエンフォン紙電子版が報じた。

母親が子供の「できちゃった結婚」を奨励? 
[2011/03/26 JST配信]
ベトナムでは婚前交渉をタブー視する傾向が強かったが、最近では「できちゃった結婚」の方が合理的とする考え方が広まっている。結婚後に子供ができないと分かると、不妊治療に走り回らなければならないからだ。18日付ベトナムネットが報じた。

ハノイ市に住む建設技師のトアンさんは「結婚は経済的な条件やお互いの気持ちが整ってからでいい。2人とも婚前交渉は問題ないと考えている。子供ができたと分かったらそのとき結婚すればいい」と話す。トアンさんの両親もこの考えに理解を示している。息子を持つ母親の中には「女性とはまじめにお付き合いしなさい。でも、妻にしたいと思った人とは関係を持っておきなさい」と奨励する人もいるという。

その背景には、不妊治療は多額の費用がかかるうえ、必ずしもうまくいくとは限らないという事実がある。保健省によると、ベトナム人女性の不妊率は8%で、この数字は上昇傾向にあるという。不妊の原因は男性側40%、女性側40%、両者10%で、原因不明が10%ある。

中央産婦人科病院のグエン・ティ・ホン・ミン医師は「性に関する正確な知識に欠ける若者たちが避妊薬を乱用したり、中絶したりするケースが少なくない。これらは将来の不妊の原因になるものだ」と若者たちに注意を促している。


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by technology0405 | 2011-07-15 14:22 | Countries | Comments(0)

メディカルツーリズムは、今やアジア諸国にとって、外貨獲得を最も見込める領域の一つである。

アジア太平洋諸国の中で、ベトナムは最も人気のある観光目的地であり、WTTC(世界旅行ツーリズム協議会)は、ベトナムを世界で4番目にメディカルツーリズムが急成長しつつある国だと指定した。2010年にベトナムを訪れた外国人観光客数は425万人で、2009年より2%上昇している。質の高い医師や医療設備が増えつつあるのに加え、治療費は欧米諸国の4分の1程度である。

2007年には、ベトナム初のメディカルツーリズム用保養地がブンタウに開設された。救急サービス、小児科、産科、眼科手術、整形外科、栄養指導、一般外科などを、国内・国外患者両方に提供する。保養地は海に面しており、ゴルフやサーフィン、ショッピングなども楽しめる複合施設となっている。

これまで、ベトナムの外国人向け高級ホテルは、高すぎる値段設定が不評であったが、徐々に相場が下がりつつある。メディカルツーリストたちは、通常の観光客と同じく、美しい自然や文化遺産、豪華なリゾートホテルなどを楽しむことができる。ベトナムでは針灸治療など伝統的な民間療法も盛んであり、そうした体験もできる。

Vietnam enters medical tourism industry
[Treatment abroad news : 16/02/2007]

Medical Tourism in Vietnam
[Healthino 2011]

ブンタウの施設Medicoastのウェブサイト


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by technology0405 | 2011-07-15 11:54 | Countries | Comments(0)

フィリピンのART法

フィリピンでは、最先端の生殖補助医療を行う病院も増えつつあるのだが、ART関連の法律はできていない。かろうじて、人工授精で生まれた子供の地位が、家族法の中に記載されているのみである。

Family Code 164 条には、人工授精についての箇所がある。
「両親が結婚している期間に妊娠、あるいは出産した子供は、その両親の嫡子である。妻の卵子と夫の精子、または提供精子、または夫とドナー両方の精子による人工授精で生まれた子供は、同様に妻と夫の嫡子とみなす。ただし、双方が子供の誕生前に人工授精を認める書面にサインしている場合に限る。文書は、子供の出生証明書と共に登録機関に記録される。」

このように法律は人工授精で止まっており、生殖技術の現状に追いついていない。

New Civil Code 9条には、以下のようにある。
「裁判官と裁判所は、沈黙や不明瞭な点の存在、法の不備を理由に、判決を下すことを拒否してはならない。」

つまり、生殖補助医療で生まれた子供の地位などについて争われた場合には、人工授精までしか想定されていない不十分な法律と現実のギャップを、裁判所が埋めるというかたちになる。

ART (ASSISTED REPRODUCTIVE TECHNOLOGY) AND ITS LEGAL INNUENDOS:
A Challenge for a Statutorial Renovation

by Jesusa R. Lapuz


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by technology0405 | 2011-07-08 16:27 | Countries | Comments(0)

近隣のアジア諸国の中で、フィリピンはメディカルツーリズム産業の着手に出遅れた。今、その出遅れを取り戻そうと、国策の一環としてメディカルツーリズムの推進がなされている。安い医療コスト、多くの看護師・介護士・・こうした潜在力を備えたフィリピンが、将来的にメディカルツーリズム産業の分野で力を持つ可能性は高い。

フィリピンが、雇用の促進と外貨獲得のためにメディカルツーリズム・プログラムを制度化したのは2004年である。低価格の高度先進医療、英語の話せる医療従事者、心のこもったケア、観光資源の豊富さなどが大々的に宣伝された。

しかし、多くの外国人患者を呼び込むには、外国の医療保険を現地で適用できるようにすることが重要である。国際機関からの承認を受けた病院でなら、外国人患者がフィリピンでの医療費を自分の保険でカバーできる。フィリピンでは、この認可病院が現在ようやく3施設になった(St. Luke's Medical Center が2003年に、The Medical City が2006年に、Chong Hua病院が2009年に認可された)。

観光省によると、2006年から2007年にかけてのメディカルツーリズム産業の収益は3億5000万ドル、2009年にフィリピンを訪れたメディカルトラベラーは約10万人で、一人が少なくとも2000ドルを費やした計算になる。これは2008年に政府が掲げた70万人の目標をずっと下回る数である。現政権の目標は2012年までに10億ドル、2015年までに100万人。

フィリピンはインド、タイ、シンガポール、マレーシアに大きく水をあけられている。そうした状況でこの目標を達成するためには、積極的に市場開発に乗り出す必要がある。シンガポールのように、十分な予算をつけ、政府系機関に実行させるべきだと、観光省の製品研究開発部Elizabeth Nelle氏は言う。

2010年には、41の病院、 45の温泉施設、個人病院、信仰療法士などが提携してHEAL Philippines(Health and Wellness Alliance of the Philippines)を結成した。フィリピンのメディカルツーリズム促進のため、政府のプログラムのもと、治療施設と観光施設が連携した取り組みを進めている。

Nelle氏によると、フィリピンに来るメディカルトラベラーが最も多く利用するのが「Beauty Holidays」ツアー、つまり美容整形である。タイやマレーシア、シンガポール、インドよりも費用が安い。フィリピンでは1900ドルでしわ取り手術が受けられ、これは近隣諸国の中で最安だという。フィリピンでは宿泊費も他国の半分程度で済む。他には歯科処置の「Smile Holidays」と眼科処置の「Vision Plus Holidays」が人気のツアーである。

しかし、そうした美容系の治療ではなく、冠動脈バイパス移植手術など通常の医療処置となると、タイやインド、マレーシアより高くなることもある。フィリピンは外国の医療保険の認定を推進する必要に迫られている。

これまで、フィリピンにやってくるメディカルトラベラーの多くは、アメリカやカナダなど海外在住のフィリピン人であった。現在の一次市場は中東と太平洋諸島系の国々、二次市場はオーストラリア、日本、韓国、台湾、ヨーロッパだとNelle氏は言う。

Philippine Medical Tourism, Incの社長Eva Trinidad氏は、中でも日本市場に注目している。日本語と日本文化を医療従事者が学べば、患者を獲得できるだけでなく、定年後の移住先としてフィリピンを日本人に売り込むこともできるだろうと見込んでいる。フィリピンは現在メディカルツーリズムに加えて、温泉と伝統的マッサージを利用できる「ウェルネスツーリズム」を提供し、「リタイアメント(定年)ツーリズム」にも取り組んでいる。

このメディカルツーリズム計画が成功すれば、フィリピン人の医療関係者が海外に出稼ぎに行く必要もなくなるし、国内の医療も底上げされる。政府は大きな期待を寄せて、メディカルツーリズムを推進している。

Medical Tourism Philippines Needs to Catch Up
[ Medical Overseas Health October 21, 2010]

HEAL Philippines Officers Inducted
[Jan 31st, 2010 by Philippine Travel Blog.]

Joint Commission International (JCI) Accredited Organizations


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by technology0405 | 2011-07-08 13:33 | Countries | Comments(0)

ESHRE(European Society of Human Reproduction and Embryology)の倫理・法律調査チームは、2005年に代理出産についての報告・見解を出している。代理出産は「容認可能である」と結論付けた。

・代理母になるのは、利他的代理出産では血縁者や友人、商業的代理出産の場合は親族でない女性が多い
・代理母には、流産、子宮外妊娠、高い確率での多胎妊娠、妊娠合併症などのリスクがある
・代理母の妊娠率は、代理出産以外の生殖補助医療技術と同等である

心理的側面
・依頼親は、一般的に代理出産経験をポジティブな経験として捉えている
・代理出産の経験を通して、代理母が心理的問題を抱えることはまれだが、例外的に子供を手放したがらないケースもある
・代理出産で生まれた子供の心理については、情報が少なく、研究途中である
・依頼親の子供になる予定だった子供の心理については、研究途中である

倫理的原則
・女性が、不妊カップルのために利他的に代理出産をすることは、容認可能でる。道徳的反対があること、合併症などのリスクを認識はしているが、代理出産を全面禁止にする理由としては不十分である。関係者全員を保護し、リスクを最小限にとどめるためのガイドラインが必要不可欠である。

金銭の支払い
・代理出産に報酬を支払うことは、人間の尊厳への侮辱、身体の道具化、女性に対する搾取、不適切な誘導や強制とみなすことができる。よって、利他的代理出産しか認めることはできない。
・妊娠と、それに伴う合併症などの医療費は、代理母に還付されるべきである
・妊娠中の実際の所得喪失分(見込みではなく)は、代理母に還付されるべきである。

相互の裁量権
・契約は、依頼親と代理母の双方が理解していなければならず、妊娠後は片方が勝手に方針を変えることはできない。
・依頼親が離婚した場合でも、契約は有効で、依頼親が親とみなされる
・出産前に依頼親が二人とも死亡した場合は、子供を引き取るか養子に出すかの選択を代理母が行う
・代理母には、健康的な生活を送る、決められた検診を受けるなどの、責任ある行動が期待される

インフォームド・コンセント
・生まれた子供の親権が依頼親にあり、子供を引き渡さねばならないことを代理母に伝える
・依頼親には、代理出産でどのような子供が生まれても彼らが親になることを確認しておく
・代理母とその夫の関係を守るため、また代理母の夫が法的な父親となる国も多いため、代理母の夫には同意を得ておく。代理母の実の子供たちの利益も、事前に考慮されるべきである。

安全面
・配偶子提供と同様の検査が必要
・推奨される移植胚の数は1つ。卵子提供者が36歳以上で回収した卵子の数が少ない場合のみ2つ。
・代理出産は代理母1人につき1回を推奨する。ただし同じ依頼親の場合はその限りでない。

特定の倫理原則
・代理母の健康を考慮した医療的処置としての中絶は、正当と認められる
・依頼親の都合で正常な妊娠を中絶させるのは、道徳的見地から適切ではない
・代理母には中絶する権利があり、そのことは契約時に依頼親も考慮しておく必要がある
・妊娠を継続するか中断するかは代理母が決めることであり、他人は強制できない。しかし、代理母は自らの意思で契約を交わしたのであるから、妊娠を継続する道徳的義務は優先される。
・代理母は、医師の指示する分娩様式を強制されてはならないが、最善の結果を出すため、医師の助言をきく義務が優先される。

法的強制力
・代理母の出産前の行動に対して、法的強制力は執行されない
・出産した子供には依頼親が全責任を持ち、障害児でも多胎児でも引き取らねばならない。契約書に記載された条件にかかわらず、依頼親が引き取る。
・代理母は子供に対する一切の権利を持たない

代理出産で生まれた子供の福祉
・代理出産で生まれた子供の長期的研究はなされておらず、社会的・心理的影響は不明である
・代理母が家族と連絡を取り続けた場合の長期的影響は、調査されていない
・子供には代理出産の事実をオープンにするのが望ましい
・提供配偶子、代理母の提供卵子を使用した場合は、子供の「知る権利」を考慮すべき

医師の義務と責任
・医師側には、道徳的にも法的にも代理出産に協力する義務はない
・協力することを決めた場合、以下の義務が生じる。
 ①代理出産に関する医学的、社会的、心理的、感情的、道徳的、法的な情報を関係者に与える義務
 ②関係者に、医師の指示を守るつもりがあることを確認しておく義務
 ③関係者に、きちんとした検査とカウンセリングを受けさせる義務

家族内代理出産
・姉妹や母娘などの間で行われる家族内代理出産では、道徳的強制と、血縁関係の混乱が懸念される
・家族内代理出産が、そうでない代理出産より問題をはらむというエビデンスはない
・娘が母親のために代理母になるケースは、依存関係や過度な重圧がある危険性が考えられる。

提言
・代理出産は、不妊治療の最後の手段として容認可能な生殖補助医療である
・報酬の支払いは容認すべきでない
・関係者はそれぞれ個別に、専門家の検査とカウンセリングを受けるべきである
・代理母の卵子を使う場合は34歳以下、代理母の卵子を使わない場合は44歳以下の代理母にする
・代理母には自分の子供が少なくとも1人いること
・契約にはクーリングオフ期間を設けることが望ましい
・移植胚の数を1個にすることを強く推奨する。特定の場合に限り、2個にすることも考えられる。
・依頼親の家族と代理母の家族に対する、長期的な追跡調査を行うべきである
・依頼親は、妊娠の継続や中断に関して決断する法的権利が代理母にあることを知らねばならない

ESHRE Task Force on Ethics and Law 10: Surrogacy
by ESHRE Task Force on Ethics and Law including F.Shenfield, G.Pennings, J.Cohen,
P.Devroey, G.de Wert and B.Tarlatzis



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by technology0405 | 2011-07-05 15:07 | Materials | Comments(0)

インドのIVF成功率

インドのIVFクリニックがうたう妊娠率はとても高い。30%から40%、時には50%を超える院内統計もWeb上に出されている。しかし実際には、妊娠率というのは、女性の年齢、移植胚の数、卵子提供などの要素によって大きく異なってくる。一般に、妊娠率が高いクリニックは双子や三つ子の出産が多い。また、妊娠率と生児出産率には隔たりがあるにも関わらず、高い妊娠率のみを強調するのは、患者に過度な期待と出費をさせる結果になりかねない。
2003年のICMARTの報告によると、インドのIVF出産率は24.8%となっている。

UKの監視機関は、IVFクリニックに対し、成功率を過大広告させないよう取締を強め始めた。UKでは年間15,000人の子供がIVFで誕生しているが、IVFによる生児出産率は25%を下回る。私立病院による過大広告のせいで、患者は不妊治療をあきらめず何千ポンドという金をつぎ込んでしまうという。NHSのガイドラインでは不妊カップルに対し3回までのIVFしか推奨していない。

インドのIVFクリニックは、その多くが私立病院であり、競争は激しい。移植胚の数を減らすこと、患者の肉体的・精神的・金銭的な負担を減らす方向に先進国は動いている。インドでも、こうした議論が生まれてくることを期待したい。


Infertility Treatment inIndia IVF Pregnancy Success Rates
[Med Access India ]

The baby business: Watchdog to crack down on the 'scandal' of IVF clinics
[The Independent 22 May 2011]


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by technology0405 | 2011-07-01 16:48 | Countries | Comments(0)

ICMARTのデータ

International Committee for Monitoring Assisted Reproductive Technology (ICMART)は、世界各国で実施されたARTに関するデータの収集、分析および普及に携わる、非営利の国際機関である。

International Committee for Monitoring Assisted Reproductive Technology (ICMART) world report: assisted reproductive technology 2003
2003年に54か国1,709施設で実施された433,427サイクルのARTに関するデータ。IVF総数や妊娠率など。54か国のうちアジアはインド、日本、韓国、台湾の4か国。Availability(人口に対する実施数の割合)なども記載されている。例えばインドはIVF数の見積もりが年間18,291と数は多いが、availabilityは17と極端に低く、国民にとって利用しにくい(おそらくコスト面で)ことが読み取れる。

World collaborative report on in vitro fertilization, 2000
2000年に49カ国で実施されたIVFに関するデータ。2002版も出ている。

World collaborative report on in vitro fertilization, 2002

Cross-border fertility care—International Committee Monitoring Assisted Reproductive Technologies global survey: 2006 data and estimates
CBFCに関する2006年のデータ。患者の渡航先や母国、CBFCを求める理由など。

ICMARTのデータには地域的偏りがあり、タイやマレーシアなど、東南アジア諸国のデータが少ない。こうした国でもARTは盛んに実施されており、CBFCの渡航先として選択されることも多い。発展途上国やアジアの新興国のデータの収集が求められている。

The International Committee for Monitoring Assisted Reproductive Technology (ICMART) and the World Health Organization (WHO) Revised Glossary on ART Terminology, 2009
F. Zegers-Hochschild, G.D. Adamson, J. de Mouzon, O. Ishihara, R. Mansour, K. Nygren, E. Sullivan, and S. van der Poel on behalf of ICMART and WHO
Human Reproduction, Vol.24, No.11 pp. 2683–2687, 2009
Advanced Access publication on October 4, 2009 doi:10.1093/humrep/dep343
ART用語集


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各国のARTに関する資料や記事を集めています (※ このブログに書かれている情報の信ぴょう性は各自でご判断ください)