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代理出産トラブル

代理出産に関するニュースは、えてして依頼者(同性愛者)や斡旋者に都合がよいような記事が多くばらまかれがちである。代理母が死亡したケース、代理母に不利なトラブルや事件はインドやタイなどで発生しているはずだが、なかなかそうした記事が出ないというのは、メディア報道が推進側に偏っている証拠であろう。一方、子供の無国籍問題は依頼者にとって不利なトラブルなので大々的に報道されている。

先進国が発展途上国の女性を代理母として雇うことについては、以前から倫理面での問題が指摘されてきた。しかし、インドやタイにとって医療ツーリズムは外貨獲得のための重要な手段である。医療ツーリズム推進の陰で、代理母になるのはインドの貧しい下層階級であり、その声は外に届きにくい。

4000ドルの借金とアル中の夫を抱えたあるインド人女性は、借金返済のために腎臓を売ることを考えた。だが代理出産で7000ドルを稼げることを知り、代理母になることを決意したという。まさに選択肢のない状態での決断である。

また、上流階級の女性に代理母として雇われた別のインド人女性は、妊娠期間中は女性の家で過ごすように言われた。だが、盗みの罪を着せられ追い出されたばかりか、代理出産契約も破棄され、中絶せざるを得なくなった。

代理母になることで稼げる金は2500-6500ドルとされる。人口の約35%が1日1ドル以下で生活し、一家の年収が500ドルというインドでは、これは相当な大金である。このため夫や親族が、女性に代理出産を強く勧めるケースも多い。

ICMRのガイドラインでは、代理出産契約時に代理母の生命保険を依頼者が支払うことが明記されている。代理母が合併症などで死亡した場合は、代理母家族に保険金が支払われているのだろうが、こうした危険性について代理母はあらかじめ理解しているのだろうか。代理母が字を書けないためサインでなく拇印で契約することは珍しくない。字が読めても、英語で書かれた契約書を読めない代理母も多い。
インドの新法案についての議論では、代理母の権利というものも十分に考慮されるべきである。

NYT: India, the Rent-a-Womb Capital of the World The country’s booming market for surrogacy
[NYT August 23, 2010 ]


When Surrogacy Goes Wrong: Bad Things That Can Happen In Surrogate Motherhood
[articlesnatch.com]

What are the Risks of Surrogacy to the Surrogate Mother?
[Health Reform 14/5/10 ]


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by technology0405 | 2010-09-24 16:17 | Countries | Comments(0)

2010年9月14日、100か国以上にわたる不妊治療の世界的な調査が、世界不妊会議の場でIFFSの教育長Ian Cookeによって公開された。

母国の法律が厳しい、国外の方が費用が安いなどの理由で、少なくとも毎年1万人以上が子供を持つために国外に行く。生殖補助医療を使った不妊治療に関する法律は国によって大きく違い、それが「不妊ツーリズム」を助長している。今回IFFSから出されたThe IFFS's 'Surveillance 2010' reportは、世界各国でどのようにARTが使われており、文化によって規制がどう異なるかなどについて調査したもの。

不妊ツーリズムの動きが加速する中で、ESHREとIFFSは、世界に共通の安全基準が早急に必要だとみており、現在‘Code of Practice on Cross Border Reproductive Care’を作成中。2010年末に完成するという。

不妊治療ほど国によって違いのある医療分野はない。なぜなら、それは科学的根拠よりも社会的・宗教的考えに左右されやすい分野だからである。多胎妊娠や子供の国籍問題など、問題は多い。ESHREやIFFSなどの機関が協力することで、国境を越えたリプロダクティブケアの実現を期待したい。


IFFSによる調査
International Federation of Fertility Societies Surveillance 2010

International Fertility Societies Call for the Harmonisation of Cross-Border Reproductive Care Standards
[ESHRE Press Release]

Variations in IVF laws fuel market for 'fertility tourism'
[nzherald.co.nz Sep 15, 2010]


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by technology0405 | 2010-09-21 18:03 | Materials | Comments(0)


2008『代理懐胎を中心とする生殖補助医療の課題』 (日本学術会議)'代理懐胎を中心とする生殖補助医療の課題'では、法律で代理出産を禁止するとともに、臨床試験を目指して限られたケースに限り実施するという方針が打ち出されている。
英国では、非営利での代理出産を認めており公設機関によりデータ収集がなされている。日本で、今後、商業化を防ぎつつ代理出産を実施する方式を採用する場合、英国のエビデンスが参考になるだろう。

Surrogacy:the experiences of surrogate mothers[Human Reproduction, 18/10, 2003]
Vasanti Jadva, Clare Murray, Emma Lycett, Fiona MacCallum and Susan Golombok
代理母が代理出産に至った動機、その経験と心理的影響についての研究。代理出産をしてからおよそ1年経った34人の女性をインタビューし、データをとった。質問内容は(ⅰ)女性が代理母になった理由(ⅱ)妊娠前、妊娠中、出産後それぞれの依頼者との関係を振り返って(ⅲ)子供を手放すときと、手放した後の経験(ⅳ)代理母になることへの周囲の反応。代理母は一般的に、依頼者との関係、子供の引き渡し、周囲の反応に大きな問題を経験していないことが結果としてわかった。出産の数週間後に情緒的問題を経験した代理母もいたが、時が経つにつれ消失する傾向にある。代理母は、代理出産によって心理的問題を経験するわけではなさそうだ。

Surrogate Motherhood: Attachment, Attitudes and Social Support[Psychiatry 54,1991]
Susan Fischer and Irene Gillman
代理母が子供を遺伝上の父親に引き渡すことを拒否したベイビーM事件は、胎児に対する代理母の本能的な愛着という問題を世間に考えさせる契機となった。これまでの研究では、代理出産の経過に伴う変数の中に、愛着度は入れられてこなかった。この研究では、代理母とそうでない妊婦の違いに焦点を当て、愛着の度合いや質、妊娠への態度、社会的支援について比較する。客観的な手法と形式ばらないインタビューによって、代理母にとっての妊娠の意味への理解を深めた。代理母になることに伴う様々な現象についても考えられている。

Psychosocial aspects of surrogate motherhood[Human Reproduction Upd. 13/1,2007]
Olga B.A.van den Akker
代理母、依頼女性、子供という3者の社会心理学的研究の再調査。子供への愛着や情報の開示;代理母の経験や特徴、動機 ;依頼する女性の経歴の変化など、多くの点に焦点を当てた研究である。これまでほぼすべての研究は厳選されたサンプルを使っており、一般化することは困難であった。理論が著しく欠落しており、長期的な研究や異なった集団を比較する研究ばかりであった。代理出産が家族にもたらす意味や必要性、あるいは専門家や医療能力、経済的要因が代理母や依頼女性の選択に及ぼす影響について、疑問を投げかける研究はほとんどなかった。社会的態度は幾分変化してきた。しかし、世間の考え方では、子供を持たない女性はまだ認められにくい状況に置かれている。代理母と依頼女性は、意識の改革によってこの奇抜な選択をしており、この意識改革の成功や失敗によって、自分の選択にオープンで正直になれるかどうかが決まる。反対に一般の人々に対する調査では、代理出産をあまり受け入れていないことがわかる。つまり、彼らは意識改革する必要がないので、元の規範意識をそのままの状態に保とうとするのである。

Psycological trait and state characteristics, social support and attitude to the surrogae pregnancy and baby[Human Reproduction, 22/8, 2007]
Olga B.A. van den Akker
代理母と依頼女性の性格の違いは、UKでは研究されてこなかった。さらに、代理出産契約が及ぼす心理的影響は、長期的な展望を持っては調べられてこず、この研究は代理母と依頼女性の心理研究を行った最初の論文である。61人の代理母と20人の依頼女性、計81人に、妊娠第1期、2期、3期それぞれにおいて郵送でインタビュー調査した。出産に成功した人には、子供の誕生後第1週、6週、6か月後にそれぞれ再調査した。代理母と依頼女性の性格には大きな違いはなかった。社会的支援、夫との関係、不安感に関しては、それぞれの段階で代理母と依頼女性で大きく違っていた。妊娠への態度や子供への態度も妊娠中には大きな違いが見られたが、産後鬱は見られなかった。代理出産が心理的影響を及ぼし、その影響が継続することがわかったという点で、この結果は重要である。また、心理検査や支援が必要であることも明らかになった。

Surrogacy:The experience of commissioning couples[Human Reproduction, 18/6,2003]
Fiona MacCallum, Emma Lycett, Clare Murray, Vasanti Jadva and Susan Golombok
代理出産によって得られた子供を持つ家族の研究。依頼者夫婦の経験に焦点を当てた論文である。代理出産で生まれた1歳の子供を持つ42カップルにインタビュー調査した。代理出産を選んだ動機、代理母に関する詳細、妊娠中と出産後の経験、友人や家族に対する代理出産の事実の公開について。カップルは長い不妊の結果、唯一の選択肢として代理出産を行っていた。妊娠中を通してカップルの不安度は低かったといい、代理母との関係も一般的に良かった。これは、代理母とカップルが、契約前から知り合いであるかどうかに関わらず当てはまった。子供の誕生後も、大多数のカップルが代理母と何らかのコンタクトをとり続けており、良好な関係を保っていた。すべてのカップルが代理出産のことを友人や家族に話しており、子供にも伝えるつもりである。代理出産を依頼したカップルは、おおむね、代理出産を前向きな経験としてとらえていることが分かった。

A longitual pre-pregnancy to post-delivery comparison of genetic and gestational surrogate and intended mothers: confidence and genealogy.[J Psychosom Obstet Gynaecol, 26/4, 2005]
Van Den Akker OB.
代理出産を依頼する女性は、子供との遺伝的つながりの有無を選択する。代理母もまた同様の選択をする。この選択と、誕生後6か月の子供に対する認知度の強さの関係について調査した研究。AIもしくはETを経験した代理母と依頼女性81人を契約時から4グループに分けて調査し、出産まで至った34人を子供の誕生の6か月後に再インタビューした。契約に関する自信度は、代理母と依頼女性で大きな違いがあった。遺伝的つながりを重視する考えが、ETを選択する判断材料になっていた。1年半の研究期間を通して回答が寄せられた。得られた結果が倫理的、臨床的に意味していることを、代理出産のプロセスや遺伝的つながりの重視と、自主的な選択と自信との関係の中で明らかにする。

Experience of in vitro fertilization surrogacy in Finland[Acta Obset Gynecol Scand, 81, 2002]
Viveca Soderstrom-Anttila, Tom Blomqvist, Tuija Foudila, Maritta Hippelainen, etc
フィンランドのIVF代理出産の経験に関する、10年間にわたる研究。1991-2001年に、4つのクリニックで代理出産した女性17人を調査。彼女らは、代理出産の過程で卵巣刺激の処置を経験している。代理母たちはボランティアであり、依頼者との関係は、6人が姉妹、3人が母親、1人が夫の姉妹、1人が従妹、4人が友人、3人はその他のボランティアである。依頼者夫婦、代理母とそのパートナーに対するカウンセリングは通して行われた。28サイクルのIVF代理出産処置が17人の女性に行われた。先天的に膣と子宮がない女性5人を含めて、すべてのケースで経膣採卵が適用された。平均で1.8個の胚が一回に移植され、11人が妊娠した(50%が新鮮胚、16%が凍結胚移植)。健康な9人の子供と、双子1組が生まれた。流産が1人。すべてのケースで、誕生直後から依頼者夫婦が子供の世話をした。2人の代理母が産後抑鬱症にかかった。結果として、利他的な代理出産はうまくいくが、関係者すべてに対し注意深いカウンセリングを行うことが必要不可欠であるといえる。


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by technology0405 | 2010-09-17 10:05 | Countries | Comments(0)

エジプトの妊娠薬

エジプトでは2001年に、スンナ派イスラムで最も権威のある学者Mohammed Sayed Tantawi がファトゥワー(イスラムにおける専門家が出した判断のこと)を出し、代理出産の禁止、卵子・精子提供による妊娠の禁止、夫の死後に妻が夫の凍結精子を使うことの禁止が定められている。AIはエジプトでは一般的になりつつあり、精子バンクも存在する。ただし、専門家によると、バンクは化学療法などの治療を受けている男性が、生存中に父親になりたいときに利用するためのものだという。

しかし、イスラム社会では結婚して家族を持つことが重要な意味を持ち、不妊は恥とされる。そのためか、エジプトでは安価な妊娠薬が出回り、この薬のせいで多胎妊娠となるケースが多い。2008年には薬を服用した27歳の女性が7つ子を出産した。この女性にはすでに3人の娘がいた。

エジプトでは多くの地域で、息子がいないのは子供が全くいないのと同じだとみなされる。息子が家の名前や財産を相続する。その上、息子は成長してから、稼ぎ手となり家計を助ける。それゆえ、エジプトでは息子を多く欲しがる傾向にある。胚の性選別にARTが使われることも多い。

「これは医療ミスだ。母と子供たちの合併症のリスクを冒すことはできない。妊娠できるとわかっている女性に妊娠薬を与えることにもっと慎重になるべきだ。27歳で3人の子持ちなら、彼女は不妊ではない。」ベルギーのGhent大学・fertility ethicsの教授Guido Pennings

先進国でも排卵促進のためのホルモン注射は使用されているが、多胎妊娠のリスクを避けるために、卵子の成熟度合いをみながら医師が慎重に量を調節する。エジプトでは、不妊治療に使用する薬やその量に関するガイドラインや規制はない。ホルモン注射には政府の助成が出るので、一回7.5ドルと安価。

こうした多胎妊娠が、現在の人口増加にさらに拍車をかけると、国の福祉システムが立ち行かなくなるのではないかと懸念する医者もいる。Hosni Mubarak大統領が2008年6月に、7900万人いるエジプトの人口は、2050年までに倍になるかもしれないと警告したほど人口は増加傾向にある。

Egypt clerics ban surrogate mothers
[BBC 2 April, 2001]

Egypt septuplets stir debate on fertility drugs
[msn.com 8/26/2008]

Egypt’s IVF Clinics Stir Controversy
[Jakarta Globe April 06, 2010]


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by technology0405 | 2010-09-14 15:57 | Countries | Comments(0)

2002年のICMRの公開討論

2002年、ICMR(インド医学研究協議会)はARTに関するガイドラインの草案を作成したのち、Indian National Academy of Medical Siences(インド医学国際学会)と共同し、「National Guidelines for Accreditation, Supervision and Regulation of Assisted Reproductive Technologies (ART) Clinics in India」に関する公開討論をスタートさせた。当時すでにエジプト、ブラジル、サウジアラビア、韓国、メキシコなどの国にはガイドラインや規制が整備されていた。ICMRの会長Nirmal Kumar Gangulyは「インドには、ARTを倫理的に実行するためのガイドラインも規制もない。国民はICMRから出されているガイドラインの草案を読み、できるだけ多くの関係者に議論をしてもらう必要がある。」と訴えた。

2002年のガイドラインがARTクリニックに課したのは①最低限の物理的な必要条件②スタッフに必要な資格③ARTの手順と、その手順に関する個別の支持 である。患者をよく検査し、起こり得る合併症を伝えた上で適切な処置をしなければならない、という点がこのガイドラインの特徴である。また、配偶子や胚を体外で扱う不妊治療、配偶子や胚の保管、ヒト胚の研究は、認定を受けた施設でしか認められない。

ICMRが民間意見を求めたのは、ガイドラインの以下の点である。
・ARTクリニックは、ドナーや代理母を使う際に、金銭的な関与を一切してはならない。
・ARTを配偶者の同意なしに行ってはならない。
・どの段階の胚であっても、性選別を行ってはならない。ただし伴性遺伝病のリスクを避けるための検査は認められる。
・夫や妻の親戚、友人が提供した精子を使うことを禁ずる。適切なバンクからの精子を使うことがARTクリニックの義務である。
・委員会は、個人からでなく精子バンクを通した精子を使用することを推奨する。従って、精子バンクが独立機関であることも推奨する。ARTクリニックによって設立されたバンクの場合は、別々に運営されなくてはならない。
・夫婦の親戚や知り合いが代理母になることはできない。
・ARTで妊娠した代理母は通常、身体的、医学的に妊娠・出産できない/望ましくない女性のための一患者としてみなされる。
・遺伝上の両親は、代理出産で生まれた子供を養子にしなくてはならない。
・特別な同意があれば胚は5年間保管することが認められ、胚を所有するカップルの同意があれば、その胚を別のカップルあるいは研究に使用してもよい。
・ヒト胚やその一部、配偶子の国外への売買や譲渡は、いかなる場合でも禁止とする。
・複製を作り出すヒトクローニングは禁止する。
・幹細胞のクローニングや15日以下の胚の研究は、進められる必要がある。
・ARTで生まれた子供は、カップルの嫡子と認められ、婚姻関係の枠の中にあり、それに付随する親権、扶養、相続権を持つ。
・結婚していない女性や独身女性がAIを受けるのに法的な障害は存在しないが、一般にAIは結婚している女性のみが夫の同意を書面で得た上で行うのが望ましい。
・不妊を他の病気と同じように扱うことは緊急に必要である。公認のARTクリニックでかかる費用は、子供一人に限り、例えば政府や雇用保険、健康保険によって払い戻されるべきである。

専門委員会は以下の点で意見の一致を見いだせなかった。
・エイズ患者の女性も、ARTを受ける権利を否定されるべきではない。ただし、エイズウイルスが母子感染する可能性については適切なカウンセリングがなされるべきである。
・エイズ感染者でない女性は、たとえ夫がエイズ感染者であってもARTを受ける権利を否定されるべきではない。ただし、この分野に関する最新の知見について適切なカウンセリングがなされるべきである。

専門家にも反対意見の多いこうした点は特に、専門家だけでなくパブリックコメントを交えて公開討論することに意義があり、問題に関心のある国民が皆で難局を乗り越えるのに役立つであろう。インドではこの討論から3年後の2005年に、このガイドラインを発足させた。日本でも法整備の遅れのせいで、特に代理出産が引き起こしている問題は大きく、海外を参考にして、パブリックコメントを巻き込んだ議論がなされることが早急に必要だと考えられる。

National guidelines for ART clinics released for public debate
[September 04 PHARMABIZ.com]

Will accreditation of ART clinic in developing countries make a world of difference?
Anand Kumar

Test-tube baby clinics in India to be regulated
[Times of India Sep 5, 2002]


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by technology0405 | 2010-09-14 11:55 | Countries | Comments(0)

ブルガリアでは『Health Act』を改正し、代理出産を合法化することになった。現法では、出産した女性、もしくは養子縁組手続きをした女性のみが母と認められ、代理出産は違法。

改正案では、自分の子供が一人以上いて、身体的にも精神的にも健康な25歳から45歳の女性ならば代理母になることが認められる。医学的な理由で子供を出産できない女性のみが、代理出産を依頼することができる。「代理母」を示すのによく使われる「surrogate」でなく「substitute」という語が使われるという。代理母になれるのは2回まで。商業的代理出産は禁止。また、代理母は登録され、記録が残る。

代理出産は法律で禁止されていたが、実際には違法に行われ、商業的要素も帯びていた。
「カナダ、ギリシャ、ロシア、オーストリア、イギリス、アメリカ、ルーマニア、イスラエルではすでに合法化しているのだから、ブルガリアも認めてもよい時期だ。不妊を抱える家族が子供を持つ権利を否定するべきではない。」Parliamentary Commission for Public Healthの議長Lachezar Ivanov

この改正には「I Want a Baby」という財団法人の働きもあった。代理出産でしか子供を持てない女性のための活動をしている。
「ブルガリアの女性は、法律のせいでウクライナまで不妊治療を受けに行っている。the Family Code and Ordinance 28の生殖補助医療に関する部分を改正すべき。」代表者のRadina Veleva

Bulgaria Set to Make Surrogacy Legal
[novinite.com | March 30, 2010]

Bulgaria Childless Families Campaign for Legal Change
[novavite.com February 15, 2010]


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by technology0405 | 2010-09-10 15:10 | Countries | Comments(0)

台湾の代理出産の行方

台湾は2007年に生殖補助医療に関する法律『人工生殖法』を出したが、この中には代理出産に関する規定は含まれていない。現時点では代理母は認められていないが、将来は条件付きで容認されるとみられている。しかし、台湾のカソリックは、人間の尊厳に反するとしてこの動きに強く反対している。

「女性の体と胎児を道具とみなし、母と子の関係を非人間的なものにしている」
「代理出産の合法化が、同性愛結婚や、同性愛者が子供を育てる権利の合法化につながる恐れがある」Fu Jen Catholic Universityの生命倫理研究所・Louis Aldrich神父

「台湾カソリック教会ではクレイトン式不妊治療という、より自然な方法で妊娠する治療法を支持します。女性の生理周期に合わせて治療を行うクレイトン式を我々の病院で採用し、多くの不妊カップルに対して効果を上げています。こうしたカップルの多くはARTで不成功に終わっているのです。」Cardinal Tien HospitalのArlene Te医師

インドでも代理出産の合法を明文化したAssisted Reproductive Technologies (Regulaion) Bill 2010の法案にカソリック教会が強く反対している。1987年にローマ教皇庁が出した教書「Donum Vitae(gift of Life)」が今でも世界に強い影響力を持っているのは間違いない。代理出産のグローバル化の波は止まらないかもしれないが、女性の人権や健康についての議論は、さらになされるべきである。

Catholics demand ban on Taiwan surrogacy
[UCANEWS.com June 30, 2010 ]

出生率の低下で代理出産法準備 当局、人工授精補助も
【中国時報 2009年12月7日】

代孕生殖研討會
2010年7月21日に、台湾政府主催で、代理出産法作成に向けて各国の専門家の話を聞くための国際会議が開かれた。
http://www.hpa.gov.tw/BHPnet/Web/About/AchieventShow.aspx?No=201011090020
http://www.reproductivepossibilities.com/newsandevents.cfm

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by technology0405 | 2010-09-10 12:14 | Countries | Comments(0)

SAMAの批判

SAMA(女性の権利と健康のための活動をしているデリーの団体)が2009年に出した論文には、インドのART法案Draft Assisted Reproductive Technology (Regulation) Bill and Rules-2008への批判が書かれている。

・代理母への支払いに関する矛盾
26条6項では「精子バンクは配偶子ドナーや代理母を募集することができ、その支払いはバンクが行う」とあるのに対し、34条2項では「場合によっては、代理母は代理出産への同意に対し、カップルあるいは個人から金銭的補償を受けることが認められている」、精子バンクと代理母の契約用紙(書式R2(4))では「代理出産の報酬は依頼者(夫婦)によって支払われ、精子バンクは代理母の要求に報酬という形で応じる義務はない。その他代理出産の期間中に生じた費用についても、バンクが代理母に支払う義務はない。」とある。

・ARTの危険性についての言及が不十分
Rules6.13に「ARTは、母と子供にわずかな危険 (small risks)をもたらす」とあり、多胎妊娠、子宮外妊娠、自然流産、OHSS(卵巣過剰刺激症候群)の危険が述べられている。こうした危険は命にかかわるものであるのに、そうした認識がない。

・代理出産
法案では代理出産はgastational surrogacy(妊婦と子供に遺伝的つながりがない)でなくてはならない。つまり代理母は、自分の卵子が健康であっても必ずIVFを経験せねばならず、より簡単な処置で妊娠できる子宮腔内受精は認められない。

・法律の適用対象が狭い
法案ではIVFクリニックと精子バンクに焦点が当たっているが、IVFやART、卵子提供や代理出産を推し進めているのは、クリニックとバンクだけでなく、コンサルタント会社、機関、代理業者、旅行会社など多岐にわたる。こうした組織も‘プレイヤー’として役割を明確化し、規制すべきである。

・ARTを受ける女性の年齢
60歳の女性がARTにより妊娠した例もあるように、年齢の壁を乗り越えることが挑戦として進められるていくことは、女性の健康が深刻なダメージを受ける可能性を含むので、政府の監視が必要である。一度に移植できる胚や受精卵の数も、年齢によって決められるべきである。

・精子バンクの役割とは?
26条1項「配偶子の採集、検査、保管、取扱いは精子バンクによって行われる」とあるように、ART処置の重要な部分が、理論的根拠もなく精子バンクに任されている。しかし、精子バンクに関しては、ARTクリニックのように、運営資格やスタッフについて規定が明記された条項があるわけではないので、このままでは精子バンクが仲介者として市場操作を行い、ドナーや代理母を搾取する危険性が高い。クリニックとバンクの役割を明確に区別することが必要。

・新たな技術への対応が不十分
法案では、現状に限られた狭い範囲でのARTしか規制されておらず、日々進歩する新しいART技術に対応することは不可能。IVFで発生した余剰胚を使った胚幹細胞の研究に対する規制もない。こうした研究は文書で規制するべきである。

・広告について
カップルが「カースト、民族、血統などに言及せずに」代理母を募集することは認められている一方、ARTクリニックが代理母を募ることは34条7項で禁止されている。しかし、広告代理店、代理母あっせん業者、女性誌、メディカルツアーや旅行会社による卵子ドナーや代理母の募集は法律の対象外である。個人情報が詳しく記載されている新聞やネットの広告が出回っている現状で、クリニックにだけ禁止しても、新たな業者が増えるのを阻止することはできない。こうした広告にもさらに規制をかける条項が必要である。

・子供の位置づけ
35条1項「婚姻関係にある夫婦の間にARTで生まれた子供は嫡子とし、・・・・」婚姻関係にあるカップル、婚姻関係にないカップル、シングルの男性、女性に生まれた場合に分けて列挙する根拠が不明確。婚姻関係にある夫婦に生まれた子供だけを嫡子とみなす考え方は、子供の生命の尊厳を冒している。

・養子の認識が不適切
Rule 5.4には、ARTが不成功に終わった場合の最終手段として養子縁組が述べられており、これはARTが不妊解決として最も望ましいという誤った偏見を植え付ける。


商業的代理出産の認可を明文化したこの2008年の法案は、医者の利益を優先し、代理母や子供の健康や権利には妥協しているとして一部の専門家から批判されてきた。例えば、代理母は3組のカップルと契約することができ、それぞれのカップルのために3回まで胚移植を受けられる。つまりIVFの処置を9回まで受けられることになり、これは女性の健康を破壊しうる回数である。また卵子提供は、3か月以上の間隔をおいて計6回も可能。

2010年にはDraft Assisted Reproductive Technologies (Regulation) Bill and Rules 2010が出された。法案の特徴は、商業的代理出産を禁じ、利他的な代理出産のみを認める点、同性愛カップルによるARTの使用を認めない点などが報告されている。法律がどのようなものになるにせよ、審議している間にも代理出産市場は拡大し続けている。

Surrogacy: Law's labour lost? 
[The Hindu 2010.7.24]

不妊産業に対するSAMAの見解
Unraveling the Fertility Industry: Challenges and Strategies for Movement Building ...
[SAMA January 22 – 24, 2010]




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by technology0405 | 2010-09-07 13:29 | Countries | Comments(0)

世界には生命倫理学について二つの流れが存在する。個人主義的生命倫理と、人格主義的生命倫理である。前者は、日本や英米圏の生命倫理学の世界を席巻しているものであり、生命倫理学といえば通常は個人主義的生命倫理のことを指す。後者は、バチカンが主導して発展させてきたもので、その存在や考えは日本でもほとんど知られていない。

我々に馴染みがある個人主義的生命倫理とは、個人の自由、自己決定権、幸福追求権を最高原理とするもので、アメリカ合衆国建国の思想にルーツを持ち、歴史的にみればごく最近に現れてきた考えであり、著者によれば「特殊なもの」である。

個人主義生命倫理は、公権力を排除し、個人の自由を尊重するもので、政治理念としては良い面あるが、生命倫理の原理としては不都合な面がある。つまり、この考えを突き詰めると、個人の権利同士が衝突した場合、常に強者の権利が優先され、弱者の権利や保護がないがしろにされてしまう。

一方、個人主義的生命倫理と対照的な原理に基づく人格主義的生命倫理は、存在それ自体に価値があるとする存在論を哲学的基盤とし、人間の尊厳(dignity)を最高原理としている。

人格主義的生命倫理を掲げるバチカンが、最も手厚い保護が必要な弱者とみなしているのが「受精卵=胚」である。なぜ受精卵が保護に値するかといえば、「受精した瞬間から人である」(受精卵=人)という教説があるからである。数ある弱者の中でも、バチカンが胚を特別な保護が必要であると考える理由は、受精卵は自己決定できないからである。この教説は、受精の仕組みの解明など急速に進む近代科学の進歩がもたらした知見に裏付けられたものである。
歴史的にみれば、受精卵=人は「中絶に関する宣言」(教理省1974)で初めて示された、カトリックでも比較的新しい考え方である (因みにこれは、中絶を女性のプライヴァシーの権利として認めた合衆国のロウ判決(1973)に対するバチカンの反対声明として示されたというのが通説となっている)。


「受精した瞬間から人である」という考えの「いいところ」は、非常にわかりやすいことである。この教説をもちいれば、ES細胞やクローン胚、着床前診断、中絶の是非など、生命の始まりをめぐる生命倫理問題に対して、明快な回答を与えることができる。

しかし、日頃、ヌエ的・状況主義的な日本の生命倫理に馴染んできた者からすれば、何故そこまで受精卵に拘るのか、正直理解し難い面がある。

人格主義的生命倫理、いいかえれば「受精卵=人」は、別の見方をすれば、「真理」をめぐるバチカンの政治学としてみることもできるかもしれない。聖書にあるアダムとイブの創造論がダーウィンの進化論によって信憑性を失ったいま(今でも創造論を信じている人はもちろんいる)、世界の始まりではないが、人の始まりをめぐる真理として新たに持ち出されたのが、近代科学の装いを凝らした「受精卵=人」教説であったのかもしれない。

再生医学研究に莫大な研究費が投じられることで、熾烈な研究開発競争が繰り広げられ、様々な利権をめぐって世界がその研究動向に注目するなか、「受精卵=人」教説にもとづいて胚の利用を断固として否定するバチカンは、真理の擁護者として、その独自性と存在感とを人々に対して示すことができる。

しかし現実の問題はそう簡単なものではないだろう。第一、そのような単純な原理で全てを片付けようとすれば別の弱者への人権侵害が生じてしまうかもしれない。

弱者保護ということなら、受精卵の保護以外にも、それと同じ熱心さで取り組んで欲しい事柄は他にもっとある気がする (それらについてバチカンが熱心に取り組んでいる可能性を否定しない。単純に知らないだけのだが)

また、カトリックといえば、女性は司祭になれない、司祭は女性との交わりを避け生涯独身を貫かなければならないなど、女性の存在を徹底的に排除している。つまり、バチカンは高度に男性中心の世界である。そのような特殊な世界に住む人間が考えることは、人間のあらゆる思考がそうである程度に、どこかにバイアスが含まれているのではないか。

とはいえ、日本でカトリックの人格主義的生命倫理を紹介・解説できるのは著者くらいしかいないから、これは、それを知ることができる限られた書であるし、日頃馴染んでいる個人主義的生命倫理や"状況主義的生命倫理観"を相対化するのに良いといえる。


「イタリアとカトリックの生殖補助医療をめぐる倫理問題」(秋葉悦子講演)


人の始まりをめぐる真理の考察

秋葉 悦子 / 毎日新聞社




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by technology0405 | 2010-09-05 17:15 | Book | Comments(0)
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