親族間生殖医療(IMAR)に関するESHREの提言2010

第三者の関わる生殖補助医療(「協力的」生殖)は、多くの国で広く受け入れられている。その多くが匿名者からの提供であるが、中には知り合い(友人、親族)からの提供を選択するカップルもいる。親族間提供に関しては様々な倫理的問題があり、議論を呼んでいるが、エビデンス論文は非常に少ない。

親族間生殖医療(IMAR)の分類
・遺伝的分類
一等親間(兄弟姉妹、両親、子供)、二等親間(叔父、叔母、甥、姪)、三等親間(いとこ)
*日本の法的な親族関係を測る単位「第○親等」とは異なる
・世代的分類
同世代間(intragenerational; 親族内で同世代のメンバー)、異世代間(intergenerational;親族内で異世代のメンバー)
・サービス的分類
精子提供(兄弟、従弟、父親)、卵母細胞の提供(姉妹間、母娘間、姪から叔母へetc.)、胚提供、代理出産(full surrogacy、partial surrogacy)

リスク
・匿名提供でないため、生まれてくる子供の親の地位をめぐって、レシピエントとドナーが争う可能性がある
・ドナーになりえる人物に、親族内の圧力がかかっている可能性
・女性の協力者(卵子ドナー、代理母)が抱える医学的リスク
・子供への心理的影響、アイデンティティの混乱(遺伝的には母にあたる姉、遺伝的には祖母にあたる母親、遺伝的には父にあたる叔父etc.)
・親族間提供に伴う遺伝的なリスクの増加
・公平性の問題(姉妹間の卵子提供は認められるのに、兄弟間の精子提供が認められない等)
・IMARは匿名提供に比べて金銭的負担が少ないので、多くの人がアクセスしやすい。しかしその一方、金銭的に苦しい人々がIMARを余儀なくされるとすれば問題である。

提言
①親族間生殖医療(IMAR)は、状況や条件に応じて、道徳的に認められる選択である。
②レシピエントと協力者(ドナーや代理母)に対する同時カウンセリングおよび個別カウンセリングは非常に重要である。こうしたカウンセリングが、熟慮された上での決定を可能にし、リスク軽減につながる。
③不当な圧力が協力者にかかっている場合や、生まれてくる子供に害が及ぶ危険性が高い場合には、IMARは見合わせるべきである。
④異世代間IMARに対する先験的な道徳的批判はない。一等親・異世代間生殖医療(親子間提供や親子間代理出産)では特に、自律的選択が損なわれていないか吟味する必要がある。
⑤三等親間でのIMARは、原則として認められるものの、追加のカウンセリングとリスク軽減が必要である。
⑥一等親間、二等親間のIMARは近親相姦のリスクがあり、当然あってはならないが、そうしたケースが許容される場合(partial surrogacy)もわずかに存在する。
⑦IMARに伴う心理的な影響についての研究を進めることは、最も重要である。その研究結果は、より適切な道徳的助言につながると考えられる。
⑧IMARの要望に協力する意思のない医師は、患者がさらに検討できるよう、他のセンターを紹介するべきである。

Intrafamilial medically assisted reproduction
ESHRE Task Force on Ethics and Law including G. de Wert, W. Dondorp, G. Pennings, F. Shenfield, P. Devroey, B. Tarlatzis, P. Barri, and K. Diedrich
Human Reproduction, Vol.0, No.0 pp. 1–6, 2010


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by technology0405 | 2012-01-05 16:55 | Materials | Comments(0)
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