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カテゴリ:field work( 24 )

場所:コルカタ、デリー
期間:2012年9月10日〜26日

 インドにおける生殖補助医療および生殖ツーリズムの調査のためにコルカタとデリーを訪れた。調査期間は2012年の9月10日から9月26日である。9月11日にコルカタに到着し、20日から24日はデリーに滞在し、25日には再びコルカタに戻り、26日の早朝帰国の途についた。
 デリーでは、代理出産についての調査に携わってきたインドの研究者と面会し、在インド日本大使館で代理出産のための日本人の出入国に関して聞き取りを行った。また、既に多くの研究者やジャーナリストが調査していることもあり、なかなか接触することが難しかった不妊治療の専門医の一人と面会することができ、今後の調査協力を要請した。
 それ以外の日程は、主にコルカタに滞在し、不妊治療施設での医師やスタッフに対する聞き取り、エージェントや卵子提供者、代理母とのインタビューを行った。また、コルカタでは、インドの生殖補助医療のパイオニアで、ICMRのガイドラインやART法案の起草に関わったゴッシュダスティダール医師にインタビューすることもできた。ART法案の起草委員会でどのような点が議論になったのかなどの経緯について話を聞くことができた。
 調査期間中には、交通機関のストライキなどもあり、すべての日に十分な調査活動ができたわけではなかったが、コルカタでの生殖補助医療に関してはその概要をおおむね把握することができた。以下では主にコルカタの調査で明らかとなった当地での生殖補助医療ビジネスの概要について報告する。

コルカタでの調査について
 デリーやムンバイには、既に多くの生殖補助医療施設があり、生殖ツーリズムないしは国境を越えた生殖補助医療(Cross Border Reproductive Care)のビジネスが盛んであることが知られている。また、アナンドやハイデラバードなど既に生殖ツーリズムのハブとしても知られるようになっている都市がある。しかし、既に社会科学者やジャーナリストらによって多くの調査が行われているこれらの都市と比べて、インドで都市圏の人口第三位を占めるコルカタ(旧名:カルカッタ)における生殖補助医療ビジネスの状況はよく知られていない。
 コルカタは、ガンジス川の支流であるフーグリ川の東岸に位置する西ベンガル州の州都であり、近郊を含む都市圏人口は1,583万人で、インドではデリーとムンバイに続く大都市である。今回、コルカタを訪れた主な狙いは、この大都市における生殖補助医療や生殖ツーリズムの状況を調べることによって、インドにおける生殖補助医療ビジネスの広がりの実態に関して一定の見通しを得ること、そして、インド国内における代理出産に関わる当事者(依頼者、代理母、エージェント)からの聞き取り調査を行うことであった。

コルカタにおける生殖補助医療の概況
 インターネットでの検索や電話連絡などを通じた事前の調査で、コルカタには8件程度の中心的な生殖補助医療施設があることが判明していた。8件の不妊治療施設のうち、3件は総合病院内の不妊治療部門、5件は不妊治療専門施設であった。今回の調査では、8件の生殖補助医療施設のうち6施設を訪問し、不妊治療に関わる医師や医療法人の関係者の話を聞くことができた。このうち2件の施設は、コルカタ以外の場所に本部があり、コルカタでは支部を展開していた。また、総合病院内の不妊治療施設2件では、複数の不妊治療のコンサルタントがクリニックを持っていた。
 これらの施設では、年間200から700程度のIVFサイクル数を行っているとのことだった。訪れた不妊治療施設の大半で、多くの患者が待合室を埋め尽くしていた。ある総合病院では、不妊治療部門を独立させ別組織とし、新たに3都市で支部を開設する予定であるという。また別の不妊治療専門施設では、代理出産へのニーズが高まってきているのに対応し、新たに数ヶ月以内に代理母宿泊施設を開設する予定があるとのことであった。また、新たに二つの不妊治療専門施設がオープンする予定だという。このように、ムンバイ、デリー、ハイデラバード、バンガロールなどに比べて、生殖補助医療ビジネスが盛んであるとは言いがたいコルカタでも、生殖補助医療ビジネスが拡大途上にある状況が十分に伺われた。

生殖ツーリズムについて
 筆者が聞き取りを行ったどの施設でも、生殖補助医療を受ける不妊患者の多くはインド人であるとのことであった。海外からの不妊患者としては、地理的に近接し、言語的にも共通するバングラディッシュからの患者が最も多いようである。施設によっては年間4、50組の不妊カップルが体外受精を受けにくるということだった。
 ただし、これらの患者の多くは、配偶者間の体外受精を目的として渡航してくる人々で、卵子提供や代理出産など、第三者生殖技術の利用のためにコルカタに訪れる人は少ないようであった。現段階で海外からの患者の多くを占めるのがバングラディッシュ人であるが、バングラディッシュは、承知のようにムスリムの多い国であり、イスラームではファトワで第三者の関与する生殖補助技術の使用に関しては、否定的な見解が出されている。したがって、バングラディッシュからのムスリムの不妊患者は、第三者生殖技術を利用することが少ないのが現状だ。
 また、いくつかの施設でナイジェリアなど、アフリカから体外受精を受けにくるケースがあるとのことであった。現段階ではコルカタは生殖ツーリズムの拠点となっているとは言いがたいものの、それでも既に海外からの不妊患者が訪れており、生殖医療の分野での医療ツーリズムの広がりが実感させられた。

卵子提供について
 第三者の関与する生殖補助医療はコルカタでも盛んに行われている。筆者が訪れた6つの不妊治療施設で、全IVF周期数に占める提供卵子を用いたIVFの周期数の割合を聞いたところ、多くの施設が3割を超えると回答した。2割程度と回答した施設は一つだけであった。提供卵子を用いた体外受精が常態的に行われている米国でも、この割合は1割程度と言われている。それと比較すると、今回コルカタでの聞き取りのかぎりでは、提供卵子を用いた体外受精の占める割合が極めて高いと言えるだろう。
 その背景の一つとして考えられるのは、不妊治療の経済的な側面である。インドでは、体外受精は採卵から凍結受精卵の移植まで含めると150,000ルピー程度の高額の治療費が必要となるが、この額は、インドの中間層にとっても非常に大きな負担である。これに対して、提供卵子自体は比較的安価に手に入る(コルカタで卵子提供者が受け取る報酬は20,000〜30,000ルピー程度であった)。患者側からすれば、配偶者間体外受精と提供卵子を用いた体外受精の費用はそれほど変わらないことになる。こうした状況下では、妊娠の可能性と経済的負担の軽減を重視する結果、配偶者間の体外受精よりも提供卵子を用いた体外受精が選択されやすい傾向にあると言える。

代理出産について
 インドの代理出産と言えば、アナンドのパテル医師のクリニックのように、代理母ハウス(代理母のための宿泊施設)を備えた不妊治療施設が報道などで知られている。しかし、コルカタでは、代理母ハウスを設置している不妊治療施設は存在しなかった。また、デリーでは、インド国内だけではなく海外からの代理出産の依頼に応えるために、代理母のリクルートと斡旋、妊娠中の管理を組織的に行っている斡旋団体が存在していたが、コルカタではこのような組織の活動も見られなかった。ただし、今回訪れた不妊治療施設では、どこも年間数件から20件程度の代理出産を扱っていたが、ほとんどのケースで依頼者はインド国内の不妊カップルで、外国人やNRIによる代理出産の依頼はコルカタではそれほど多く見られないようであった。
 代理母ハウスについては、代理出産を組織的に行うために必要な手段であると見なす医師と代理母ハウスに批判的な医師がいた。代理母ハウスに肯定的な医師は、代理母を収容することでアルコール摂取や喫煙など胎児の健康を害する行動を代理母がしないように監視することが容易になり、代理母の栄養状態、ひいては胎児の健康を管理することができる点をその利点であると述べた。この医師は、代理出産に対する高いニーズがあることから、数ヶ月後には代理母宿泊施設を開設する計画を持っていた。これに対し、不妊治療に携わる医師の中には、代理母ハウスに批判的な医師もいた。代理母を一時的にではあれ、家族と切り離すことは問題である。代理母は、年齢的にいって、幼い子どもを持っていることが多いが、代理母ハウスに宿泊すれば、幼い子どもが母親から引き離されることになる。また代理母からすれば、子どもの世話や家事など母・妻としての役割を果たせなくなる。これは代理母にとっても、その子にとっても望ましくないことである。代理母ハウスに批判的な医師はこのように述べていた。また、代理母ハウスを開設することで、本来代理母と依頼者夫婦の間の関係であるべき契約に関して、医師や不妊治療施設が関与することへの懸念を表明する医師もいた。

卵子提供者と代理母のリクルートについて
 卵子提供も、代理出産も、不妊治療に携わる医師とつながりのあるエージェントによって斡旋される形で行われていた。卵子提供に対する報酬は先にも触れたように20,000~30,000ルピー程度が相場であり、代理出産の報酬は、200,000〜300,000ルピー程度が一般的である。妊娠期間中の手当として100,000ルピー程度上乗せされることもあると言う。
 今回、筆者は9人の代理母(代理出産契約を結んだ人、代理出産のための施術を受けはじめた人、代理懐胎中の人、代理出産を終えた人)にインタビューしたが、そのうちの7人が代理出産を行う前に、数回の卵子提供を経験していた。つまり、卵子提供者と代理母は決して別々の社会階層の人間ではなく、実際に卵子提供と代理出産の両方を経験している人が多かった。ドナーのほとんどが学生である精子提供(報酬は500から2000ルピー程度)とは事情はかなり異なる。精子提供者と比べて、卵子提供者は患者と異なる社会階層に属することが多く、この点を問題として挙げる医師がいた。
 また、あるIVFクリニックでは、「質」のよい卵子提供者が集まりにくいことから、エッグシェアリングの方が多く行われているとのことだった。この場合、エッグシェアリングは、提供卵子の不足を補うためというよりもむしろ、ドナーとレシピエントの社会階層や容姿を合わせるための手段として用いられるということになる。
 医師たちの聞き取りの結果から判断すると、現在コルカタでは、4、5人程度のエージェントが活動しているようである。今回の調査では、一人のエージェントにインタビューすることができた。この女性Nはもともと看護師であり、自ら数度の卵子提供を行った後に、卵子提供者や代理母を不妊治療に携わる医師たちに紹介するようになった。卵子提供を行った女性が、Nに卵子提供の希望者を紹介し、彼女たちをNが医師たちに紹介するという卵子提供者のリクルート・ネットワークが出来上がっていた。彼女は、これまで15件の代理出産の斡旋に携わり、100人に近い数の卵子提供者を医師に紹介したという。
 また、Nは現在妊娠中であり、看護師としては働いておらず、夫と子どもと一緒に暮らしていたが、彼女の一家が暮らす月5000ルピーの借家には、3人の代理母が寝泊まりしていた。先に述べたように、現在コルカタでは代理母を監視・管理するための宿泊施設を備えた不妊治療施設はない。しかし、多くの代理母は代理出産の事実を周囲に秘密にすることが多く、そうした中で、すべての代理母が自宅にとどまって代理出産をするわけではない。女性が家庭を離れて代理出産をすることを望むケースもある。
 今回インタビューできたエージェントはN一人であり、他のケースでこのような形での代理出産が行われているかどうかは定かではない。ただし、依頼者が代理母のために部屋を借りるというケースもあるようだった。

まとめ
 今回の調査ではコルカタでの主要な不妊治療施設の大半を訪れることができ、これらの施設における生殖補助医療の実施状況を把握することができた。提供卵子を利用した体外受精が広がっている状況が浮かび上がってきた。インド国内では、子どもの出自を知る権利などについて十分に議論にされているとは言えず、卵子売買による身体の商品化という問題とともに、第三者生殖技術の利用によって生まれた子どもの福祉という観点からも卵子売買の広がりには懸念される点がある。
 また、コルカタにおける生殖ツーリズムの実態についても、その概要については把握することができた。コルカタでは、海外からの卵子提供や代理出産の依頼はそれほど多くはないものの、海外の患者による生殖補助医療の利用、すなわち生殖ツーリズム自体は徐々に広がりつつある。
 また、海外からの利用者は少ないものの、国内の不妊カップルのニーズに応える形で代理出産も行われている。これまでインドの代理出産ビジネスの実態については、ムンバイやデリー、ハイデラバードなど、生殖補助医療ビジネスの中心地として知られた都市を中心に調査者によって報告されたり、メディアによる報道がなされてきた。しかし、今回でのコルカタにおける調査により、商業的代理出産が他のインドの大都市でも行われるようになってきている実態が浮かび上がってきたと言える。

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コルカタ市内の風景(1)
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コルカタ市内の風景(2)
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不妊治療施設(1)
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コルカタ市内の風景(3)
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コルカタ市内の風景(4)
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Test tube baby
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「胎児の性別選択は法律によって処罰されます。ここでは行っておりません」
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不妊治療施設(2)
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by technology0405 | 2012-10-16 16:01 | field work | Comments(0)

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2012.05.22-2012.06.01

1ルピー≒1.4円

卵子提供や代理出産などを経験した女性たちの一部が、お金に困っている自分の友人や隣人、親戚縁者などを口コミでリクルートし、クリニックに紹介する仲介業を営んでいる。現地では、care tarkerと呼ばれているこうした女性の働きが、様々な関係者に利益を生み出す構造をより強固にし、インドの生殖産業を支えている。

生殖産業に従事するのは、大都市郊外の中下層やスラム地区に住むマラティカーストや貧しいイスラム女性たちが多かった。こうした地区に住む女性が、近隣の女性や夫を説得し、病院に連れて行く。地区に住む女性たちに話を聞いたところ、簡単に大金を稼ぐことができるという話を聞いて最初は疑いを持ったり怖かったりしたというが、care takerから病院のパンフレットや医師の写真を見られ、病院に連れていかれれば信用するようになる。夫も、お金の話をすれば大抵は納得するという。1回やって「大丈夫」とわかった後は、何度も繰り返す女性が多い。

仲介業を営む女性が卵子ドナーを紹介すれば3,000~6,000ルピー(4,200~8,400円)、代理母を紹介し、出産にまで至ることができれば計1.5万~5万ルピー(21,000~70,000円)の紹介料を受け取っていた。この金額には紹介する女性のソノグラフィーや注射、血液検査などで病院に付き添いにかかる諸経費なども含まれている場合もある。自分が紹介した女性には最後まで責任を持つことになるので手間がかかる割には収入が高いとは言えないが、lower middle classの女性にとっては、以前の職業から得られる収入よりも上昇することから「忙しいがこの仕事を初めてから充実しているのでこれからも続けていくつもり」(元代理母)という。

卵子ドナーが受け取る金額は1.2~1.5万ルピー(16,800~21,000円)と非常に安価である。インドといえば代理出産業が知られているが、卵子提供もかなり行われている。インド女性の卵子を購入するのはインド人依頼者の他、海外からやってくるゲイカップルなども、白人の卵子(通常、卵子ドナーを海外からインドに移動させて採卵する必要がある)に比べて格安なインド女性の卵子を購入していると考えられる。また、インド人不妊夫婦にとっても、卵子提供は精子提供よりはタブーの意識が少ないことから需要があると思われる。「子どもは通常父親に似るので問題ない」(元代理母)。一方、周囲に知られやすい代理出産を避け、報酬が安くとも、卵子提供を繰り返すことを好む女性たちも少なからず存在していた。

代理母が出産後に受け取るのは20~25万ルピー(28万~35万)であった。代理出産の動機として多くの代理母によって語られるのが「家の購入費にあてる」というものだが、この金額は、インドの大都市では、郊外のスラム地区であっても家を購入することは難しい。実際には、代理出産の報酬は、借金の返済や生活費に消えてしまうことも少なくない。つまり、大きなリスクを取ったにもかかわらず「代理母の人生は変わることはない」(元代理母)。それでも、元代理母が7年前に代理母をやった時の報酬は10万ルピー(14万円)であったというので、代理母が得る見返りは改善している。大都市では代理出産によって得られる収入はすぐに消費に消えてしまうことから、「80%の代理母は2回目もやる」(元代理母)(ガイドラインでは代理出産は2回までと定められている)。なかには11回に渡り卵子を提供したという女性もいた。一方、海外で代理出産を依頼するというリスクと引き換えに安価な代理母を雇うことを選んだ「クライアントの人生は、大きく変わる」(元代理母)。尤も、僅かな金額を元手に小さな商売を始め、以前よりましな生活を手に入れた女性もいた。「彼女はもう代理出産をやる必要はない」(元代理母)。

妊娠中の代理母は、クリニックが用意した代理母ハウスに住むこともあるが、そうした代理母ハウスを大都市で運営するのには経費がかかる。多くの場合、妊娠中の代理母は自分の子どもであると周囲に偽って、自分の家で過ごし、出産後は死産したことにするか、同じ地区の少し離れた場所に引っ越しをするという代理母・代理母候補者も多かった。妊娠中も家族と一緒に過ごした方が家事やまだ幼い子どもの世話もできるので便利である。一方近隣に知られてしまうというリスクは増す。代理母ハウスで生活した代理母が産む子どもの方が、健康状態が良いのに対し、自宅で過ごした代理母の場合は薬をきちんと飲まない、重い荷物を持つ、栄養状態が悪いなどが原因で「流産するケースも増える」(仲介業を営む女性)。また、夫とのセックスにより、代理母の夫の子どもが生まれたり、HIVなどの感染症に罹るリスクも増すことになる(インドのHIV感染率は高い)。

自宅で過ごすことで周囲に知られることを避けたい代理母たちが何人かで集まって自分たちで部屋を借りて生活することもある。「家賃、食費や女中を雇う費用などは代理母たちが支払う」(仲介業を営む女性)。しかし、数人の妊婦が生活する部屋を借りるのは家主や近隣の住民の理解を得ることが難しいという問題もある。その場合はcare workerが、自分が所有する部屋に住まわせる場合もある。

代理母が子どもの引き渡しを拒んだ例は「7年間商売をやってきた中で、今まで経験したことがない」(元代理母)という。むしろ「妊娠後期になると体の負担が増え、代理母は早く子どもを産んでしまいたいという気持ちが高まる。そして、お金はいつもらえるのかと、そればかり聞いてくる」(元代理母)。お金が目的である以上、代理母が子どもの引き渡しに応じないといった依頼者の側から見たリスクは非常に小さいといえる。「9か月間一緒にいた子どもの顔くらいは見たい」と、愛着が全くないというわけではないが、子どもは代理母と遺伝的に関係がないこと、子どもを引き渡さなければならないことについては、事前によく説明を受けており、子どもの引き渡しに応じないと「犯罪になる」(仲介業を営む女性)と考えている。妊娠期間を通じて形成される胎児との愛着形成による引き渡し拒否の問題は、代理出産の問題点として繰りかえし挙げられてきたが、これは代理出産という経験がよく知られていなかった時期の先進国の人工授精型の代理出産には当てはまっても、圧倒的な格差の中で行われているインドの代理出産にはあてはまらないといえる。貧しく教育もないインドの代理母たちは、それだけ無力化された存在であるといえる。卵子提供についても、提供した女性たちは、医師から一切情報を与えられておらず、子どもが生まれてきている可能性についても「どうにもしようがないし、何とも思っていない」(A地区に住む女性)ケースが大半である。

一方、代理母が死亡するケースも近年報告されている。代理母が死亡したケースでは、「報酬は二倍支払う」(仲介業を営む男性)。その場合、代理母と子どもの命の値段はそれぞれ20万ルピー(28万円)ほどということになる。それでも「代理出産を女性の搾取とは思わない。ゲイカップルもちゃんとした人ばかり」(医師)と、自分たちはそれ以上のベネフィットを得ているにもかからず、貧しい代理母にもベネフィットがあることが強調される。 

インドの代理出産は右肩上がりの産業といえる。イギリスやオーストラリア、イスラエルなどから多くのカップルやゲイカップルたちがやってくる。IVFクリニックやエージェンシーがどんどん増加している。代理母の出産の大部分を手掛けている病院の医師によれば、5年前は月5件だったが今は15件あるという。貧しい地区からは口コミで情報を得た女性たちが仲介業を営む女性を頼って次々に集まってくる。したがって、登録しても、実際に仕事がもらえるのは「10人中3人くらい」(元代理母)と貧しい女性にとって代理母は狭き門になりつつある。「代理出産をやりたくてしょうがないが、全然声がかからない。医師から肌の色を理由に断られたときはとてもショックだった。生活が苦しいのでとても困っている」(A地区に住む女性)と涙ぐむ女性もいた。大都市郊外の貧しいA地区では、仲介業を営む女性が住む住居の隣近所の女性たちや歩いて15分程度の距離に住む女性たちが次々にリクルートされており、女性たちが卵子提供や代理出産を繰り返し行っていた。誰も自分がやっているとは言わないが「みんな結構やっているので問題ない」(A地区に住む女性)。「夫は蒸発して子どもと生活しており、近所の人たちも自分の生活が苦しいことをわかっているのでうすうす知っていても、何もいわないと思う」(A地区に住む女性)。代理出産はスティグマであるものの、隣人たちの「やさしい」配慮によって、売春よりはましな、貧しい女性が自力で生活を改善することができる仕事として、黙認されているのかもしれない。






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by technology0405 | 2012-06-04 09:26 | field work

事件のあと

タイでは、ネットで子どもを売るために代理出産サービスを女性に強要していたとして、2011年2月に台湾人が経営するBabe-101が摘発された。妊婦7人を含む19-26歳のベトナム人女性15人が救出されたことは、現地でも大きく報道された。

この事件以降、代理出産に対する病院の姿勢は厳しくなった。
第三者生殖の商業的利用を避けるため、卵子提供や代理出産を引き受ける女性は建前上、依頼者の親戚などに限られる。病院で実際に親戚である証明書まで求められることはほとんどないが、有償で卵子提供や代理出産を引きうけようとする女性にとっては、親戚であるという建前で実施した場合、一つの病院(医師)に複数回出入りすることは難しいケースも生じるだろう。また、日本人依頼者がタイ人卵子提供者やタイ人代理母をともなってタイのクリニックで治療を受けるケースは、(タイ在住の国際結婚のカップルのケースを除いてもともと少ないと思われるが)難しくなるだろう。日本から卵子提供者を連れて来る日本人同士のケースであれば、親戚同士であると取り繕うことも容易である。

一方、バンコクでは、事件後も、新たなIVFクリニックが増えている。昨年5月頃に開業したクリニックでは、日本のエージェンシーが入っており、この業者が紹介する日本人患者が約3割を占めるという。卵子提供を利用する日本人が多い。ここでは中華系のタイ人女性を紹介している。医師によれば、第三者生殖の商業的形態を禁止するガイドラインや法案については、医師会からの文書が来たことを覚えているが、あまり気にしていないということであった。そもそも無償で引き受ける人などいないので、有償を禁止する規定は、実際に第三者生殖を行う医師の多くがナンセンスであると考えている。無償規定(実費補償を除く)には反対である医師も少なからずおり、さらに、今後の見通しとして生殖補助医療に関する法案がタイで通過するにはまだまだ時間がかかりそうであるという。代理母斡旋事件に関わった病院の医師に対する処分はタイの医師会で検討されているが、「そんなに厳しい処分にはならないだろう」(バンコク病院医師)と予測されている。

今後暫くの間は、表面上は有償にならない形を装いつつ、しかし実際には金銭の授受を伴う形で、卵子提供や代理出産などが行われていくことになるだろう。そしてその間、その行為が違法であるか合法であるかの位置づけは曖昧なままに置かれることになる。

代理出産については、IVFクリニック、分娩施設、エージェンシーがこれまで以上に密に連携をとりあって注意深く実施されていくと思われる。代理出産の場合、体外受精を行う施設と分娩する施設は異なる。複数の病院に出入りしている医師が主治医であれば、移植から分娩まで施設が変わっても同じ医師に見てもらうこともできる。代理出産の場合の実親は依頼者の名前で登録される。このために、移植を行った施設でのカルテは代理母名義になっているが、分娩施設のカルテは依頼者の名前で作成され、依頼者が分娩したことになっている。出生証明書の準備や発行など、全て「分娩施設がやってくれる」(代理母経験者)という。

これまでは、仲介業者を通して外国人患者を多く受け入れているクリニックなどを利用する日本人が多かったと考えられる。タイは駐在員家族や国際結婚などにより日本人在住者も多く、不妊治療を利用する在タイの日本人患者も一定数存在する。最近は、タイの不妊治療についての情報が日本語で得られるようになってきたこともあり、仲介業者を通さず自分で医師などとやりとりをして卵子提供を依頼するようなケースも増えてきていると思われる。タイのメディカル・ツーリズムを掲げる私立総合病院では日本語通訳も無料で付くため、渡航者でも不妊治療サービスを利用することはそれほど困難なことではない。


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by technology0405 | 2012-01-19 19:57 | field work | Comments(0)

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1MR≒27円

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マレーシアで営業をするエージェンシー。経営者はイギリス人の女性で、自らも不妊治療の経験者で子どもが7人いる。日本人も依頼者として受け入れたことがある。卵子ドナーはモデル事務所からリクルートしており、リストは100-200人くらいある。自分の娘にも卵子ドナーとして豪の女性に提供してもらったことがある。代理出産もやっているがそれほど多くはない。事務所の女性スタッフがいままで2回代理母になっており、今も妊娠中。それとは別の女性スタッフが妊娠中で2日後に出産予定だが、貧しく自分で育てることができない。誰か引き取って育ててくれる人を探している。

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日本人もIVF患者として来るが、ほとんどの場合、夫が白人などのケースに限られる。この病院では年間100サイクルほど実施している。Embryologistが直接患者と話をする。ここでは、卵子提供や代理出産などはやっていない。IVF-ETは16,000~17,000RMで、37歳以下の場合、成功率は52.4%。






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入院用の個室は普通室が150RM/日で、付き添い人のソファーなどがついている部屋は255RM/日









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国立病院では、卵子提供や代理出産はやっていない。IVFは8,000-15,000RMで、この病院では1996年から不妊治療を始め、年間350サイクルほど実施している。







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中華系の患者が多い病院で、卵子提供プログラムも提供している。これまで、日本人患者も受け入れている。150-200サイクル/年間ほど実施している。IVFは12,000-16,000RMで行っている。
これまでIVFによる妊娠出産の最高年齢は50歳。





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この病院では、高度で積極的な治療を行っている。体外受精型の代理出産をマレーシアで初めて成功させたのもこの病院である。卵子提供プログラムは年間数十件、代理出産も数は少ないが実施している。卵子提供を希望する日本人もこれまで数十人は受け入れてきた。IVFによる出産の最高年齢は44歳、卵子提供の場合は55歳の双子の出産例がある。


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by technology0405 | 2011-02-02 14:19 | field work | Comments(0)
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