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渡航治療への2つのアプローチ

HOW TO ADDRESS THE ETHICS OF REPRODUCTIVE TRAVEL TO DEVELOPING COUNTRIES: A COMPARISON OF NATIONAL SELF-SUFFICIENCY AND REGULATED MARKET APPROACHES
G.K.D. CROZIER
Developing World Bioethics, Volume 12, Issue 1, pages 45–54, April 2012

「リプロダクティブ・トラベル」とは、人々が生殖医療関係のモノやサービスの購入を目的として国外へ渡航する現象を指す。本論文ではその中でも特にfemale reproductive resources (FRR、女性資源)――特に卵子、代理出産サービス、あるいはその両方――の購入を伴うリプロダクティブ・トラベルに焦点を当てる。
 FRR購入を目的とするリプロダクティブ・トラベルへの対処として、2つの対照的な戦略を提案する。自給自足型モデルと、統制市場モデルである。
 FRR購入を伴う渡航治療にはメリットとデメリットがある。メリットとしては、患者にとって生殖の自律性が向上する点、FRR提供者にとっては経済的収入と、場合によっては個人的な満足感が得られる点が挙げられる。デメリットとして、渡航治療に伴う危険性が存在する。提供者は強制や経済的搾取、身体的被害などを受ける恐れがある。

自給自足型モデル
このモデルは、国内のFRRへのアクセスを向上させることだけを目指すのではなく、そうすることでFRRの越境貿易とそのリスクを出来るだけなくすことを目的としたモデルである。成功を収めている他のヒト由来物質(human biological materials: HBM)の自給自足政策――献血など――と同様の考え方を土台としている。自給自足型モデル採用の理論的根拠は、国内供給によりFRRの安全性・信頼性が確保されやすい点、FRR提供者へのケアがより推進されるだろう点にある。しかし国によっては卵子提供や代理出産を自国で提供したくないと考えるところもあるなど、第三者生殖補助医療の課題がある。そもそも献血はFRRと比べ(a)献血運動の歴史が全国的運動として定着していること、(b)血液の供給が簡単で早い処置で済むこと、(c)血液の補給は人命に関わる点、が異なる。FRR提供者にとっても、チャンスを奪われることになる。

統制市場型モデル
自給自足型モデルとは逆に、このモデルは、「統制」をかけながらリプロダクティブ・トラベルを推進していこうという考え方である。最大の懸念は(1)FRR提供者が他人の目的を達成するための手段として悪用されている、(2)FRR提供者への搾取である、あるいは産業活動への不当な参加強制である、(3)海外のFRR市場が、生殖ケア領域で必要とされる他の物(公平性、効率性、安全性など)を弱体化させる、という点である。
(1)政府が国境を超えた生殖市場を推進したからといって、必ずしもFRR提供者にとって不当な状況が深刻化するとはいえない。貧しい女性の福祉を考慮した市場政策ならば、カント的な意味では、FRR提供者は他人の目的だけでなく自分の目的も達成できる。
(2)FRR提供者への報酬は利益の衡平な分配を促進するだけでなく、搾取的な取引であっても提供者の暮らし向きが良くなるのであれば、正当と認めても構わない。
(3)FRR市場を統制しながら推進する一番の正当性は、最も貧しいグループ――発展途上国のFRR提供者――が利益を得られる点である。
しかしこのモデルを採用する際には、適切な統制についてさらに注意深く模索される必要がある。

2つのモデルの合意点
 自給自足型モデルも統制市場型モデルも、FRR取引を伴うリプロダクティブ・トラベルが道徳的に実施されるためには規制が必要であるという点で一致している。最も重要なのは、生殖産業に現在関わっている人々、およびこの先関わる人々――まずはFRR提供者、渡航者、こうしたサービスによって生まれる子供たち――を保護するために政策が展開されることである。従って、たとえ2つのモデルが、FRRの国際市場を促進すべきか否かという議論で対立したとしても、こうした人々に対する保護政策に関する短期的な措置については一致する余地がある。
 国民の保護、医療の提供、基本的人権の保障は政府の責任であり、政府は、生殖産業を調査・監督し、提供者のリスクを出来るだけ軽減するような法律を制定し、女性に生活向上の機会を与えるよう努めるべきである。搾取をなくし、不当契約から関係者を保護し、FRR提供者の社会的スティグマを軽くする措置が必要である。国際的なレベルではFRR取引の透明性、質、安全性を高めることを目指し、FRRの提供者と受給者へのケアや同意についての最低基準を示したガイドラインが、国境を超えて実態と結果を監視・把握するシステムと共に導入されるべきである。
 FRRの提供者や受給者への情報提供だけでなく、産業的悪要素を軽減・排除することを目的とし、FRRサービスを提供するクリニックの国際認定制度を確立する必要もある。こうした制度があれば、患者は認可クリニックを探すことができ、国は不認可クリニックへの渡航を禁止したり罰したりすることができる。ハーグ国際養子縁組条約のような、FRR取引に関する国際間の同意を確立することが、社会的弱者の福祉の保護につながる。

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by technology0405 | 2012-10-18 17:02 | Materials | Comments(0)
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