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イスラム教と人工生殖

イスラムにおける法と倫理観のあり方は、日本人のそれとはかなり隔たっている。日本社会での「ルール」としての「法」と異なり、イスラム法には義務行為と禁止行為だけでなく、推奨行為、中立あるいは許容行為、自粛行為という範疇があり、道徳、常識、社会通念といった倫理観に大きな影響を与えるものである。判断の必要なあらゆる場面において、イスラム教徒はコーランを参照し、自分の行為が神の意志に沿うものかどうかを問うのである。

イスラム教徒にとって、神はすべてのものの創造主であり、人間の誕生も神による創造業の一つと考えられている。有名なハディース(預言者の伝承)によれば、人間は120日間をかけて母の胎内で創造されることになっている。実際に人工妊娠中絶の可能な期間も「妊娠120日以内」とされるなど、親子というきわめて近い人間関係にも神が介在していることがわかる。

こうした世界観を持つイスラム教では、生殖に対する人間の介入はどこまで許されるのだろうか。これには様々な見解があるが(イスラム法学では1つの見解を「公式」見解とすることは禁止)、人の誕生が神の創造業の一つであるという立場から、クローニングは禁止すべきという意見が圧倒的である。

また、親族関係の明確化が人間としての義務であるという考え方も、生殖医療に決定的な影響を及ぼしている。イスラム教徒の間では、子供の名を使って既婚者を呼び、子供には父親の名を添えて呼ぶ。例えばムハンマドという男にハサンという息子がいた場合、父親は「アブー・ハサン(ハサンの父)」、息子は「ハサン・ブン・ムハンマド(ムハンマドの息子ハサン)」となる。それは養子であっても絶対で、養父ではなく実の父の名を添えなければならない。こうした親族関係の重要な社会では、非配偶者間の人工受精は姦通と同じ意味を持つので、妻の卵子と夫の精子を使った人工授精のみが許されることになる。

イスラムから見ると、親族関係を乱すことは「人間の義務」を怠ることであり、それを守れなければ人間性を失い、動物のような野蛮な域に落ちるとされる。コーランを基準とするこうしたイスラム独特の考え方は、人工生殖に対しどのような結論を出してゆくのであろうか。(M)

人間改造論―生命操作は幸福をもたらすのか?

鎌田 東二; 粟屋剛; 上田紀行; 加藤眞三; 八木久美子 / 新曜社





  
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by technology0405 | 2010-08-31 16:01 | Book | Comments(0)

トルコの新法案

これまでもトルコは代理出産や配偶子提供を禁止してきたが、さらに保守的な規制法『ÜREMEYE YARDIMCI TEDAVİ UYGULAMALARI VE ÜREMEYE YARDIMCI TEDAVİ MERKEZLERİ HAKKINDA YÖNETMELİK』が2010年3月に保健省から出された。

・不妊治療は正式な婚姻関係にある夫婦に子供ができない場合を対象としている(第1条)
・センターや個人が認可を受けている場合のみ、不妊治療を行える。卵子、精子、胚は患者夫婦の治療のためだけに使用され、それ以外の保存、移動、売買は禁止。(第18条)
・海外の精子バンクの利用を患者に勧める行為、仲介行為、あるいは精子バンクを利用した治療を行ったクリニック、医者、その患者は刑法上の罪に問われる。クリニックは3か月の停止、2回目以降の違反はクリニックの閉鎖。(第18条5項)
・ドナーや提供胚の使用、夫婦の受精卵を第三者に使用すること(代理出産)の禁止
・海外へ不妊治療を受けに行くこと自体は禁止ではない(第18条6項)
国外でAIにより妊娠した女性は、刑法上の罪(懲役1-3年)に問われる
・禁止された治療に関わった者は皆(医療スタッフ、仲介人、妊娠した女性、ドナーを含む)関係者とみなされる。(第18条7項)
・配偶子バンク、精子提供、卵子提供、仲介行為の禁止(第18条11項)

「この規制法は、子供の父の隠匿を罪とする刑法231条に基づいている。父親や祖父が誰なのかを子供が知る権利は非常に重要。精子提供はそれに反している。」保健省の広報担当官Irfan Sencan

「子供の相続権を守る法律を曲解している。改正された刑法の哲学に完全に反した規制法。我々は女性の体やセクシャリティに対する自律を守るために何年も戦ってきた。政府はこの規制法を、議会にかけずにこっそり出したのよ。」トルコの女性運動家Pinar Ilkkaracan

「これは大きな後退だ。新法は、女性に新技術を提供できるよう改善されるべきだったのに、正反対になった。海外の精子提供を希望する女性は年間100人程度と、数は少ない。しかし、民族の異なるカップルに対する規制といった、他の領域の規制に発展する可能性もある。」トルコ産婦人科学会の会長Ismail Mete Itil

‘トルコの血統を守るため’に出された新規制法。トルコのRecep Tayyip Erdogan首相は「国を守るため、女性は3人は子どもを生むべき」などの発言でも知られるイスラム主義者である。公正発展党(Justice and Development Party)のこうした保守的な動きに、懸念を表する声は多い。


規制法全文 ÜREMEYE YARDIMCI TEDAVİ UYGULAMALARI VE ÜREMEYE YARDIMCI TEDAVİ MERKEZLERİ HAKKINDA YÖNETMELİK

Turkish state regulates, oh, baby! 
[Beyond the Bosphorus March 15, 2010]

Turkey bans trips abroad for artificial insemination
[BBC News 15 March 2010]

Turks barred from receiving sperm or egg donations abroad
[ Daily News March 15, 2010]

Turkish Couples Could Face Jail Time for Using Sperm Bank
[VOA News 23 March 2010]


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by technology0405 | 2010-08-31 10:58 | Countries | Comments(0)

ESHRE(ヨーロッパヒト生殖会議)は、安全で有効な治療を確保するため国境を越えた生殖医療(Cross-border Reproductive Care)についての国際調査を2008年から開始した。その成果の一部。

1.Is cross-border reproductive care a problem, and for whom?
[BioNews 01 September 2009]
ESHRE's Taskforce for Cross-border Reproductive Careの取りまとめ役Dr Francoise Shenfieldが、2↓の論文について書いた記事。「procreative tourism」などの言葉から受ける否定的なイメージを避けるため、海外での不妊治療を指してESHREは「cross-border reorpductive care」という言葉を使用。

2.Cross border reproductive care in six European countries
[Human Reproduction, Vol.00, No.0 pp. 1–8, 2010]
ESHRE(ヨーロッパヒト生殖会議)のCross Border Reproductive Care(国境を越えた生殖医療)専門調査会による論文
<調査>6か国から1230例を入手。この内訳は29.7%がベルギー、20.5%がチェコ共和国、 12.5%がデンマーク、5.3%がスロベニア、15.7%がスペイン、16.3%がスイスからの報告。患者の出身国は49か国に及んだ。患者の3分の2が4か国の人間で占められており、イタリア(31.8%)、ドイツ(14.4%)、オランダ(12.1%)、フランス(8.7%)となっている。患者全体の年齢幅は21-51歳、平均は37.3歳だった。69.9%が結婚しており、90%が異性愛者。他国に生殖医療を受けに行く理由は国によって違い、法的理由を一番に挙げたのはイタリア(70.6%)、ドイツ(80.2%)、フランス(64.5%)、ノルウェー(71.6%)、スウェーデン(56.6%)だった。自国より治療へのアクセスが容易という理由を挙げたのはイギリスの患者が34.0%と最も多かった。どの国民にとっても医療の質は重要な要素だった。
<結論>自国の法的規制を逃れるために他国へ生殖医療サービスを求める人が多いこと、そうした人への支援にばらつきがあることがデータからわかる。専門家による、国境を越えた基準の設定が必要。

3.ESHRE: Is IVF good value for money? Why funding ART is good fiscal policy
[ADVFN 2010/06/09 ]

4.The impact of cross-border reproductive care or 'fertility tourism' on NHS maternity services.
[BJOG 2009;116:1520–1523.]
(イギリス)国内と国外での不妊治療の、多胎妊娠における比較。国外に出て不妊治療を受ける方が多胎妊娠する可能性が高く(移植できる卵子の数の制限が緩い)、減数手術を受ける割合も国内に比べて低い。

5.What's driving UK fertility tourism? First study published
[Progress Educational Trust 11 July 2010]
イギリスのDe Montfort大学によるcross-border reproductive careの調査。51人にインタビュー。71%が配偶子提供を求めて海外に行っており、そのうち46%は卵子提供、12%が精子提供、10%が両方の提供を受けた。


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by technology0405 | 2010-08-27 12:24 | Materials | Comments(0)

香港の法律

人类生殖科技条例  HUMAN REPRODUCTIVE TECHNOLOGY ORDINANCE (2000年制定) 
http://www.legislation.gov.hk/blis_pdf.nsf/6799165D2FEE3FA94825755E0033E532/795C7496522C8237482575EF001B5A45/$FILE/CAP_561_e_b5.pdf

中国の規制とは独立した香港の生殖医療技術の規制。14,17,18条が代理出産関連の規制。
利他的代理出産のみ認められ、商業的代理出産は禁止(17条)。代理出産契約に強制力を与えない(18条)。また、代理出産において、婚姻カップル以外の配偶子を使用することは禁止されている(14条)。
代理母は21歳以上の心身共に健康な女性で、代理母の適性は、代理出産の主治医以外の医師が判断する(「生殖科技及胚胎研究實務守則」12条1-10項)。
裕福層の多い香港で商業的代理出産が禁止されたことで、アメリカの業者を通して代理出産契約を結ぶ香港人が増加した。

• 結婚していない人間に不妊治療を提供してはならない
• 精子や卵子の売買を禁止
• 香港やそれ以外の場所(Hong Kong and elsewhere)での、金銭的支払いを伴う代理出産契約を禁止
• 医学的な理由以外による子供の性選択を禁止

Hatena Diary 各国における法規制の現状


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by technology0405 | 2010-08-27 10:00 | Countries | Comments(0)

ロシアでは、代理出産のサービスを受けられるのは原則的に婚姻関係にある夫婦のみとされてきたが、2009年8月にはシングルの女性が、2010年8月にはシングルの男性が、代理出産で生まれた子供の親として認められる判決を裁判所が出した。こうした判例によって、シングルの男女でも代理出産で子供を持つことが一般的になるかもしれない。

2010年8月4日、Babushkinsky District Court は、卵子提供と代理出産という手段で子供を得たシングルの男性を、子供の父親と認める判決を出した。シングルの男性が、代理出産で生まれた子供の父親であると裁判所に認められるケースは、ロシアで初めて。出生証明書には代理母の名前は記載されない。この代理出産はモスクワの Vita Nova IVF clinicが行なった。

2009年8月には、サンクトペテルブルグのKalininsky Regional Courtで、シングルの女性が、代理出産で得た子供の母親と認められ、出生証明書には代理母でなく女性の名前が記載された。

代理出産で子供を得たシングルファザーとしては、歌手のリッキー・マーティンやサッカー選手のクリスティアーノ・ロナウドなどが有名。いずれもアメリカ人の代理母による出産だといわれている。現在検討中の新法案には、独身者が代理出産サービスを利用できるという項目が含まれている。法案が成立すれば、ロシアでもこうしたケースが増えるのだろう。(M)


No wife needed: Single Men Can Become Dads through Surrogacy, Moscow Court Says. 
[Rosjurconsulting 20/08/2010]


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by technology0405 | 2010-08-24 13:49 | Countries | Comments(0)

タイの代理出産・現状

2010年5月に代理出産を規制する初の規制法案がタイで通過したが、これが法律として成立する時期は未定である。タイはインドと並んでメディカルツーリズムの2大受け入れ国であるが、代理出産の数に関しては、インドがタイをはるかにしのいでいる。

その最大の原因は、代理出産で生まれてくる子供の位置づけである。タイでは、代理出産に関する法律がないため、代理出産で生まれた子供はThai Civil and Commercial Codeによって、出産した女性(代理母)の子供として登録される。一方インドでは、出生証明書の母の欄には依頼者の女性の名前が記載される。

つまり現状では、タイの代理母に生んでもらった子供を自分の子供にするには、タイの法律に沿った養子縁組が必要になる。外国人がタイの子供を養子にするのは the Child Adoption Act of 1979によって認められているが、国の機関であるthe Child Adoption Board of Thailandの認可を受け(タイでは民間の養子縁組は禁止)、多くの書類を提出しなければならず、時間がかかる。

こうした煩雑さを解消するためか、タイの業者が紹介する代理母は「子持ちで独身」の女性のみの場合が少なくない。代理母が結婚していれば出生証明書の欄には代理母とその夫の名前を載せなくてはならないが、代理母が独身であれば、母親の欄に代理母の名前、父親の欄に依頼者夫婦の夫の名前を載せることができるからだ。代理母が「父親に子供の権利を渡す」という契約書にサインすれば、依頼者夫婦は、夫の子供として赤ん坊を母国に連れて帰ることができる。(国によっては養子縁組が必要な場合もある)

インドでは、夫がいる女性でも代理母になるのに対し、タイでは、正式に結婚している女性は代理母としての需要が少ないのかもしれない。新法案では、代理出産で生まれた子供は依頼者の嫡子とされる、仲介業者や代理母への金銭的報酬が禁止される、代理母は既婚者とし、夫の同意を得るものとする、などの内容が含まれており、これが成立すればタイの代理出産の状況は大きく変化するかもしれない。(M)

Surrogacy and Adoption in Thailand
[HG org. July 16, 2010]

タイの養子縁組手続き
Inter-Country Adoption in Thailand
[SIAM legal]

メディカルツーリズム・エージェンシーのページ
Q & A From and About “The Infertility Doctor”
[Medical-Tourism-in-Thailand.COM ]


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by technology0405 | 2010-08-24 12:15 | Countries | Comments(0)

匿名配偶子と家族

北欧・ヨーロッパでは、匿名の配偶子を求めて越境治療(tourism)が生じた。

1985年、スウェーデンでは「人工受精法」が成立し、非配偶者間人工授精(DI)によって生まれた子が18歳に達した時点での出自を知る権利を認めた。子どもの権利という点からは、画期的な法律であったが、人工授精法により、スウェーデン国内における精子提供者は激減したという。また、それに伴い、提供者の背景も、変化した。法律施行前は、比較的若年の学生や兵士が多かったが、施行後は、自分の子どもを既に持つ高年齢層の精子提供者が増加した。提供者の減少により、提供を求めるカップルの待機時間が延長した。このため、スウェーデンから当時ARTを規制する法がなかったフィンランドへと提供配偶子を求めて越境治療が生じた。年間数百人に上ったらしい。スウェーデン本国では得られない治療を求めて、国外に出なければならないことへの不満、フィンランドなどホスト国では、もともと不足している卵子提供者をめぐる国内患者との競争についての問題が生じた(フィンランドでも2008年以降は、配偶子提供は非匿名による提供が基本)。ノルウェーでも、精子提供者は非匿名となっており、このため国外へ渡航するカップルが増えている。

ヨーロッパにおける配偶子提供の状況をまとめると、
①ベルギーなど、精子も卵子も、匿名・非匿名に関わらず、使用できる国。ヨーロッパ諸国からの越境治療による患者を多く受け入れている。
②フランス、デンマークなど、配偶子提供を匿名に限り、非匿名の提供を認めていない国々。
③英国、オランダ、フィンランド、スウェーデンなど、配偶子提供者を非匿名に限る国。子どもの出自を知る権利を重視している。
④イスラムの教えで提供卵子、提供精子など、第三者の治療への介入を全て禁止しているトルコ、カトリックの影響で胚の凍結保存を一切認めないイタリアなどの国

①が最も越境治療のホスト国となりやすい。④が最も患者が越境治療を熱望しやすい国となる。

出自を知る権利の導入は、匿名配偶子を求めてヨーロッパに越境治療をもたらす要因となったが、著者によれば、スウェーデンで出自を知る権利を行使している子どもは、実際にはほとんどいないという(法律施行前にDIによって生まれた、実際には出自を知る権利があるのかないのかを問い合わせる電話が一本あったのみという)。

その原因として考えられるのは、一つは、子どもが出自を知る権利を行使する前提となる告知が、親の側からなされていない可能性である。
もう一つは、知らされていても、敢えて生物学的な父親(母親)を探さないという可能性である。

どちらか結論できないとしつつも、著者は、後者の可能性が高いと考えているようだ。
スウェーデンではDIの事実が比較的告知されていると考えられ(スウェーデンでは約半数が知らせると答えた。日本でDIの事実を知らせると答えた夫はアンケートによれば1%)、子どもが幼い時期からDIの事実をきちんと知らせ、家庭に秘密がないようにすれば、親子の信頼関係が壊されることなく、子のアイデンティティに混乱を生じる可能性が少ないこと、それに加えてスウェーデンの多様な家族形態(離婚・再婚が頻繁な家族形成、事実婚の浸透、歴史的に移民を受け入れてきたこと、国際養子による家族形成、婚外子差別のないこと)、さらにはスウェーンでは国民全員が国から割り振られたIDを持っており、それが個人のアイデンティティを構成する要素として大きいことが、出自を知る権利の行使を控えさせている要因ではないかと考えている。

他方、日本では、DNA信仰が強く、両親と子どもからなる「標準家庭」という単一の家族形態への志向性が強いことが、提供配偶子を用いて産まれてきた子どもの立場を複雑で困難なものにしている可能性がある。日本で多様な家族が受け入れられるようになれば、生殖補助医療によって生み出される様々な家族への受容度が増し、出自を知る権利を求めて子が苦悩することはなく、あらゆる形態の不妊治療が普及し、婚外子差別も解消され、結果として少子化問題の解決につながるかもしれない・・・・・・?

しかし、スウェーデンで多様な家族形態が受け入れられているとするなら、なぜ匿名配偶子を求めて越境治療が生じたのだろうか。実際には、子どもが出自の権利を行使しては困ると考えた患者が多かったからではないだろうか。また、スウェーデンでは本当に出自を知る権利が提供配偶子で生まれた子どもによって全く行使されていないのかどうか、そうだとすれば、それはなぜなのか、当事者(提供配偶子で生まれた子ども・親)への調査があればよかったと思う。

文化人類学の親族研究などでは、歴史的・文化的・民族的に多様な家族形態がありうることが示されてきたし、ARTによって作られる家族もまた、相対化してみれば新技術によってもたらされた、多様な家族のなかの一つに過ぎないのかもしれない。生殖補助医療を家族や社会のありようの中でとらえていく作業は重要である。しかし、出自を知る権利を(著者は、もちろん、出自を知る権利が必要ではない、などとは言っていない)を行使できるよう事実を記録し、保管しておくことは必要だろう。出自を知る権利を、単に遺伝上の親を知りたいというDNA信仰に基づく欲求のみに還元することはできないだろう。それは、自らの誕生のプロセスに関する一部始終や真実を知りたいという、この世に投げ出された者が普遍的に抱く思いに関係していると思えるからである(子ども時代、誰もが一度は自分はどのようにして生まれたきたのか、どこから来たのか、知りたいと思ったに違いない)。

生殖医療と家族のかたち 先進国スウェーデンの実践 (平凡社新書)

石原 理 / 平凡社




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by technology0405 | 2010-08-22 18:09 | Book | Comments(0)

代理母に対し中絶を強制

中国は2001年に、代理出産に関わる医療行為を禁ずる法律を出したが、実際には水面下で商業的代理出産は盛んに行われており、その状況に政府も見て見ぬふりをしてきた。しかし2009年2月、代理母が強制的に中絶させられるという事件が起こり、中国の代理出産業界に衝撃を与えた。

広東省の省都である広州で、若い代理母3人が代理母用のアパートにいたところを、地元の家族計画・治安職員(family planning and security officers )が発見。そのまま彼女たちを車に乗せ、病院に運び、その場で3人に無理やり中絶手術を受けさせたという。
職員たちは「女性らは皆、未婚であり、違法に代理母をしていた。3人は法に従い‘治療’措置を取ることに‘同意’した。」と述べている。

「このように無理やり連れ去って中絶手術を受けさせるのは、人権を侵す重大な犯罪行為。5年間やってきて、こうした問題は1度もなかった。」仲介業者China Surrogate Motherの創始者Lu Jinfeng

代理出産産業は、アンダーグラウンドで仲介業者と病院、医師たちがネットワークを形成し、広がりをみせている。代理母は通常、用意されたアパートに共同で妊娠期間をすごし、家事全般は業者に雇われた人にやってもらう。

「政府が何か行動を起こそうとしているサイン。政府は現状に気づき始めたんだ。たくさんの代理出産仲介業者が、組織産業のように多くの金を稼いでるってことにね。」香港バプテスト大学・中国家族計画問題の専門家Siu Yat-ming

「アンダーグラウンド産業はどのようなのものであれ、問題が起こる。なぜなら、業者が安全基準を守り、医療的・倫理的基準を考慮するという保証がないから。不透明性が付きまとう。」コロンビア大学医療センターの生命倫理学者Robert Klitzman

Forced abortions shake up China wombs-for-rent industry
[Reuters Apr 30, 2009 ]

China's Forced Abortions Spark Infertility, Surrogacy, Crackdown, More Abortions
[LifeNews.com May 1, 2009]


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by technology0405 | 2010-08-20 15:36 | Countries | Comments(0)

中国の代理出産

2001年、中国の厚生省は『the Administrative Measures for Human Auxiliary Reproduction Technology』(人類補助生殖技術管理弁法)を出し、生殖補助医療技術を規制している。受精卵や胚の売買の禁止、医療機関や医療従事者が代理出産を行うことの禁止など。

だが、この法律では代理母やドナー、依頼者に対する規制は明確にされておらず、グレーゾーンのままになっている。代理母になること自体は法律違反にあたらないというので仲介業者は存続、経済的な理由で代理母になる女性は中国でますます増えている。中国は伝統的に家の存続を重んじる文化があり、どんな手段でも子供を持ちたいという夫婦も多い。

「中国本土では50程の仲介業者が、北京、上海、ウーハン、広州、河北省北部などの街にある。北京で代理母を雇うには大体300000元(44320ドル)必要。僕のところでは毎年200カップルに代理母を紹介し、in-vitroの成功率は50%以上だよ。」仲介業者daiyunguke.comのJiang Lei

「代理出産の契約は確実なものではない。代理出産の契約は、契約法に含まれていない。代理出産に関する記述はないんだ。依頼者夫婦と代理母両方が認めたくなくても、「母親」は誰になるのか、という問題は残ってしまう。」
「代理出産には、母子関係に関する文化的な信念や理想に疑問を投げかけるものだ。中国の法律や考え方は全然追いついていない。」DeHeng法律事務所シェンチェン支部のSong Yongfeng弁護士;代理出産の専門家

Poverty, desperation drive surrogacy boom in legal limbo
[People's Daily Online August 15, 2010]


Surrogate Business in Grey Area
[Women of China December 30,2009]

Surrogate mother site grows in popularity
[China Daily: 2006-02-16]

Surrogate pregnancy challenges social ethic
[China Daily: 2006-01-07]


中国における法と倫理-代理出産問題をめぐって


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by technology0405 | 2010-08-20 13:02 | Countries | Comments(0)

息子の精子を使う母

亡くした息子の子供を持つため、息子の凍結精子と提供卵子を使い、雇った代理母に出産してもらった女性が、子供の「祖母」として登録する権利を主張している。ロシアの法律では代理出産がまだきちんと成文化されておらず、このような場合、依頼者である女性は「母親」として登録される。

「ロシアには代理出産に関する法律が特にあるわけではない。だから法律家は、こうした子供の出生登録に関する規制条項に沿って仕事を進めるしかない。代理出産に必要な条件は、法律家の下で作成された、依頼者と代理母の同意書のみ。」
「子供が出生登録されるまでは、代理母が子供の母親としてみなされ、代理母は子供を自分のものにすることもできるし、中絶することさえできる。これは不公平、変える必要がある。」
リプロダクティブ関連の法律の専門家Konstantin Svitnev

現在「Reproductive Right of Citizens」という法案を作成する動きがあり、この法律ならこうしたケースにも対応できるという。ロシアの現行法の下での代理出産は、ヨーロッパ諸国の中では最もリベラル。商業的代理出産が普通に行われている。代理母の報酬は約15000ドル。新しい法律で、依頼者と代理母双方の権利が十分に守られることが期待されている。

「代理出産という方法が自然妊娠より一般的になる可能性もありうる。」
「代理母を探してほしいという依頼は毎週20件以上あり、その数は増すばかりだ。それに今は始まりに過ぎない。20年か30年したら代理出産が主流になるという研究者もいる。」代理出産専門の弁護士Aleksandr Ivanov

Paternity beyond the grave: a grandma's quest
[RT 13 February, 2010]


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by technology0405 | 2010-08-20 09:45 | Countries | Comments(0)
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