インド商業的代理出産禁止法案の行方


医療ツーリズムや経済振興策の一つとして、2002年以来、商業的代理出産を合法化し、代理出産ツーリズムのハブとなってきたインドだが、外国人依頼者による代理出産子遺棄事件、帰国トラブル、ゲイカップル依頼者の増大(インドで同性愛は禁止されている)により次第に批判が高まり、外国人の流入を制限するために、2012年頃から医療ビザによる規制を強化してきた。医療ビザは、代理出産が母国で合法の異性カップルにのみ発行されるものであり、これにより大部分の外国人依頼者が排除され、事実上、外国人による代理出産は禁止扱いとなった。
医療ビザ規制の効果は絶大で、人々はインド市場を去り、タイやカンボジア、メキシコなど他の新興諸国へと流れていった。
さらに、2016年8月に新たな法案が議会で承認された。2005年にICMR(インド医学評議会)からガイドラインが出されて以来、2008年、2010年の法案により商業的代理出産を認め、規制することに主眼を置いてきたインドだが、今回の法案ではこれまでとは全く異なる方向性が打ち出された。
その要点は下記のようなものである。

・利他的代理出産のみ(商業的代理出産は不可)
・5年以上結婚している異性カップルのみ依頼できる (妻は23-50歳、夫は26-55歳まで)
・養子を含めて夫婦はこれまで子どもがいないこと(障碍児は除く)、代理出産による子どもは一人まで
・代理母は依頼者の親族に限る
・代理母は自分の子どもがいる25歳から35歳までの既婚女性で、代理母になれるのは1回のみ
・インド在住のインド人のみが依頼できる

これまでとはうって変わって代理出産を大幅に制約するものであり、各方面からさまざまな意見が上がっている。
論点はさまざまあるが、代理母を親族に限定するという方向性が、大きな足かせとなっていることが読み取れる。
これは、代理母を依頼者と同質のコミュニティから調達することは難しいこと、貧しく教育がない女性の身体に依存せざるをえないことの裏返しでもある。
他人の身体を利用したい人々は多くいても、対価なしにそれを引き受けようとする人々は当然ながら極めて少ない。
代理出産にはこうした需給の問題が常につきまとう。


代理母: 教育がないのでサーバントをやって月3,000-4,000ルピーを稼ぐのがやっと。子どもの教育費や婚資などお金がたくさん必要。だから代理母になった。禁止はよくないと思うし、女性の搾取ではない。医師や依頼者、自分の家族からもよくしてもらった。

NGOのソーシャルワーカー:貧しい女性たちはお金のことしか考えていない。代理出産のリスクを真に理解していない。自分たちのようなNGOでは女性をエンパワーするためにもっと別の手段を提供している。

医師: 代理出産を規制する法律ができるのはよいことだと思う。自分が今まで1,120件の代理出産をやってきたが、そのうち親族によるものは25件だけ。利他的代理出産でもギブアンドテイクは存在していて、代理母は家や乗り物、ダイヤモンドなどをもらっていた。だから結局同じ。親族から代理母を見つけるのは難しく、法案は依頼者の選択肢を著しく制約するものだ。

依頼者: 子どもを持つための方法はいろいろあるが、自分たちにとっては代理出産が一番いいと思っている。しかし、親族から代理母を見つけるのは難しいと思う。

メディア記者:障碍がある代理出産子を遺棄したり、代理母が死亡したり、卵子ドナーが死亡したり悲惨な事件があるのに、美談の方ばかりがとりあげられる傾向がある。

政府関係者: 子どもを得る方法は養子など他にもある。養子についても、もっと議論すべきだと思う。とはいえ代理出産への需要があることも理解しており、インド人へはこのオプションを残すため今回の法案になった。代理出産を制限する必要はあると思う。それが子どもがいないカップの第一選択肢になってはいけない。

依頼者: 出産後、代理母と会っていない。病院のポリシーで。しかし代理母の夫には会ってお礼を言った。夫はそのお金で子どもの教育費に充てたいといっていた。もしお金を払えなければ、どうやって感謝していいのかわからないと思う。


(その他)
・今の時代、タダでできることはない、たとえ親戚であったとしても。ということは今の法案は代理出産をやるな、と言っているのと同じだ。
・核家族の時代なので、やるなと言っているに等しい。
・商業的代理出産を容認すべき。親戚に制限するのは意味がない。親戚が代理母になったら子どもの近くにいるので何か問題が起こる可能性がある。授乳についても、大きな問題になる。
・今の時代、海外でやる人はいくらでもやるのでインド市民に限定するのは意味がない。
・外国人が養子を取ることは認めているし、独身が養子を取ることは認めている。代理出産の場合だけ認めないのは整合性がない。
・あの人たちはばか(stupid)だから、義理の母などから強制されることもある。自分で決められない。だから規制もやむをえないことだ。
・禁止に賛成。労働力を売るのはいいが、自分の体を売るのは奴隷と同じだから。インドの女性は貧しく、医師や依頼親のほうが圧倒的に強く、腐敗もあるなか、女性が搾取されるのは目に見えている。
・自分はいままで多くの代理母と仕事をしてきた。それでわかるのは、夫や義母から要求されて代理母になる女性が多いということだ。夫は新しいバイクが欲しい、義母は家を修理したいなど。嫁の体を使って稼ごうとしている。子宮が新たな商品になったのだ。もし代理出産で代理母に不利なことが発生したとしても裁判費用すら払えない女性も多いし、映画スターや資本家お外国人とどうやって対等に戦えるのか。
・我々の社会には非常に貧しい女性たちがいて文字も読めない。そのような女性や捨てられる子どもなどを守るための法律が必要だ。彼女たちが自分の体を使ってそれをする権利を制限するのは、基本的なヘルスケアすら提供できていない我が国の現状からすると妥当だ。彼女たちにきちんとした雇用を与えてから、この問題を議論してもいいと思う。




d0170396_08130519.png
d0170396_08125826.png




[PR]
by technology0405 | 2017-11-28 08:00 | Countries | Comments(0)
各国のARTに関する資料や記事を集めています (※ このブログに書かれている情報の信ぴょう性は各自でご判断ください)