ESHREカウンセリングマニュアル―治療の終結―

不妊は、時として人生における重大な危機とみなされる。それゆえ、治療の不成功は不妊患者にとって生死に関わるほど深刻な情緒反応をもたらす可能性がある。患者―特に原因不明の不妊に苦しむ患者―は、治療が失敗に終わった場合、自身の不妊を心理的起源によるものと思い込むことが多い。

カウンセリングの狙い
・不妊治療の開始時から、子供を持たない人生に対する見通しを肯定的に捉えることで、治療の失敗により患者が鬱症状に陥らないようにする。
・治療の失敗による悲嘆は長期間消えないのが普通である。患者が苦痛を引きずることで、自分自身を責めることがないようにする。
・医療チームのカウンセラー、あるいは特別に訓練を受けた訪問カウンセラーのどちらかによるカウンセリングを患者が受けられるようにする。

基本方針
・選択肢が多様化してきたせいで、治療の中止を決断することの方が、続けることよりも難しくなっている。治療が新たな段階に進むごとに、患者は、自分自身があとどのくらい耐えられるのか個人的な限界を確認する必要がある。
・治療が不成功に終わるごとにカウンセリングを行い、将来に向けての新しい物の見方や新たな選択肢について考えるよう促す。
・患者による意思決定プロセスへの積極的な参加を促進する。
・治療の失敗から引き起こされる患者の情緒反応に対し、前もって対策を講じておく。
・治療の終結時に、人生における重要な目標を失ったことが個人にどのような意味を持つのか、医療チームと患者が話し合うことは必要である。しかし同時に、「子供をもたない」人生の利点についても話し合うべきである。
・不妊治療の不成功に対処するために患者がどのような支援的資源(親族、友人、自助グループを含む)を持っているのか、患者自身が知っておくことが奨励される。
・流産や死産が起こった場合など特に、喪失状態が慢性的、未解決にならないよう、弔いの儀式を提案することも考えられる。
・治療をやめる決断は、患者の人生において、前向きな選択、自立、プライバシーであると捉えうる。「子供のいない」夫婦関係が、子供のいる夫婦関係に比べて長期的に不幸で不安定であるという実証的証拠はない。

典型
・体外受精や顕微授精などの治療が失敗すると、患者が治療の継続を強く求める可能性がある。新技術は新たな希望を生み出すが、また新たな失望も生み出す。新技術の可能性とリスクをオープンに議論すべきである。
・不妊治療を中断した患者や他のセンターに移った患者は、医療チームのメンバーを非難したり過小評価したりする可能性がある。そうした患者は、医療チームによる心理的援助を受け入れない。
・コミュニケーショントラップに陥った患者は、本音ではなく、思い込みや偽りの感情に基づいて治療終結の決断をする可能性がある。

コミュニケーション技術
・医療チームの各メンバーは、いずれの段階でも治療の終結を念頭に置いておく必要がある。
・医療チームの各メンバーは、治療が不成功に終わった時に引き起こされる典型的な情緒反応(鬱症状、不安、自己評価の低下、不満足感)を知り、そうした感情についてオープンに患者と議論する。
・カウンセラーは、原因不明の不妊は心因性不妊に相当しないケースがほとんどだという事実を伝える。
・カウンセラーは、次段階の治療の成功率を患者が十分に理解しているか確認する。
・治療の終結を儀礼的に行うことは、患者の試練に区切りをつけるのに役立ち、患者が経験した変化や将来について話すことにつながる。
・不妊治療の経験について患者にインタビューすることは、今後、不妊患者を理解するための情報を得るのに役立つ。また、患者を正しく理解できる。
・患者は、治療をやめた段階に関係なく、自分の不妊問題をできる限り解決したという感覚を与えられるべきである。
・カウンセラーは、治療の続行・終結の動機付けに対し、できるだけ中立の立場をとる。
・倫理的、宗教的な理由で生殖補助医療を使わないという選択があれば、受け入れる。
・生殖補助医療の「人工性」について、正しい情報を与える。
・カウンセラーは、患者が、親族や友人によって治療の終結(「妊娠するためにはストレスを減らすべき!」)や治療の強化(文化的背景)を強要されていないかどうか探る。
・カウンセラーは、カップルが治療の終結に関して互いに異なる意見を持っていれば、それを受け入れ、議論を進める。治療の終結を望むパートナーが、相手が決断するまで待つ可能性は十分にある。

内容
・治療の開始時における典型的な質問
 「子供がほしいという願いを叶えるため、あなたはどんなことをするつもりですか?」
 「治療中に自分の限界が来たことに、どうやって気づくでしょうか。」
 「もし治療に失敗したと仮定した場合、5年後のあなたの人生はどうなっているでしょう。」
 「自分自身の子供をもたない人生について、どのように想像しますか。」

・治療の終結時における典型的な質問
 「人生観や自己意識に対する不妊の影響は?肯定的、否定的両面から考えてください。」
 「あなたの夢の中の子供とお別れするための儀式を、どう執り行いましたか。」
 「今あなたは治療を終えるにあたり、医師に何を言っておきたいですか。」
 「他の患者に対してアドバイスはありますか。」
 「不妊を乗り切るのに、何があなたの手助けになりましたか。」

GUIDELINES FOR COUNSELLING IN INFERTILITY
ESHRE Psychology&Counselling

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by technology0405 | 2012-01-13 14:52 | Materials | Comments(0)
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