年齢と妊孕性についての不妊治療への誤解

 「A persistent misperception: assisted reproductive technology can reverse the “aged biological clock”」 
Nichole Wyndham, Fertility and Sterility, Volume 97, Issue 5, 1044-1047, May 2012

 出産を遅らせるという選択は、本人が正しい知識を持った上でなすべきである。しかし現代の女性たちは、自分の生殖能力や生殖補助医療の効果について驚くべき誤解をしている。医師を始めとする医療従事者は、妊孕性の保存について患者と話し合うと共に、若い女性には自分の選択が生む結果について十分理解しているのか確認することが必要である。社会的、経済的、個人的圧力のせいで女性は出産を遅らせるわけだが、そうした女性たちは、利己的で、子供を作ることに無関心なのだという烙印を押されてしまう。この烙印を払拭し、加齢性不妊を内科的疾患として捉えるべきである。

Centers for Disease Control and Preventionのデータによると、第一子の平均出産年齢は1970年の21.4歳から2008年25.1歳に急上昇している。また35歳以降で第一子を出産する女性は、1970年では100人に1人しかいなかったが、2006年には12人に1人になった。出産年齢は確実に上がっている。

「あらゆる年代の女性がIVFなどの生殖技術に向かうようになった」とSociety for Assisted Reproductive Technologies(SART)はいう。しかし興味深いことに、2003年から2009年までのIVFサイクル数の増加率は、35歳未満で9.08%なのに対し、41歳以上では実に41.08%の増加を見せている。 ARTの利用は、高齢女性の間で特に増加しているのである。

ARTの普及は女性たちに、自分の妊孕性をコントロールできるという印象を植え付けたが、こうした間違った前提が将来取り返しのつかない不妊につながる可能性もある。実際、ARTに向かう高齢女性の数が急激に増加したといっても、42歳以上の1サイクルあたりの妊娠率は2009年時点で9.0%と、ほとんど変化していない(35歳未満は47.6%)。生児出生率はさらに低く、ART治療を行った42歳以上のうち出産に至るのはわずか4.2%である(35歳未満41.4%)。高齢出産自体に流産や先天異常、合併症などリスクが高いこともよく知られている。

では何故そのようなリスクがあるにも関わらず、女性たちは出産を遅らせる選択をするのだろう。2010年に12文献に対して実施されたメタ分析によると、7文献が高学歴化とキャリア志向が要因だと特定しており、他の要因としては、経済的要因、パートナーとの関係などが挙げられた。中でも最も問題のある要因は、女性自身が自分の妊孕性や高齢出産のリスク、ARTの有効性を誤認していることである。イギリスの最近の調査では、30歳から40歳の間に妊孕性が落ちることを認識している女性は75%であった。生殖能力が落ちることは知っていても、ART治療を受ければ、閉経前ならいつでも妊娠できると誤解している女性も多い。高齢出産のケースは、単なるIVFではなく卵子提供によるものがしばしばあるという事実も見落とされがちである。

こうした高齢出産への誤解にどう対処すべきか。答えは、将来の不妊リスクに対する選択肢を伝える、受胎前教育(preconception education)しかないだろう。卵巣機能の老化や高齢出産の危険性について情報提供すると同時に、出産を遅らせた場合に生殖補助医療に何ができるのか、その有効性を啓蒙することが重要である。

卵子提供という選択肢は、伝えるべき重要な内容の1つである。卵子提供の成功率は、40代後半までならレシピエントの年齢に影響を受けない(化学妊娠率48%、出産率40%)。48歳以降は徐々に成功率が下がり始め、50歳を超えると急落する。出産を遅らせたいが、自分の遺伝子にこだわる女性に対しては、早めのインフォームド・ディシジョンが必要である。若いうちに自分の卵子を使って体外受精し、胚を凍結保存すれば、自分の妊孕性を保存することができる。ただし、子供の父親を早い段階で決めねばならない、将来パートナーが変わった時にその胚を使えるか、などの問題がある。

技術の発達によって、凍結卵子でも、新鮮卵と変わらない結果が得られるようになってきている。2010年の研究によると、卵子提供を受けた患者600人を無作為に2個のグループに分け、ガラス化卵子と新鮮卵子で妊娠率を比較したところ、結果はそれほど変わらなかった(44.4%と43.3%)。安全性の面から見ると、異数性胚の出現率は28%と26%であった。卵子凍結は今や妥当な選択肢の1つになったといえる。

ただし、イギリスを始めとするヨーロッパ諸国と同様アメリカでも、卵子凍結はまだ実験的手法と考えられている。女性が選択する場合には、実験段階の技術とみなされていることを理解しているという同意書、およびカウンセリングが必要である。対照的に、イスラエルでは、医学的な理由がなくても卵子凍結が認められている。Israel National Bioethics Council(INBC)は、加齢性不妊を、単なる社会問題ではなく内科的疾患と捉える。INBCの勧告には次のように述べられている。「健康な女性が、様々な理由で、自分の妊孕性を保存するために卵子を凍結保存したいと希望した場合、これは一見治療にはあたらないようにみえる。しかしながら、近い将来ほぼ確実に起こる医学的問題を解決するための適切な処置であるならば、医師が当該女性にそうした治療を行うことを認めるべきである。」

将来子供を持ちたいが、妊娠を遅らせたいと考える女性にARTができる最善策は、卵子の凍結保存である。この技術は今や広く使用され、優れた成果をあげているにも関わらず、ASRMによって「実験段階」の技術に分類されている。このサービスをもっと多くの女性が利用できるよう、ASRMは「実験的」というラベルを取り去るべきである。

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by technology0405 | 2012-07-24 16:21 | Materials | Comments(0)
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