ESHREカウンセリングマニュアル―卵子提供―

原発性卵巣不全や早期閉経などの卵巣疾患を持つ女性の不妊には、卵子提供が解決策となる。さらに、体外受精が繰り返し失敗するような場合には、卵巣機能が正常な女性でも卵子提供が必要になる。加齢による不妊の場合もある。
問題は、提供卵子の不足である。精子提供と違い、卵子提供はドナーに対する侵襲性が高いので、利他的に卵子を提供しようという女性は少ない。待機期間が長くならないよう、エッグシェアリングや、患者によるドナー探しなど様々な方法が提案されている。

カウンセリングの狙い
卵子ドナーボランティア
Englert(1996)によると、「偶発的な」ドナーは精神的にもろく、承認や自己修復を求めている女性であるという。別の研究でも、卵子ドナーボランティアは家族に関するトラウマや生殖に関するトラウマを抱えていると報告されている。こうしたトラウマによって、卵子を必要とする女性の喪失感にドナーが共感するケースがよくある。

Englert(1996)は、不安定な精神的バランスが崩壊するリスクを恐れ、「偶発的な」ドナーを排除することもあった。一方Schoverら(1991)は、ドナーが喪失感の問題について診察を受けている場合や、ドナーの期待が現実的である場合には、他の女性を助けるプロセスが自己修復に役立つと考えた。カウンセラーは、トラウマが精神的苦痛を引き起こす可能性を考慮し、非常に慎重になる必要がある。また、緊張の多い医療行為下では更なる支援が必要かもしれない。

患者が募集した卵子ドナー
センターによっては、レシピエント患者は2種類の提供方法を選ぶことができる。知り合いによる提供(患者が募集する)あるいは匿名者による提供(ドナーとレシピエント間の匿名性保護のため、別の患者が募集したドナーと交換する)である。カウンセリングの目的は意思決定そのものではなく、意思決定プロセスへと導くことである。決定によって生じうる精神的影響についても、注意を払うべきである。

エッグシェアリング
IVF患者を利用するエッグシェアリング制度を紹介したのはAhujaら(1996)である。医学的危険が追加されない点で、IVF患者は理想のドナーのように思われる。ドナーが匿名のレシピエントと卵子を共有し、その代りに、レシピエントがドナーの医療費を分担する。しかし、ドナーが妊娠せずレシピエント女性だけが妊娠・出産した場合に、倫理的な問題が生じると主張する者もいる。Ahujaらによれば、ドナーとなった患者には、そうしたケースで通常より苦しむ兆候は見られないという。ピアグループがドナーに適さず、自分でドナーを連れてくることのできない40歳以上の女性にとっては、エッグシェアリングが唯一の解決策であることが多い。

カウンセラーの役割
卵子ドナーボランティアの場合
・治療の内容とリスク、治療がドナーの生活に及ぼす影響について何度も説明する
・ドナーの動機、治療の不安とストレスに対処する能力、彼女が提供に抱いている期待、その期待が現実的であるかどうかを評価する
・卵子が使われることや、ドナーの継続的な協力の重要性について、ドナーに圧力をかけることなく伝える
・ドナーのパートナーの同意と支持があることを確認する
・ドナーの気が変わる可能性について、レシピエントは覚悟しておく必要がある

患者が卵子ドナーを募集する場合
・提供に向けての意思決定プロセスへと導き、この選択がレシピエント、ドナー、子供に与える影響について話し合う
・ドナーの動機を評価するとともに、自分の役割の範囲(ドナーはしばしば「第三の親」のように振る舞ったり見なされたりする。それが対立を生みやすい。)をドナーが理解しているか、またドナーにインフォームドコンセントを示す能力があるか、そこに外圧が働いていないかを確認する
・レシピエントが知り合いあるいは匿名者からの提供を選んだ動機を評価するとともに、その選択がドナーからの圧力によるものではないこと、ドナーの役割の範囲をレシピエントが理解しているかどうかを確認する
・周囲に対する公開/非公開と、その選択の結果を考えるカウンセリングを行う
・子供に教える/教えないの選択と、その結果について考えるカウンセリングを行う

エッグシェアリングの場合
・ドナー患者自身の治療の結果について、ドナー患者と共に評価する。匿名での寄贈の結果についてドナーと話し合う。経済的理由で提供しようとするドナー患者には特に注意を払う。経済的困窮は、決断の自由を制限してしまう。
・レシピエントには、匿名提供がもつ影響についてカウンセリングを行う必要がある。さらに、人種以外の条件は合わない可能性があること、待機期間を覚悟しておかねばならないことについても話し合う。レシピエントには、ドナーの卵子の数によっては治療が延期される可能性があることも知らせる。
・卵子提供が禁止されている国からの渡航患者に対しては、文化的違いを尊重するとともに、「違法な」方法で子供を持つことによって生じる罪の意識に対処するための支援を行う
・別の卵子ドナーによって複数の子供をもつ家族にも、カウンセラーの支援が必要である

GUIDELINES FOR COUNSELLING IN INFERTILITY
ESHRE PSYCHOLOGY AND COUNSELLING

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by technology0405 | 2012-01-20 11:12 | Materials | Comments(0)
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