ESHREカウンセリングマニュアル―代理出産―

代理出産は、人間性を圧力の下に置く、感情的・倫理的リスクの多い領域だといわれてきた。ヨーロッパ諸国の多くで代理出産は禁止、あるいは実施されておらず、イギリスとイスラエルのみが代理出産を公式に認めている。アメリカではヨーロッパよりも盛んに実施されている。

代理出産には2種類ある。
①代理母に人工授精を施し、代理母が自分の卵子から生まれた子供を妊娠する方法。クリニックや医師が関わっていない場合も多く、「Do It Yourself(ドゥ イット ユアセルフ)」式の代理出産が起こる。多くの場合カウンセリングも一切なし。
②体外受精による胚を、代理母の子宮に移植する方法。従って、代理母と子供との間に遺伝的つながりはない。通常、クリニックがカウンセリングと支援を行う。実施するたびに前もって倫理委員会の承認を受ける場合が多い。

カウンセリングの狙い
カウンセラーが患者の査定を下すことは、難しい場合が多い。しかし、代理出産適用の不可の判断をカウンセラーの役割から切り離すことで、この難しさはある程度緩和される。

従って、カウンセリングの目的は2方向に分かれる。
①関係者全員が実施に伴う影響をすべて理解し、自分の資源を活用し、不安に対処できるよう支援すること。関係者には以下の人間が含まれる。
・依頼カップル
・代理母、代理母のパートナー/夫、依頼カップルの子供、代理母の子供
・より広い意味での家族、友人、仕事仲間
・医療関係者、特に子供の引き渡しに関わるスタッフ

②代理出産適用の不可の判断を下す人間に、関係者の同意を添えて、以下のような判断材料を引き渡すこと。
・依頼カップルと代理母の間には健全な信頼関係があり、このケースはそうした関係性の上に構築されたものであるという確信が十分に持てる。
・関係者たちがこの先困難に陥った時でも、適切に支援できる体制が整っている。
・今いる子供たちと、生まれてくる子供の福祉が考慮されている。
・養子縁組の手続きや、親権の引き渡しが可能である。
・生まれてくる子供・今いる子供を含めた関係者全員にとって、予測し得るリスクがそれほど高くない。

考慮すべき事項
依頼カップルと代理母の関係――イギリスでは代理出産の約50%が親族、あるいは友人によるものである。残りの50%は、元々知り合いではなかったが一定期間を共に過ごしたおかげで、理解と信頼が生まれたというケースである。
婚姻関係――多くの依頼カップルが婚姻関係、あるいは安定した関係にある一方で、代理母の中にはシングル、離婚中、別居中の者がいる。代理出産を引き受ける際に、十分な家族の支援があることを確認することが必要である。

代理出産の適応――子宮摘出、癌、子宮の遺伝性欠損、習慣性の流産や子宮外妊娠など。代理出産を必要とする理由は痛ましいものである。社会的理由による代理出産(仕事が忙しいなど)は、通常クリニックに受け入れられない。
代理母の動機――代理母の多くは、友人が子供を持てずに苦悩する姿を見ており、自身に子供がいることをありがたく感じて、他の人を助けようとする。金銭上の動機から引き受けるケースもあり、カウンセラーはこうした可能性に目を配る必要がある。

今いる子供および生まれてくる子供への影響――代理母の子供であろうと、依頼親の子供であろうと、その子供の福祉は考慮されるべきである。代理母の子供が代理出産を不快に感じるならば、代理出産契約の話を進めるべきではない。
法的状況への考慮――代理出産の実施を禁じている国の中には、代理出産によって子供を「もつ」こと自体を違法とはしていない国もある。イギリスやアメリカなどの国に助けを求める患者は多い。代理出産契約の前に、生まれてくる子供の将来に対し適切な法的枠組みを築けるよう、カウンセラーが患者を手助けする必要がある。

知識――代理母が懐胎する子供は、遺伝的には完全に(あるいは部分的に)依頼親の子供であるということを、代理母自身が最初からしっかり理解する。
配偶子提供による代理出産が依頼親と子供に引き起こす問題――誰が親なのかを定義することが難しくなり、遺伝的母親、依頼母、代理母とそのパートナー、遺伝的父親、依頼父を巻き込む問題に発展する可能性がある。

子供の引き渡しと絆――子供は出産時に引き渡されるため、代理母と子供の絆を生むようなスキンシップは最小限に止められることを代理母は覚悟しておく。代理母は、自分が子供を依頼親に「あげて」しまったことを忘れはしないだろう。こうした心残りは、依頼親に自分が幸せをあげたのだと知ることで補われるべきである。
子供の出生届――法的親権の変更や養子縁組の手続きが、場合によっては渡航国と母国との間で必要なことがある。

妊娠合併症と産後鬱――合併症のリスクのない妊娠は存在しない。また代理出産に関しては、「見返り」となる子供が産後いない。
異常――中絶の可能性を伴うような異常・障害が起こる可能性もあり、こうした場合、関係者全員が苦痛を受ける。
流産――友人間や親族間の代理出産の場合は特に、情緒的問題を引き起こすことがある。
コンタクト――代理母が将来子供と接触をとることについて、検討されるべきである。
費用vs報酬――どこまでが実費で、どの程度の金額がサービスへの報酬にあたるかを区別することは難しく、ヨーロッパでは法的問題となっている。どの程度の報酬が支払われているかというエビデンスを裁判所が示すことが必要であろう。
子供への告知は?――多くの国では、養子縁組や親権の移行があった場合、18歳以上の子供に知る権利が与えられる。

GUIDELINES FOR COUNSELLING IN INFERTILITY
ESHRE SPECIAL INTEREST GROUP PSYCHOLOGY AND COUNSELLING

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by technology0405 | 2012-01-17 11:02 | Materials | Comments(0)
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