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パンデミックとウクライナ代理出産 (La strada Ukraineによる国際会議)

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この会議は、ノルウェーの外務省と国際移民局の財政的支援のもと、2020年7月15日に行われた。

Kateryna Levchenko, the government commissioner for gender equality policy
代理出産に対する社会の態度は様々。しかし公的な組織がこの問題に侵入するのは初めてのことではない、国家警察や内務省などがこれまで介入してきた。昨今のパンデミックと隔離が、この問題をさらに大きなものにしている。
ウクライナには生殖補助医療や代理出産を容認する法律はあるが、十分なものではない。あとで、ウクライナの家族法について言及がなされるだろう。健康省と法務省も関係している。しかし代理出産ついて独立した法が必要だと思う。
これまでウクライナでは代理出産についての詳しい調査はなされていない。ただ、La StradaにHotlineでかかってきた電話の内容によると、妻が代理出産をやった家族が後に崩壊したケースを知っている。国際機関がこうした調査を行い、結果を公表すべきだと思う。
国際的な機関の設立が必要だと思う。このまま放置しておくことは許されないだろう。自分はAction against trafficking in human beings (GRETA)のメンバーだ。2018年で任期は終わったが、GRETAの所員が代理出産について一種の人身売買だと指摘している。

Maryna Lehenka, La Strada Ukraine
ウクライナでは代理出産が許可されているが、依頼者、代理母、クリニックの権利や責任を規制するルールがない。多くの場合、代理母の権利が制限されている。しかし、調査研究が不足している。他の国ではすでにこの問題に対処した例もあるので、学ぶことができるだろう。外国人のスピーカーもいるので、彼らに尋ねてみたい。


Marie Josephe Devillers, the vice president of the international coalition for the abolition of surrogacy ICAS
この連合は2018年に設立された。代理出産の問題はもはや一国では扱いきれない。国際的な問題として対処する必要があると認識している。多くの国では、自分たちの国民を守るために法律を厳しくしているので、自国の法律をすり抜けるために海外代理出産が利用されている。
ヨーロッパでは約20カ国で代理出産が禁止されている。しかしこの禁止はとても脆弱なもので、どこの国でも、この厳しい法律を緩めて欲しいという要望がある。メディアもこの新しいテクノロジーに好意的な論調が多い。世論は規制して実施することに賛成だ。
例えば英国では、最も早い時期に代理出産が規制されたが、2019年10月からコンサルテーションが始まり、代理出産法が改訂されようとしている。目的は明らかで、いろいろな制約を取り除き、最終的には商業的な形態に近くすることだ。ギリシアでは、2002年から代理出産が合法化されているが、依頼者も代理母もギリシア国民に限定されていた。それが、2015年に取り払われた。つまり政府は医療ツーリズム促進の意図を持っている。USでも、ワシントン州とNY州で、代理出産を合法化した。
アジアでは、少し事情が異なっている。代理出産を受け入れていた国々で次々と禁止されていった。インドでは現在法律が審議中だ。インド禁止によりネパールに進出した。ネパール政府は禁止にし、タイでも同様に禁止となった。
次はカンボジアがターゲットになった。カンボジアには法律がなかったが、2016年に政府は禁止措置をとった。しかし、代理出産は継続していた。中国人の依頼者が多く、警察が動いて摘発された。現在は、ケニヤなど、法規制がない国に移行している。
バンデミックの影響に移りたい。ICASは、子供たちが取り残されていることを明るみに出した。依頼者が入国できすず、出国手続きがとられないためだ。パンデミックによって、我々はこの富裕な人たちだけがアクセスできるテクノロジーを維持することが必要なのかどうか問われている。
国連では、2018年の報告により、代理出産は一種の自動売買だと結論づけられている。一国内で需要を満たすことができず、グローバルなマーケットが要請されている。しかし、人権の視点からは、ダブルスタンダードは許されるものではない。もし、これがヨーロッパやアジアで禁止されるのであれば、その他の地域でも同様にすべきではないか?

Marina Amons, the head of the anti-trafficking coordination sector, Ministry of internal affaires.
パンデミックは、以前から存在していたが知られていなかった問題にフォーカスすることになった。現在、代理出産は大きな社会問題になっている。これは、ウクライナと、代理出産が禁止されている外国の間での規制の違いによるものもある。女性と子供の権利を守るため、そして人身売買を防ぐため、多くの国では代理出産が禁止されている。我々はヨーロッパの規制から学ぶことができると思う。内務省では、Bill3488を現在検討している。これは、クリニックのライセンス制と代理出産に関する罰則規定を含む。まだいくらか改訂が必要だと考えている。現在の法案では、今ある問題のすべてを解決することができないと考えられる。省庁間でのワーキンググループも必要であるし、内務省と国家警察が協力して法整備に動くことになっている。

Laura Bosch, Hillbrand Westra's college.
オランダの違法養子縁組と代理出産についてHillbrand Westra氏と一緒に研究している。オランダでは代理出産は禁止されていた。しかし、外国に行く人が後を絶たず、結局オランダで代理出産にアクセスできるよう法改正を行うため、長い報告書を提出したところだ。英国と同様に規制緩和の方向に舵を切ったことになる。国内で規制しているところでは、依頼者のスクリーニング、契約書のチェック、子供の親権をとるための手続き、などなど、煩瑣な手続きがある。オランダでは、産んだ女性が法的母親になる。だからもし代理出産を認めれば、この原則に大きな変更が加わることになる。オランダで利他的代理出産が認められるだろう。もう一つの変化は、政府は、外国での代理出産について、商業的なのか利他的なのかチェックをしないと決定したことだ。これはウクライナにも影響を与えるだろう。つまり、国内では倫理的に厳しい基準を要請し、外国では商業的であってもかまわないということになる。そして、オランダ家族法によって、外国の代理出産で生まれた子は全て、依頼親との親子関係が認められることになる。
だから、今後ますますオランダ人は海外で代理出産を利用することが見込まれる。しかも、この法律が施行されるまでは、家族法では認め、刑法では禁止するといった矛盾した状況が生まれることになる。

Andriy Kravchenko, the chief operating officer of the national police department for combating crimes to human trafficking.
パンデミックによって依頼者が入国できずに子供たちが取り残されている問題が発生している。この問題に対するアプローチとしては、合法化する、ツーリズムを認める、禁止する、の三つがあると考える。かつてはアジアの国で安価な代理出産があったが、現在は禁止され、中国人の依頼者が増えてきた。法律の実行に責任がある立場として言えるのは、代理出産はウクライナでは合法だということだ。健康省によって認められている。
しかし、国家警察では、違反例を複数検挙している。
一つは、依頼者と子は遺伝的繋がりがなければならないのに、なかったケースが複数あきらかになった。そのような証明書が病院から発行されていたにもかかわらず。それがなければ、子供を国外に出すことはできないものだ。
二つ目は、女性が不妊であるという証明書が必要だ。しかし、嘘の証明書を出していたケースが複数あった。彼らは、訴追された。中には、不妊の証明書を出したにもかかわらず、依頼者の女性が妊娠6ヶ月だったケースもあった。妊娠中に代理出産を依頼していたことになる。これらは人身売買の事例ではないものの、書類の偽造が広く行われていたことを示唆している。
三つ目は、結婚証明書に関わるもの。これも様々な違反例が見つかった。中国人で偽装結婚するケースが相次いで見つかった。
現在、法律を改正するために、省庁間のワーキンググループが立ち上がった。ビジネス側の人も含めて多方面から意見を聞く用意がある。でなければ、闇に潜ってしまうとよくない。このビジネスには大きなお金が動いていて、大きな抵抗もある。

Ruslan Kovbasa, Ministry of Socal Policy.
ウクライナでは、2015-19の間に、4631人の子どもが代理出産で生まれている。そのうち、4279人が外国人の子どもだ。また、2020年については、464人の子どもが生まれており、429人が外国人の子どもだ。
UNICEF、Ministry of Social Policy、Comissioner for Human Rightsが共同でこの問題についての会議を開いた。研究に関しては、2014年にCommissioner for Human Rightsの要請で実施した。OSCEがこのプロジェントをコーディネートして、この問題についてのデータをもっている。現在ウクライナでは禁止レジームをとっているものの、外国では禁止レジームを採用した国もあることを知って、自分たちの決定に生かしたいと思っている。このような情報は最近になって知らされたものだ。
ウクライナには代理出産についての法律はあるが十分なものではない。それで、Ministry of Social PolicyとMinistry of Healthが合同でワーキンググループを行い、"Some Issues Regarding the standardizing of the use of reproductive technologiesという法案を提出したところだ。この法律がなければ、また問題が発生するだろう。
次の問いはこうだ。ウクライナはこのまま合法レジームを取り続けるのかどうか、それともウクライナ人に限って合法にするのか? 外国もこの問題にはとくに関心があるようだ。例えばドイツの大使は、この問題に対して厳しい姿勢を持っていると述べた。市民が外国で利用することはあっても政府は決して認めないだろうとのことだ。
つまり、例えばスペインに子供を連れ帰ったとしても、代理出産が禁止されているので、子は登録されない。こうした問題についても我々は考えなければならない。だからもし、外国人に門戸を開くのであれば、どの国を受け入れていいのか考慮する必要があるということだ。代理出産が合法の国だけに限定しなければならない。
また、商業的なのか、利他的なのかという問題もある。利他的が望ましいものの、それは代理母になる女性たちからは支持されないだろう。彼女たちは低所得なのだから。そんなことをしたら騒動になるし、女性たちから報酬を奪い、保護していないことにもなる。
我々は、代理出産に特化した法案を提出した。前の法案の40-50%くらいを採用した。新たに外国の経験からえられた知見を付け加えたものだ。しかし、それでは十分ではなく、さらに改訂が必要だという結論に至った。

Ruslan Kovbasa, Ministry of Social Policy
養子縁組をもっとやりやすくしたらいいのではないか? という質問に対する答えは、ウクライナには外国人が欲しがるような養子はいないというものだ。
つまり、1-3歳の子を欲しいという依頼者はウクライナだけでも年間1,600-1,700人にも及ぶ。だからそのような子は実際にはデータベース上に存在していない。もしいるとしたら、障害のある子だ。養子に関して賄賂の問題は滅多に聞かない。もし、青い目の小さな女の子がデータベースに登録されたなら、そんな賄賂が発生するかもしれないが。外国人が養子にできるのは、国内の候補者がいない状態で1年たった後だ。そのうえ、もし深刻な病気が子にある場合、5歳以上にならないと外国人は養子にできない。だから国内の養親が1500件に対し、外国人による養子は年間300-350件ほどになる。いずれにしてもウクライナ人の養親が優先される。それに比べて代理出産はもっと早いし簡単。養子にも外国人なら旅費等いろいろなお金がかかり、2万、3万ドルはかかる。それなら、遺伝的なつながりがある子を望むのは自然だろう。
結論としては養子と代理出産は比較できないということだ。

Andriy Kravchenko, the chief operating officer of the national police department for combating crimes related to human trafficking.
どのようにして代理出産に関する犯罪を見つけるのか? という問いに対する答えはこうだ。
国家警察は色々な活動や捜査をする権限が与えられている。そのような活動からたくさんの情報を得ている。たとえば、犯罪に気づいた市民からの通報もある。偽装妻や代理母になった女性からの相談もある。外国の機関との連携もある。それについては今後、お知らせすることになるだろう。
例えばイタリアが絡んだ犯罪だ。イタリアに連れ帰られた子がいるが、依頼親はイタリアで親権を得ることができなかった。子供は国の施設に預けられた。そして、ウクライナにも戻れなかった。

Ruslan Kovbasa, Ministry of Social Policy
我々の国内にもそのような施設がある。依頼親が子供を母国に連れて帰らなかった場合、その施設に入ることになる。つまりは依頼親に捨てられた子たちだ。障害がある子供は、ケアをされることなく捨てられる。我々は大使館に知らせる。大使館と一緒にこのようなケースを扱う。
また、何らの理由で出生登録できなかった子どもも捨てられるケースがある。そのような子たちを、我々はウクライナ人の子と同じように保護する。代理出産であろうとなかろうと。見つけたら保護し、警察に通報する。そのようなケースが存在する。
人身売買については、ウクライナでは代理出産は合法なので、それに則って正しく行われている限り、それは人身売買ではない。依頼者の配偶子が使われ、代理母の卵子が使われていなければ、依頼者の子であり、依頼者の母国に連れて帰ることができ、人身売買にはならないが、問題はそのように偽装された証明書が発行されているケースで、その場合には人身売買に相当することになる。しかし、この境界は大変脆いものだ。

Euhenia Kibakh, 参加者
自分は、National Rights of Ukraineという組織で働いている。驚いたことに、ジャーナリスト、専門家、研究者たちから、たくさんに問い合わせをうけた。それは妊娠、出産の際の代理母の権利についてだった。
代理母に対する人権侵害が、出産施設で行われている。それは、産科暴力(obstetric violence)とも呼べるものだ。産科の医師たちは、代理母に対する偏見を持っている。例えば、彼女たちは税金を支払わずに大金を儲けているなどの考えがある。これは代理母の身体的心理的健康に大いに影響するものだ。

Olesia Solomina, 参加者、代理出産の依頼者
産科暴力について付け加えたい。自分は二度代理出産を依頼して、二度とも、産科病院で代理母と一緒に過ごした。その問題は確かにあるが、それは代理母たちが税金を払わないということではなく、子供を売る女性だと見られていることに起因していると思う。彼らは、代理出産が何かを理解していない。一度目の代理出産のとき、医療者らは代理出産のケースを扱うのが初めてだった。だから産科施設のスタッフに対する教育が必要だと思う。IVFクリニックのスタッフはこのことをよく理解しているが、産科施設のスタッフたちは全くわかっていない。私の担当医は、なぜ私の代理母に対してそんな態度をとるのかと聞く私に、なぜって、彼女は自分の子を売ったんでしょ? と答えた。知識が欠けていると思う。

Euhenia Kubakh, 参加者
全く同感します。代理母に対するいろいろな偏見があると思う。一つ目は知識のなさ、二つ目は、お金の問題。どっちらしても教育が必要なのは確かだと思います。









# by technology0405 | 2020-10-23 09:22 | Materials

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