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最もリスクが高い渡航先: カンボジア

2012年から2015年にかけて、代理出産ツーリズムの渡航先に大きな変化が見られた。
 
インドは2002年に商業的代理出産を合法化して以来、代理出産ツーリズムの中心地であったが、2012年に医療ビザ規制を導入したことにより、事態は急変した。依頼者の大部分がインドを去り、タイへと向かったのである。短期間で大量の依頼者を迎えることなったタイでは、法規制もない中、すぐに大きなトラブルが勃発した。メディアでも大きく報道された深刻なトラブルをきっかけに、タイは2015年初めに商業的代理出産を禁止した。

インドやタイに代わって渡航先として浮上したのが、ネパールやグルジア、メキシコ、カンボジアなどであった。これらの渡航先のうち、ネパールやメキシコでは2015年の末までに閉じられた。また、インドでも、2015年秋に外国人への代理出産の提供は一切禁止となった。残る選択肢として、東ヨーロッパ、グルジアやウクライナなどもあるが、これらの国では婚姻している男女カップルしか受け入れておらず、独身やゲイカップルは依頼することができない。非異性愛カップルは商業的代理出産の依頼者の一定割合を占めており、こうした依頼者の一部は、(リスクがあると知りつつも)カンボジアへと渡航している。

カンボジアでは、現在までに代理出産についての法律がない。その意味ではタイと環境が似ているが、しかし、現在、最もリスクが高い渡航先となっている。それは以下に述べるような事情がある。

カンボジアでは代理出産に関する法律がないだけでなく、体外受精などの技術はまだほとんど人々に知られていない。たとえ体外受精で他人の卵子を使っていたとしても、生まれた子どもは代理母の子どもとして登録される。体外受精クリニックがプノンペンに初めて設立されたのは、2014年9月のことであり、翌2015年に体外受精による初めての出産が成功を収めている。これには伏線がある。つまり、タイで代理出産がらみの大きなスキャンダルが勃発したのが2014年8月、その後すぐにタイ政府が代理出産を禁止するとの見通しが明らかとなった時期であり、この時すでに、カンボジアがポストタイの有力な移転先となっていたということである。

タイで代理出産が禁止される見通しとなり、タイのクリニックで保管されている受精卵をどうするかが、依頼者にとって愁眉の問題となった。急ぎ受精卵をタイ国外に出すことが安全策として求められ、近隣のカンボジアへと移送されることになった。それとともに、代理母への移植もまた、カンボジアのクリニックで行われることになった。そして、これまで多くのタイ人代理母が送り込まれ、受精卵の移植を受け、たいに戻っていった。だが、カンボジア政府がこうした動きを察知するのは早かった。2014年11月には、商業的代理出産は違法であるとの見通しがカンボジア政府によって示されたのである。カンボジア政府の警告を受け、カンボジアで代理出産を依頼しようとする母国人に対し、カンボジアでの代理出産の依頼を取りやめるよう、オーストラリアや英国の当局によってガイダンスがなされた。当初、代理出産の禁止を目前にタイが大混乱に陥っている最中でもあり、十分に考える時間もないまま、カンボジアで代理出産を行った依頼者も少なからず存在しただろう。その後、タイ人代理母のみならず、カンボジア人女性や近隣の貧しい国々から代理母を連れてきて、カンボジアのクリニックで移植するという形で、代理出産が行われている。

タイでの商業的代理出産は2015年1月をもって正式に閉じられることになり、2015年3月には代理出産ツーリズムの大手であるNew Life Global Networkがカンボジアに支店を開いた。New Lifeでは、カンボジアでは代理出産そのものを禁止する法律がないことや、父親と母親と子どもに対し同等の権利を持つという既存の条文を根拠に、実施可能であると見なしているが、現地ではたびたびカンボジア当局による調査が行われたとみられる。New Lifeは、その度に賄賂を支払い、追及を逃れてきたものと思われる。

 タイのオルタナティブとして見いだされたカンボジアだが、きわめてリスクが高い状況となっている。既に日本の複数のエージェントが、カンボジアに日本人依頼者を送り込んでいる。しかしこれは後先を考えない危険な行為である。人身売買は刑法により禁止されており、商業的代理出産はまさに人身売買にあたるというのがカンボジア政府の公式見解である。こうした警告を無視し、あるいは既存の別の法を都合良く解釈することによって、New Lifeを始めとするエージェントは独自の見解によってカンボジアでの代理出産は違法ではないと判断し、依頼者を送り続けている。

カンボジアは後発開発途上国であり、貧しい女性や子どもが売春を始めとする人身売買の犠牲となっている現実がある。先進国からの援助を受けた人権団体も活発に活動を行っており、 女性や子供の人権が絡む違反行為に対し、政府も厳しい姿勢をとっている。カンボジアでは、離婚した女性などが代理母となることが多い。代理出産で産まれてきた子どもは、代理母の子どもである。したがって、子どもはカンボジア国籍を有する。生まれたばかりの乳児を母親の手から引き離し、外国人依頼者が国外に連れ出すことができるのか、カンボジア当局が許可を出すのかどうか。代理出産が疑われる場合、子どもの連れ出しにはストップがかかる可能性が高い。この結果、カンボジア人代理母から生まれた子どもが、カンボジアを出国できない可能性は十分にある。日本のエージェントは、事前に十分に調査することなく、日本人依頼者を送り込んでおり、その結果、帰国困難となれば必然的に乳幼児を抱えた状態で長期滞在を強いられ、打開策がなければ国際的な問題にまで発展する可能性がある。

一方、カンボジアは国籍ですらお金で買うことができるという金持ち優遇の賄賂社会でもあるため、関係者に対して多大な賄賂を支払うことで解決策を見いだせる可能性はある。たとえ自力で解決できたとしても、長期滞在を余儀なくされれば、依頼者は、精神的にも追いつめられ、時間もお金も浪費することになる。このように、カンボジアは最もリスクが高い渡航先となっているにも関わらず、エージェントらは、こうした事実を伏せて、あるいは自らのビジネスにとって都合が良い解釈だけを提示し、依頼者を送り込み続けている。そのリスクや結果を引き受けるのは、決してエージェントではないことに留意が必要である。
 
※この記事は第23回ファイザーヘルスリサーチ振興財団研究助成によるものです。

Link
Nacelle Dickinson Stop8: Cambodia

Surrogacy in Cambodia

'Somebody has to be the icebreaker': Aussies seeking babies turn to Cambodia

Gov’t to Crack Down on Surrogacy Clinics

The billion dollar babies

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by technology0405 | 2016-04-08 10:44 | Discussion | Comments(0)
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