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タイ代理出産のリスク: インドとの違い

 タイでは医師会が何年も前に出したガイドライン以外に、生殖補助医療や卵子提供・代理出産などの第三者が関わる生殖技術についてルールが存在しない。第三者が関与する生殖技術の商業化に対しては禁止の姿勢が示されているが、生殖ビジネスが年を追うごとに発展、現場では医師会のガイドラインは全く顧みられていない。クリニックでは卵子提供、代理出産、男女産み分けなどの技術が自由に提供されており、また体外受精などの技術も高いことから、米国、オーストラリア、英国、ヨーロッパなど先進国、日本、中国、韓国などからも多数の患者が訪れている。さらに、2013年にインドでツーリズムの規制が強化されてから一層多くの依頼者がタイに押し寄せる事態となっていた。それまでは費用の面から割高であったためタイでの代理出産の依頼は少なかったが、ここ1-2年ほどの間、インドに変わるホスト国として急速に存在感を増していた。オーストラリアは地理的にもタイに近く、タイで養子縁組をするオーストラリア人は年間数百件と、その多くが代理出産であると推測される。
 一方、インドでは2005年頃より法制化への動きが本格化し、外国人依頼者が関わるトラブルを抑止するために最終的にはツーリズムを抑制せざるをえなくなった。インド政府は当初、依頼者が安心して利用できるよう、代理出産の法整備に乗り出したわけだが、外国人依頼者が増加するにつれて様々なトラブルが浮上し、最終的にはツーリズム規制に乗り出さざるをえなくなった。代理出産は、依頼者や代理母の双方にとって潜在的なリスクが多数あり、実施数が増えればそれだけトラブルは増加し、また表面化してくる。当然ながら、表面化しているケースは氷山の一角に過ぎない。タイでは2013年以降、代理出産の依頼が急増しており、大きなトラブルが露見するリスクはとみに高まっていたといえる。また、トラブルとして代理母側から申し立てがなされる可能性としては、インドよりタイの方か高いといえるだろう。インドの代理母は、情報や人的社会的資源へのアクセスが極端に限られており、文字も読めない人々もいる。携帯電話は普及しているが、パソコンなどを利用してネットワークから情報を得たりする機会はほとんどない。タイの代理母は相対的に外部の情報や資源を自らのために動員する能力や環境に恵まれている。
 インドとタイの大きな違いとして、公的規制の有無がある。インドでは代理母が報酬を受けることが認められており、反面、子どもに対する親権はないことが規定されている。このため、依頼者が何らかの理由で子どもを遺棄した場合は予め定められていた子どもの後見人が、子どもを養子に出すか、国内の施設に預けられる。タイではそのようなルールが確立しておらず、代理母が産んだ子どもの母親は代理母となる。代理母に夫がいれば夫の嫡出子となる。代理出産についての事前の取り決めや契約書があったとしても、それらは公序良俗に反し無効になる可能性が高い。つまり、依頼者が引き取りを拒否すれば、代理母は子どもの母親として引き取らざるを得なくなる。逆に代理母が子どもの引き渡しを拒否すれば依頼者は子どもをあきらめざるをえないかもしれない。エージェントの力が弱い場合、報酬目当てで代理母が交渉することも起こりうる。しかし、後者のケースでは多くの場合、代理母は予定されていた報酬を受け取ることができなくなるため、可能性としては低いといえるだろう。タイのケースでは、代理母が負うリスクが高い。エージェンシーが依頼者のバックグラウンドを調査する必要性もあるが、限界もある。このため、代理出産が犯罪組織によって利用される危険性もある。タイでエージェントをする男性は、「パスポートを何枚も持つ不審な日本人利用者が何人もの子どもを代理出産で持とうとしていたことがわかり、他のエージェントにも知らせたうえで依頼を断った」と述べた。
 これまでタイでは生殖補助医療に関し、法制化への大きな動きはほとんど見られなかった。国内事情がそうしたことを阻んでおり、タイ側で規制強化を求めるのは現実的ではないかもしれない。日本人依頼者の場合は、タイ人代理母の子どもを胎児認知していると思われるが、同様のことがおこる可能性は皆無ではない。オーストラリアでは一部の州では海外での商業的代理出産は禁止されており、これまで以上にルールの徹底が求められることになるかもしれない。


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by technology0405 | 2014-08-06 13:42 | Countries | Comments(0)
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