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ヒンドゥー教と生殖

ヒンドゥー教が他の主な宗教と異なるのは、その起源が一人のカリスマ的リーダーによってもたらされたものではなく、インド古来からの宗教が徐々にブレンドされて今の形になっている点である。キリスト教のように、権威として組織化された宗教ではない。世界に10億人いるといわれるヒンドゥー教徒のうち9億人がインド在住。他宗教やテクノロジーに対しても寛容で、そのためインドでは、都市部の人々も宗教的儀式とテクノロジーを共存させて生活している。

生殖の分野でも、生殖補助医療を積極的に取り入れ開発する一方で、シヴァ神やマハーデーヴィー神への祈祷もポピュラーである。ヒンドゥー教の子供の誕生に関する儀式には次のようなものがある。
①女性の妊娠を祈願する儀式 ②妊娠3か月の時に、子供が男子であることを祈願する儀式 ③子供の誕生時、縁起の良い星占いを祈願する儀式 ④子供の命名時、健康と長寿を授かるよう祈願する儀式 ⑤生後6か月に、1歳まで健康に生き延びるよう祈願する儀式 ⑥剃髪の儀式 ⑦子供をドゥヴィジャ(再生族、カーストの上位3)にする儀式 

生まれ変わり信仰とカルマ(宿命)を基本とするヒンドゥー教では、現世の行いが生まれ変わった後の幸福にまで影響すると考えられている。ダルマの教えでは、結婚して息子を生み育てることが人の義務とされているため、不妊や同性愛はスティグマ化され、子供(特に息子)を欲しいという欲望は非常に強い。前述の儀式からも分かるように、子供は神からの授かりものと考えられ、養育に非常に力を注ぐ。

しかし、あくまで子供=息子。インド社会で女性は独立した一個人とはみなされにくい。ヒンドゥーでは女性の3段階についてこう説明される。
①子供の時は、父に守られる。伝統的に、女子は正式な教育を受けなかった。女性の役割は家の中にある。
②結婚すると、夫に守られる。女性の純潔が重視され、若くで結婚し、結婚生活において外に出ることはなかった。夫に対する妻の役割は、召使、助言者、子供の母、愛人の4つ。
③未亡人になると、長男に守られる。親を世話する義務は息子にある。

男性優位のヒンドゥー社会では、娘は家にとってマイナスになると考えられてきた。インドでは昔から女の新生児の間引きは盛んに行われてきたが、現在は超音波装置の普及により出生前診断+中絶という性選択の方法が一般的。出生男女比は130:100と偏り、深刻な問題となっている。

生殖補助医療技術に関して、ヒンドゥー教はそれをインドの進歩と捉え、非常に好意的である。神話の中には、男神の精子を体内に注いで子供を生んだ女神の話や、胎児を別の女性の子宮に移して出産した話もあり、人工授精や代理出産に通じるところがあるとも考えられる。生殖補助医療技術があくまで不妊の夫婦を助けるために使われるのならOKという考え方を持つ人が多い。クローン技術も、生まれ変わり信仰と通じるのか、キリスト世界のような抵抗感はない。

こうしてヒンドゥー社会に受け入れられた生殖補助医療技術は、メディカルツーリズムの追い風を受けインドでますます発展している。この傾向は今後も続くと予想され、ICMR(Indian Council for Medical Research)によると2015年には年間60億ドル産業になると予想されている。

Faith and Fertility: Attitudes Towards Reproductive Practices in Different Religions from Ancient to Modern Times

Jessica Kingsley Pub




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by technology0405 | 2011-01-07 14:03 | Countries | Comments(0)
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