事件のあと

タイでは、ネットで子どもを売るために代理出産サービスを女性に強要していたとして、2011年2月に台湾人が経営するBabe-101が摘発された。妊婦7人を含む19-26歳のベトナム人女性15人が救出されたことは、現地でも大きく報道された。

この事件以降、代理出産に対する病院の姿勢は厳しくなった。
第三者生殖の商業的利用を避けるため、卵子提供や代理出産を引き受ける女性は建前上、依頼者の親戚などに限られる。病院で実際に親戚である証明書まで求められることはほとんどないが、有償で卵子提供や代理出産を引きうけようとする女性にとっては、親戚であるという建前で実施した場合、一つの病院(医師)に複数回出入りすることは難しいケースも生じるだろう。また、日本人依頼者がタイ人卵子提供者やタイ人代理母をともなってタイのクリニックで治療を受けるケースは、(タイ在住の国際結婚のカップルのケースを除いてもともと少ないと思われるが)難しくなるだろう。日本から卵子提供者を連れて来る日本人同士のケースであれば、親戚同士であると取り繕うことも容易である。

一方、バンコクでは、事件後も、新たなIVFクリニックが増えている。昨年5月頃に開業したクリニックでは、日本のエージェンシーが入っており、この業者が紹介する日本人患者が約3割を占めるという。卵子提供を利用する日本人が多い。ここでは中華系のタイ人女性を紹介している。医師によれば、第三者生殖の商業的形態を禁止するガイドラインや法案については、医師会からの文書が来たことを覚えているが、あまり気にしていないということであった。そもそも無償で引き受ける人などいないので、有償を禁止する規定は、実際に第三者生殖を行う医師の多くがナンセンスであると考えている。無償規定(実費補償を除く)には反対である医師も少なからずおり、さらに、今後の見通しとして生殖補助医療に関する法案がタイで通過するにはまだまだ時間がかかりそうであるという。代理母斡旋事件に関わった病院の医師に対する処分はタイの医師会で検討されているが、「そんなに厳しい処分にはならないだろう」(バンコク病院医師)と予測されている。

今後暫くの間は、表面上は有償にならない形を装いつつ、しかし実際には金銭の授受を伴う形で、卵子提供や代理出産などが行われていくことになるだろう。そしてその間、その行為が違法であるか合法であるかの位置づけは曖昧なままに置かれることになる。

代理出産については、IVFクリニック、分娩施設、エージェンシーがこれまで以上に密に連携をとりあって注意深く実施されていくと思われる。代理出産の場合、体外受精を行う施設と分娩する施設は異なる。複数の病院に出入りしている医師が主治医であれば、移植から分娩まで施設が変わっても同じ医師に見てもらうこともできる。代理出産の場合の実親は依頼者の名前で登録される。このために、移植を行った施設でのカルテは代理母名義になっているが、分娩施設のカルテは依頼者の名前で作成され、依頼者が分娩したことになっている。出生証明書の準備や発行など、全て「分娩施設がやってくれる」(代理母経験者)という。

これまでは、仲介業者を通して外国人患者を多く受け入れているクリニックなどを利用する日本人が多かったと考えられる。タイは駐在員家族や国際結婚などにより日本人在住者も多く、不妊治療を利用する在タイの日本人患者も一定数存在する。最近は、タイの不妊治療についての情報が日本語で得られるようになってきたこともあり、仲介業者を通さず自分で医師などとやりとりをして卵子提供を依頼するようなケースも増えてきていると思われる。タイのメディカル・ツーリズムを掲げる私立総合病院では日本語通訳も無料で付くため、渡航者でも不妊治療サービスを利用することはそれほど困難なことではない。


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by technology0405 | 2012-01-19 19:57 | field work | Comments(0)
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