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ESHREカウンセリングマニュアル―胚提供―

治療では治らない深刻な男性不妊(無精子症や無精液症)がある場合や、卵子がなかったり質が悪かったりする場合、体外受精で失敗が繰り返される場合に、胚提供が適応される。胚提供では、レシピエントと子供との間に遺伝的つながりがないケースが多い。胚提供には2種類ある。
①卵子提供と精子提供を組み合わせる――ドナーにはすでにカウンセリングが行われている
②別の不妊患者が凍結保存しておいた余剰胚を、持ち主の同意を得て使用する

カウンセリングの持つ意味は、①の場合には卵子提供や精子提供と同様であるが、②の場合には付加的なケアが必要である。胚提供が及ぼす影響について関係者全員が理解し、不安なく治療を進められることを目的として、カウンセリングが行われるべきである。そのための時間と場所は十分に確保しなければならない。

カウンセリングの目的
ドナー
自分の胚が遺棄されたり研究に使われたりするよりは、別のカップルに提供した方が良いと考えるドナー患者は、提供前に以下のことを考慮する必要がある。
・すでに今いる子供のために兄弟をもうけてあげたいと将来考えることは、本当にないだろうか
・自分の胚で生まれた子供がどこかで生きているという現実的な可能性について、どう思うか
・どんな人たちが胚提供を必要とするのだろうか
・提供胚が成功かどうかを(おそらく)知らされないことについて
・匿名性の保持について
・ドナーとレシピエントの両方から十分なインフォームドコンセントを得る必要がある

レシピエント
提供胚のレシピエントの懸念は以下のような事柄である
・ドナーには適切な健康診断(エイズ、肝炎、染色体異常の分析など)がなされたのか。家族内に身体的、精神的、遺伝的異常が発生したことはないか。
・ドナーの学歴や社会的背景などは?
・ドナーの動機は?報酬を得ているのか?
・レシピエントやその家族からは考えられないような性質の子供が生まれることがあるだろうか。
・胚提供で生まれた事実を子供に告げるべきだろうか。
・匿名性――ドナーの身元を知ることはできるだろうか。完全な匿名性が守られる国も多いが、一部の国では(スウェーデンなど)子供がドナーの身元を知る権利を持つ。

典型
胚提供は、比較的新しい選択肢である。作成された胚が凍結保存されてしばらく時間が経った後ようやく、胚提供が受けられる状態になる。患者は胚凍結時に、保管期限があること、その時に胚を破棄するか、別のカップルに提供するか、研究に提供するかなどの選択を尋ねられる。国によってはこうした選択肢が法律で禁じられている。余剰胚を破棄する選択をしたカップルはしばしば、宗教的なものであってもなくても、別れの儀式を希望する。胚を人とまでは考えなくても、命の可能性を持つ生きた存在だとみなすことが多い。そうした思いをくみ取るような最期の迎え方が必要である。

これまでに起きた問題点
①ドナーカップルの中には、自分の子供とよく似た子供が(胚提供の結果)生きているかもしれないという事実を受け入れることが難しい者もいる。それと分かるほどよく似た子供に会うかもしれないと懸念するカップルもいる。胚提供することに気が進まず、破棄を選ぶカップルもいれば、地理的にかなり離れた場所で提供胚が利用されるのなら不安がないと考えるカップルもいる。提供前のカウンセリングは非常に重要である。
②レシピエントの成功率を考えると、凍結余剰胚が3つ以上なければ胚提供は提案できないと考えるクリニックがほとんどである。しかし、自分の余剰胚にはできるだけ生きるチャンスを与えたいと強く望むドナー患者にとって、こうしたクリニックの態度は過酷である。
③胚提供に対する受容力は男女で同じとは限らない。男性パートナーの方が、胚提供の可能性を受け入れることに困難を感じる場合が多い。女性は子供を妊娠・出産することで報われる。
④レシピエントは、子供に本当のことを告げると決めた場合、どのように伝えるべきか悩むことが多い。子供の絵本は、告知の際の手助けに有用である。

コミュニケーション技術
カウンセラーは、他の不妊カウンセリングと同様の技術を求められる。また、匿名性を守るために特別な注意を払う必要がある。例えば、ドナーとレシピエントのマッチングをカウンセリング過程から切り離すことなどは、賢明な予防策であろう。

GUIDELINES FOR COUNSELLING IN INFERTILITY
ESHRE  PSYCHOLOGY AND COUNSELLING

Theory and practice update in third party reproduction
ESHRE 3 July 2011 Stockholm, Sweden

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by technology0405 | 2012-01-20 14:51 | Materials | Comments(0)
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