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パパが二人

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私の孫にあたる二人の娘は、2010年8月30日、インドのムンバイで代理出産によって生まれた。
大きな喜びとともに、将来、息子たちが、子どもたちにどのように説明すればよいのかを考えるようになった。

私は自問自答しつづけた。母親がいないし、父親が二人だということを子どもたちにどのように伝えるか、そして、それよりは重要ではないものの、幼稚園やそこに通う子どもたちや親はどう思うだろうか?

私はそのことで周りが困惑するような状況を避けたいし、その話題を避けるようなことはしたくなかった。

私は自分で本を書くことに決めた。
この本を愛を込めてGalとNoaの二人の娘を育てている私の息子とパートナーに捧げる。

祖母より



幼稚園で起こったこと

二人パパごっこをしよう! とGalはぶらんこから友達に呼びかけた。

無理だよ、そんなことできるはずないよ、とMary

もちろんできるよ、とNorは飛び上がった。

私の家族はそうなんだから、だから、遊ぼう! とNor。

できないよ、だってパパは一人しかいないもん、とNill。

男は男と結婚できないんだから、バカじゃないの!

いや、でももしかしてそれは私のいとこの家に似てる。

いとこの家には犬と猫、金魚とうさぎがいて、一卵性の双子の女の子と二人のママいるし。とLisa。

子どもたちは遊び始めたが、なんだかよくわからない状態になっていた。NillにとってもMaryにとっても、Amirにとっても・・・

それはどんな家族なのか ?

誰が家の仕事をするのか? サラダを切ったり、料理をしたり、ケーキを焼いたり?

雑貨を買ったり、モノを修理をしたり?

Norは大きな声で言った。ちょっと黙って! 説明するから。それからごっこをまた始めたらいい。

Galは打ち切って説明をした。自分たちの家族がどうなっているのか、うまくいっていること。

しかし周りの子どもたちはわめいた。見ないとわからないよと。

だいたい、二人のパパをどうやって呼んでるだ? Daddy A  とDaddy B?

違う! とGalとNoa。   一人は「Yoav」だから Yoパパ、もう一人は「Itai」だから Iパパと呼んでいるの。



GalとNorは、数年前、自分たちがどうやって生まれたかを知らなかった。

パパたちは娘たちを抱きしめ、食事をしよう、といった。

そしてYoパパが料理をしてくれた。Iパパが綺麗に掃除してくれたキッチンで料理をした。

そしてソファーに座って、語り始めた。

夕食を終えて猫をだっこしながら、全部を話した。

パパたちは、何年も前に、恋に落ちた。

愛し合って、一緒に暮らして幸せだった。

そして、結婚してずっと一緒にいたいと思った。

男同志が結婚するのはまだまだ新しいことだ。

だから簡単なことではなかった。しかし諦めることなく、二人はカナダで結婚した。

そのあと、子どもが欲しいと思い始めた。

子どもをつくるためには、必要なことがある。

それは、若い女性の卵と男性の小さな種。

卵が種と出会ったなら、子どもになっていく。

それは、人生で一番素晴らしいこと。

そのあと子どもが大きくなるためには母親のお腹(tummy)が必要だ。

だから二人のパパが子どもを持つためには、ほんの少しの助け(a little help)が必要だった。しかし、方法はあった。

パパたちは親切な人たちを見つけた。ドクターの助けもあった。

彼らは女性から卵をとって、種と合わせてくれた。

遠くインドに住む女性が子どもを産むことに同意してくれた。

卵はそっと彼女の子宮に置かれた。そして、部屋から出るまでの間、そこで卵は成長した。

パパたちは親切な女性に会うためインドに飛んだ。そして、彼女に感謝した。彼女はたくさん休息をとり野菜もたんさくとり、良い気持ちで過ごしていたことと思う。

インドの女性のお腹が大きくなって、生まれそうになったとき、祖母もインドに飛んだ。

そこでとても驚いたわ。だって双子だって聞いたから。

とても嬉しかった。

これが私たちにとって家族の始まり。
by technology0405 | 2016-05-30 08:59 | Book | Comments(0)

私は特別、だって・・・

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ママとパパと恋に落ちて結婚した

ママとパパは家族が欲しくて、毎日祈っていた。でも、ママのお腹の中に子どもは授からなかった。

長い間、子どもを求めていたけれど、うまくいかなかったのでドクターを訪問した。

ドクターが言うには、ママのお腹には問題があるって。

ドクターにはあるアイデアがあって、別の方法があることを提案してくれた。

ドクターが教えてくれたのは、ママの代わりに子どもをお腹に入れて育ててくれる女性のグループがあるってこと。

ママとパパはその話を聞いてとても喜んだ。その人たちは何っていうの? 私の代わりにお腹の中で
子どもを育ててくれるかしら?

ドクターが言うには、その女性たちは"Surrogates"と呼ばれていて、お腹が悪い女性の代わりに、人助けのために子どもを産んでくれるって。

それを聞いたママとパパは飛び上がらんばかりに喜んだ。

翌日、パパとママはSurrogatesという特別な人たちに会いに行った。

そこで、Bonnyに会った。彼女は、ママとパパのため、surrogateになって、ために子どもを産んでくれるってことになった。

ママとパパとBonnyをつれて、彼女が好きなアイスクリームを食べさせてあげたの。

ドクターが、パパとママの赤ちゃんをBonnyのお腹の中に入れ、赤ちゃんは大きくなっていった。

Bonnyのお腹の中で大きくなる赤ちゃんを見て、パパとママはとても幸せだった。

Bonnyのお腹の中にいたのが、私。パパとママはBonnyのお腹の中で大きくなるのを見守った。
9ヶ月後、生まれる時が来た。

パパとママはBonnyを病院に連れて行った。ママとパパはとてもエキサイトしていた。そして、私の顔を見て、目が大きいのを確認して、狂喜した。

パパとママは、Bonnyに感謝しきれないという気持ちだった。そしてBonnyを天使のように思った。

今、私はこうして大きくなった。私はいつもBonnyに自分の写真を送っていたので、彼女は私がどんだけ
大きくなったか知ることができたの。私は、パパとママを助けて私をこの世に送り出してくれたBonnyにいつも感謝している。

そういうわけで、私は特別なの。
by technology0405 | 2016-05-23 08:41 | Book | Comments(0)

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赤ちゃんになる前、私は小さなエンドウ豆だった。

でも私の元になったエンドウ豆ってどれ?

ママに聞かなきゃ! (この人がママ。ママ大好き!)

エンドウ豆から赤ちゃんを作るためには・・・

卵子と精子が必要なんです。(卵子と精子の絵)

え? 卵とミミズ? 卵はいいよ。でもミミズは・・・ (精子の絵はミミズのように見えたらしい・・)

いいえ、卵子と精子です!

女性から卵子をとって男性の精子と一緒にしたら、赤ちゃんエンドウ豆になる。 ママのお腹の中で!

エンドウ豆は大きくなる、どんどん、どんどん、・・・・そしてついてに赤ちゃんになる。男の子か、女の子になるよ。

でもね。ときどき、卵がよくないこともある。その場合、赤ちゃんエンドウ豆はできない。それはお父さんとお母さんのケースだった。

パパとママがドクターにところに行ったら、ドクターがいいアイデアを教えてくれた !

ドクターはとても親切な女の人を紹介してくれた。彼女はたくさんの卵を持っていた。
そして彼女はパパとママに喜んで卵をくれると言った。

それで医師は、女の人の卵子とパパの精子を一緒にしてママのお腹に入れたの。

卵は大きくなり・・・赤ちゃんになった。

それが私!

優秀な医師と親切な女の人(ドナーという)

そしてパパの精子とママのお腹があって、私ができた!


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KIM KLUGER- BELL, LMFT
by technology0405 | 2016-05-20 08:31 | Book | Comments(0)

The Kangaroo Pouch: a story about surrogacy for young children

この絵本は親族のために代理母になった女性が自らの子どもに説明するために執筆したものである。

ストーリーはシンプルである。

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夫と2人の子どもがいて幸せな生活を送っているカンガルーの母親が、子どもがいないカンガルーの夫婦を見て気の毒に思い、彼らのために自分の袋を使って子どもを育てることを思いつく。
子どもが誕生するためには、男性の細胞と女性の細胞、そして子どもを入れる袋が必要であることが説明されている。
自分の袋の中で子どもを育て、子どもが出てきたら子どもがいない夫婦に子どもを返すというのだ。
母親が父親に説明し、父親は良いことだと賛成してくれている。
袋の中に子どもがいるとき、依頼夫婦の声を聞かせたりして妊娠期間中を過ごす。
代理母と子どもは普段の生活を送りながら、袋の中の子どもに冗談を言ったり話しかけることもある。
ある日、袋の中の子どもは、準備が出来たと見えて、袋から出てくる。
依頼した夫婦に子どもを返したとき、彼らはとてもハッピーになって大喜びの様子が描かれている。
カンガルーの家族は、その後もとの幸せな生活に戻った。


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大抵の代理母は、自分の家族を持っている。
このため、代理母になる女性は、夫を説得し、自身の子どもへ説明して納得させる必要がある。
妻が代理母になると聞いてあまりよい気持ちがしない夫は少なくいのではないかと推測されるが、
夫は大人であるから代理出産の意味を理解できるだろう。
しかし子どもはどうか?
母親のお腹が大きくなっていくのを見て自分の兄弟姉妹が生まれてくると期待するのが子どもの自然な反応である。なぜ生まれてきたばかりの子どもを他人に渡さなければならないのか、理解したり納得したりすることが難しいかもしれない。母親が生まれた子どもを他の夫婦に渡すのを見て、自分も母親からいつか捨てられるのではないか、とトラウマになる子どももいるという。依頼者の子どもだからと説明しても、感情面で理解することが難しいかもしれない。
この絵本は、利他的な代理出産のケースだが、その行為に金銭が絡んでいるとするなら一層、複雑である。子どもはお金と引き換えにいなくなった、つまり、お金のために子どもは売られていったことになる。そして、自分の母親はそのようなことをする人間であるということになり、子どもの安心感は失われる。「お金はいらないから、子どもを渡さないでほしい」と母親に訴えた子どももいるという。貧しい母親は自分の子どもの将来を思って、代理母になって金銭を得ようとする。しかし、子どもは全く違う側面を見ている。世界で行なわれている代理出産のうち、真に利他的なケースは少なく、その大部分が、金銭が絡んだケースである。金銭が絡んでいるからといって利他心がないというわけではないが、金銭的対価が大きな動機になっている。そのことが、子どもに与える害を考えてみるべきである。

こうした絵本が存在しているということ自体、母親が代理母になる/なったことを子どもに納得させることが容易ではないということを示している。

代理出産という行為には、依頼する側と依頼される側、二つの家族が関わっている。
代理母になる女性の子どもだけでなく、代理出産で生まれてきた子どもに対する説明も必要になる。
互いの子どもに対し、どのように真実を伝えていくか。
代理出産という行為を、大人の視点ではなく子どもの視点から考えていかなければならない。


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by technology0405 | 2016-04-25 11:29 | Book | Comments(0)

卵子提供で生まれたことを子どもにどのように伝えるのか。

オーストラリアで編集された"Sometimes it takes three to make a baby"(子どもが生まれるためには、ときに3人必要になる)は、まだ幼い子どもに対して自分がどのようにして生まれてきたかを知らせるための絵本である。

こうした絵本は、世界各国で編集が試みられている。そのストーリーは、概ね、似通っている。子どが欲しい夫婦がおり、治療を続けたがうまくいかなかったこと。医師が卵子提供を提案してくれたこと。親切な女性が現れ、両親に卵子を提供してくれたこと。医師が提供された卵子と父親の精子をミックスして母親の子宮に入れたこと。妊娠して両親は大喜びしたこと。子どもは周りの人から望まれて生まれてきたこと。卵子を提供した女性も子どもが生まれて喜んでくれ、両親も卵子ドナーに感謝したこと。こうしたことがわかるように構成されている。

この絵本では、子どもは誰に似るのか? といった遺伝に関する問題にも触れている。
鏡の前で自分の姿を見つめる子どもの頭の中には3人の大人の顔が浮かんでいる。
この絵本では、「ユーモアのセンスはママから、黒い髪はパパから、茶色の瞳はドナーから来たものかもしれない」と書かれている。

また、その後、子どもが学校など集団生活を送るようになれば、自分の出自をどのように捉えるかも問題である。卵子提供で生まれた子どもが他にもいるかもしれないし、いないかもしれない・・・。もしかしたら自分はなぜ卵子提供で生まれたのか納得できないかもしれないが、それは他の子どもでも同じで、子どもは自分でどうやって生まれてくるかを決められないものなのだ。

絵本の末尾には、親に対するメッセージが記載されている。

◆親に推奨されること◆

・子どもができるだけ小さい時から情報を与え始めること。この本は3歳から9歳までの子どもに適している。

・子どもの成長にあわせて何度も何度も話すこと。与えられる情報や子どもからの質問は子どもの成長にしたがってより複雑になっていく。

・不妊治療や妊娠、子どもが生まれてきたときの写真などを貼ったスクラップブックを作成し、それらを見せながら語りかけるとよい。

・リラックスした態度で子どもに語りかけること。卵子提供について恥ずかしいことであるかのように親がぎこちない態度をとれば、子どもはその方法で生まれてきたことを悪いことのように感じる。親がその方法に誇りを持ち、子どもが親の愛情を感じることができるようにすることが重要である。

・同じようにして子どもをもった他の家族と交流することやサポートグループに参加することは有効だろう。子どもたち同士も交流をすることで、自分が他とは何か違っていると思わなくてすむ。

・カウンセラーに相談することも役に立つかもしれない。子どもが誕生したことで解決したと思っていた問題が、ときに後々なって再び、浮上するかもしれない。

・子どもに告げるのを遅らせるのはよくない。ドナーのことを告げたら子どもから拒絶されるかもしれないと親は恐れているが、事実は全くその逆である。子どもは長年、真実から遠ざけられてきたことで自分が否定されたように感じる。早い時期に告げられていれば、それは子どもにとって普通のことになる。子どもは卵子がどこから来たかに関係なく、両親を好きだと思っており、母親は母親であって、卵子ドナーではないことはちゃんと理解しているはずである。

・周りの人に対しても、卵子ドナーを「本当の母親」などと子どもに言わないよう、きちんと説明する必要がある。

・子どもがいじめられるかもしれないと心配する親がいる。子どもが自らの出自に自信を持つよう育てられていれば、他人の発言に左右されなくて済む。周りの子どもたちも、効果がないとわかればいじめをやめるだろう。世の中にはいろいろな家族がいるものである。

・子どもには自信を持って安心するよう教えることだ。そして、他の人から何か言われたときにどう言い返すか、シュミレーションをしておくのもよいだろう。


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Victorian Assisted Reproductive Treatment Authority: VARTA

Melbourne IVF
by technology0405 | 2016-04-21 12:54 | Book | Comments(0)

Sophia's Broken Crayons: As story of Surrogacy from a Young Child's Perspective.

代理出産は代理母の家族にも影響を与える。代理母自身の子どもは、母親のお腹が大きくなっていくのを見て兄弟姉妹ができるものと期待する。しかし、その子どもは他人に渡さなければならない運命にある。その事実をどのように説明し、納得させるか、という問題がある。

「ソフィアの折れたクレヨン」は、代理母になった女性が自身の子ども(Sophia)に宛てた形で執筆された絵本である。

娘のソフィアは、弟がときどきクレヨンを折ってしまうことを悲しいと感じているが、親切な友人が利他心からクレヨンを貸してくれたとき、彼女は嬉しい気持ちになることを知っている。

妻の子宮が妊娠に適していないため、子どもができない夫婦がおり、悲しみに暮れているのを
助けるために彼女の母親は代理母になることを決意した、というストーリーになっている。

この絵本では、折れたクレヨンのエピソードは、代理母の利他心を説明するための喩えとして用いられている。子どもにとっては身近な例だが、代理母の犠牲を過小評価する恐れもある。

また、このストーリーでは、友人を助けるためという設定になっているが、例えばツーリズムのような形で行われる代理出産の場合、代理母自身の子ども、あるいは依頼親の子どもに対し、その事実をどのように説明することができるだろうか? 

代理母自身の子どもにとって、母親がお金のために子どもを渡したという事実が突き付けられる。子どもにとって大きなトラウマになる可能性があることが指摘されている。

依頼親に引き取られた子どもは、どのようにして自らがこの世に生を受けたか、知る権利がある。代理出産で生まれたという事実は、なぜ両親は代理出産を依頼したか、どこで、どのように代理出産を依頼したかということと切り離すことはできない。

インドやタイ、メキシコなどでは既に外国人への代理出産の提供は禁止されるに至っているが、これらの国々で多くの依頼者が代理出産によって既に子どもを得ている。代理母の大半が貧しい女性であり、金銭とひきかえに妊娠出産を引き受けていたのが現実である。

このようなケースで、どのようなストーリー構築が望ましいのか、そして、可能なのか。子どもの自己認識に影響を与えうる大変デリケートな問題である。

折れたクレヨンはのストーリーは、あくまでも代理母になった母親から子どもに語られるものである。したがって、代理出産を依頼した親の立場から、代理母の利他心を説明に用いるのは、適切なことではない。

依頼親は、子どもに対し、代理出産の事実を明らかにするとともに、産んでくれた女性に対し、どれだけ感謝しているか、ということを繰り返し伝え、またその感謝の気持ちを子どもの目に見える形で示すことが不可欠であるように思われる。



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Why I am so special: A book about surrogacy.

Hope & Will have a baby: the Gift of Surrogacy.

The very kind Koala: A surrogacy story for children.
by technology0405 | 2016-04-20 16:57 | Book | Comments(0)

"Cracked Open"

Cracked Open: Liberty, Fertility, and the Pursuit of High-Tech Babies

Miriam Zoll / Interlink Pub Group Inc


Our Bodies OurselvesのメンバーであるMiriam Zoll氏が書いた、自らの不妊治療に関する本。生殖補助医療技術に関する問題を提起している。

“Cracked Open”: New Book Looks at Fertility and Reproductive Technology
[Our Bodies Ourselves, April 30, 2013]

CRACKED OPEN: Liberty, Fertility and the Pursuit of High Tech Babies
Miriam Zoll

Book Review: ‘Cracked Open: Liberty, Fertility, and the Pursuit of High-Tech Babies’
by Eleanor J. Bader
[RH Reality Check, July 23, 2013]
by technology0405 | 2014-01-06 16:59 | Book | Comments(0)

流死産・中絶によって喪われた胎児を弔う日本の水子供養儀礼は(起源については諸説あるものの)概ね1970年代に新しく始まり、その後、普及し定着したとされる。既成の仏教寺院(但し、浄土真宗では行われていない)、新宗教教団、また最近ではネット上で、死者供養の一種として、広く実施されている。

水子供養の隆盛の背景として、戦後日本で中絶が大量に行われたという事実がある。日本は戦後、優生保護法によって堕胎罪を温存したまま、人工妊娠中絶を条件つきで合法化した。1950年代頃には年間100万件以上もの中絶が行われ、日本は「堕胎天国」と国際社会から非難を浴びるほどであった。

日本の水子供養は海外の研究者も多く注目してきた。その一人、William Lafluerは、中絶問題に対する日本仏教のプラグマティックな性格に注目している。米国社会が二分されるほどの難しい中絶論争に対し、中絶を必要悪として認めつつ、傷ついた女性に癒しを提供する仏教の道徳的あいまいさ(道徳的ブリコラージュ)は、中絶論争解決の第三の道であると評価する。Laflureの著書は、水子供養の日本文化論として高く評価されるものの、女性の視点を看過しているという点で欠陥がある。

Hardacreの著書は、こうしたLaflureの牧歌的な水子供養観を、フェミニスト視点から批判するものである。水子供養が、胎児中心主義や祟り言説によって女性の弱みにつけ込むあくどいビジネスとしての側面を持つことを正面から批判した点で、評価される。歴史文献、女性週刊誌の記事、中絶経験者の語り、国内フィールドワーク調査などを通して、フェミニストの視点からの水子供養観を描いたものである。Hardacre以前にも、日本のフェミニスト研究者による水子供養批判は散発的には存在したものの、Hardacreの著書は、外国人フェミニストによる水子供養の最初で体系的な批判書として、重要である。また80年代以降、日本で発明された水子供養は韓国や台湾、タイ、米国などにも輸出されていることから、女性差別の輸出、あるいは女性差別を利用した女性の恫喝・経済搾取が海外でも出現している可能性がある。本書の初版は1997年とやや古く、ネット上での死者供養までカヴァーしていない。だが、水子供養の国境を超えたこうした広がりを踏まえ、現在でも参照すべき価値を失っていないと考えられる。また、平易な英語で書かれており、読みやすい。

Marketing the Menacing Fetus in Japan (Twentieth Century Japan: the Emergence of a World Power)

Helen Hardacre / Univ of California Pr on Demand



Copyright(C) 2010 SGRH. All Rights Reserved.
by technology0405 | 2013-02-16 09:18 | Book | Comments(0)

現代の中国において、生殖補助医療技術の使用に伴う「新」優生思想が促進されている。この問題は、フェミニスト研究にとって重要かつ時宜を得た問題である。研究で浮き彫りになった重要な問題がいくつかある。

第一に、出生数を減らそうとする国の政策が、皮肉にも不妊女性のさらなるスティグマ化を招いたことである。

第二に、不妊治療や研究を促進する類の公的な政策は全くとられていないばかりか、医師や一般人の間にはまだかなり生殖補助医療技術に対しアンビバレントな意見があるにもかかわらず、中国が生殖産業の成長を無自覚に推進してしまったことだ。子ども(できれば息子)を生めという昔からの文化的責務や、毛沢東主義の社会イデオロギー、一人っ子政策、1980年以降の市場のグローバル化、欧米の生殖技術の輸入などが合わさって生じた影響は、中国国内で独特の広がりをみせた。おそらく最も皮肉なのは、中国の「現代性」が、低出生率と生殖補助医療技術の普及という二つの現象によって強力に示されている点であろう。

第三に、一人っ子政策が、知的にも肉体的にも優れた子供を一人だけ生まねばならないという義務につながるという問題である。こうした問題は、臨床の場に「新」優生思想とそれに対応するエリート主義を作り上げた。IVF、超音波検査、性選択といった新技術は、人間がかつてないほど生殖に干渉することを可能にした。あいにく多くの親が、男の子を「優秀な一人っ子」として想定するので、中国の性比の偏りはますます悪化している。

生殖補助医療技術は、優生思想を人々に強制するのではなく、より巧妙な方法で、医師および一般人の間に、新しい生殖の「正常性」の基準を作り上げていったといえる。中国の例を見るとき、我々は、技術が単なる道具にとどまらず、生命の原則をも左右するものであることを理解する。

"The Politics of Baby-Making in Modern China: Reproductive Technologies and the “New” Eugenics.
by Lisa Handwerker
Infertility Around the Globe: New Thinking on Childlessness, Gender, and New Reproductive Technologies, edited by Marcia C. Inhorn and Frank van Balen. Berkeley: UC Press, 2002.

Infertility Around the Globe: New Thinking on Childlessness, Gender, and Reproductive Technologies

University of California Press


by technology0405 | 2013-02-04 16:00 | Book | Comments(0)

社会的・文化的観点から
シンガポールは面積641平方キロメートル、人口400万人ちょっとの国で、その人口の76.8%が中国系、7.9%がインド系、13.9%がマレー系、残りの1.4%がユーラシア人を含むその他の民族である。15歳以上の2000年現住人口のうち、51%が仏教徒あるいは道教(中国古来の宗教)、15%がキリスト教徒、14.9%がムスリム(主にマレー系が占め、インド系と中国系が少数)、4%がヒンズー教徒(主にインド系)である。従って社会政策は常に多文化的な観点から考えられ、宗教や文化の違いに対する気配りは、共通性の模索と同じくらい重要な課題である。

中国系の人々にとって、家族や子供の価値というのは、宗教に関わりなく社会組織としての家父長制度と結びついている。近代化が伝統的観点に影響を与えたといわれる今でも、男性側の遺伝的つながりに大変重きを置く。Kerdang Kerbau Women and Children's HospitalのNg医師によると「中国社会は血縁関係にとても慎重で、同じ名字の中国人カップルが遺伝子検査を求めることもよくある」といい、母親よりも父親がつながっている可能性を警戒するという。その結果、中国人カップルは、近親相姦の危険性を完全には排除できない精子提供よりも、精子の身元の保証がきちんとできる方法を好む。 

仏教徒は、命というのは作られるものではなく、生まれ変わりのサイクルを通してやってくるものだと信じている。第三者の関わる生殖補助医療も、それが生命を傷つけたり殺したりしない限りは容認可能だと考える。ただ仏教では受精の瞬間から命が始まるという考え方をするので、未使用胚の破棄の問題に関しては懸念している。

キリスト教徒(カソリック)は生殖補助医療に対し「生命に対する新たな攻撃への道を開いた」と、まっこうから反対している。法律的にはシンガポール政府の条件を満たす人は誰でも宗教に関係なく生殖補助医療にアクセスできるが、敬虔なカソリック信者は、道徳的、宗教的理由に基づき、アクセスしにくいだろう。

イスラム教はマレー人の文化や日常に根差している。しかし、シンガポールのイスラム法に関する文献やデータベースのどこにも、第三者の関わる生殖補助医療についての言及は見当たらない。イスラム教の基本的な概念では、遺伝子の混乱は避けるべきであり、第三者の関わる生殖補助医療は受け入れられない。従って、シンガポールのマレー系カップルは、配偶子提供、胚提供、代理出産どれも許されないことになる。ムスリムカップルが、シンガポール国内や海外でそうした処置を受けたという報告は全くない。シンガポールのシャリア(イスラム法)では、ムスリム男性は条件を満たせば4人まで妻を持つことができるので、女性が不妊の場合には、新たな妻を持つことが男性にとって子供を持つ手段の一つになりえる。

シンガポールの生殖補助医療の始まり
1982年7月、National Universityの産婦人科学部で体外受精プログラムがスタートしたのが、シンガポールのARTの幕開けだった。シンガポール初(アジア初でもある)のIVF児は1983年に生まれた。1986年6月にはアジア初のGIFTによる子供が、1987年にはアジア初の凍結胚を用いた子供が、1989年にはアジアで2番目の卵管受精卵移植(TET)による子供がシンガポールで生まれた。1989年4月には世界初の囲卵腔内精子注入法(SUZI)による子供も生まれている。1991年に世界初の共培養法による子供の出産が成功したことで、この技術により妊娠率は倍増、National University Hospitalは草分け存在として世界をリードしてきた。2000年12月には、シンガポールの私立病院Thomson Medical Centreが、世界初とされる凍結卵子と精子を使った双子の出産に成功した。

第三者の関わる生殖補助医療に関するガイドライン
ヒト胚研究や体外受精の実施に関するガイドライン作成のため、厚生省は、諮問委員会を設立した。しかし、厚生省のガイドライン「Guidelines for Assisted Reproductive Services(2001)」でも「Report of the Sub-Committee on the Status of Children Born Through Artificial Conception(1997)」でも、第三者の関わる生殖補助医療が、カップル自身の配偶子や胚を使う場合と区別されていない。代理出産は違法とされている。

厚生省の最初のガイドラインが出されたのは1990年で、2001年に改訂された。(注:現在は2006年版が出ている)。ARTを受けられるのは45歳未満の女性。夫婦に対する事前カウンセリングの内容も決められている。①考えられる結果(医学的、社会的、経済的)について知り、夫婦が書面で同意する。②40歳以上の女性は成功率が低く、合併症のリスクも高いという事実。③35歳以上の女性が出産する場合、遺伝子異常のリスクがあるという事実。④治療費と強制保険代のおよその総額について。

40歳以下の女性は最高10サイクルまでトライすることが認められている。ただし、女性が未経産もしくは生児出産を一度経験している場合で、海外での治療サイクルも含む。5回連続で失敗した女性がさらに治療を続けることはよくないとされているが、海外で受けた治療をチェックすることは難しい。40歳を超えた女性は5サイクルまで。しかし45歳になれば、治療はストップされる。移植胚の個数は一回3個まで。しかし次の条件を満たせば4個移植してもよい。①移植の結果妊娠に至った子供は全員出産する。また新生児集中治療室のある病院でケアすること。②患者が少なくとも2回、卵巣刺激を伴う治療で失敗していること。③患者が35歳を超えていること。

卵子のドナーは35歳未満と決められている。できるだけ夫婦の配偶子を使うことが推奨されるが、胚提供も可。ただしその場合、卵子と精子のドナー両方からの同意書と、レシピエント夫婦の同意書、さらにドナーに一切の責任を負わせないという誓約書に夫婦がサインしなくてはならない。配偶子や胚の保存に関しては、基本5年間で、10年経つと破棄することになっている。

第三者の関わる生殖補助医療で生まれた子供の地位
第三者の関わるARTで生まれた子供の地位については、1995年にLaw Reform Committeeの分科委員会が設立され、1997年に報告書が出された。この報告書では、5つの形態が想定されている。
①母親の卵子とドナーの精子を受精させる場合②母親の卵子と、父親とドナーの精子を混ぜて受精させる場合③ドナーの卵子と父親の精子を受精させる場合④ドナーの卵子とドナーの精子を受精させる場合⑤ドナーの卵子と、父親とドナーの精子を混ぜて受精させる場合
代理出産は厚生省が許可していないため、想定からは外されている。報告書では、親子証明に遺伝子的つながりがどう関わるかという点が現行法で曖昧であるため、たとえARTの使用に父親が同意していたとしても、親子関係が覆される可能性はあると報告されている。子供の地位に関しては現行法で対処しているシンガポールでは、早急の法整備が必要であろう。

Copyright(C) 2011 SGRH. All Rights Reserved.

Third Party Assisted Conception Across Cultures: Social, Legal and Ethical Perspectives

Eric Blyth / Jessica Kingsley Pub

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by technology0405 | 2011-09-06 16:35 | Book | Comments(0)
各国のARTに関する資料や記事を集めています (※ このブログに書かれている情報の信ぴょう性は各自でご判断ください)