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卵子提供に関するESHREの見解2002

ESHRE(European Society of Human Reproduction and Embryology)の倫理・法律調査チームは、現在19のカテゴリーに関して見解を出している。卵子提供、代理出産、渡航治療などに関しては、「人権保護を優先しながら容認」という立場をとる。

[Taskforce 3 配偶子・胚の提供]
基本原則
・配偶子/胚の提供によって、配偶子を持たない夫婦が子供を持つことが可能になる。こうした夫婦の満足感は、不妊を「治療する」ことよりも重要である。
・配偶子/胚の提供は、遺伝的つながりが本能的特性とは関連しないことを前提に実施される。こうした家族形成を認めることは倫理にかなっている。
・こうした提供には医療従事者との協働が不可欠であり、医療関係者にはその責任がある。

匿名性
・匿名性の問題には①親の裁量権とプライバシー②ドナーのプライバシー③子供の出自を知る権利、という3者の権利が絡み、しばしば対立する。
・「匿名か非匿名か」2項対立ではなく「ダブルトラック」(ドナーが匿名、非匿名を選択し、レシピエントもどちらかを選択するやり方)がよい。
・子供に遺伝的問題が起きた場合には、匿名性に関係なく追跡できるようにすべき。

知人からの提供
・家族や友人からの配偶子/胚の提供に、今のところ反対はない。
・友人から提供を受けることで生じる問題は、報告されていない。
・子供から親への提供も存在する。否定的影響があるというエビデンスはないが、追跡調査が必要。

報酬
・原則として、ヒト由来物質の提供に報酬は支払われるべきでない。
・ドナーの労力に対する少量の謝礼のみOK
・多くの国では報酬によってドナーを勧誘しており、倫理に反していると考える。

ドナーの募集と適性検査
・検査に入る前の募集時にドナーに意思決定カウンセリング(implications counselling:本人自身、その家族、及び措置の結果生まれてくる子にとって、提案された一連の措置が持つ意味を理解するためのカウンセリング)を行うことが必要である。
・遺伝病の危険性を鑑み、精子提供者は50歳未満、卵子提供者は34歳未満とすべき。
・ドナー自身に子供がいることが望ましい。
・ドナーの募集は、独立した、非営利の団体によるのが望ましい。
・ドナーの外見、学歴、職業、社会的背景、提供の動機などの最小情報を記録しておく。

レシピエントの査定と適性検査
・査定時に、意思決定カウンセリング(implications counselling)を行うことが必要。
・生まれてくる子供の福祉と利益に焦点を当てたカウンセリング。
・レシピエントは、将来の妊娠に備えて、同じドナーの精子を取っておく権利をもつ。

医学的適応
・配偶子提供以外の方法では妊娠する可能性がほとんどない時
・配偶子提供以外の方法が成功しなかった時
・深刻な遺伝病が子供に遺伝する可能性があり、PGDの実施も不可能な時

心理社会的適応
・レズビアンカップル、シングルの女性、閉経後の女性など、心理社会的要因によって引き起こされる不妊については、社会的合意が得られていない。こうした問題への認識は国の法律に反映されており、社会によって異なる。

安全性
・精子を凍結してエイズ検査を行うことは、非常に重要である。一方、卵子に関してはエイズが潜むリスクが低いため、必ずしも凍結保存する必要はない。
・配偶子提供は認可された施設で実施されるべきである。
・提供にかかわる記録は50年間保持されるべきである。

子供
・どの段階においても、子供の福祉を考慮することが重要である。
・子供は、ドナーが提供したすべての情報と、自身の提供に関する一般データにアクセスする権利をもつ。

インフォームド・コンセント
・配偶子を提供する、あるいは受け取ることに関する意思決定カウンセリングは必要不可欠である。
・配偶子提供が、ドナーにもレシピエントにも長期的な影響を与える可能性があることを知らせる。
・ドナーは、配偶子提供に対する自分自身の見方と社会の見方が一致しないという可能性を認識しておく必要がある。

Gemate and Embryo Donation
[The ESHRE Task Force on Ethics and Law, Human Reproduction Vol.17, No.5 pp.1407-1408, 2002]

カウンセリングの内容
厚生労働省「精子・卵子・胚の提供等による生殖補助医療制度の整備に関する報告書」より


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by technology0405 | 2011-12-26 16:54 | Materials

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