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国際養子縁組の動向

数十年間、アメリカの国際養子縁組は増加の一途をたどっていた。ピークとなる2004年には約23,000人の子どもがアメリカに養子として渡った。しかしそれ以降、国際養子の数は急落している。米国務省のデータでは、2011年のアメリカへの国際養子は9,319人である。

多くの養子縁組支持者は、この減少をユニセフ(国連国際児童緊急基金)のせいだと捉えている。
ハーバード大学法律学の教授Elizabeth Bartholet 氏も「ユニセフや、セーブ・ザ・チルドレンのような機関、子どもの権利団体と称する組織が、国際養子縁組をなくそういう現在の動向の一番の立役者だと思う。」と言う。

ユニセフも公式の場では、国際養子を孤児のための数ある選択肢の中の一つとみなす、という立場をとっている。しかし養子縁組支持者は、ユニセフの行動が、表明した立場と食い違っていると批判する。
批判者の一人で、カトリック・チャリティーズ(全米最大の社会奉仕団体)ボルチモア支部の養子縁組担当Ellen Warnock氏は、ユニセフの建前をただの「リップサービス」だと言う。
国際子ども支援協力会議(JCICS: the Joint Council on International Children Services)の会長Tom DiFilipo氏は、ユニセフや他の国際援助機関は、国際養子縁組に対する明らかな偏見があると訴える。

特にユニセフは、虐待や腐敗をなくすことを口実に、国際養子縁組を「事実上の廃止」にする政策を推し進めていると、Bartholet氏は非難する。ユニセフの目的は、世界で最も貧しい国々の孤児の生活を改善することであったはずだが、孤児が海外の温かい家庭に養子にいけなくすることで、彼らの生活をさらに悪化させるだけに終わってしまっている。

ハーグ条約「1993年 国際養子縁組に関する子の保護及び協力に関する条約」も、養子制度の改善を目指したものである。ユニセフのスポークスマンPeter Smerdon氏によれば、この条約は「子どもの最大の利益」に焦点を置き、「道徳的で透明性の高いプロセスが確実に実施」されることを意図して作られた。
孤児に関する2004年の報告においてユニセフは、ハーグ条約加盟国に対し、私立仲介業者――養子縁組関係の弁護士や団体――を禁じる追加措置をとるよう勧告した。しかしBartholet氏に言わせると、こうした私立機関は多くの国において養子縁組の「生命線」の役割を担っているという。
「私立仲介業者の禁止が多くの国々において国際養子の終焉の前兆となってきたことを、彼ら(ユニセフ)はよく知っている。」とBartholet氏は2010年に書いている。

高水準の利益を得ている弁護士は、ユニセフの標的にされている。ひところ、グアテマラでは5000人弱の子どもを国際養子に出すことで年間8000万ドルの金が動いているとJCICSが報告したことがあった。
しかし、グアテマラのような国では、この金が、養子縁組を扱う弁護士のインセンティブとなっているとBartholet氏は言う。彼女自身、ペルー人の子どもを2人養子にしている。一人は私立仲介業者を使いスムーズだったが、そうしなかったもう一人の養子縁組手続きは「悪夢だった」と語る。

チリは1999年にハーグ条約を裁可し、その後ユニセフの勧告通り私立エージェンシーの禁止も導入した。チリからアメリカへの養子縁組は1999年17人から2007年ゼロへと急落、その後4年の空白を経て、2011年にようやく1人という状況である。ボリビアでも同じパターンが繰り返され、2002年の条約裁可と仲介業の禁止以降、2001年に35人だったアメリカへの養子は、2008年にゼロになった。

「国際養子の問題について、カソリック教徒は皆心配している。」とHoly Apostles Parish in Cranston, R.I.の弁護士で5人の養子を引き取ったLillian Godone-Maresca氏は言う。養子の3人はブルガリア人、あとの2人はハイチ人である。彼女が引き取った5人の子供は全員、脳性麻痺や脊椎披裂など特別な支援を必要とする。夫と死別したGodone-Maresca氏は、3人の実の子ども達の助けによって、養子の面倒を見ることができていると語る。
「カソリック教徒として、私たちは積極的なプロライフ派です。我々が問題にしているのは、大切な小さな人間の命のことなのです。」「養子縁組は、カソリック教徒なら誰でも行うべき職務です。養子縁組をする、あるいは他人の養子縁組を手助けする、祈る、子供たちのひどい状況を訴えるなど、どんなやり方でもいい。」

では、養子縁組支持者が主張するように、国際養子縁組の減少はユニセフの政策だけが原因といえるだろうか。養子の減少は、数々の原因を伴う複雑な世界的現象だと捉える者もいる。
「国際養子が崩壊しかけている理由は単純ではない。」政府の対応が鍵を握っているとDiFilipo氏は言う。

ユニセフのスポークスマンSmerdon氏も、養子の減少には各国政府に原因があると指摘する。「かなりの数の子供が、正当な理由もなく、基準を無視したプロセスによって海外に養子に出されている。それで各政府が国際養子を中断している。ユニセフではなく政府自身が国際養子を見合わせているのだ。」とSmerdon氏は言う(政府が海外養子を中止した一番最近の例としては、昨年12月のロシアの例がある)。Bartholet氏も政府に責任があることは認めながら「政府がユニセフなどの団体からの圧力に負ける場合の方が多いと思う。」とコメントした。

Bartholet氏とDiFilipo氏は両者とも、国際養子縁組の改革が生んだ予期せぬ結果の極端な例としてグアテマラをあげた。グアテマラは――養子制度の最も腐敗した国とみなされていた――、2002年ハーグ条約に加盟した。加盟国は、国際養子を監督し、仲介業者を認可し、養子に出される子どもの状況をきちんと検証するための公的機関を有する必要がある。グアテマラがこれらの条件を満たさなかったため、2008年に国際養子はストップされた。グアテマラの例は、国際養子制度を改革しようというハーグ条約の意図とは反対に、かえって不法養子縁組が横行するという結果に終わった。養子縁組の差し止め自体は反対しないが、現実的でない養子制度改革には断固反対、というのがDiFilipo氏の立場である。

2011年ReasonTVのインタビューにおいて、Bartholet氏は、海外養子の永久閉鎖は悪であると語っている。「もし我々が海外養子をストップすれば、年間5000人の子どもの人生を台無しにすることになる。私にとってこれは悪行である。」

全体的に海外養子は減少しているので、子どもを引き取れる可能性も減っている。諦める者もいるとボルチモア・カトリック・チャリティーズのWarnock氏は言う。「子どもを希望する親にとって悲しいことだが、彼らの人生は子どもほど影響を受けるわけではない。最も苦しい目にあうのは子どもたちだ。」

ユニセフによると2011年時点で世界には推定1億5100万人の孤児が存在する。国際養子が今のように減少する前でも、海外の家庭に引き取られていく子どもの数は少なかった。National Council for Adoption によると10年前の海外養子は約45000人だった。しかし、国際養子の減少はアメリカだけでなく世界的傾向で、2010年には世界の国際養子の数は29,000人になった。孤児の養子を推奨するカソリックは、懸念を示している。

ユニセフが海外養子を減らしたい動機は何か。そこには子どもの「heritage rights」という概念がある。母国にとどまって、親戚や、同じ人種、民族、国籍の養親と暮らす権利のことである。しかしBartholet氏は、永住できる家庭を持つ方が、孤児の福祉にとって大切であると考える。

このユニセフの主張は、貧しい国の孤児の現実を考えると、説得力を持つともいえる。子どもの多くは伝統的な意味での孤児ではない。「社会的孤児」――親が子どもを経済的に育てられないために見捨てられた子供たちである。

それでも、親が生きているという理由で子どもによりよく生きるチャンスを与えないのは間違いだとBartholet 氏は考える。彼女はユニセフが「人質」戦略をとっていると2007年の論文で主張している。子どもを「悲惨な」孤児院に入れておくことで「貧困や不公平の問題を解決するために何かしなければならないと皆に[先進国に]プレッシャーをかける」戦略だという。「これがユニセフの戦略だとしたら、道徳的で正当な戦略ではないと思う。」

これに対しSmerdon氏は、そのような見方は非論理的で間違っていると反論。「母国の家庭に引き取られない子供にとって、海外養子はベストな選択肢だろうとユニセフは考えている。」と主張し、各国の政府自身が海外養子を控えていることを強調した。

UNICEF Blamed for Decline in International Adoptions
by STEPHEN BEALE
[The National Catholic Register 05/22/2013]

非合法の養子縁組が横行するグアテマラ、孤児院から児童46人を救出
[AFP 2007年08月14日]

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by technology0405 | 2013-09-17 16:47 | Countries | Comments(0)
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