人気ブログランキング |

医師の分裂を招くタイのメディカルツーリズム

メディカルツーリズムは世界で最も急成長しているビジネスで、2012年には年間1000億ドルの利益を上げると予測されている。インドやシンガポール、タイは、質の高い医療を、英語の堪能な医師と安価な費用で提供するハブ国である。しかし、こうしたメディカルツーリズムは国に巨額の利益をもたらす一方で、貧しい人々への医療に悪影響を及ぼす「悪政」だと、タイの著名な経済学者Ammar Siamwalaは批判する。

タイの病院に治療に訪れる外国人は年間160万人以上、そのうちメディカルトラベラーは50万人と見積もられる。メディカルツーリズム産業が発足してたった数年でこれだけの驚異的な数字をたたき出した。前大統領Thaksin Shinawatraがタイをメディカルツーリズム のハブ国にすると宣言した2003年以来、積極的なマーケティングと、外国人医師に対する規制緩和を推し進めてきた。

この政策は、タイにもたらされる巨額の財政的利益を理由に支持された。実際、外国人向け医療部門は2015年までに33億ドルの利益が見込まれている。政府はさらに、メディカルツーリズムが医学的専門知識や新たな医療設備の導入を促進するだけでなく、海外の有能なタイ人医師が国内に戻ってくることで「頭脳流出」にも歯止めをかけられると説明する。

しかし、Ammar氏はこのメディカル・ハブ政策を「タイ史上最悪の政策」と呼ぶ。私立病院の医者の給料は公立病院の8-10倍もあり、こうした民間病院の拡大が公立病院での賃金インフレを引き起こすだろうとAmmar氏は警告する。「国はすでに公立病院の医者の給料を再三にわたり引き上げたが、それでも不十分。私立病院と張り合えるわけがない。」

National Health Commission of Thailand (NHC)の事務局長 Amphon Jindawattana医師は言う。「メディカル・ハブ政策は医者の頭脳流出を促進した。優秀な専門医師や医療従事者が私立病院に流れていった。」タイではすでに医師不足が起きており、低賃金を是正しようとする改革が健康保険制度の重荷になっている。2005年に政府は1300人の医師を何とか養成したが、同年に辞めた医師が700人。その多くは私立病院で働くためであった。

農村医療協会(Rural Doctors Society )も外国人医療の拡大を厳しく非難している。バンコクは農村地域の8倍の数の医師を抱えており、RDSは、都市部への医師の集中が格差を悪化させるだろうと指摘する。

公立病院と私立病院の間で設備環境が大きく違ってくることへの懸念もある。大きな私立病院の中には今や五つ星ホテル並みのところもある。ドアマンが患者を大理石のロビーで出迎え、エレベーター係が待合室まで案内する。こうした外国人向けの、ホスピタルならぬ「ホテル-スピタル」が意味するのは、タイの中流家庭がますますこうした医療センターでの治療を受けにくくなっているということである。

タイの大きな私立病院はさらに多くの外国人への医療サービス提供を免れず、欧米の政府や保険会社はさらなる外注でコストや順番待ちリストを減らそうとするだろうと、エルサレムのヘブライ大学・社会科学部の名誉教授Erik Cohenは予想する。ある学術予測では、外国人患者に充てられる資源は2015年までに、私立病院に現在勤務する医師全体の23%-34%に上るだろうと見積もられている。

一つの解決策として、医師の南東アジア諸国間の移動を自由化し、農村に他の国の医師を呼ぶ方法がある。しかしこれはベトナムやラオス、カンボジアなどの国に悪影響を及ぼすであろう。タイ自身が他国の頭脳流出を引き起こすかも知れないのである。

メディカルツーリズムの急成長は、タイのような国の医療制度に重大な影響を与える。民間部門の拡大やメディカルツーリストの利益よりも重要なのは、地元の住民の医療である。医療サービス税の増税や医学訓練への投資の拡大など、強力な予防手段を講じることによって、国民もまた、医療のグローバリゼーションとメディカルツーリズム革命の利益を得られるようにすべきである。

Thai embrace of medical tourism divides professionals
[guardian co.uk. 26 April 2011 ]


Copyright(C) 2011 SGRH. All Rights Reserved.
by technology0405 | 2011-05-06 14:50 | Countries | Comments(0)
各国のARTに関する資料や記事を集めています (※ このブログに書かれている情報の信ぴょう性は各自でご判断ください)